- 文藝春秋 (2023年10月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784167921101
作品紹介・あらすじ
伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、中毒性の高い短編小説集。
①「ばにらさま」 僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。
②「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。
③「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。
④「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。
⑤「20×20」 主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。
⑥「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。
以上6編を収録。
日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み
読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け
「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成
二度読み必至! 引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学!
2021年10月に惜しくも死去した著者最後の小説集。
みんなの感想まとめ
日常の中に潜む光と闇を描いた短編小説集で、女性の内面や人間関係の複雑さが鮮やかに表現されています。各編は短く読みやすいながらも、深いテーマと巧妙な構成が際立ち、物語が進むにつれて視点が変わり、読者を引...
感想・レビュー・書評
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ただ幸せが欲しいだけ。
目先の安寧に縋ってしまっては失敗して後悔しもする。でも、それが私。
そんな要領の良くない女性たちを描いたヒューマンドラマ短編集。
◇
大手の金属会社が設立運営する冶金研究所で雑用係 ( 庶務 ? ) を務める僕に、生まれて初めて恋人ができた。
彼女の名は竹山瑞希。肥満体で冴えない僕にはもったいないほどの美少女だ。
山形生まれの彼女はバニラアイスみたいに色白で、冬でも薄着のせいなのか華奢な身体は冷えきっていて寒そうだ。
瑞希ちゃんは優しい。僕のことを広志くんと呼んでくれるし、目当てのレストランの予約が取れなくても怒ったりしない。ニコニコして居酒屋につきあってくれる。そんな彼女は、僕にとっては女神さまみたいな「ばにらさま」だ。
けれど、ある日たまたま彼女のブログを見つけてしまい……。
( 第1話「ばにらさま」) ※全6話。
* * * * *
どの話も最後に、主人公 ( 第1話のみヒロイン役 ) の女性がふっ切れたように前を向いて生きる気になるのはいいのだけれど、それまでの屈折ぶりが痛いというか、読むのがつらい。
例えば第1話の「ばにらさま」こと瑞希は主人公の広志が勤める冶金研究所の事務を担当する派遣社員なのですが、仕事よりも彼氏選びに余念がありません。
瑞希はかなり結婚というものを意識しているようで、自分の魅力を有効活用しようとしているフシが見られます。広志には自分から告白して彼氏にする一方、合コンなどにも積極的に参加していい男をつかまえるチャンスを狙っているのです。
つまり瑞希は広志を “滑り止め” として押さえてあるだけで、愛情はかなり希薄な感じです。
恋愛よりも、豊かで安定した生活を手に入れたいだけの瑞希。だから打算で生きる瑞希の心はいつも満たされず、それは身体の冷えにつながっていました。
そんな瑞希の不満のはけ口はブログに思いをぶちまけることでしたが、ある日それを安全パイであったはずの広志に気づかれてしまい……。
穏やかで人のよい広志に対する瑞希の姑息で白々しい振る舞いに、読んでいてイライラしてしまうのですが、なぜか瑞希を憎み切ることができません。ここに山本文緒さんの狙いがあるのだろうと思いました。
いちばん気に入ったのは、最終話「子どもおばさん」です。
主人公の夕子は、独身でひとり暮らしの中年女性です。仕事でもプライベートでも打ち込めるものがないまま生きてきて、気づけば47歳になっていました。
夕子には、美和という中学時代からの友人がいます。ただ、さる理由で7年ほど前から疎遠になっていたのですが、ある日、美和が急死したと彼女の兄から連絡を受けます。とりあえず葬儀に参列した夕子を待っていたものは……。
美和の死によって自分の生き方を見つめ直した夕子が、それまでの生活を一変させていくさまが清々しくて、読後感も上々でした。
その他では東日本大震災による原発事故を描き込んだ第4話「バヨリン心中」が印象に残りました。
久しぶりに読む山本文緒さんの作品。短編の中に独特の情緒を漂わせる山本さんの作風を堪能できました。 ( これが遺作だそうですね。)
山本文緒さんの御冥福を、心からお祈り申し上げます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は、山本文緒さんが2021年に逝去される1ヶ月前に単行本として刊行された短編集です。「最後の作品集」とするも、6編の初出が2008〜2015年となっており、『自転しながら公転する』(2020)より前なんですね。
各編とも、短くスラスラ読めますが、濃密な内容です。入念な仕掛けがあって、途中から見ている世界が一変したような印象をもちます。ある意味、人の心(とりわけ女性)、内面の怖さを突き付けられるような、思わず2度読みしたくなる感じでした。
多分、主人公目線で描かれる途中に、別人物の視点が挟まれ、明から暗(光から闇)へと、意図的に雰囲気・見え方を逆転させているのでしょうか。
当然、女性だけでなく人は多面的なので、日常の何気ない生活の中に見せる私たちの(光と闇を併せ持つ)姿を、リアルに描こうとしたのかな?
悲しく辛くなりそうで、がんの闘病記である『無人島のふたり』はまだ読めていません。それでなくとも、過酷なうつ病からの再起を果たした闘病記もあったんじゃなかったでしたっけ?
改めて、山本さんが58歳の若さで亡くなり、本作が小説としては遺作となってしまった事実は、とてつもなく重く切ないです。-
こんにちは·͜· ♡
私も読みました!
昔若い頃に読んだ『恋愛中毒』にはハマらずそのまま時が過ぎ未読でしたが、
短編集素晴らしかったですね。...こんにちは·͜· ♡
私も読みました!
昔若い頃に読んだ『恋愛中毒』にはハマらずそのまま時が過ぎ未読でしたが、
短編集素晴らしかったですね。
女性たちの心情にドキッとしたり、ご本人と重ねてしまったり。
『自転しながら┈』はドラマで観てとてもよかったし、これからゆっくり遡って読んでいきたいと思います。
『無人島のふたり』もいつか。
2024/02/02 -
まろさん、こんにちは♪
『無人島のふたり』は、いつか機が熟したら
と思ってます。ホントに惜しい方ですよね‥
闘病もので少し笑えたのは、加納...まろさん、こんにちは♪
『無人島のふたり』は、いつか機が熟したら
と思ってます。ホントに惜しい方ですよね‥
闘病もので少し笑えたのは、加納朋子さんの
『無菌病棟より愛をこめて』くらいでしょうか‥
やっぱり辛くなるので‥2024/02/02 -
本とコさんありがとうございます。
加納朋子さんは『カーテンコール』で感動した作家さんです!!言葉を大切に綴られている方ですね。
『ライオンの...本とコさんありがとうございます。
加納朋子さんは『カーテンコール』で感動した作家さんです!!言葉を大切に綴られている方ですね。
『ライオンのおやつ』もクスッとできるとこもあるけど、闘病のお話は辛いですよね。
山本文緒さんも元気な時に覚悟して読みます。2024/02/02
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えぇええ、モブのくせにバニラさま降っちゃうんですかぁああ。縁故採用でホワイトカラーの職につけた君がモテる理由なんて、いい会社に勤めて都心に土地持ってる以外は1ミリもないと思うけど、ばにらさまのSNS日記っ内緒でチェックしてるとかキモイし、検索可能なネットに晒す本心なんて誰か構ってほしい演技入ってるの常識だし。ばにらさまは派遣でいつ切られるか不安で年も誤魔化してるしそれだけ必死なんだから、彼氏なら優しくフォローしたらいいのに、自分のこと本当は好きじゃないとか、そんなこと後から変化することだし細かいとこ気にせず、ばにらさまのこと好きなら自分から積極的にアプローチすればいいのに、自意識過剰で包容力なさすぎのダメダメ男の話でした。
てか、彼女の部屋ですき焼きご馳走になって、シャワーまで浴びて何もせずに帰るとかとんだゲス野郎でした。
他5編の短編集、冴えない女性が愚痴ってますがなんだか他人事に思えず楽しく読ませて貰いました。
情熱的な話の「パリオン心中」はよく知ってる浜名湖の舘山寺とか浜松が出てきて楽しめましたが時代考証ズレてるんではって気づき始めたら、あれよあれよって年寄りの話は迷走して面白かったし、「20×20」はご本人のエッセイなのかな?作家生活憧れるなぁ「子供おばさん」も楽しい話でした。この作品の中にも鰻を食べに行く件があってやっぱ食べたーい。
初読みの作家さんでしたが2年前に58歳の若さで他界されて本作品が遺作とのこと、こころよりご冥福をお祈りいたします。 -
新刊コーナーに綺麗な表紙を見つけて購入。
またもや本屋さんに足を踏み入れちゃったもんだから、積読本が本棚の上に無造作に積み上がっておりますー。決して綺麗に積まれてはおりません。
短編6話
ばにらさま、1番面白い。
こんな女、たくさんいそー。女こえーって感情。
最後の結末も切ない。。
2話目の わたしは大丈夫 も、面白い。
「私」がいつの場面のどの私?なのか、最初よくわからずに、えー!?そゆことー!?ってなる。
3話目以降も、人間の闇というか、
主に女性の嫌な部分というか、
イヤミスじゃないのに、そんな気持ちになるような短編集でしたね。
気持ちを上書きするために、次は爽快的なものを読む予定。読書の秋。やっと秋。 -
山本文緒さんの遺作にあたる6つの短編集
どれも最後にゾワッとする仕掛けがあったりして面白かったです
単行本で読了済でしたが再度文庫本で…
御冥福をお祈りします -
初読みの作家さん
小説としては遺作となる6つの短編集
どの話ももの凄いリアリティを感じた
三宅香帆さんの解説を読んで、成程〜と納得
あと、凄く文学的だとも感じた
【菓子苑】
いや〜、巧いなぁと感嘆した
【バリヨン心中】
3.11の話があり、偶然にも
読み始めたのが同じ日
数ある積読からそれを選んで読んだのに
なにか運命めいたものを感じた
【子供おばさん】
病気が発覚する前に執筆されたもの
だとおもうけど、こうして読むと
感じるものがあるなぁ…
他の作品も読みたくなった! -
表題作「ばにらさま」ほか短編6編
短編なのに読み応えがあった
「子どもおばさん」
47歳で亡くなった中学時代の友人が私に遺したもの⋯の話がよかった
作家自身もそう感じてたのかな、と思って自分の心にもズシッっときた
ーー答えのでないことを抱えて歩き回り、幼稚さや身勝手さは子どものままで、根本的に自分の中身は何も変わってなくて、だけど日常はいつも通り休まずとめどなく続く、、。
何も成し遂げた実感もなく、中途半端なままーー
大人になり切れなくて、可愛いなんてものはないと自嘲し、繰り返す日常を倦まずに送り続ける
多分私だってそんな風に生きていくんだろうな、と思った
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人の闇の書き方が綺麗だなという印象。
実際に会ったらきっとイヤだなと
感じてしまうかもしれないけど
そういう闇なところを見事に言葉にしてくれる。 -
短編6作、女性の日常生活を描いているのだが、どこか違和感を感じてしまう。本音はどこにあるのだろう。打算はないのだろうか?読後は背中を冷や汗が流れる。
表題作の、ばにらさまは広志の視点から描かれている。恋人・瑞希は最初からどんな女か想像できた。これって私が擦れているからだろうか?最後の広志の言葉が全てを物語っている。
さて、この6つの作品は、並び順に巧妙さを感じる。倹約家の主婦の自業自得を描いた「わたしは大丈夫」、感情の起伏が激しい友人の我儘に振り回される女性の因果応報を描いた「菓子苑」、ポーランド人の夫と東日本大震災により切り裂かれた祖母の死の淵を描いた「バヨリン心中」、リゾートマンションを購入し籠る女性を描いた「20*20」。
そして最後に「子供おばさん」は、47歳の友人の遺書にゴールデンレトリバーを譲るとあり、その犬と暮らすことで、その女性の晩年を知ることになる。この作品が最後で良かったと思える。それ故にこの並びを構成された方の秀逸さと巧妙さを感じた次第である。
どの作品も珍しくも、無いとは言えない出来事であり、それ以上に当事者の内面は100人いれば100通りあると思うのである。その内面の暗というか陰というかをさり気なく表現しているのはお見事である。
山本文緒さんの作品は永遠に2020年から更新されることはない。女性の内面の繊細な感情や怖さを上手く表現する山本文緒さん、人生に出会いと別れは必然であるが、それをも上手く表現された作品群であった。それだけに残念で惜しい。
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『恋愛中毒』がツボだったので、続けての山本文緒さん。
表題作の『ばにらさま』が一番好き。酸いも甘いも知ったアラサーが楽しめる短編6篇。 -
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山本文緒の初期・中期の作品を、まだ私は読んでいない。
あの頃は、なんか江國香織も山本文緒も〈「ザ・恋愛小説」を書く作家です!〉みたいなイメージの売られ方だったから。
(そういえば村上春樹さえも、『ノルウェイの森』とかそんな売られ方、されちゃってましたね)
だから晩年の秀作『自転しながら好転する』を読んで、初めて〈山本文緒体験〉をして、心の機微を描き出す筆致と、伏線を上手に張るプロットの巧みさに感服した。そこには地方のショッピングモールエリアで生きる人々の、妙にせせこましい日常体験が具現化されていた。日常を日常的に描ける作家は、地味にすごい。衝撃だった。
『ばにらさま』は2008年から2015年にかけて
書かれた小話を寄せ集めた短編集。時系列的には、このあと長編の『自転しながら〜』を2020年に完成させ、2022年永眠。
晩年の山本文緒の筆致はすごい。だから、彼女の紡ぐ新しい物語がもう生まれないことが、すごく悲しい。山本文緒が、いまの日本社会をどのように見つめていたのか、それがもう永遠に語られないのが悔しい。
表題にもなった「ばにらさま」。
一見するとお人形のようなアラサー女性が、じつは内面でなにを考えているのか分かると怖いよね、って物語を仮構しているのだけれど、ほんとうはそこには、現代日本のジェンダー格差の問題がずうっと潜在したままなんだよ、ってことに気付かされる。
就職や結婚でサバイバルな生き方を選択せざるを得ない女性の切実さに戦慄するのか、それとも、義父からグループ会社の定職を与えられて実家でのうのうと生活する語り手の「広志」の温室栽培暮らしに社会の病巣を見出せるのか、読者の批評力が試されていると思った。
ネタバレになるから書かないけれど「わたしは大丈夫」や「菓子円」も、テーマは〈反転〉だ。
それまで正しいと思っていたものが、じつは否定されるべきものだったりする。価値観や正当性なんて、視点を変えれば容易にひっくり返る脆弱なものなのだ、私たちの認識なんて。
山本文緒の紡ぐ物語は、そうっと社会の不条理な問題に気づかせてくれる。ただし、おおっぴらにそんな社会批評めいたことを言語化しないので、気づかない人はずっと気づかないのだ。表面的なストーリーだけでも十分楽しめるエンタメ文芸になっているところがすごい。
ただ、一回気づいてしまうと「この作家はどんなふうに世の中を見つめていたんだろう?」とその深淵をふと覗いてみたくなる。
新しい物語は紡がれない。でも彼女がこの世に残していってくれた未読の作品群が私にはたくさんある。遡って読むのもまた一興だろう。次は『なぎさ』かな。
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…なんとなく…感じてしまう違和感。
これは何だろうと思っていると、驚く事実が発覚し、この物語には別のフィルターがあった事に気づきます。
そのフィルターから見てみる物語は最初にイメージしたものとは異なる意外な世界でした。
そして浮き彫りにされたのは女性たちの潔のよいエゴイズム。
エゴイズムというと、そのようにしか生きられないとても悲しく切ないというイメージ。
ですが…そんな感じではありません。
登場する全ての女性たちを総括するような言葉が子供おばさんの語りの中にありました。
「何も成し遂げた実感のないまま、何もかも中途半端のまま、大人になりきれず、幼稚さと身勝手さが抜けることのないまま。確実に死ぬ日まで。」
ほんの少し他人の思いに心を寄せられたら、違う生き方が見えてくると思うのですが、そんな事はどこ吹く風ねという風情でした。
これはこれで味わってよいのかも。
今日もばにらさまは、雑誌のモデルそのままをコピーした完璧なヘアメイクで、完璧なコーデで、完璧な立ち振舞での完全武装で合コンに行ってそうです。
そんなことしなくても、欲しかったものは側にあった事など気付かないままに。
やっぱりイタイと感じてしまうのですが、ばにらさまを応援したくなる私なのでした。
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山本文緒さんの魅力が詰まった6編の物語だ。
そこにあるのは冒険や成功や心揺さぶられるような恋愛物語ではなく、とても日常的な心模様。
幾つかの短編に登場人物の日記が記されているが、それがとても印象にのこります。
「毎日つまんないことで忙しくていやんなる」
この台詞が山本さんの本書に込めた気持ちを代表して、それを物語にするセンスが個人的には大好きだ。
「この人達はこの後どうなるんだろう?」と読書に余韻と想像力を与えてくれる。
そう、それは登場人物にも「この後の人生」があるから、、
この物語が主人公にとって「人生のほんの一部」だから、、
次に良い出会いがあるかもしれない、後悔しているかもしれない、忘れてしまうかもしれない、、
その余韻をもって物語を締めるのは山本文緒さんの最大の醍醐味だと思う。
表題作の「ばにらさま」の瑞希は決して悪気はない、一緒賢明に毎日を生きているだけの女性だ。
毎日つまんないことで悩み、選択をしようとしている女性だ。
「えっ、それでいいの? この後どうなるの?」と余韻を残して物語は終わる。
だからこそ「ばにらさま」は心に刺ささる物語へ読者の中で昇華していくと思う。
最高にお勧めの一冊。
何度読み返しても味わいが出てくると思います。 -
条件さえ緩めれば、好きになれる相手はいくらでも存在する。問題は親密さを保つ努力や、相手のことを慮る想像力だ。(引用)
今回の読書もまた、僕の中にある何かが作中の人物たちの生活に共鳴して優しく調律されていくような。バヨリン心中、子供おばさんが良い。 -
山本文緒さんの最後の作品集。短編6本が収められている。
単行本のタカノ綾さんの表紙画のイメージが鮮烈だったので、少し違和感を感じながら購入。文庫本の表紙画はたなかみさきさん、装丁はどちらも大久保明子さん。文字配列が美しい。
表題作『ばにらさま』は、どこにでもいそうな可愛いけど何考えてるか分かんない女の子を、彼女に振り回される男の子の視点および彼女のブログで描いた作品。僕はブログ部分はサラッと読み飛ばしていたのだけれど、解説の三宅夏帆さんは「毎日つまんないことで忙しくていやんなる」って部分に反応していた。さすがです。
その他、終盤で突然くるりと世界が変わってしまう作品が続く。素直に明るい未来を思い描けない作品が多い。『わたしは大丈夫』は全然大丈夫じゃない。『菓子苑』はいつまでも甘くはない。『20×20』は全く覚悟が出来ていない。そんな中、巻末の「子供おばさん」は諦念なのか悟りなのか、暗い独白で締められるのに、何故かカラリとした印象を残す不思議な作品で面白かった。
〜〜〜〜〜〜ラストの独白〜〜〜〜〜〜
「私は週に五日仕事にゆき、休日は犬の散歩と買い出しをし、夜は友人や家族と食事をしたり、風呂の中で推理小説を読んだりする。
何も成し遂げた実感のないまま、何もかも中途半端のまま、大人になりきれず、幼稚さと身勝手さが抜けることのないまま。確実に死ぬ日まで。」 -
大好きな山本文緒さん作品。文庫化待ってました。
ばにらさま、色々な方の書評をみて、読むのをとても楽しみにしていましたが、期待値が上がりすぎていたのか、
…あれ?もうおしまい?
と物足りなさを感じました。
その他の短編は、情報を入れずに読み、
楽しく読めました。
山本文緒さん最後の作品で、
もう新作は読めないのかと思うと、悲しかったです。 -
この物語は、嫌い、人生つまらない、怒り、癇癪、など汚いと思われる人の心が書いてある。その登場人物達の未来が幸せか不幸せかは、そこまで気にならなかったが、蜜の香りが漂っているなと興味と嫌悪が入り混じったモアモアした感情になった。でも後味は悪くない。
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遺作の小説になる…最期のエッセイ「無人島のふたり」で、以前書いた短編を手直しして1冊にまとめている、と。
それが本書だ。
6話はどれも読んでいるうちに、見えていた景色が反転する。小さな違和感の真相がわかった途端、腑に落ちると同時にザラつきも残す。
「つまんない日常の生活を、面白く描く他に類を見ない作家」(解説:三宅香帆氏より)
どれも秀逸だったが、
『ばにらさま』モテなかった青年に不釣り合いな白い恋人ができた。
『菓子苑』美しくワガママな胡桃に翻弄される舞子、が特に印象的♡ -
短編集です。
『ばにらさま』
『わたしは大丈夫』
『菓子苑』
『バヨリン心中』
『20×20』
『子供おばさん』
『ばにらさま』『わたしは大丈夫』が特に好きで、『菓子苑』は怖くって、『バヨリン心中』も恋愛で終われたら良かったのかもねって楽しめました。
生きていく上で色々な選択肢を間違えるけど、それでも人生は続いていく。
山本文緒さん、『自転しながら公転する』も面白かったし、長編も読んでみよう。 -
厚い蜜を纏った大学芋はカリカリと音を立ててかじると甘い香ばしさが味覚・嗅覚へ一度に幸福をもたらす。これとスプーンに力を込めて山盛りにすくい上げたアイスとをにいっぺんに口に放り込む。至福のひとときである。至福を底上げしてくれるのはバニラ風味のアイスだ。他にも色んな相手と仲が良い。メロンソーダ、万国の嗜好であるコーヒー、米国出身のコーラ、和の至極パートナー黒蜜きな粉。ただ、それは味わう側の第三者の印象。バニラ本人は決して嬉しくないのかもしれない。ベタベタした炭酸水風呂に熱すぎる焦香ばしい温泉、水たまりにハマった直後に砂場に転倒したり、踏んだり蹴ったりなのかもしれない。
多様な相手に合わせられるバニラ。合わせられる側にも良し悪しはあるし合わせる側にも都合がある。感情がある生き物には何層にも亘り傍目には気付けない気持ちがある。そんな見えない事実を感じさせて頂いた一冊でした。
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山本文緒の作品
