ショートケーキ。 (文春文庫 さ 49-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167922726

感想・レビュー・書評

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  • 文庫になるのを待っていた本。

    ショートケーキ食べると特別な気分になったり、幸せな気持ちになる。
    無意識にみんなそうなんじゃないかな。
    ショートケーキの力は偉大なんだ! 
    コージーコーナーに行って、ホールケーキ買ってこようかなぁ。

  • とても優しい物語でした。
    ショートケーキをめぐる5つの作品がおさめられていますが、少しずつ話が重なっていて、他の作品に登場していた人物の視点で話が進みます。
    「あっ。この時、こんなことを考えていたんだ〜。」というのがあって面白かったです。
    赤いいちごの乗ったショートケーキ。
    真っ白なクリームは口溶けがよくて甘くてふわふわ。いちごは少し酸っぱい。そして、ちょっとした特別な感じ。
    そんなショートケーキのような優しくて素敵な物語でした。

  • ケーキを作る仕事をしている人間としては、救われる本でした。言ってしまえば「嗜好品、娯楽」であるケーキ。「無くても生きていけるもの」。
    それがこの本では「あると救われるもの」として扱われていて嬉しかったです。

    『ホール』
    両親の離婚、一人っ子につきホールケーキを買うことがなくなってしまった女の子2人の物語。
    境遇が同じ2人は「失われたホールケーキの会」を発足。嫌なことがあると2人でホールケーキを食べる。
    父との面会を続け、20歳になる時、父から「大切な話がある」。いつもと違う特別感のあるお店、「何でも食べろよ」の言葉。もしかして、もう面会も養育費もなくなる?それが嬉しいのか嫌なのか分からない、助けて、ホールケーキ

    『ショートケーキ』
    俺のバイト先の店には、時々「天使」が来る。売れ残ってしまいがちな予約なしのホールケーキを買っていってくれる、店側から見たら廃棄を無くしてくれる天使たち。中でも常連の天使の女の子2人組はよく覚えてる。
    俺の家は最近どんよりしている。いつも元気な姉の顔色が悪い。病院に行っても、薬も貰わず帰ってくる。
    姉ちゃんも、あの天使たちのように、大好きな甘いものを、苺のショートケーキを食べて元気になってくれれば良いのに。

    『追いイチゴ』
    『ままならない』
    『騎士と狩人』

  • -------------------------
    ショートケーキは
    祈りのかたち

    白くて甘くてふわふわで
    日々の何かを救ってくれる
    -------------------------
    ずっと気になっていた作家さんですが、今回新刊を見つけて手に取りました。
    装丁が素敵すぎて。

    子どものころのケーキは特別で、
    さらに大人になった今でもご褒美だったり、
    自分を助けるため癒すためにあったり。

    モンブランとショートケーキ、
    タルトとショートケーキ、
    チョコケーキとショートケーキ、
    必ずショートケーキを買ってました。

    本作は登場人物のそれぞれが主人公になっていく、
    連絡短編でした。
    ケーキを買う人、売る人、もらう人、あげる人。
    日常のなかの大切な特別。
    誰かの優しい気持ちがケーキと一緒に、誰かを癒す。

    最近、忙しくて心に余裕がなかったので、
    優しい気持ちになれた一冊でした。

    和菓子のアンシリーズも気になっていたので、
    折をみて読んでみたいと思います。
    そして、給料日後は駅前のコージーコーナーでショートケーキを買いたいと思います…!

  • 坂木司『ショートケーキ。』
    2024年 文春文庫(文藝春秋)

    ショートケーキ(ホール)をテーマとした連作短編集。
    ショートケーキが象徴的に置かれ、登場人物たちの思いがそれを、きっかけやイメージとリンクしている展開がおもしろい。
    僕の子供時代もまだケーキの種類もスタンダードなものがほとんどで、やっぱりケーキと言えばショートケーキでした。
    誕生日や成長、お祝いなどの人生の節目、デートやいわゆる今でいう女子会などなど、ショートケーキには様々なイメージを含み持っている、託されていると思います。だからこそ本作のような思いや心や夢や葛藤も描けるのだと興味深かったです。
    そして何より坂木さんは、男性、女性ともに心理や細やかな描写がとても巧みで、リアリティーに溢れているなと感心しっぱなしです。
    着眼点、洞察力はまさに天晴です!

    #坂木司
    #ショートケーキ
    #文春文庫
    #文藝春秋
    #読了

  • ひとつの物語の脇役だった人が、別の物語の主人公になっている、この感じがやっぱり好きだ。誰でも主人公なんだよなって思うと、何でもない毎日がちょっと輝き出す感じ。自分にもドラマチックなことが起きないかなあ、毎日つまんないなあ、なんて思っていても、宝物はすぐそばにあることに気がつく感じ。
    私の父はお給料日にはいつも駅前のケーキ屋でモンブランを買って帰ってきた。普段は帰りが遅かった父も、その日はケーキ屋が開いている時間に帰ってきたんだな。どんな顔をして買っていたのかな。この春に亡くなった父の仏壇に駅前のケーキ屋のモンブランを供えて、愛されていたんだなあ、しあわせだったんだなあ、私の中にも、ちゃんと宝物があったんだなって、うれしかった。

  • ショートケーキ 食べたくなる
    いつもなら、ケーキはジャーマンケーキ,パイならアップルパイを選ぶけど。
    ホールで買いたいな。そして全部食べたいな、という気にさせるお話でした。

  • ひとつのケーキで、いろんな人の思い出や何気ない生活が見える。もちろんネガティブな感情もあるけど、暖かさが見え隠れしている。
    本当に日常っていう雰囲気がして、でもそこにショートケーキのような特別が含まれていて(ショートケーキが日常みたいな感覚もあるが)、
    すごく心が豊かになった
    30代くらいになったら読み直したいなあ。
    すごく素晴らしい

  • わたしも娘たちも大好きな坂木司さんの、いつもの和菓子ではなく洋菓子(ショートケーキ)をテーマにした連作短編、新刊広告を見て即買い。

    ホール(20歳になる女の子二人)
    ショートケーキ。(コージーコーナーでバイトしている青年)
    追いいちご(コージーコーナーで働く女性)
    ままならない(ママ友三人組)
    騎士と狩人(幼馴染のアラサー青年二人)

    岡野大嗣の短歌「倒れないようにケーキを持ち運ぶとき人間はわずかに天使」に想を得て描かれた5つの物語が、それぞれゆるくあるいは密につながりあっていて、なんとなく、続編もあるのかな、と思えるひろがりかただった。ふわっとあたたかい視線で全体としてすいすい読める文体ながら、離婚した親との定期面会、ワンオペ育児、結婚相手探しなど、現代の若い人の複雑な気持ちや行き詰まり感をよく写していると思った。

    ショートケーキよりタルトやパイをつい選んでしまう自分だけれど、読めばショートケーキが食べたくなる、ちょっとコージーコーナーにのウインドウを見に行きたくなる、そんな一冊だった。

  • 各々の話が緩くつながっている。どれも小さな幸せ一杯の話だ

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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