タイムマシンに乗れないぼくたち (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2025年2月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784167923310

作品紹介・あらすじ

商店街で働く南優香は、いまよりほんの少し愉快に生きるためのライフハックを思いつく。今日から私、殺し屋になる――(「コードネームは保留」)。
博物館の片隅で現実逃避に余念のないサラリーマンと小学生。つい悩みを吐露し合ってしまった二人の本当の願いは……(表題作)。
読むほどに心が楽になる、7つの物語。
解説・森川すいめい

感想・レビュー・書評

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  • 柔らかさが伝わってくる文章で、スルスルと
    読み進めていきました。
    この作品の登場人物たちはどこか生きづらさを抱えていて、自分自身に問答している印象がありました。
    個人的にどの作品にも感情移入できたし、優しい
    気持ちにもなれた。
    寺地さんの作品も今作が初だったので、もっと
    違う作品を読んでみたいです。

  • 短めの短編集。スラっと読めます。

    「現在」に何か生きづらさ、不自由さを感じている登場人物達が、そんな「現在」にほんの小さな灯りを見つける物語集。タイムマシンに乗って過去をやり直したり、未来へ飛んで辛い今を飛び越えたり出来れば楽なんだけど、当然そんなことはできないので‥。

    何か大きな展開があるわけでも、大きく心を揺さぶられるでもないけど、すこーしジワッと温かい小説でした。

  • 小学校から様々な助けてもらいたい場面がありました。私も彼らは宇宙人なんだ、と思っていたかもしれません。先輩からパンを6個食べさられた時にも、毅然とした態度は全く取れませんでした。助けてくれたのは、自分自身の唯一強靭な消化管でした。

  • マイノリティであっても何か心の支えがあれば生きていける。ちょっとした処世術が詰まっていた。それは人によって手段が異なる。イコール幸せの形も人それぞれなんだと思う。

  • 寺地さんはなぜもこう生きにくい人を優しく描くんだろう。現実逃避のさせ方が絶妙。
    ・コードネーム保留
    わかるわ~働いてる今でも私、人の変な噂話とかになると、自分は今宇宙人だからと殻をかぶってみる
    ・タイムマシンに乗れない僕たち
    「だいじな人ってたまにやっかいだよね」だから大事なんだな
    ・灯台
    だだっぽいところにひとり立つのは心もとない。だから灯台のような誰かが。「まあ、休んじゃっても大丈夫なんですけどね」がいい。
    ・夢の女
    亡き夫は、妻と娘を守る男のロマンのために夢の女を、作り上げたんだな。
    だからこそ残されたものは辛いけど、その想いで妻は生きていけるだろう
    ・深く息を吸って
    は、題名のままだ。吐く息が大きくなると吸う息も大きくなる
    いつも息をひそめてなくていいんだよ
    ・口笛
    誰にもそれぞれの苦しみや悲しみや喜びや願いがある。だから「どうして」も、あふれるよ
    上手く吹けなくても口笛吹いてみた
    ・対岸の叔父
    「逃げて」そう、逃げて(笑)
    対岸の逃げる人に一緒にエールを。
    ・解説 衝撃の解説(笑)
    人の話を聞かない島に行ってみたいけど怖いわ

  • 本の帯にある「さみしさに、ほっとする」というフレーズに惹かれて購入。
    短編集だから毎日少しずつ…と思っていたのに、気づいたら一気読みしていた。

    各短編の書き出し。気になる…と、わくわくした。

    作中には、時々、突如パワーワードが出てきて、クスッと笑わされる感じも好き。

    どのお話も、なんとなく、さみしい。そのさみしさは、決して否定的なさみしさではない。さみしさのなかで、自分を読み解き、受け入れ、他者に優しい人たち。
    集団の暴力性について。人間関係における感情がリアルに丁寧に描いてあるので、そういったシーンを読むと心がきゅっとなった。
    いろんな生き方がある。そのことが粛々と描いてあり、どの生き方も尊い。


  • 「店長、フレディマーキュリーさんからお電話です」のセリフにふふっと笑った。
    マレオさんのような生き方がうらやましい。周りに左右されることなく、個を貫くスタイル。きっとストレスとも無縁なんだろう。いや、マレオさんにもマレオさんにしか分からない悩みがあるかもしれないけど。
    ときどき肩の力を抜いていこう…と言い聞かせても、今日も気を遣いまくって疲弊する自分の姿が思い浮かぶ。でもちょっとした合間にこういう本を手に取って深呼吸できたらいいな。
    そういえば寺地はるなさんの本、お初でした!

  • 生きづらさを感じながらも懸命に生きる人たちの物語を描いた短編小説集。

    表題作の中の「だいじな人って、たまにやっかいだよね」という言葉が心に残った。

    「口笛」という作品からは、女のしあわせって何だろうと考える時間をもらった。

    他には「夢の女」も印象に残った。

  • 全体的に切なさが漂うお話が多めの短編集でした。
    寺地さんは、日頃、自分でも気づかぬうちに感じている違和感や胸の痛み、みたいなものを描き出すのが本当に上手だと思う。
    あるいは、過去のちょっとした罪悪感とか…
    世間的にこうしなければならない、こんなことを言ったりしたりするのはちょっと…みたいな固定観念に縛られがちな私の気持ちを代弁してくれていると感じることも多い。
    だから、読んだあと、もうちょっとがんばろうと思わせてくれる。

  • 短編集。最近はノンフィクションやエッセイを読んでいたので、久々の小説復帰。

    全体的に、序盤は閉塞感があるが、終盤は開放感を得られる物語だった。マジョリティから少しはみ出た人たちの日常を描くのが上手い。
    コードネームは保留、夢の女の二編が好みだった。現実逃避するために、自らにコードネームをつけて役を演じようとする女性、日常の憂いから逃れるために秘密のSF小説を書いていた男性。、生きるって奥深いな〜。

    夢の女は、どことなく神様のビオトープに近しい雰囲気を感じることができた。
    また、対岸の叔父では、『川のほとりに立つものは』に通じる表現が散りばめられていた。


    小説復帰したが、何かを得ようと思って読むのではなく、雰囲気を楽しむのもひとつの楽しみ方だと思った。文芸誌を読むのも一考かもしれない。

  • 人の数だけ色んな感情であったり、色んな人がいて、色んな形がある。そんな当たり前のことでも何かに追われていたり余裕が無い時は気付くことができないものだと思います。この短編集を読んで改めてもっと寛容な気持ちでいて、また自分の気持ちを強く持っていたいなと思えました。温かな気持ちになりました。

  •  駅前にある楽器店「藤野音楽堂」で経理の仕事をしているわたしは、連れ立ってランチに行き、事務所の給湯コーナーで賑やかに話している同世代のグループとは距離をとる。なぜならわたしは「孤独な殺し屋だから」。しかし、ある日、社長の親戚だという「すこぶるうっかりさん」の青年が入社してきて……『コードネームは保留』ほか6編。

     ある時は冷めた事務職の女性、ある時は母と祖母と暮らす12歳の男の子、ある時は夫に先立たれた妻、またある時は……読んでるうちに、年齢も性別も境遇もまるで違う主人公になりきって、悩んでしまうって、寺地さんはいったいどんな魔法を持っているんだろう?そんな体験なんてないのに、なんで「わかる、わかる、そうなんだよね」ってうなづいている自分に気づく。リズミカルでテンポよく読んでしまうけど、短編なのにかなりずっしりくるし、それでいてちょっと「元気」をもらう。この「ちょっと」っていうところが、実はとても気に入っている。

  • 生きづらさを抱えた人達を描いた短編集。年齢も性別の違うそれぞれの孤独に寄り添い、足元を照らしてくれるような7つの物語。
    リバー・フェニックスに憧れる少女が主人公の「深く息を吸って、」がよかった。

  • 生きづらい世の中、どうしていいか分からない毎日に苦しんでいる。それは昔からあった感情だが、昨今では特に女性作家によって、描かれることが多い。
    読むことで自分の置かれている状況と似ていて、初めて言葉にできるようになり、救われる人もいるだろう。
    寺地はるなさん含め、高瀬隼子さん、町田そのこさん、青山美智子さん、千早茜そん、凪良ゆうさん等、そうそうたる面々によってこの分野は今花開いている。少し前には吉本ばななさんや江國香織さん等もそうだ。
    本作も心に寄り添う優しい物語だった。一番好きなのは『夢の女』。

  • SNSで紹介されてたのをきっかけに読んだんだけど,紹介してたのが,社会正義に基づいて,理詰めでバッサバッサと官僚や政治家を斬っていく,あの鋭い舌鋒の政治家.
    しかも,YouTubeではちょっとコミカルな顔も見せるギャップの持ち主で,日本の“政治界の頭脳三傑”の一人だと思ってるような人.
    …が!このタイトル?この表紙?この作風??
    えっ,本当に!?と思いながら読み始めたけど,読後にはしっかり納得していた.
    というか,むしろこの人がこの作品を勧めていたことが,自分にとっては強く印象に残った.

    物語は静かで,日常の細やかな場面が中心.
    でも,そこにさりげなく差し込まれる言葉たちが,じわじわと心に沁みてくる.
    特に「好きな人に,いい枕で寝て欲しいと思っています」という一言には,ぐっときた.
    (どんな場面で出てくるセリフなのかは,ぜひ本編で確かめてみてほしい!)
    自分が何かをすることよりも,その人が穏やかに過ごしてくれていたらいい,という祈りのような感情.
    無償の愛って,きっとこういうことなんだろうな.

    誰かのために祈るって,実は自分のためでもある.
    そしてそれは,同情でも,理解でもなくて,
    立場や価値観を超えて「そばにいたい」と思える,ただそれだけの共感.
    でもそれが,たぶん,いちばん尊くてむずかしい.
    そうなりたいけど,でもどこか違う気もして…
    そのモヤモヤを抱えながら,最終話「対岸の叔父」に辿り着いたとき,
    “ぼく”の視線に,自分の気持ちが少しだけ重なった.

    思い出したのは,シルヴァスタインの『おおきな木』(これもきっと,読んでみてね)の最後の一言.
    「でも,それはほんとうかな?」
    優しさや共感が,もしも犠牲の上に成り立っていたとしたら,
    それはほんとうの優しさだろうか?
    その問いを,そっと胸に残してくれる一冊だった.

  • 『しあわせとやらが1種類ではないことぐらい、わたしたちはもうちゃんと知っているはずだ、』p96

    短編集。

    殺し屋、コードネーム:保留。
    そういう設定が斬新で、面白かった。
    私もたまにはそんな設定でいく1日があってもいいかも。
    なんて、思って想像したら笑けてきました笑

    とてもユーモア満載の作品でした。

  • 生きづらさを抱えて生きていく
    私の周りにもいそうな、
    そんな人達が主人公の短編集です。

    寺地はるなさんの作品はいつだって私に優しい。

    私の人生、このままでもいいのかな。
    別の道もあったんじゃないかな。
    そう思い迷うことも多々あります。
    でも、今のままでいいんだ、大丈夫だよと
    教えてくれる作品ばかりです。

    人にはそれぞれ違った孤独がある。
    その孤独にそっと寄り添ってくれる。
    無理して頑張らなくても大丈夫。

    「夢の女」と「深く息を吸って」が特に好きです。

  • 寺地はるなさんの作品で、表紙のイラストの色が優しく可愛かったので購入した。1作目の「コードネームは保留」、女子同士が出会うお話が好きなので良かった!表題作の「タイムマシンに乗れないぼくたち」も少しづつ環境が良くなって主人公の少年自身も強くなっていく前向きな感じにホッとした。
    全体的に少し暗め、世知辛く生きづらい世の中で低空飛行な中にも必ずある少し良いことや小さなしあわせ、勇気をもらえること、そういうのを見つけられたら『なんとかやっていける』みたいな励ましをもらった感じがした。

  • 短編集7編
    普通と言われる人から少し外れた人たちが主人公.でもそれぞれがその人らしく生きている様子がすごく真っ当なように思えてきて,がんばってねと応援したくなるような主人公たち.

  • 読んでいて少し辛くて、でも、ほんの少しだけ前向きになれるかもしれない本でした。「夢の女」が好きだったけど、きっと、時と場合で好きな話が変わるだろうなと思える本でした。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。21年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞、24年『ほたるいしマジカルランド』で大阪ほんま本大賞受賞。『大人は泣かないと思っていた』『カレーの時間』『ガラスの海を渡る舟』『こまどりたちが歌うなら』『いつか月夜』『雫』など著書多数。

「2025年 『そういえば最近』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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