2050年のメディア (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2023年4月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (560ページ) / ISBN・EAN: 9784167920326

作品紹介・あらすじ

読売、日経、ヤフー、波乱のメディア三国志!
大幅加筆400字70枚でここに完結!

インターネット上で巨大化しているプラットフォーマーたちに、今日の競争政策はうまく機能していないとして、独占禁止法の強化を主張する思潮が全世界を覆う。日本に独自に成立しているプラットフォーマー、ヤフーにも公正取引委員会のメスが入ることになる。だが果たして新聞の凋落はプラットフォーマーだけのせいなのか?
著者は、日経、読売、ヤフーの三社のみならず、ニューヨーク・タイムズ、英エコノミスト誌から鳥取のローカルメディアにいたるまでを、丹念に調査し、「持続可能なメディアとは何か」を、30年にわたるメディアの興廃史の中から掘りさげていく。

文庫書き下ろし新章 新聞VS・プラットフォーマー
大きくなりすぎたヤフーに対して公正取引委員会のメスが入る。「国境なき記者団」にネットの言論空間正常化のためのシステムを依頼された村井純は、読売の山口寿一に会う。

第一章 最初の異変

第二章 中心のないネットワーク

第三章 青年は荒野をめざす

第四章 読売を落とせ

第五章 ライントピックス訴訟一審

第六章 戦う法務部

第七章 日経は出さない

第八章 真珠のネックレスのような

第九章 朝日、日経、読売が連合する

第一〇章 「あらたにす」敗れたり

第一一章 アンワイアード

第一二章 イノベーションのジレンマを破る

第一三章 日経電子版創刊

第一四章 内山斉退場

第一五章 「清武の乱」異聞

第一六章 論難する相手を間違っている

第一七章 ニューヨーク・タイムズの衝撃

第一八章 両腕の経営は可能か?

第一九章 スマホファースト

第二〇章 ヤフー脱藩

第二一章 ノアドット誕生

第二二章 疲弊する新聞

第二三章 未来を子どもにかける

第二四章 未来をデジタルにかける

第二五章 未来をデータにかける

終章 2050年のメディア

文庫書き下ろし新章 新聞VS・プラットフォーマー

みんなの感想まとめ

メディア業界の変遷とその未来に迫る内容で、特に日本の主要メディアである読売、日経、ヤフーの動向を丹念に描写しています。著者は、インターネットの影響を受けながらも、伝統的な新聞社がどのように変化に対応し...

感想・レビュー・書評

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  • 日本のメディア、主に読売、日経、ヤフーが、インターネットの興隆に向き合い、時に抵抗し、時に波に乗ってきたかを描いたノンフィクション。とてもおもしろく読めた。

    2019年の単行本から4年後に出た文庫版の新章が追加されているが、その間でも紙の新聞発行部数の衰退は止まらず、かつ伝統的メディアのデジタル分野の決定打は見えていない。これは著者も最後に書いている、新聞社は上場していない、かつオーナー支配の会社が多いことも影響しているという点には同意する。経営者にスピード感がないのだ。

    ただ、アメリカのようにデジタル化の波で地方紙がバタバタ潰れてしまえばよいとは思わない。トランプが顕在化させた分断、民主主義の危機の主因のひとつは多様な言論が失われ、ソーシャルメディアを通じたエコーチェンバーに閉じこもったからだ、という意見には賛同する。日本のメディアはどこまで踏みとどまれるのだろうか。

    この本の柱となる人物は読売新聞グループ本社の山口寿一氏なのだろう。著者の下山進氏のインタビューに真摯に答え露出が多く声が伝わるのもそうだが、東京ドームでの反社会勢力排除などのエピソードがあるように肝が座った、かつ徹底して理詰めで攻めてくるリアリストという印章。総帥・渡邉恒雄氏のデジタル嫌いは有名だな、本格的な山口時代が来た時には業界に一波乱ありそう。

    新章で出てくる「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」(理事長=村井純・慶応大学教授)がどう動くのか。これも注目したいが、内輪のお墨付きってどうなのだろう?と冷めて見てしまう面もある。あとはタイミング。10年とは言わないが5年早く動いていたらよかったと感じた。

  • 普段読まないノンフィクション。テクノロジーの流れとメディア業界の変化をストーリー仕立てに描いており、大変感銘深い内容だった。

  • ネット社会に飲み込まれていく過程でもがき苦しむ大手新聞社の惨状がよくわかりました。「強い者が勝つのではなく、変化に対応できた者が生き残る」という言葉を思い出しました。

  • 優れたノンフィクションの見本のような作品。綿密な取材に裏付けられた的確な状況分析。新聞もこういう連載があれば買う人が増えるのでは?
    昔から新聞大好き人間で、毎日少なくとも30分以上かけて新聞を読んでいる。だからこそ消えて欲しくないメディアであるのだが、それも半分諦めている。これを読むとますますその思いが強くなる。
    平日はデジタル版を読むのだが、近年読み上げ機能ができて忙しい朝にピッタリ。紙面もかなり変わってきた。生き残りをかけた最後の機会だと思うので、何とか踏みとどまってほしい。

  • 文章はちょっと好きになれない部分もあったが、なかなか面白かった。
    情報は無限になり、読者が独占されているということに公取的な発想でどう立ち向かうのか。表現の自由とのせめぎ合い。それは、自由経済の限界を画す独禁法の発想に確かに親和的。考えさせられる。

  • 朝日新聞20429掲載 評者:安田浩一(『労働情報』編集長@wiki)

  • 1990年代半ばのインターネット黎明期から現在に至るまでの変革期に、日本のインターネットメディアと新聞がどのような取り組みを行ってきたのかということを語っている。

    中心的に取り上げられるのは、ヤフーと読売新聞である。

    初期のインターネットにおけるニュース配信の形態は、ヤフーなどのポータルサイトが新聞社の記事に対してリンクを貼り、ポータルサイトは広告料で、新聞社はそのリンクの情報提供料で収益をあげるというものだった。

    このビジネスモデルでは読み手は記事を無料で読むことができることになる。このような「無料配信」が一般化すると、報道をする側の収益基盤は浸食されることになる。とくに、紙の新聞を発行して収益を上げていた新聞各社は、発行部数の減少に歯止めがかからない事態となる。

    このような状況に対して、読売新聞は紙の新聞を守りつつインターネットでの情報発信にも対応する形を模索し続けた。本書では、日経新聞・朝日新聞と組んだ「あらたにす」や、読売独自に開始した「読売タブレット」などが紹介されている。

    しかし、これらの取り組みはいずれも成功したとは言えないという印象を受けた。これらの手法が新たなニュースの読み方としてメジャーになることはなかったし、何より読売新聞社自身の売上減少には歯止めがかかっていない。

    一方で、記事自体の付加価値をつけながら有料での新聞の電子化を目指しているのが、ニューヨークタイムズや日経新聞である。これらの各社では、早い段階からヤフーなどの無料配信の媒体にニュースを配信することをやめ、自社による電子版の発行を進めていった。それに加えて、専門の記者による署名入り記事や零細形式の調査報道など、速報性とは異なる価値を持った記事を充実させている。

    結果として、日経新聞や売上げの減少が他の新聞各社と比べて少なく、ニューヨークタイムズについてはむしろ売り上げを回復させている。メディア(媒体)としての機能は形を変えつつ、コンテンツクリエイター(報道機関)としての機能をより洗練させるというこれらの会社の変化の方向性が、正解だったのではないかと感じさせられる内容であった。


    一方のヤフーについても、ポータルサイトとしての姿から徐々に姿を変えていく様子が描かれている。ヤフーの経営環境に大きな影響を与えたのは、インターネットを閲覧する環境がパソコンからスマートフォンへと変わったことである。これにより、ウェブブラウザーのトップページとしてのポータルサイトの価値はほぼ失われた。

    このような変化を受け、ヤフーでもセグンド(のちにノアドットに改名)というビジネスを新たに始めている。まず、ヤフーがニュースを蓄積するデータベースをクラウド上に設置し、新聞社などのコンテンツホルダーがここに記事を蓄積していく。そして、キュレーターと呼ばれるニュースを提供するサービス事業者がこのニュースリソースを使ってユーザーが求めるニュースを提供する。

    収益は、ニュース提供によって得られた広告料収入を、コンテンツホルダーとキュレーターのあいだで分配するとともに、ヤフーはこのシステムを運用する手数料を得る。

    それまでのヤフーの、ポータルサイトを基盤とした広告ビジネスとは大きく異なるビジネスモデルであり、記事を提供する側にしっかりと広告料収入を還元し、新聞社だけではなく個人のライターなどにもコンテンツを提供する門戸を開いたという点が、画期的であったという。一方で、読み手は記事を無料で読むことができるという点はこれまでのビジネスモデルと同じである。

    現在のヤフーは、このビジネスモデルからもさらに脱却し、ニュースへのアクセス履歴のデータを基にしたサービスを提供するという、データビジネスに軸足を置いている。そして、ニュース配信とオンラインでの購買、金融サービスなどを繋げることにビジネスチャンスを見いだそうとしている。

    このビジネスモデルの成否については、まだ明確な方向性が出ていない。ただ、ニュースを伝えるメディアとしての役割は、このビジネスモデルにおいては周縁的な役割しか担わないということは明らかであると思う。


    本書に書かれている読売新聞とヤフーの歩みを見ながら、インターネットというメディアは、情報の伝達という意味でのメディアの役割を根元から侵食したということを痛感した。そして、今後メディア企業は、コンテンツを作る役割やユーザーに情報+αのサービスを提供する役割など、それ以外の部分に立脚した収益モデルを作っていかなければならないのではないかということを考えさせられた。

  • 2019年の単行本を文庫版で再読。4年経って紙の新聞の衰退はさらに進んでいます。新聞協会のHPでは新聞発行部数は2019年の37,811,248から2022年の30,846,631へ、700万部の減少です。日本の人口減少が2019年から2022年で160万人なので人の減り方では語れない新聞の衰退が見て取れます。今回、再び読んだのは文庫のために付け加えられた新章「新聞vsプラットフォーマー」を読むため。現在進行形の「オリジネーター・プロファイル」について取材しているからです。信頼できるコンテンツを認証する、というプログラム、やっと動いたか、という期待もありますが作者は少々懐疑的な視線を投げかけます。それは本書でのメインストリー、「あらたにす」の挫折があるからでしょう。成長の時代に激しく販売競争してきた新聞社の呉越同舟がいかに難しいかを描いてきた著者ならではの感覚です。ただ文庫版の締め切り直前まで交わした著者と読売新聞社山口社長との生々しいやりとりはそれだけでも必読です。単行本の時には2050年まであと31年でしたが文庫の今年はあと27年…リアル「2050年のメディア」はどうなっているのでしょうか?

  • 新聞からインターネットへ。メディアの動きを読売新聞とヤフーを軸に紹介。
    一つ一つのトピックスは、通常知り得ないような内容ばかりで興味深いものだが、それぞれの章の関連性が今一つ掴めず、全体としての主張が分からない。

  • よく知っている業界のことで、まったく他人事ではないので、面白くて、怖くて、読むのを止められなかった。

  • 新聞やヤフーの流れがわかる。

    取材に協力してくれた人をもちあげる表現はいらないと思った。おおっとなるエピソードがあればそれで十分。いろいろ忖度してるなって思うのは玉に瑕でした。

    内容は新しいメディアのあり方というよりかは、紙の没落がメインとなっている。

  • 子供の頃、夢中で小学生新聞を読んでいた私が30歳を超えて新聞を取っていない。(一時期取っていたが価値を感じられない&古新聞が溜まるのが鬱陶しくてやめた。)
    それだけでも紙の新聞の苦境は不思議なものでも何でもないと感じる。
    本書は読売新聞、日経新聞、Yahoo!の3者を軸に新聞社とプラットフォーマーとの戦いをスリリングに描いたノンフィクション。文庫で500ページ超の大作だが、読み始めたら止まらず一気に読んでしまった。
    アテンションエコノミーに振り回されずより良質な情報を得るか、情報消費者である私たちの振る舞いを考えさせられる一冊だった。

  • 2023/4 文庫化で再購入
    追加章 

    p506 ダニエル・カーネマン 人間は即座に反応する機能と、熟慮して判断する機能をもっている。前者をシステム1,後者をシステム2 現在のウェブ社会はシステム1を刺激して、注意をひこうとするアテンション・エコノミーになっている

    p524 英エコノミスト 契約者数を伸ばしている 同誌がニュースを報道する雑誌ではなく、世の中で起こっている事柄を分析し、その意味を解釈し、そして将来を予測する雑誌だからだ

    p531
    ヤフーに記事を出し続ける限り、アテンション・エコノミーから逃れられず、記者や編集者は短期的なPVを稼ぐ記事に引っ張られて、長期的な価値を失う

    そうした中で、いくつかの新聞は、自分たちにしかできない長期的な価値をもつコンテンツを提供することでプラットフォーマ頼みをやめて、成功する企業もでてくるだろう

    p537 変化に善し悪しはない

    p543 ヤフージャパン 売上は、読売朝日日経の合算を上回る巨大企業へと成長している

    アテンション・エコノミーから離れて、真の価値をもとに持続的な経営をするためには、一度プラットフォームの外に出なくてはならない。


    p18 生徒が10人いたら新聞をとっている家庭は3人くらいです。だから新聞に切り抜きはもうできません

    p180 長田公平は産業部で、電機や自動車を担当した経験から、メーカーは流通を握らないとだめだということが骨身にしみてわかっていた。家電メーカーは、かつて全国のパパママ家電ストアを系列化して、価格をある程度コントロールし流通を握っていた。それが量販店にとってかわられるようになると、メーカーと小売の立場が逆転して日本の白物家電は崩壊した。自動車メーカはあくまでも小売の系列化を崩さずに国内の市場を維持したのとは対照的だ

    p221 WSJ クロビッツ 紙の部数は有料デジタル版を始めようが、始めなかろうが、減っていく。このことだけは動かせない事実だ。とするならば、他社のデジタル版に食われるよりも、自社のデジタル版に食われる方がいいのではないか。未来に紙はない。デジタルは今後もっと利益を生むようになる

    p346 イノベーションのジレンマを破るといういみで両腕の経営という

    既存の市場のなかである程度の売上を維持しながら、新しい分野を探索し、深めシフトしていく

  • 【読売、日経、ヤフー、波乱の三国志】生き残りをかけて戦うメディアの内幕を徹底取材、話題を攫った一冊。文庫書き下ろし新章「新聞VS.プラットフォーマー」大幅加筆!

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。アルツハイマー病の研究の歴史について、2000年代から興味を持つ。日・米・欧の主要人物に取材し、研究者、医者、製薬会社そして患者とその家族のドラマを積み上げる形で、本書をものした。1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA)、『2050年のメディア』(文藝春秋)がある。慶應SFCと上智新聞学科で「2050年のメディア」の講座を持つ。

「2021年 『アルツハイマー征服』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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