- 文藝春秋 (2023年4月5日発売)
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感想 : 29件
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784167920258
作品紹介・あらすじ
日本銀行本店や東京駅など、近代日本を象徴する建物を矢継ぎ早に設計した、明治を代表する建築家・辰野金吾。
下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、帰国後はなんと恩師ジョサイア・コンドルを蹴落として日銀の建築を横取りする……!
周囲を振り回しながらも、この維新期ならではの超人・金吾は熱い志で
近代日本の顔を次々を作り上げていく。
日銀の地下にある意外な仕掛け、東京駅の周辺にかつて広がっていた海の蘊蓄など、誰もが見慣れた建築物の向こうに秘められたドラマを知ることもできる。
ベストセラー『家康、江戸を建てる』の著者が
「江戸を壊して東京を建てた」辰野金吾を描く、大きく楽しい一代記!
感想・レビュー・書評
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日本銀行、東京駅を建築した辰野金吾さんの一代記
留学先から戻った場面から始まり、夢や理想を語り実現に向けて進んでいく。
欲しいと思った仕事のためには師匠を否定することも厭わない豪快で単純な金吾。
晩年、弟子から否定され若かった頃に自分が師匠にしたことを思い出し、老いた自分に嫌気がさしながらも新しいことを生理的レベルで受け入れられないことで喪失感を覚えるあたりは切なかった。
時代が時代なだけに、色々なものが西洋式に変わっていく過渡期に取り残されていくような感覚は社会人なら誰でも経験することだけど、仕方のないこと。
物語の中の言葉を借りれば
人間は、真摯に仕事する限り、誰でも過渡期の人である。
そして、盟友の曽禰達三さんや弟子たちの存在が終始、光り、辰野金吾さんの人柄がよく分かるようだった。
建築業界に興味はなく、タイトルで購入したけれど
建物を知っているだけにその建築過程を覗き見ることが出来たような作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
辰野金吾の一代記。
コンドルの弟子で東京駅を設計した人、程度の知識で読んだ。
日銀と東京駅を軸に話は展開し、最後は議事堂コンペの導入まで。
師匠コンドルを越えていき、近代ビルディングの波に越えていかれる姿はなんともいえない。
ただ、東京をつくるという意識と野心は凄い。議事堂をめぐる妻木との争いも、矢橋の視点を入れることで批判的な評価を入れてもストーリーが破綻しないのが凄い。
曽禰達蔵のほか妻木、松井、今村など、この時代の様々な建築家との関係性も読んでいて面白かった。 -
辰野金吾のイギリス留学からの帰国後から日本銀行本店と東京駅の設計建築までの生涯を描いた一冊。
辰野金吾という名前は知っていましたが、初めて人物像を知ることができました。
明治維新で江戸時代の名残が残る時代。
西洋に追いつけ追い越せと日本が大変貌を遂げた時代。
師匠のイギリス人のコンドルと日本銀行の設計を巡り、時の総理の伊藤博文への直談判した時の師弟対決。
その師弟対決を超えて、友情を死ぬまで持ち続けてきた二人の絆。コンドル先生の懐の大きさがあったからこその辰野金吾がいたのですね。
妻の秀子の献身ぶりや、苦楽をともにした曽禰達蔵の身分を超えた友情。高橋是清との接点。
偉人は偉人を呼ぶですかね。
死の間際に梅太郎の言った「お義父さん。このおちょこは、今度は別のものを飲むのに使いたいですね」が涙を誘いました。
「人が仕事を選ぶのでなく、国が人を選ぶのである」
仕事の本質をつくハットする言葉な気がします。
最後の方は名言ばかりですが、辰野金吾や当時の偉人たちが今の日本を見て、何を思うのでしょうね。 -
建築家、辰野金吾の大河小説。
正に大河と呼ぶに相応しい、波乱万丈の人生だった。
決して順風満帆ではないし、何より集大成とも言える建築に向かう頃には自分の老いを受け入れて新しいものを拒絶してるんだもんね。
栄枯盛衰、なるほどなるほど。
好きなシーンは色々ありますが、どこか1つを選べと言われたらやはり前述した箇所、辞表を突き付ける松井とのシーン。
時代の移り変わりと共に老いからも逃れられない。。。
『コーヒーにはうるさいぞ』からの『コーヒーはなかなかうまかった』の流れがより一層胸を締め付けます。
もはや、自分は最先端ではないことを社会全体が示してるんですよね。
切ない、切ないよ。
コンドルとの再会も最高ですね。
ラストも良かったなぁ。
思わず国会議事堂の建築家を調べちゃったよ笑 -
熱き建築家の一生を描いた物語。
この時代を生きた人の情熱はすごいなと
シンプルに感動した。とにかく熱い。
男というより漢感。
建築の専門用語が多いので、少し内容は難しめ。
わずか30年間で統治体制が変わり、身分が変わり、街並みも変わった激動の明治時代。
今は見慣れた東京駅や日本銀行がこの時代に作られた背景など初めて知ったし、
デザインに込められた思いなど時代を知らないと理解できないものも多かった。
一応星3だが、読み返すほどいい作品じゃないかなと思って、また時間を置いて読み返そうと思う。 -
明治中〜後期の「はじめて物語」は
バイタリティがあって楽しいね!
もちろん、今と比べて一長一短あるけど
こうして後世から見てみると
何事かを成したいという熱量がすごい。
そのなかでも、これは建築の物語。
好きな分野だから、なお楽しかった。
この時代の建築関係の本には
かならず名の上がる「辰野金吾」
東京駅や日本銀行を設計した人として
名前はもちろん知っていたものの
その人となりと人生を
小説にアレンジされているとはいえ
これで追うことができました。
まぁ、天才のまわりの人間は
いつでも巻き込まれて大変ってことで( ̄∀ ̄)
曾禰達蔵もよくずっと交遊を続けてたなぁ。 -
偶々出くわして、大変に愉しく読んだ小説だ。明治期から大正期を背景にした物語ということになる。素早く読了に至った。
本作は、日本橋の日本銀行本店や東京駅の建物を手掛けた建築家、辰野金吾の物語ということになる。
記憶が確かなら、日本橋辺りに三越前駅という地下鉄の駅が在り、その辺りに日本銀行の本店が在った。本店の建物そのものではなく、近くに日本の通貨の歴史が判る、古い貨幣のコレクションを展示している日本銀行関係の資料館が在って、立寄ったことが在ったような気がする。その建物の建設に辰野金吾が携わっている。
そして東京駅は、戦災等で傷んでしまった後に修復した状態で長く使用されていたが、創建時の様子を再現するとして工事が行われ、現在ではその創建時の姿になっている建物が見事なのだが、その創建時に建設を手掛けたのが辰野金吾であるという。
こういう、或る程度広く知られた建物を手掛けた人物の物語ということで、日本銀行の件や、東京駅の件は物語の重要な柱ともなっている。
物語は、辰野金吾が英国留学から帰国したという辺りから起こる。横浜港に下立つと、友人や妻が迎えに来ていたというようなことになる。英国帰りの辰野金吾は、未だ江戸の面影が色濃く残る東京について、「東京そのものを建てるのだ」と意気込む。
物語は主に辰野金吾の目線で綴られる。が、時に同郷の友人である曾禰達蔵(そねたつぞう)の回顧や、終盤には息子の辰野隆(たつのゆたか)の目線の部分も在る。英国帰りの辰野金吾が色々な事に取組もうとする様子と並行し、戊辰戦争位の頃に10代後半辺りだった世代ということになる辰野金吾や曾禰達蔵の来し方が振り返られる部分を交えて展開する。辰野金吾が何を目指したか、如何してそう考えたか、そして日本銀行や東京駅という、当時の「空前の大建築」に取組む様子が描かれる。そして最晩年の様子へ進む。
偶々なのだが、比較的近年に東京駅の建物を眺める機会が何度か在った。そんなことも在って、辰野金吾が当時の“大計画”に邁進した様を、本作に描写される往時の辺りの様子を想像しながら大変に興味深く読んだ。少し夢中になってしまう雰囲気が溢れる作品だ。
読後の余韻に浸りながら、少し思った。辰野金吾が近年の東京を観たら、如何いうような感想を漏らすであろうかというようなことをだ。本作はとにかく愉しかった。 -
面白く読めたが、期待が少し高すぎたかも。日銀の仕事を取るところがクライマックスでした。
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面白かった
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江戸時代が終わって、江戸が東京になった時に、東京を諸外国に負けない都市に創り上げていった人の話。
これからの日本がどうなっていくのか、というよりもっと主体的にどういう国にしていくのかというビジョンを持って、日本銀行や東京駅を作った人の話。
なんで昔の人はこんな熱い思いを抱けるのかわからなかったけど、一節に「国家の方が年下なのだ」とあり、なんだか腑に落ちた。 -
東京駅駅舎や日本銀行本店を設計した日本を代表する建築家、辰野金吾の生涯を描いた小説。
なぜ東京駅が作られたのか、どうしてあの場所になったのか、なるほどと思うことがいろいろありました -
都内の散歩が楽しくなる。
東京の誕生やその成長を描いた歴史の物語でありながら、単なる過去の記録にとどまらない、都市そのもののエネルギーを感じさせる作品。読んでいくと、東京という街がどのようにして形づくられ、どんな思想や人々の情熱によって現在の姿になったのかが鮮やかに浮かび上がってくる。
江戸から東京へと変わる瞬間、その背後にある政治や文化の変遷が、門井独特の筆致でドラマチックに語られる。例えば、鉄道の敷設や都市計画が、ただのインフラ整備ではなく、人々の暮らしを根本から変える大きな出来事として描かれているところに引き込まれる。都市の「はじまり」というのが、実はたくさんの人々の情熱や葛藤の上に成り立っていることがよくわかる。
門井の描く東京は、ただの歴史的な舞台ではなく、まるで生き物のように躍動しているのが印象的。登場する人物たちの野心や理想、そしてそれに伴う挫折まで、すべてが東京という街の成長に刻まれているのが面白い。
東京という都市を新しい視点で見つめ直すことができる一冊。普段見慣れている風景や歴史の背景に、これほどまでのドラマがあったのかと驚かされる。「東京」がただの地名ではなく、一つの壮大な物語そのものだと気づかせてくれる作品だった。 -
辰野金吾の二大建築、日銀本店と東京駅の建設を軸に辰野金吾の生涯が活き活きと描写されていて、話の展開がとてもおもしろい。ジョサイア・コンドル、曾禰達三、片山東熊、高橋是清など史実上の人物との絡みも臨場感を持って描かれていて、その時代の雰囲気を身近に感じられて楽しい。
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日本橋でも丸の内でも長いこと働いたことがあるうえ、建築関係にもそこそこ詳しいので、具体的にイメージしながら読み進められた。
もっと専門的なことにも言及してくれたらより興味深かったと思う。
なぜ建築家が妙な建物を建てたがるのか個人的な謎なのだが、その解答にはならなかった。 -
読みやすく、面白い内容だった。
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20230818
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建築家、辰野金吾の一生。欲を言えばもう少し建築の技法の話があれば良かった。
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辰野金吾の生涯を,イギリス留学からの帰国後からその死までを闊達に描く.金吾の生涯が東京建造に注がれたので,東京が物語の場となっているが,骨子としては金吾の為人が破天荒に淡々と描かれる.偉人伝にあまり心動かされない我が身としては,その動機の源が知りたい.
著者プロフィール
門井慶喜の作品
