エイレングラフ弁護士の事件簿 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2024年9月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784167922788

作品紹介・あらすじ

エラリイ・クイーンも太鼓判!
ミステリー史上最高で最凶の弁護士マーティン・エイレングラフ登場!

不敗の弁護士エイレングラフは言う、

「私の報酬は法外ですが、有罪になったら一銭も支払わなくて結構。でもあなたが無罪放免となったなら、もし私が何もしなかったように見えても、必ず報酬を支払っていただきます」

そして依頼人は 必 ず 、無罪となる。たとえ真犯人であっても!

エラリイ・クイーンが大いに気に入って雑誌に掲載した第一作「エイレングラフの弁護」から38年。アメリカン・ミステリーの巨匠ブロック(『八百万の死にざま』『殺し屋』)がじっくり書き継いだシリーズ短編を完全収録。本邦初訳の作品もふくむ全12編。これぞ珠玉。ブラック・ユーモアとヒネリとキレが絶妙にブレンドされた短編ミステリー集。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

法廷での正義を超えた、極悪弁護士の活躍を描く短編集です。主人公の弁護士、エイレングラフは法外な報酬を受け取りながらも、どんな依頼人でも無罪にしてしまう手法を駆使します。彼の手法は時にブラックユーモアを...

感想・レビュー・書評

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  • どんな事件も無実にしちゃう弁護士、まさに犯罪のブラックジャック! #エイレングラフ弁護士の事件簿

    ■きっと読みたくなるレビュー
    弱い者のために正義感たっぷりの弁護士のお話… では、ありません。

    むしろ、どう見てもやってるだろという事件を、様々な手段で無実にしちゃうという… その手段は法廷での卓越なる弁護ではなく、裁判にすらならなくなるとい荒業なんです。しかもその報酬は失敗したら一切お金をとらず、成功した場合は莫大な金額というもの。

    なんかブラックジャックみたいなトンデモ設定なんですが、これが読んでると面白いんです。

    まずこの怪しい弁護士、エイレングラフのキャラ設定がクールなんですよ。ビシっとスーツを決めたベジタリアンで、いつも詩集を読んでいる。重要な仕事の時はお気に入りのネクタイを締めて挑む。報酬は成功した場合のみ受け取り、どんなことがあっても成功に導くという… まるでやり手のビジネスマンみたい。

    「実は本当にやってるんです…」 「そうですか、無実ですから安心してください」
    「彼に会ったことはあるんですか?」 「ありませんが無実です。なぜなら私の依頼人だからです」

    はぁ?! 怖いわ! この発想が怖い!
    しかも本当に無実になってしまう(というかしてしまう)ところが恐ろしい。

    全部で12編もあるんですが、依頼人や事件関係者が様々で興味深いんですよ。解決へのアプローチも色々あって、たしかにどんな場合でも無実にしてしまうという。よくもまあこんなにも皮肉めいたストーリーやプロットを考えたよ。

    しかも本作はエイレングラフ弁護士と依頼人の会話のみで進行していくんです。会話だけっていうところがニクイんすよね、背後でどんなことが行われたかっていう描写はほとんどありません。どんなことをやって無実に導いたかは会話から想像するしかないんですが、このゾワゾワ感がたまんないすよ。

    なお長期にわたって書かれたおまとめ短編集とのことで、ストーリーが進むにつれて徐々にエイレングラフの人間性に厚みが出てくる。「エイレングラフの肯定」「エイレングラフの決着」などでは、若干の優しさがしみ出していてエモさもあり完成度が高いですね。

    一気に読まなくてもいいので、時間があるときに少しずつ読むのもおすすめです。おもしろかった~

    ■ぜっさん推しポイント
    依頼人にとっては終身刑をも背負った死活問題にも関わらず、エイレングラフのカラリとした発言が面白過ぎんのよ。自信たっぷりなんだけど、何故か憎めないですよね。

    また成功後に依頼人が報酬金額をゴネるんですが、それを華麗にいなすやりとりもニヤニヤしちゃう。気品あふれるブラックユーモアたっぷりでした。

  • ここまで型を崩さない連作短編も稀。

    一分の隙もない着こなし、詩を嗜み、依頼人の無罪を例外なく信じる弁護士エイレングラフ。
    報酬は極めて高額、ただしその支払いは依頼人が無罪を手にしたときのみで良い成功報酬型。
    ただし、ひとたび合意した後は一見何も貢献していないように見え、結果的に自由を手にした場合でもその支払い義務を負う。

    凄腕弁護士なのかと思いきや、法廷に出ることは皆無。
    むしろ法廷に出る必要すらないようにことを運ぶ(秘密裏にかつ強引に)当世きってのどす黒悪徳弁護士。
    依頼後に訪れる窮地の雲散霧消ぶりに、しばしば依頼人達はあなたが何をやったの?と支払いを拒むが、そんな輩達にはおしおきとばかりの展開が。

    ちょっとずつ足し引きはあるものの、もう嘘だろと思うくらいワンパターンの繰り返し。
    でも何故か楽しめてしまう不思議。
    半分を過ぎて思った、これは水戸黄門やドラえもんの類だと。

    やってることはだいぶノワールなのだが、崩れない物腰、直接的な記述の排除、反復の妙により、エイレングラフ像が徐々に確実に補強され、いつしかどこかお茶目さすら感じてくる。

    解説、松恋さん。
    クレイグ・ライス、コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の絶筆をローレンス・ブロックがゴーストライトしたなんて逸話も披露されていて驚き。
    全然文体違うのに。

    このミス2025年度版海外編6位。

  • 2025/3/24読了
    無実の依頼人のために闘う正義の弁護士の話ではない。
    法廷で詭弁を弄してクロをシロと言いくるめる悪徳弁護士の話でもない。
    シロクロ関係なく(いや、真っクロでも)強引に“無罪(シロ)”にしてしまう極悪弁護士の話である(バカみたいに大量の白ペンキや石灰粉をブチ撒いていくイメージが脳裏に浮かぶ)。
    弁護士マーティン・H・エイレングラフ。コイツは、今まで読んできた中でもトップクラスの極悪人らしい(さすがに今回は褒めていない)。各話とも基本的にエイレングラフと依頼人との会話劇で、最後に“無罪”になった依頼人に対してエイレングラフが経緯を説明するのだが、コイツが何をしたかの直接描写が無いので、そこは読者の想像に委ねられることになる……が、想像するのが怖い……。1976年~2014年まで書き継がれたシリーズで、初期の作品こそバカミス感覚で笑えるのだが、後年はやることがエスカレートしてシャレにならなくなり、イヤミス領域侵犯気味になっている気がした。この手の話が冗談として通用するには、司法制度がマトモに機能していることが前提になると思うのだが、エイレングラフがダークヒーローとして成長しているのだとすれば、それは裁判が法の下で真実を明らかにする場ではなく勝った負けたのゲームに堕した、アメリカの司法制度の凋落・堕落を象徴している……訳ではないことを切に祈るのみである。

  •  越前敏弥さんのオンラインイベント「夏の出版社イチオシ祭」の動画を視聴して知った本。文芸春秋の編集者さんの簡にして要の流れるような宣伝トークが見事で、聴き終わった瞬間にポチってしまった。なので、本の紹介は「動画のとおりです」と言いたいところだが、自分でもちょっと書くことにする。ただ他の本の紹介も面白いので動画もオススメです。

    https://www.youtube.com/live/puA00sWIXc0?feature=shared

     エイレングラフは小柄で洒落者の弁護士。法外な報酬を要求するが、それは依頼人が無罪放免になったときだけ。失敗したら一切お金はとらない。ただし無罪放免という結果を勝ち取った際には、たとえエイレングラフが何もしていないように見えたとしても、満額きっちりいただきます、という契約スタイル。実際彼が法廷に立つことはほとんどなく、彼の依頼人は裁判が始まる前になぜか必ず無罪放免になる。たとえ依頼人が真犯人だったとしても……。

     どうやって無罪にするのかというやり口がもちろん一番の見どころだが、それ以外ではまず毎回登場のたびに微細に描かれるスーツの着こなしが目を引く。ファッションに明るくないので私はもやっとしか思い浮かべられないのだが、それでもこう繰り返されると毎度衣装が楽しみになってくる。もやっとでなく脳内再現できないのが残念。
     それから、「詩が好き」という点も彼の特徴。言ってしまえば悪徳弁護士(解説の杉江松恋さんがそう言ってるもんね)なわけだが、どこかエレガントで魅力的(?)に思えなくもない理由は、前述の身なりの良さに加え、詩を愛する一面を持っているところにあるだろう。短い作品ながら、冒頭には必ず詩が掲げられるし、セリフの中にもたくさん引用される。
     あとがきや解説には、エラリー・クイーンはもちろん(というのは帯や宣伝文にもある通りこれは元々ダネイのお墨付きでEQMMに掲載されて世に出た作品だから)、エドワード・D・ホックやドナルド・E・ウェストレイクなど私が最近読むようになった二十世紀後半以降のアメリカ作家たちの名前がぞろぞろ登場する。ホックなんて、高い報酬と謎のこだわり仕事をする点は『怪盗ニック』に似てるなーと思っていたら、この作品とは浅からぬ縁があることがわかりびっくりした(私は断然ニック派!)。松恋さんによる弁護士もの系譜解説も興味深かった。

     お決まりパターンの固定フォーマットは様式美さえ感じさせる。なかなかなダークヒーローぶりで、倫理とか道義とか人道とかを持ち出してしまうと読めないので、その点はノーコメント。終盤、ネタが尽きたのかその方がウケるものなのか、色事に流れがちになってきたところも好みではない。が、遊びと割り切りさえすれば、大人の楽しい気軽な一冊。読んで良かった!

  • 弁護士エイレングラフが主人公の12件の事件を扱った連作短編ミステリー。法外な報酬でどんな被告人も無罪にしてみせる凄腕の弁護士、とは言え法廷に持ち込む前に無罪釈放を勝ち取る。どんなやり方も辞さない超ブラッキーな方法で。けしからんと言うべきなんだろうけど、あまりに馬鹿馬鹿しくて虚脱するしかなかった。

  • 依頼、業態の説明、エイレングラフの力技(金の力など)による勝利、という水戸黄門のように紋切り型の展開を繰り返す様式美の短編集。エイレングラフが強引に(捏造、買収、なんでもありでむしろ作中一番の悪では)勝利をもぎ取り成功するし、まあまあ俗物で依頼人が美女だとすぐフィジカルな関係になったりするの、やりすぎてていっそ清々しかった。外見にコンプレックスがあるからお洒落に心血注いでるのかな?なんだかかわいい(笑)
    1篇が数ページなので隙間時間に読むのにちょうど良かった。

  • どんな容疑者も必ず無罪にする弁護士、エイレングラフが主人公の短編集。
    評判が良いので読んでみたら、確かに上手い。
    でも残念ながら私向きではなかった…。
    ブラックユーモアが嫌いなわけではないのだけど、今作はキツかった。
    詩人の話はちょっと好き。

  • アメリカの作家、ローレンス・ブロックの短編集。マット・スカダーシリーズをはじめ、非常に多くのシリーズを持つ作家。その中でエイレングラフ弁護士の作品を一つにまとめたもの。

    こればかりは、まず最初の短編を読んでくださいとしか言いようがない。ネタバレの質が他の作品と異なり、最初の短編を読めばこの作品集の方向性がわかると思う。

    若干ワンパターン感はあるが、どの短編も安心して読める。重たくなく、非常にサクッと読める良作。

  • 知り合いから勧められて読んでみた。ほとんど裁判に出席しない特殊な仕事をしている弁護士の事件簿。どの短編も切れ味が鋭かった。あえて同じパターンにこだわって書かれていることもあり、終盤は少し飽きそうになってしまった。(この粋さを楽しみきれなかったといった方が正確か)

  • ・あらすじ 
    マーティン・H・エレイングラフ弁護士の弁護人は必ず無罪である。
    そんな信念をもったエイレングラフが解決する12個の依頼。

    ・感想
    こんな弁護士やだ!!でも嫌いじゃない…。
    約30年にわたって綴られた短編集で、形式はほぼ一緒なので気軽に1日1遍のペースで読み進めた。
    前半は好きじゃなかったエイレングラフだけど、後半になるほど彼の意外な一面や人間性も垣間見えて段々彼を面白く感じてる自分がいた。

    特に好きだったのはエイレングラフの義務とエイレングラフの肯定。
    義務では詩を愛するエイレングラフが、詩人である依頼人のために「諦めないで下さい、何度でも上訴すればいいのです」なんて茶番を演じてるの笑ったw
    肯定はちょっとだけエイレングラフの人間味を感じられて良かった。

    「私がやったんです」「いえあなたは無実です、なぜならこのエイレングラフの依頼人だから」

  • 70年代に6本、80年代に2本、90年代に1本…といった具合に、シリーズものの合間にさながら「岸辺露伴は動かない」のようにして書かれた短編集。

    ところがこの主人公の弁護士は荒木作品のような正しい心は持ち合わせていない。まるで藤子不二雄Aのマンガのように邪悪な心を持った悪徳弁護士なのであります。

    ほぼ会話だけで成立させている、切れ味鋭い短編。
    長編を読む合間に、チェイサーのようにフト手にとって読んでみてもいいかもしれません。

  • 泥棒シリーズを昔読んでいたことがある。スピード感が現在には合わないが、限られた登場人物と動きの少ない展開は、定型化しやすく、読みやすい。ただ弁護士である必然性が後半には感じられなくなった。とはいえ、復刊されると死ぬまでもう一度読みたくなるのはなんでだろう。

  • 依頼人を絶対無罪にする弁護士の話。ただし法廷以外の手段で。
    1話目は「おおっそういうことか」と感心したが、2話目以降も基本的に同じで、別の犯人を仕立てるパターンばかりだったのでいまいち。
    一分の隙も無いお洒落な主人公という設定で、毎話3-4行くらいは服装の説明に費やされる。

  • 実態を持って登場するのは弁護士エレイングラフと依頼人だけ、という異常ともいえる設定のなかでよく書けたな12篇も、と感服。ブロックに弄ばれた感が多々。楽しかった。そして、思いがけない"あとがき"と杉江松恋さんの解説に感謝。

  • 弁護士のエイレングラフは依頼人が有罪になれば弁護料を受け取らず、無罪になれば法外な成功報酬を受け取る。そして裁判になる前に依頼人の疑いを晴らす。依頼人が来たら「あなたは無罪です」と言い本当にその通りになる。その裏に何があるのか。一編30ページにも満たないし全編同じ型をしているけれど、中身のバリエーションが豊富で飽きさせない。何よりエイレングラフの悪徳さが読んでいて心地いいほど。冒頭の一編を読めばすぐに心を掴まれてしまう傑作集。

  • 不真面目に愉しめる。

  • 「わたしは犯罪者の代理人にはなりません。わたしの依頼人はみな無実なのです」エイレングラフの依頼人はみな無罪である。有罪が立証されるまでではなく、最初から最後までずっと無罪なのだ…

    法外な成功報酬を受け取る代わりに依頼人を必ず無罪にする弁護士、エイレングラフ。たとえ依頼人に犯罪の記憶がなくても、依頼人が罪を認めていたとしても。小柄で洒落たスーツを着こなすこの弁護士が弁護を受け持った途端、真犯人が罪を認めて自殺したり同様の手口の犯罪が立て続けに起こるが、あくまでエイレングラフがどのような手段を講じたかは語られずあまりに弁護士離れした裏工作を読者は推測することしかできない。
    このミスに選出されていたため手に取ったものの、ジャンルはミステリーというよりはブラックコメディのような。思わずフフッと笑いが何度もこぼれページを繰る手が止まらず、短編集なことを合間ってあっという間に読了。こんなリーガル(?)ミステリーがあったとは!何度でも読みたくなる小気味よさ。

  • 詩に詩を題材とした短編が付いていると思うと面白いかな。

  • 毎年のミステリランキングに能く見られる事ですが、内容の良し悪しよりも「今まで散逸していた作品群が一冊に纏められて読める」事に対し、票が集まったような気がしました

  • 弁護士エイレングラフが主人公の短編集。予備知識がなかったので、タイトルから勝手に法定ものか、弁護士が探偵みたいに活躍する話かな?と思って読み始めた。
    1話目を読み終わって、なんじゃこりゃ!となった。
    たぶんカルヘイン夫人と同じ顔をしていたと思う。

    司法制度の限界などと言うような重いテーマを1ミリも取り扱っていないところが良い。
    正義の味方でもないし、たぶん(いや絶対)人殺してるし(それも良い人悪い人誰彼構わず)、こんな毒のある主人公のつくり話もたまには楽しい。
    主人公が派手なアクションをするでもなく、会話中心の物語なのに、読んでいて飽きない。
    そして何より、すべてにおいてリアリティが「ない」ところが良い。
    これ、リアリティがあったら、エイレングラフのしてること考えたりして、キーッとなって台無しになると思う。
    加減のうまさ。
    すばらしき創作小説。

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著者プロフィール

ローレンス・ブロック Lawrence Block
1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。
『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、
第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。
1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。

「2020年 『石を放つとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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