朝が来る (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.82
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本棚登録 : 1070
レビュー : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167991333

作品紹介・あらすじ

長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地。河瀨直美監督も推薦!このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。「解説」より

感想・レビュー・書評

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  • 申し訳ありません。この文庫本を読んでのレビューではなく、単行本発売時に読んで書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>

    「本の雑誌」を読んでいたら、「本の雑誌が選ぶ2015年のベスト10」発表という座談会の冒頭で、この「朝が来る」が真っ先に推薦された。
    (最終的には第三位になったけれど)
    そういえば───この本のレビューを書いていないことに気付いた。

    「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」を読み終えた後、あまりの感動に号泣し、何度も何度も最終章あたりを読み返し、それ以来、ファンになった若き天才作家“辻村深月”。
    しかも、女性の奥底のドロドロとした心情を描く“黒辻村”作品ではなく、いつも最後に涙が頬を伝わり落ちる“白辻村”の作品だったというのに。

    何故に書かなかったかな? 
    この本を読んだ頃は、出張ばかりで仕事がやたらと忙しく、お決まりの「冒頭部分の引用」さえもできなかったからだ。

    と、ここまで書いて、とりあえず「朝が来る」とタイトルを付けてワードで保存しようとしたら“同じ名前の文章がすでにあります”という“アラート”が出た。

    うん? 書いたのか? ブクログに載せていないだけだったのか? と思いながらファイルを開くと、ほんのさわり部分だけ書いて途中でレビューは終わっていた。

    ───読了後、涙が止まらなかった。
    いつの間にか、“ひかり”に感情移入していた。ラストで救われた。先も気になるけれど、それまでの展開から想像しそうになった悲しい終わり方でなくてよかった。ひかりは、可哀想な子だと思う。───

    これだけだ。
    でも、今あらためてこのレビューの書き出しを読むと、この短い文だけでもこの作品の素晴らしさを鮮明に思い出すことが出来る。

    ───子供に恵まれず「特別養子縁組」という手段を選んだ母親。
    ───子供を産みながら、手放さなければならなかった中学生の母親。

    その狭間で、純粋無垢に育った可愛らしい男の子。

    手元に実際の本がないので、それぞれの固有名詞は忘れてしまったが、あわやという場面で、“ひかり”が救われたシーンが脳裏に蘇って来た。
    たしか「みーつけた」というような台詞があったように思う。このシーンを読んで、涙があふれ止まらなくなったのを覚えている。

    「闇が深ければ深いほど、最後は明るい光が射し込んでくる。これからも気取ることなくハッピーエンドを提示していきたい」
    作者である辻村深月は、2009年7月に発行された文芸誌「野生時代」のインタビューで、そう語っていたはずだ。

    それが何故か直木賞を意識し始めた辺りから、作風が変わった。女性の嫌な内面を炙りだすような作品を世に出し始めた。彼女にどういう心境の変化があったのか、ぼくには分からない。

    彼女はその路線の作品「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した。文学的観点から見れば、その作品のほうが完成度は高いのかもしれない。
    でも、それまで彼女を支えてきた、或いは彼女のデビュー時からのファンだった読者は裏切られた気持ちになったのではなかろうか。
    ぼくたち、わたしたちが読みたいのはこんな「辻村深月」ではない、と。
    「ベタでも、ハッピーエンドを提示する作品を書いていきたい」と言っていた彼女は何処に行ったのだと。

    彼女自身もそれを薄々自覚していたようで、その後「白辻村」「黒辻村」と分類分けされるようになった作品群を発表するとき、「白辻村」路線の作品を書いた時には、
    “昔からわたしを支えて来てくれたファンの方のために書きました”という発言もあった。

    小説というものの存在意義は何処にあるのだろう。
    あまりに難しすぎて、とてもいい加減なことは書けないけれど、ごくごく個人的な希望だけを言えば、ぼくは面白い小説が読みたい。

    面白いという言い方には語弊があるかもしれないけれど、読み終えて、心が豊かになる。カタルシスを覚える。感動の涙でむせび泣く。
    この本に出逢えて良かった。まだまだ人間も捨てたものじゃない。そんな気持ちを抱かせてくれる小説を読みたいと思っている。

    辻村さんの初期の作品群で抱いたぼくの感想はそういうものばかりだった。
    そして、そのような感動を覚える小説家の作品には、なかなか巡り合えない。

    だから辻村さん。
    今後もできるだけ多くの「白辻村」路線の作品を世に送り出して欲しいと願っているのです。
    そんな小説を読み終えたとき、頑張ろう、頑張って生きていこう。
    そう思えるような、優しい光が射し込んで来る気がするのです。
    これからもよろしくお願いします。<(_ _)>

  • この本を手に取る直前に、『特別』養子縁組という制度を知った事もあり、物凄い勢いで読み終えた。

    離れているにせよ、一緒に暮らしているにせよ、どれだけの形の親子がいるんだろうなと改めて思った。

    私にとって大切な本になりました。

    結末は肩を撫で下ろしましたが、この先が読みたくてたまりません!

  • 一気読みした。最後は泣けてしまった。
    育ての親夫婦と、生みの親の両親の対極さから、親になることの責任の重さを改めて感じた。

  • 私は普通じゃない、地味じゃない、あなた達と同じところにいない。必死で大人になろうとした学生時代のことを思い出した。私は劣等感の塊で、そう思ってるのに本当はあの子達に追いつきたくて、だけど怖くて不安で飛び抜けたことは出来なくて、勇気のない子だった。だからひかりとは違っていたんだと思う。
    妊娠の仕組みとか、妊娠したらどうなるとか、予期せぬ妊娠をしたらどうしたらいいとか、そうゆう知識がないことも怖いことだと思ったけど、自分にとって何が大切なのか、どんな自分になりたいのか、自分とは違う周りを受け止めるにはどうしたらいいのか、自分の考えることが本当に正しいことなのかを知る術を知らないことは、簡単に自分を追い詰めてしまうのかもしれないとも思った。
    そしてひかりの、お腹の子供を大切に思う気持ち、本当は守るべき存在なのに、唯一自分が頼りに出来るような存在だと思う気持ちもよくわかる。それが失われた時、自分ではどうしようも出来ない時、どれ程の痛みが伴うのだろうか。ごめんなさい、ありがとうございます、この子をよろしくお願いします。それは、中学生の女の子としてではなく、あの子のお母さんとしての愛情と、謝罪と、そして幸せにしてほしいという強い願いが、込められていたんじゃないかなと思う。
    読み進めるのは、本当に心が苦しかった。こんなことになるはずじゃなかったのに、ちゃんとしたかったのに、その方法がわからない。誰も教えてくれない、興味を持ってくれない、認めてくれない、その現実はどれ程苦しいものなのだろう。そんな周りを私は責めたいのに、きっと私もまたひかりのような子が近くにいたら関わらないようにするのかもしれない。巻き込まれたくないと思うのかもしれない。それは私が養子をもらった立場だったとしても、この子を産んでくれた私たちのお母さんなんて思わず、見下してしまっていたかもしれない。だからこそ、最後。朝斗のお母さんがひかりを見つけた時、あぁ、このお母さんは、ひかりがこの6年間に何があったかを悟ったんだなと感じた。やっとひかりに、次にどうしたらいいかを教えてくれる人が現れた。
    朝斗がいるから、養親達が憎らしかったし、産みの親の喪失感を理解できた。だからひかりは救われた。朝斗の存在が、ひかりにも朝を運んできたのだと思うと、やっと心の重苦しさがとれて、とっても眩しい希望の光を感じた。

  • ★4.0
    特別養子縁組で朝斗を迎えた佐都子と清和、恋人との間に子どもが出来た中学生のひかり。前者で綴られる不妊治療に、こんなにも過酷なのか!と驚愕するばかり。対する後者は、浅はかなことに間違いはないけれど、誰にも理解されない心と堕ちていく姿が、ただただ痛々しかった。勿論、ひかりにも原因はある。が、彼女の近くに佐都子のような人がいれば、と思わずにはいられない。ラストの二人の邂逅があまりにも優しくて、やっとひかりにも朝が来たことに自然と泣けてしまった。解説でも触れられた通り、中盤の朝斗視点の数ページも印象的。

  • 途中で止められず一気読み。
    ひかりの章から佐都子に戻るのかと思いきや、そのまま終わったのが少し残念。もう少し先も読みたかったが、光の見える結末でほっとした。
    しかし、佐都子ってほんとに出来た人だなあ。

  • わたしにも子がいるからだろうか。不妊に悩んだことが少なからずあるからだろうか。年齢的に子を授かることを諦める友人が出てきたからだろうか。

    佐都子の心情が身に迫って感じられ、何度も目頭が熱くなった。

    佐都子と夫は6年間の不妊治療を乗り越え、夫婦二人の人生にようやく前向きになった41歳の時、「ベビーバトン」という特別養子縁組の仕組みで子どもの命を救う取り組みをしている団体を通して、男の子を受け取った。

    明けるか明けないか分からない長い夜のような日々を過ごしてきた夫婦にとって、その子は眩しい朝のような存在。産んでくれた幼い母親への感謝も込めて、「朝斗」と名付けた。

    賢く優しく育った朝斗ももう6歳。
    親子の信頼関係も着実に築き、自分の他に、朝斗をお腹で育ててくれた「広島のお母ちゃん」の存在もちゃんと伝えて、家族は満ち足りていた。
    そんな中、朝斗の母親を名乗る女性から、「朝斗を返して欲しい。さもなくばお金をくれ」と脅迫めいた電話を受ける。

    朝斗を産んだ母親は、中学生の時に妊娠出産を経験した。幼いながらに真剣な恋心や「真面目一本」の両親への反感など、共感できることも多々あるものの、どうしても拭いきれない浅はかさや自己中心的な考え方に歯がゆくなってしまう。
    金銭トラブルに巻き込まれて朝斗の育ての両親への脅迫を思いついた時、「自分の両親程の年齢のくせに、自分でもできた妊娠出産くらいができないのか」と下に見る気持ちが描かれていて、頬を張りたい一心が芽生えた。

    それでも弱い自己との葛藤の末「母親」である誇りを最後の瞬間に取り戻したひかりに、少し、救いを見た。
    彼女にとっても息子や息子の育ての親たちの存在は、朝のようなものになるだろう。


    作中では、養子をとることに迷いを持つ夫婦の会話も描かれていた。悩む妻に対して夫が一言。「血の繋がりのない子どもって言っても、もともと俺と君だって血が繋がっていないけど家族になれたじゃないか。きっと、大丈夫だよ」
    どれだけ勇気が湧き、励まされる想いだっただろう。こうやって、夫婦はより家族になるんだな。

    また、ひかりが息子を生む直前、施設の寮の近くを散歩していて、圧倒的にきれいな空を見たときの気持ち。
    「涙が出てくる。それを拭う代わりに思った。
    覚えていよう、と。
    逃げることも、育てることも、この子の誕生日を祝うこともない代わりに、覚えていよう。この子と今日、一緒に、すごくきれいな空を見たことを。一緒に見られた、二人で一人の、誰にも邪魔されずにいられた、この時間のことを。」

    息子がまだお腹にいた頃の、なんとも誇らしく幸せで、少し不安な気持ちを思い出した。
    手をお腹にあてて息子に話しかけるときの、照れるような満足感を思い出した。
    子を産むこと。産まないこと。産みたくても叶わないこと。
    育てることも手放すことも、夫婦二人で生きていくことも。

    それぞれがそれぞれの状況で、迷いなく、「幸せだ」と言えるように。なによりも子どもが健やかに笑顔で生きていけるように。

    自分の意識やこだわりよりも、時には新しい視点を受け入れることで広がる世界もある。
    清々しい気持ちになれる一冊。


  • もうラスト2ページで涙腺崩壊でした(;_;)
    不妊治療、養子縁組、中学生の妊娠
    そして家族の在り方
    色んなテーマがあってすごく読み応え
    ありました。

    これ、映画化できるんちゃうかなあ
    と思ってたら河瀬直美監督がメガホン
    撮るそうです!
    キャストが楽しみ!

    https://eiga.com/amp/news/20190530/3/



  • 色んな親がいる、と簡単に言うことはできるけど…。子どもの話を、きちんと理解しようという姿勢で聞けたらいいと思いました。読み終わって優しい気持ちになれました。

  • 後半パートは不快感が強いが読みやすさもあって、一気に読破できた
    子どもは親を選べないけど、朝斗くんにとっては本当に良かった

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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