ナースの卯月に視えるもの (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2024年5月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167922191

作品紹介・あらすじ

「号泣しました。様々な痛みを抱えて生きる人々を、そっと包み込んで肯定してくれる優しい作品です。」――新川帆立(作家)      

★感涙必至のお仕事ミステリーが誕生!★

~元看護師の著者が送る、命の物語~

完治の望めない人々が集う長期療養型病棟に勤める看護師・卯月咲笑。ある日、意識不明の男性のベッド脇に見知らぬ女の子の姿が。それは卯月だけに視える患者の「思い残し」だった——。彼らの心残りを解きほぐし、より良い看護を目指したいと奔走する日々が始まった。ナースが起こす小さな奇跡に心温まるお仕事ミステリー。

★創作大賞2023(note主催)「別冊文藝春秋賞」を満場一致で受賞★

\note投稿時から絶賛の声多数!/
「この話、好きです。救いがあって。」
「ほわっと心があったまるようなミステリー」
「ドラマ化希望!」
「ずっと余韻に浸りたい素敵な作品」
「こんな世界があればいいな、と思いながら読みました」

\noteスタッフからも感動の声/

「どうしようもない現実の厳しさと、それでも希望を持つ大切さ――最終章でボロボロ泣きました」
「病に倒れたとき、戸惑いや不安と向き合うことの大切さを教えてくれる作品」
「感動せずにはいられない傑作」
「苦しい時に、何も言わず、ただ静かに寄り添ってくれる、親友のような作品」
「医療現場の息づかいが聞こえてくる医療ドキュメンタリーのようでもあり、斬新なミステリーでもあり、ラブストーリーでもある傑作」
「本が大好きな9歳の娘と共に堪能した」
「卯月の健気で優しく、しなやかな姿に、私の心残りにもそっと手を添えてもらったような気持ちになった」

みんなの感想まとめ

命の重みと人間関係の複雑さが描かれたこの作品は、長期療養型病棟で働く看護師・卯月の成長物語です。彼女は、患者の「思い残し」を視る能力を持ち、その思いを解きほぐすことでより良い看護を目指します。物語は、...

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『例えば今日死にますって言われたら、何か思い残すこと』があるでしょうか?

     (*˙ᵕ˙*)え?

    さてさてのレビューは唐突な質問から始まることが定番化しています。しかし、流石にこれは度がすぎるかもしれません。『今日死にます』なんて不謹慎にも程があるとも言えますし、そんな前提の先に『思い残すこと』の有無を問われても何か思い浮かべることは困難だと思います。

    とは言え人の人生は思った以上に儚いものです。日々報道されているニュースを見ていてもある日突然に命の営みを奪われることがある現実に衝撃を受けもします。そのことを深く考える際には、この世に未練を残す幽霊の話が繋がっていくことも理解できるような気もします。

    そうです。古の世から、人は人の未練を思った以上に意識します。化けて出るといったことがあり得るかもと感覚的に理解してしまうのもそのためだと思います。

    さてここに、人の『思い残し』に光を当てる物語があります。リアルな看護の現場を舞台に描かれるこの作品。そんな舞台にまさかの『思い残し』を視るこの作品。そしてそれは、人が『思い残す』ことの意味を噛み締める物語です。

    『夜の長期療養型病棟は、静かだ』と、『深夜二時』、『見回りをするためにナースステーションを出』て思うのは主人公の卯月咲笑(うづき さえ)。『急性期を脱してからの療養に特化した』『長期療養型病棟』に勤務して間もなく六年という卯月は『死亡退院率、つまり病棟で亡くなる患者が、一般的な病棟では八%程度なのに対し、ここは四十%と言われている』こともあって、『なるべく心地よい環境で過ごしていただきたい』と思いながら日々の看護に勤めています。『次に見回りをするのは男性の四人部屋で、意識のない患者ばかりだ』と思いつつ、『ドアから入って左手前』の『大岡悟さんのベッド』を見る卯月。『五十歳の男性で、もともとは植木職人だった』と、『黒々とした角刈りと凛々しい眉毛が、目を閉じていても意志の強そうな印象を与える』大岡の『ベッドの足側に立って呼吸の確認のために腹部を照ら』します。『そのとき、喉まで出かかった悲鳴をなんとか飲み込』み、『とっさに足を一歩引』いた卯月。『そこに見えたのは、ベッドの柵を握っている小さな白い手』でした。『大岡さんの顔を照らさないように気を付けながら、手の持ち主にそっと光を当て』ると、『ベッドサイドに、十歳くらいの女の子が立ってい』ます。『あどけないかわいらしい子で、黒いサラサラの髪を二つに結っている』女の子は『靴もスリッパも履いておらず、靴下だけ』で、『柵をぎゅっと握りながら、大岡さんのほうに顔を向けてい』ます。『気持ちを落ち着けるために一つ大きく息を吐いた』卯月は、『夜中の病棟に子供がいるはずがない』、『さっきの見回りではどこにもいなかった』、そしてよく見ると、うっすら透けている』と思います。『何度視てもやっぱり慣れない』という卯月は、『そこにいるのは、本物の女の子ではなく、大岡さんの「思い残し」なのだ』と思います。『私はあるときから、患者が「思い残していること」が視えるようになった』という卯月は、『これは一種の能力なのだろうか。そこにいるはずのない人、あるはずのないものを視てしまう。それは私にしか視えていないらしい』と感じています。『あたかもそこにいるかのように視えるのだけれど、触れたり交流したりはできない。私が一方的に視ているだけで』、『私を認識していないのだろう』という『思い残し』。そんな『「思い残し」は、どうやら患者が死を意識したときに現れるらしい』と考える卯月は、『ほかの部屋のすべての見回りを終えてから、もう一度大岡さんのベッドサイドへ行ってみる』と、『女の子はやっぱりそこにい』ました。『寂しそうな目をしている』女の子を見て、『この子はいったい、誰なのだろう。今どこで、何をしているのだろう』と思案する卯月。『ナーススステーションへ戻』った卯月は、『タブレットで大岡さんのカルテを確認』します。『独身で家族はいない』という『仕事一筋の職人』である大岡。『マンションの木の剪定中に』『脚立から落ち』たという大岡が『思い残している女の子とは、いったい誰なんだろうか』と考える卯月。『思い残し』を視ることができるという看護師の卯月が、『思い残し』の真相を探り、『思い残し』を解決していく姿が描かれていきます。

    “完治の望めない人々が集う長期療養型病棟に勤める看護師・卯月咲笑。ある日、意識不明の男性のベッド脇に見知らぬ女の子の姿が。それは卯月だけに視える患者の「思い残し」だった ー。彼らの心残りを解きほぐし、より良い看護を目指したいと奔走する日々が始まった。ナースが起こす小さな奇跡に心温まるお仕事ミステリー”と内容紹介にうたわれるこの作品。そんなこの作品は、2020年からnoteで小説を発表し始め、『創作大賞2023』で「別冊文藝春秋賞」し刊行に至ったという秋谷りんこさんのデビュー作になります。”二十代から三十代にかけて十三年ほど看護師として働いていました”とおっしゃる秋谷さん。この作品を語るにはこの側面に触れないわけにはいかないと思います。まずは『看護師』の”お仕事小説”としての側面から見ていきましょう。作品中には『看護師』でならではの記述が全編にわたって散りばめられています。

     『夜勤の朝は忙しい。病棟の起床時間、六時になったら病室のカーテンを開けて、部屋が冷えない程度に窓を少しだけ開ける。ほとんどの患者は自分で洗顔ができないから、蒸しタオルで顔を拭く。点滴の交換、血圧や体温などのバイタルサインの測定…バタバタとしているうちに、日勤の看護師たちが出勤し始める』。

    『看護師』さんと言えば夜勤はつきものだと思います。この作品ではそんな看護の現場がリアルに描かれていきますが、そのリアルさの根底には13年にわたって病棟勤務をされてきた秋谷さんの経験が活かされているのは間違いありません。夜勤から日勤者への交代をさりげなく描く場面にも本物の『看護師』ならではの視点が見え隠れします。夜勤自体にもこんな表現が登場します。

     『夜勤明けは、眠気よりも脳の活気のほうが勝っていることが多い。一番眠いのは朝の四時から五時頃で、それを過ぎてしまうと、逆に脳が興奮してくるのだ。おそらく、本来ならば眠っているべき時間に活動しているから、自律神経のバランスがおかしくなるのだろうと思う。新人の頃、先輩たちから「夜勤明けのショッピングには気を付けて」と言われたけれど、今ならその気持ちがよくわかる。変なテンションで何でも買ってしまいたくなる』。

    少し長い引用になりましたが、とても興味深い感覚が記されています。振り返ってみれば私も過去に何度か徹夜をした経験はあります。確かに夜が明けるか明けないかという時間帯がきつかったような記憶は残っています。その先に、『変なテンション』というものが待っているわけですね。『早く帰って休んだほうがいいのにどこかへ行きたくなる』という感覚になるという点も記されていますが、このあたりは夜勤が日常という生活を送られたからこそ書ける描写だと思います。

     『ナースステーションの中では、看護師は基本的に何も食べたり飲んだりできない。衛生的な問題が一番大きいけれど、患者やご家族が見たら不快に思うかもしれないという理由もある。私語もなるべく控えなければならないし、泣いたり爆笑したりすることもできない』。

    これは、病棟には必ず存在する『ナースステーション』のことを記したものです。命を預かる現場でもある病棟ですからこのあたりはやむを得ないところもあるのだと思います。だからこそ、その対になる場所のことも記されています。

     『ドア一つ隔てて、患者にもご家族にも顔を合わせずに済む休憩室というのは、看護師にとっては仕事中のオアシスみたいな場所だ…看護師だけが集まり、束の間「白衣の天使」という役割から解放される場所』。

    物語では、そんな『休憩室』で語られる『医者への文句くらい、吐き出したい』という場面も描かれています。小説の中で『看護師』を描いた作品は他にもあります。そんな中にあってこの作品で描かれる『看護師』の姿は極めて人間味を感じさせるものです。プロフェッショナルな仕事の場面も描かれていますが、一人の人間を感じさせる『看護師』の世界の舞台裏を見ることのできるリアルな描写の数々、これこそがこの作品の何よりもの魅力だと思いました。

    そして、このリアルな看護の現場の描写と対になるものがまさかのこんな表現の登場です。

     『私はあるときから、患者が「思い残していること」が視えるようになった。これは一種の能力なのだろうか。そこにいるはずのない人、あるはずのないものを視てしまう』。

    えっ!という衝撃がまず読者を襲います。

     『そこにいるのは、本物の女の子ではなく、大岡さんの「思い残し」なのだ』。

    そんな風に表現されていくまさかのファンタジーがこの作品のもう一つの側面です。これにはビックリ!しました。『看護師』のリアルな”お仕事小説”と思って読み始めた物語が、まさかのファンタジー世界の登場で一気に緊張の糸が切れてしまう感覚です。作者の秋谷さんはこの作品にファンタジーを持ち込んだことをこのように説明されています。

     “このような不思議な設定にしたのは、私が看護学生時代に初めて向き合った患者さんの死を、いまだに忘れられないからかもしれません”。

    患者さんの死と看護学生だった時に初めて向き合われたという秋谷さん。”昨日まで一緒に過ごしていた患者さんが、今日にはもういない”という思いの先に”その場でボロボロ泣きました”と語られる秋谷さん。

     “私が知らないうちにあっという間に亡くなってしまったあの人は、最期に何を思っていたのか、汲み取りきれなかった思いを今なお知りたい。そういう気持ちが小説に滲み出ている気がしています”。

    そんな風にこの小説のことを語られる秋谷さんの気持ちを思うと、『看護師』の”お仕事小説”に、ファンタジー世界が登場したこともある意味で自然と感じてきます。そして、この『思い残し』の存在こそが物語を前に、主人公である卯月の『看護師』としての生き方を前に進めてもいくのなのです。

    この作品は六つの短編が連作短編を構成しています。それぞれの短編には卯月が勤務している病棟に入院する患者さんが登場し、そんな患者さんの近くに卯月が『思い残し』を視ることで展開していきます。どのような感じか三つの短編で見ておきましょう。

     ・〈2 誰でもきっと一人じゃない〉: 患者-関茂雄、六十歳の男性、間質性肺炎で入院。もって二ヶ月程度と言われる関の看護をする卯月は、『三十代くらいの女性』で、『手には何かを握りしめている。よく見ると、それはお金だった』という『思い残し』の姿を目にします。

     ・〈3 苦しみと目を合わせて〉: 患者-熊野哲也、四十二歳の男性、末期の肝臓癌。『入院して半年、病状から考えればずいぶん持ちこたえている』という熊野の看護をする卯月は、『色が白く細い女性で、口元にアザがある』、『かなり若い女性』という『思い残し』の姿を目にします。

     ・〈4 一歩前に踏み出すために〉: 患者-小林えり、三十八歳の女性、脳炎の後遺症で『麻痺と精神症状が強く残っている』。『家族の希望もあって身体拘束がされている』という小林の看護をする卯月は、『幼稚園くらいの年齢で』、『にこにこと笑って、楽しそうにしている』、『幼い男の子』という『思い残し』の姿を目にします。

    注目したいのは患者さんというより、『思い残し』の姿です。上記でご紹介した三つの短編に登場する『思い残し』は、『お金』を握りしめた三十代の女性、『口元にアザがある』若い女性、そして『幼稚園くらいの』幼い男の子というように、その姿はマチマチです。これだけでは当該の患者さんと『思い残し』の関係性は全くわかりませんし、実際私も読み進めないと全くピンと来ない存在ばかりでした。物語では、『思い残し』の存在が気になる卯月が、まるで探偵のごとくその真実を探っていく姿が描かれていきます。しかし、それは容易なことではありません。

     『まったく知らない人ならまだしも、仲の良い同僚に噓をつくのは、罪悪感がある。でも「思い残し」のことを言ったら、おかしな人と思われてしまうだろう』。

    そうです。リアルな看護の現場だからこそ、そこに『思い残し』のことを語る余地などないわけです。視えてしまうが故の卯月の苦しみもそこには描かれていきます。

     『私たちがやらなきゃいけないのは、入院している患者の看護であって、「思い残し」の解消ではない。でも、視えてしまったんだもの。解消しないと、気が済まない。諦められる気はしなかった』。

    物語は、そんな卯月が視えてしまうが故の葛藤と戦いつつ、それでも患者のことを思い、『思い残し』の解決に奔走していく姿が描かれていきます。リアルな看護の”お仕事小説”に『思い残し』というファンタジーが交錯する物語は、やがて当初感じた違和感を卯月の思いの力で消し去ってもくれます。そして、そんな物語が至る結末、そこには自らの原点に立ち返るかのような出来事を前に、あくまでも『良い看護を提供しよう』と決意を新たにする卯月の『看護師』としての生き方を見る物語が描かれていました。

     『「思い残し」みたいに、患者の内面を視てしまうというのは、果たしていいことなのか、わからなくなる』。

    『患者が「思い残していること」が視える』という『一種の能力』を持つに至った『看護師』の卯月。この作品には、そんな卯月が六つの短編でそれぞれの患者さんの近くに視える『思い残し』と対峙していく姿が描かれていました。看護の現場を十三年にわたって見続けてきた秋谷さんのリアルな”お仕事小説”に魅せられるこの作品。まさかのファンタジーがそんなリアル感と対になる面白さを感じるこの作品。

    “看護師たちが一人の人間として、何を思い、喜び、憂いているのか、表現したい。その一心で本作を書き始めました”とおっしゃる秋谷さんの思いを強く感じるファンタジーな物語でした。

  • 患者の「思い残し」が視える看護師の卯月。

    完治が望めない長期療養型病棟なので、話の内容は自然と重い物になる。
    自分が死ぬ時も周りの人とお別れの時間を持てる病気が理想だと思う

    最後の透子さんの送迎会での挨拶にジンときた

    • きたごやたろうさん
      raindropsさんへ

      こちらの作品、母に取られちゃいました笑!
      オイラは母の読了後に読みますね♩
      raindropsさんへ

      こちらの作品、母に取られちゃいました笑!
      オイラは母の読了後に読みますね♩
      2025/09/24
    • raindropsさん
      きたごやたろうさん、親子で本好きなんですね
      きたごやたろうさん、親子で本好きなんですね
      2025/09/25
    • きたごやたろうさん
      raindropsさんへ

      遺伝子ですね笑!
      raindropsさんへ

      遺伝子ですね笑!
      2025/09/25
  • 青葉総合病院の長期療養型病棟に勤める看護師・卯月咲笑は、患者のベッドの近くで人の姿を視る。
    幽霊でないのは、その誰かは患者の気にかけている人で生きているようである。

    患者の心の声「思い残し」が視えるのは、咲笑のとても大切な人(千波)が亡くなって仕事を休職して復帰してからすぐのことだった。

    思い残しは、誰のどんなものても視えるわけではなく、入院直前に患者の心に引っかかったことや気にかかったことが視えるのである。

    思い残しが気になりミスがあったときには、命を預かる者としてはあってはいけないことだと気を引き締めて、一層よりよい看護を目指そうと奔走する。

    看護師の成長物語ではあるが、「思い残し」が視えることによって、より深く患者を知ろうとする心意気は凄いなと思うが、勤務が終わったあとも動くのも如何がなものかと少し心配になった。
    だが、思い残しが誰かわかり難題が解決すると嬉しい気持ちになる。








  • 10月下旬の朝日新聞の書評欄で見て「読みたい」に入れていた。

    総合病院の長期療養型病棟に勤めるナースの卯月には患者の心残り、そのことにまつわる人物の姿が視える。彼女がその「思い残し」を解きほぐし、より良い看護を目指して奔走する日々が描かれる。
    「思い残し」に対しては少々おせっかいという感じもし、途中で哀しい理由が明かされてああそうかとは思ったが、それで血糖値を測り忘れてはいけないな。
    それぞれの「思い残し」は結構あっさりと解決するのでお話のアクセントとしては適当という気もするし、後半には、様々な「思い残し」と向き合った末に本来の健全な看護の状態を見つけ出す成長の姿を見ることができるので、まあ、いいとするか。

    「思い残し」の解決以上に、看護師として働く人たちの生活や心情がしっかり書き込まれているところがこの本の読みどころ。
    作者さんは看護師として10年以上勤務してきた方らしく、看護の様子に加え病室の臭いだの夜勤明けの変なテンションだの細かな描写に現場の人の感覚を感じる。
    長く長期療養型病棟で勤務し将来に悩む卯月、研修期間でその仕事に悩む水木、ミスに落ち込みながらも今やらなければならない仕事に取り掛かる山吹、送別会で自らの心情を吐露する透子さん、自分と仕事と患者さんのことを考え、悩み、日常を進めていくそれぞれの姿がリアルに感じられ、とても良かった。
    最終話の結婚式は出来過ぎだとは思うが、こういうのに弱いのだな。とても良い気持ちで読み終えることができた。

    実際に入院してお世話になったこともあるので、それは大変なお仕事と思ってはいたが、自分のミス一つで誰かが死ぬかもしれないという責任の重さの割に恵まれない環境で働いておられる実態も知れ、改めて頭が下がる思いがする。

  • 元看護師が書いた医療系のミステリー(?)。
    死に近づいた患者が「思い残し」があると、病床の側に人が出てくるようになり、あるきっかけで見えるようになった看護師の卯月がその思い残しを解消しようと助けて行く。それが事件、事故を見つけることになる。最初のうちは、そこまで立ち入って行くのか、探偵まがいかと思ってしまう。やはり熱中し過ぎて医療ミス寸前まで行き、徐々にフェードアウトして行く。
    同性との恋愛、結婚が何度も出てくる。帯に号泣とあったが、あまり泣けない。過酷な医療現場の状況に大変さを強く感じる。
    長期療養病床で終末期医療なので死の様相が濃い。自分も辿る道と思うと、できる限り家族や医療関係者の手を煩わせたく無いと思ってしまう。

  • 看護師さんは尊い。
    人は不器用。
    思い残しのない人生が送りたい。

  •  看護師が主人公の連作短編集で、医療系お仕事ミステリ。
     総合病院の長期療養病棟で働く卯月咲笑は、入職7年目の看護師。同性の恋人を事故で失ってから、死期の迫った患者の「思い残し」が視えるようになる。「思い残し」とは、人物の姿をしているのだが、会話したり声を聴いたりすることはできない。

     以前読んだ『BORDER』は死者と会話ができる刑事の話だったが、それとちょっとにている。こちらは「会話」ができないので、患者の過去や生活環境から、その「思い残し」の正体を探っていく。

     作者は、13年ほど看護師として勤務したという。その経験をもとにして物語を書いているのだろう。実は私の連れ合いも看護師で、そのキャリアは30年以上ある(現役です)。私自身も若いころ小さな病院で、事務職として働いた経験があるので、看護師の仕事や生活については馴染みがある。それでとても面白く読めたのだが、表紙カバーの絵だけはいただけない。ナースキャップをつけているのだ。衛生上の観点から、現在では廃止されているところがほとんどだ。連れ合いの勤める病院も、私が通院しているクリニックもナースキャップはつけていない。そして、ナースウェアもスクラブタイプが主流になってきている。ワンピースタイプは、ほとんど見ません。

     シリーズの第二巻も出版されている。

  • ☆4

    以前タイムラインでフォロワーさんの感想をお見掛けして気になっていた作品です。

    長期療養型病棟に勤める看護師が主人公の物語。
    お仕事小説ということで、普段はなかなか知る機会の少ない医療現場の裏側を知ることが出来て、とても興味深く読ませて頂きました。
    専門用語もたくさん出てきたのですが、分かりやすく丁寧に説明してくださっているので勉強になりました!

    どのお話も良かったのですが、6章のお話がとても感動的で思わず泣いてしまいました…(っ ̫ ; ˘)
    続編も出ているとのことなので、今から読むのが楽しみです❁⃘*.゚


  • 帯の「号泣しました。」は、私は全くなし。
    最後まで静かに読み終えた。
    卯月が白衣を着たときだけに見える「思い残し」。
    この手の小説で、亡くなった後に何かが見えるというのはよくあるけど、患者さんが入院中に…というのは初めてのパターン。
    やっぱり、生きているうちに「思い残し」はなくなった方がいいなと思う。
    作者の秋谷さんは元看護師さんということで、病気のことや処置の方法の描写は、なかなかリアル。
    卯月が中堅看護師になるタイミングで終わっているので、続編が出たらいいな。

  • 13年の看護師経験のある作者のリアルな医療「お仕事小説」。
    実は、本格ミステリーが好きだというインタビューの言葉通りに、死亡退院率四〇%と言われる長期療養型病棟に勤める5年目の看護師である主人公が、終末期の患者の「思い残し」の問題解決に奔走する6つのエピソードから成る。
    でも、この作品はそんなファンタジーなエンタメ要素よりも病棟での男女の体臭の違いであったり、「正解のない看護」、夜勤明けのテンション、都市伝説的な“看護師あるある”など看護師視点の「お仕事小説」としての面白さだと思う。
    作者の看護師としての「思い残し」?看護観を余すことなく詰め込んだミステリー要素の愉しみもある読み応えのある作品だった。

  • note投稿から生まれた作品ということで購読。作者は元看護師さん。その道のプロフェッショナルらしい視点が活かされた良い作品だと思います。

  • 長期療養病棟に勤める卯月咲笑は
    あることをきっかけに
    患者の思い残しが見えるようになった。

    作者の秋谷りんこ自身も看護師で
    自らの体験から
    実際の生々しい看護を描写していて
    葛藤や喜び、やりがいなど
    共感できることが多かった。

    人がなくなるとき、
    この人の人生を思い、家族の思いを想像し
    寄り添う。
    それを思い残しとして
    姿が見える特殊な力のように
    描かれていたことが、
    とても、夢があるというか、
    一つのお仕事ミステリー小説になっていたなあと

    あまりに自分の病棟と似ていたので手にとった一冊だったけれど、日々の看護や葛藤を
    肯定してくれた気持ちになった。

    病院ではどんな風に看護が
    なされてるのか、それはなんのためなのかが、
    医療従事者でなくても
    分かるように書かれていたので
    大切な人が入院した時に
    家族が抱く不安に対しての救いにもなると思った。

  • 看護師卯月咲笑は、死期が迫った患者の『思い残し』が見える。
    『思い残し』を解決して、患者に寄り添いたいという優しさ溢れる話だけではなく、看護師の仕事の厳しさとやりがいも味わえる。
    劇的な展開もなく、感情が揺さぶられることもないが、いい話だなあとしみじみ味わった。
    続編が2冊あるようで、いずれ読んでみたいと思う。

  • 主人公は看護師5年目の卯月咲笑。医療モノだが、OP室とか救命救急とかではなく、長期療養型病棟が舞台。そこで働く看護師・卯月の日常が描かれている。働きながら卯月は視てしまう。幽霊ではないけど、死を目前にした患者が思い残している人を、霊のように。そして思い残しを解決すると、その霊のようなものは視えなくなる。ちょっとおせっかいと思うけど、不快ではなかった。

  • ナースの卯月咲笑にはときどき視えてしまうものがあるようだ。どうやらそれは患者の「思い残し」のようで、死を意識したいときに現れる。
    思い残しが成仏?消える?患者が思い残すことがなくなるように卯月は動いてしまう。時には危ない目にあうことも。

    さて、卯月が視えるようになったきっかけとは?

  • 長期療養病棟で働くナースの卯月。彼女には、患者さんが心に秘めた"思い残し"が見えた。
    患者さんの思い残しを解決しながら、卯月も自分のなかにある"思い残し"と向き合い成長していく。
    生と死にまつわる話なので、時折、こみ上げてくるシーンも多かった。とくに身内が今まさに長期療養病棟にいるので、重なってしまう部分も多かったせいもあるだろう。
    誰しも死からは逃れられない。自分はどんな風に向き合えるだろう。とても良い話だった。

  • 著者の秋谷りんこさんはnoteで知りましたが、さすがの創作大賞受賞作品だなと思いました。とても面白かったです!
    長期療養型病棟の看護師さんのお話でしたが、「思い残し」という要素が加わっていることで、ミステリー作品としても読むことができて楽しかったです。
    本の題材としては急性期の病院が舞台のものが多いと思いますが、本作は慢性期の病院で、慢性期ならではの難しさを知ることができたと思います。急性期と違って患者さん一人ひとりの目標を立てるのが難しいですよね。でも卯月は、超短期目標を掲げて、患者さんの望みやQOLの改善に向けて全力で寄り添って勤めていて、最終章の「病めるときも健やかなるときも」は感極まって泣いてしまいました。
    一つひとつの章のテンポも良いですし、医療の専門用語もすぐに解説が入るので躓かずに読めます。映像化しても素晴らしい作品ができるのではないかと思います。
    これは私だけだと思いますが、この作品を読んでいると何故かお腹が空いてきます、食べ物の描写が多いから?(笑)

  • 実際に看護師経験がある方が書かれた小説のせいか、とてもリアルで、専門的な知識?もあって、ある意味ためになったというか、わかりやすくて、入り込めました。

    人生で入院したことは、出産時の2回と、盲腸で入院しただけだけど、自分の入院の時も、母を送った時も、看護師さん達のチームワークというかテキパキさと優しさにとてもお世話になったことを思い出しました。
    私の中では、医者は治す人かもしれないけど、看護師さんなしでは本当に闘病生活はできないな…と。

    だから、この小説、本当に良かったです。

    つらい想いをしても、患者さん、思い残しの人に寄り添える卯月さんをずっと応援したくなりました。

  • 感動しました。
    看護師の仕事についてわかりやすく書かれていて、読みやすく、興味深かったです。

    主人公の思い残しが視える能力については、途中、内容が浅いかな?と感じるところもありましたが、最後の病めるときも健やかなるときもで涙が出そうになりました。

    続きを読むのが楽しみです。

  • ある事件から患者の『思い残し』が見えるようになった卯月 咲笑。
    ある日、意識不明の男性のベッドに、見知らぬ女の子の姿が、、、それは、、、。

    日々の仕事に悩み、迷いながらも、より良い看護を目指し、一歩一歩進んで行きます。

    この作品に、自身も看護師として働いていた秋谷さんの温かい眼差しを感じます。

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秋谷りんこの作品

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