彼岸花が咲く島 (文春文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 文藝春秋 (2024年7月9日発売)
3.58
  • (5)
  • (25)
  • (13)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 439
感想 : 25
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784167922467

作品紹介・あらすじ

【第165回 芥川賞受賞作!】


彼岸花を採りに砂浜にやってきた島の少女・游娜(ヨナ)は、
白いワンピース姿で倒れていた少女を見つける。
記憶を失っていた少女は、海の向こうから来たので「宇実(ウミ)」と名付けられた。
この島では、〈ニホン語〉と〈女語(じょご)〉、二つの言語が話され、
白い服装のノロたちが指導者、歴史の担い手、司祭だった。
宇実は游娜 、その幼馴染の拓慈(タツ)という少年に〈ひのもとことば〉を教え、
〈女語〉を教わって仲良くなるが、やがて進路を選ぶ時期がくる。
「成人の儀」にのぞむ3人それぞれの決意とはーー

国籍・言葉・性別などの既存の境界線を問い直す世界を描いた問題作。

文庫解説:倉本さおり
文庫装画:高妍(Gao Yan)

みんなの感想まとめ

言語や性別、国籍といった既存の境界線を問い直す物語が展開されます。記憶を失った少女ウミが、島で出会った友人たちと共に成長していく様子が描かれ、彼女の心情が丁寧に表現されています。特に、ウミが直面する言...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 考えさせられる。なんていう安易な言葉で片付けたくないし欲しくない。

    嘗ての記憶を無くし、島に流れ着いた語り手は、<ニホン語>を話す女の子ヨナに助けられ、ウミという名を与えられる。ウミが話すことができるのは<ひのもとことば>のみであるため、うまく会話が成り立たないかと思われたが、その言語は島で使われる<女語>と酷似していた。そして島では、<女語>を巧みに操る女性に、島の歴史を語り継ぐための、ノロという役職が与えられることを知る。ウミは、ヨナや男ながらノロになりたいと願うタツと共に島での生活を送る。島の歴史に潜む真実。そして、ウミの記憶を取り巻く現実とは———

    ノロという役職は、島の歴史を語り継ぐことや、今後の島の存続のために身を粉にして動く必要がある。ウミは島の外からきた自分よりも、ずっとこの島で暮らしているタツにこそ、ノロになるべきだと考える。しかしながら、タツは男性であるため、本来であればノロになるどころか、女語すら知ることがない。言語や性別によって作られる壁は高く、そう簡単に打ち崩す事が出来ない。

    私が思う本書最大の魅力は、ウミの心情を示す文章であると感じた。それは、島に流れ着き意識を取り戻した時、大きな壁にぶつかった時、島の歴史を知った時、自らを取り巻く現実を悟った時。それぞれの地点で、私たちはウミの行動から彼女の気持ちを追体験することになる。ウミは島に来る前の記憶を断片的にしか覚えておらず具体的なシーンは何ひとつとしてはっきりとしていない。だからこそ、そんな彼女が抱く心情には常に魅力を纏っている。記憶にないながらも、深層心理に染み付いた感性というものはなかなか抜けておらず、節々から彼女のこれまでを想像させられることにも、また魅せられる。自然を語る文章も美しく、目の前に広がる景色を安易に想像させ、物語へより深く潜り込ませてくれる。

    まだいっぱいは読めていないけど、これまで読んできた芥川賞受賞作の中でも読んだことない作品に感じた。なんとなくだけど芥川賞っぽくないというか、社会派ミステリ的な要素も含まれていて、万人におすすめしやすいなと感じた。めちゃくちゃ面白かった。

  • 近未来デストピアSFの設定だが、琉球の島を舞台にした小説。普段文学とか一般小説を読まないSFの人にも大丈夫だと思う。文庫になって電車読みにも最適。ジェンダーや国籍などの背景はデストピア舞台だが当然今に通じるものがある。

  • ニホン語、女語、ひのもとことばが入り混じり、はじめは読みにくさも感じるが、次第にスムーズに読めてくる。それこそがこの物語の主題とも繋がるのだろう。
    言語は思想と繋がる。ジェンダー、国、歴史、様々な力の配分が物語世界を築く。
    「小説」の力を思い知らされた。

  • きっかけ
    芥川賞受賞作。外国籍の作家さんでも受賞できるのね!という驚きと書評家の倉本さおりさんがあとがきを寄せていたのが気になって。

    気付き
    日本の西にある島が舞台なのは読みながら理解したものの、台湾なのか沖縄なのか、最終的には巻末にある参考文献をみるまで理解できなかった。沖縄や与那国には私自身個人的なつながりがなく、史実において、まだまだわからないことだらけだなと、興味深く目を通した。
    自分のスタンスとしては、沖縄から目を背けることなく、何か役に立てることに動いてみたい。

    明日の糧
    若い人には特に、いつの時代も前向きであって欲しい。そっと見守る距離感を大事にしたい。

    というのはある意味建前で、歳を重ねて大人になっても何ができるか、前向きに取り組んでいきたい。

  • 芥川賞受賞作。ふと目に入ったときとか、受賞作予想とかを読むことがあるんだけど、これはそんな中で興味を惹かれたんだったか。もしくは、単にタイトルが心に残っていただけか。たまには芥川賞も、ってことで入手・読了。彼岸花に対する勝手なイメージで、何がしか、ホラー寄りの作品かもとか思いながら読んでみる。でも実際には、八重山地方の小島を舞台にした物語。その中に、ジェンダーとか国籍とかについてあれこれ考えさせられるヒントが散りばめられていて、中編なんだけど、読み応えあり。

  • ファンタジー系?とも言い切れない、なんかいつか何処かであったのかも、と
    思わせられるお話だった。
    この島のシステムは、成り立つのだろうか?
    ちょっとその辺りが納得しかなかった。
    全体的には特に問題ない物語。

  • 2021年上半期芥川賞受賞作
    彼岸花が咲く島に流れ着いた字実とその島の同世代の女の子ヨナとタツの物語
    ヒノモトコトバや女語といった『言葉』
    女性が統治し家族という概念があいまいな『風習』
    ノロという指導者が導く不思議な島
    邪馬台国ってこんな感じかなーなんて気持ちで読んだかな…
    芥川賞受賞作にしては読みやすかったかも

  • この話は沖縄と台湾の間の島を想定して書かれた話だろうと思いながら、読み進めるも「芥川賞」受賞作品だよな、と難解さに途中で投げ出したくなる。
    ところが、半分を読んだあたりから、俄然面白くなる。
    漂流した少女がたどり着いた島は、現代の有り様をことごとく否定した上に成り立つ理想郷であった。こんな奇想天外な島の行末を見てみたいと思ってしまう。
    性別に関係なく自由に恋愛をし、妊娠したら産むかどうかは自分で選ぶ。子どもが生まれたら学校に預け島全体で育てる、などなど。また、すべてを率いるのはノロになることのできる女性だけである。

  • <ニホン>の偉い人たちはもともと「外人」のことを好ましく思わんでね、その流れを利用して、「美しいニッポンを取り戻すための積極的な行動」と称し、「外人」を全て<ニホン>から追い出すことにした。

    ってナチじゃん!って笑い飛ばしたいけど笑えない現在。作家は今の日本をどうみているんだろう。

    その島はユートピアといえる。でもそのユートピアを築き守るためには制限や掟がつくられる。それは結局、誰かの自由を限定することにもつながる。家族は?文化は?
    何が理想郷なのか、正しい答えはないけれど、試しに一回くらい女に任してみてはどうだろうよ。長い人類史の間で一度くらいそんな期間があっても良いでしょう。そこから学ぶこともあるでしょう。

    ちょうどニュースのヘッドラインが。
    「小泉防衛相、沖縄・与那国島へのミサイル配備は2030年度」とのこと。
    この国はどこに向かっていくのだろう。

  • 島物語の表と裏、すごく嫌な想像をしてしまった女性島

  • 架空の島のお話。色んな言語が出てきたり島の設定があったり、後半は島の歴史や主人公の生い立ちが明かされる。
    が、正直ストーリーそのものが退屈すぎて、かと言って深い心情描写などがある訳でもなくどのキャラも優しくて悪くいえば薄っぺらい、それらのことから色んな設定や謎が気にもならずに結局最後までダラダラ続くだけだった。そもそもなんで周りの世界はこの島に攻めてこないの。
    多様性とかLGBTとかフェミニズム的なことから芥川賞受賞したのかな、とか感じちゃった。今まで読んだ芥川賞、ストーリーは基本退屈だけど描写はどの作品も深く、作者の心情や見えてる世界を感じられたけどこの作品は合わなかった。

  • 啓光図書室の貸出状況が確認できます
    図書館OPACへ⇒https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50366142
    他校地の本の取り寄せも可能です

  • オーディブルで聴いた。

    内容は凡そSF系でいいのかな。
    かなり強いジェンダー系の話になっていったことに驚いた。
    これが芥川賞受賞を取っていることは、不思議に感じた。

  • ★3.5
    日本の昔話かと思いきや、遠い未来の日本の話。
    荒んだ日本から追い出された異民族が小さい島で独自の文化を築いてました~の落ち
    けど、設定にリアリティーがあって、李さんの本は二冊目だけど結構よかった!
    歴史、文学、そういったものの生い立ち?に感銘うける本

  • 重い作品を読んだ後だったのでちょうど良い長さだった。島の自然と、女性が力強く生きている様子があって好感を持った。表現も嫌味を感じない。
    彼女の中にはマイノリティの隔たりという大きなテーマがあって、読者に伝えたい事が明確であると思った。

  • 芥川賞の作品って難しい。
    帯以外の前情報なしで読み始めて
    え?これフィクション、、?だよね??と考えながら読み進めた。
    ノンフィクションの文化なのか?と思わされるほど精巧な設定だった。
    それにしては奇妙な言葉と文化だなと、半分くらいまでは上述がしっくり来ず、淡々と読み進めてなかなか感情移入や腹落ちがしなかった。
    けれど表現力が豊かで情景は安易に浮かんだ。

    半分を超えたあたりから漸く物語が見えてきて
    性差(珍しく女性に力があるパターン)、
    文化の継承(規律を守って伝えていくのか)
    同性愛、いろんなテーマが組み込まれていていき、どういった結末を迎えるのか楽しみになる本だった。
    きちんと締められていて読み終わった後は清々しい気持ちになれた

  • 記憶を失い目を覚ますと、微妙に通じるようで通じない言語を操る人が住む、見知らぬ島だった という出だし。自分のルーツを思い出すことを求めながらもそれを知ることで今の生活が脅かされるのでは、とうっすらと恐怖を抱きながらも進んでいく年月。歴史と制度とその理由は全て繋がっていること。何が正解かはどんな長老にも分からないが、真実を知り、よく考え、正しいと思うことをすることで歴史を紡いでいってほしい。家父長制へのアンチテーゼもあり、もろに現代日本の話をしていた。物語の中で拓慈と和解できなかったのが惜しい気がした。

  • ⚪︎文化の細かい描写より、「ここはどこ?」「いつの話?」「どんな社会?」など、どんどん疑問が浮かび、想像力が掻き立てたれる。

    ⚪︎主人公の選択を見ながら、自分の未来へ責任をもつには、過去を知り、現状を知る事が大切だという事を学んだ。人生において、どう生きるかは正解や不正解がなく、迷いながら、自分自身が責任をもって選択していく事だと感じた。

    ⚪︎最初は読みにくかったが、想像すればするほど種明かしを期待する自分がいて、読み進めることができた。最後に種明かしをされるので、ミステリー小説のようなスッキリ感が感じられた。

  • エックスツイッターで著者が自身の発言からバッシングされていて著者のことをしりました
    どんなひとか検索すると外国人で日本語で本を書いて芥川賞をとったひとだとしり読んでみることにしました
    あっさりとしていて読書初心者でも読みやすそう
    可もなく不可もなく外国語(日本語)でここまで書けるのはすごいとおもいました

  • ディストピアの後の、ユートピア。そこは弛まぬ努力と歴史認識の確度で持ち堪える世界。決して楽しく幸せなユートピアではなく、過去の歴史から今を勝ち取り、誰からも奪わず、いや奪われたり奪った過去を神事として秘匿し、安寧を維持するのだ。

    李さんは台湾育ち最初は独学で日本語を学び自らの書き言葉を日本語に定め、その背景からこの小説でも美しい言葉、その音や見た目を存分に駆使して、言葉が、入り混じる島の言語が核となり、マイノリティなんて概念が日常の暮らしでは必要ないかの暮らしぶりの小さな島で、マイノリティを包摂し、言葉と自然、植物、風、海に守り守られ暮らしを立てていく。
    私たちの住むディストピア。
    最近小説やニュースを読めば読むほどディストピアは架空や仮想ではなく、加速的に今ある現実だと思う。
    大ノロは言う。
    歴史を受け継ぐ責任は重い。昔のことを知っている人間は、常に先のことを考えながら生きていかねばならんからな。

    歴史を女たちに手渡す。
    一般的な家族概念、地のつながり、血縁からの解放。
    クニの支配を逃れ争わない、歴史を男に渡さない。
    不安定な今を、ノロとなった女の子たちは少し先を見据えながら歴史を知り死者を想い未来をひらいていく。

全20件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

李琴峰(り・ことみ):1989年、台湾生まれ。作家・日中翻訳者。2013年来日、17年『独り舞』で第60回群像新人文学賞優秀作を受賞し、デビュー。『五つ数えれば三日月が』で第161回芥川賞、第41回野間文芸新人賞候補、『ポラリスが降り注ぐ夜』で第71回芸術選奨新人賞受賞、『彼岸花が咲く島』で第34回三島由紀夫賞候補、第165回芥川賞受賞。他の著書に『星月夜』『生を祝う』『観音様の環』『肉を脱ぐ』がある。

「2024年 『言霊の幸う国で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

李琴峰の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×