朝が来る (文春文庫 つ 18-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167991333

作品紹介・あらすじ

長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地。河瀨直美監督も推薦!このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。「解説」より

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;辻村さんは小説家。幼い頃から読書好きで、ミステリーやホラー小説等を読んでいたそうです。大学卒業後、団体職員として働きながら、執筆活動を続け、「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞し、作家デビュー。その後に会社を退職し、専業作家になる。「ツナグ」で吉川英治文学新人賞、「鍵のない夢を見る」で直木賞受賞。他にも本屋大賞受賞や多数の文学賞候補となる。
    2.本書;主人公の栗原夫妻は、不妊治療を断念し、特別養子縁組で朝斗の親となる。家族は平穏に暮らしていた。ある日(養子縁組から6年後)突然の電話。それは「息子となった朝斗を返して欲しい」という。生みの親で、望まない出産をしたひかりからの電話だった。四章構成➡【第一章;平穏と不穏(朝斗の幼稚園でのトラブル) 第二章;長いトンネル(不妊治療と特別養子縁組) 第三章;発表会の帰り道(ひかりの現在まで8年間の出来事)第四章;朝が来る(3人の出会い)】
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『第一章;平穏と不穏』より、『「(先生)大空くんが言うには、朝斗くんに押されて、(ジャングルジムから)落とされたという事みたいなんです」「(佐都子)朝斗が落とした、とはっきり言ったんですか。大空くんは」「(先生)はい」「(佐都子)朝斗は、何て言っていますか」「(先生)やっていない、と」「(大空の母)朝斗くんが押して、それで自分は落とされたって言ってるよ」「(朝斗)ぼく、大空くんを推したって、言った方が、いい?」「(佐都子)ここで流されて、朝斗を信じない事は、あの子を手放す事と一緒だ。親である事をやめるのと一緒だ」』
    ●感想⇒第一章は、朝斗がジャングルジムで一緒に遊んでいた友達を落としたという事件。この章には、3つの感動がある。①佐都子が朝斗の「僕は、押してない」という言葉を何があろうと信じた事 ②朝斗の言葉「ぼく、大空くんを推したって、言った方が、いい?」 ③大空の言葉「朝斗くんに押されたのは嘘だから、もう朝斗くんと口を利いてもいい」 ①の感想⇒❝子供が人にケガをさせた❞時には、周囲と問題を起こしたくないので、関係者の言葉を鵜呑みにして、子供を問い詰めがちです。子供の言い分を信じて、周りと対峙する親心。普通の人には真似の出来ない事だと感心。②③の感想⇒子供ながらに状況を考え、発した言葉には感動。大人になっても、無垢な心を持ち続ける人間でありたいですね。
    (2)『第二章;長いトンネル』より『「(佐都子)自分だって仕事の合間を縫って(不妊治療のクリニックへ)通院しているのに、どうして夫は、これを佐都子のみの問題だと思うのだろう。子供は夫婦の問題であるはずなのに、まるで妻の都合に付き合わされてるかのように言われるのは心外だった。夫の中に、思いかけず頑なな古い考えがあるのを目の当たりにさせられた気がして」。その事にも、佐都子は少なからず不機嫌になっていた』
    ●感想⇒企業では、❝男女平等の名の下に、賃金や仕事に性差を設けない❞という活動が活発になっており、大変良い事だと思います。しかし、家庭に目を向けると、共働き世帯が増加した事もあり、夫婦で役割分担が進んでいるのも事実です。周辺を見ても、炊事や洗濯等、一定の用務に夫婦分担があるようです。しかし、(私見です)子育てについては、母親の負担が大きそうです。その分、父親は別の事で頑張る事ですね。この事は、家庭の事情で異なるので、夫婦で十分話し合う事です。さて、不妊治療の件ですが、佐都子の言い分は至極当然と思います。夫婦で、子供を授かりたいと思うなら、夫も妻と同じ目線で行動するべきです。不妊治療を付き合わされているとは言語道断。今でも封建的な家庭では、親から代々続いているような男優位の考えがあるようです。社会の変化に対応して、自分達も変わらなければいけませんね。子供は親の行動をよく見ていますよ。
    (3)『第三章;発表会の帰り道』より、『「(ひかり)いろいろ大変だったんだよ。私達の赤ちゃんはね(養子に出した)」「(巧)兄ちゃんから言われたけど、中絶って、女の方が体の痛みはあるかもしんないけど、それがない分、精神的な苦痛は男の方がもっとだよな。オレ、何度も自分のこと人間失格だって思ったよ。お前のそばにいる資格ないよ」「(ひかり)目をそらす。横顔の頬が赤く染まり、目に涙が浮かんだ」・・・巧の中では、(ひかりは)終わった女なのだ』
    ●感想⇒「中絶って、女の方が体の痛みはあるかもしんないけど、それがない分、精神的な苦痛は男の方がもっとだよな」。巧の言葉には、非常に憤りを覚えます。二人は中学生で、望まぬ妊娠をしてしまったとしても、精神的な苦痛は男も女も違いなく大きいものだ思います。それに加え、女性には、一定期間、わが子を自分の体に宿し、出産するという肉体的負担は計り知れません。それを差し置き責任逃れのような発言に虫唾が走ります。巧は中学生とは言え、少しはひかりを労わり、わが子の事を心配をするのが人間というものです。両親も二人の気持ちに寄添うことなく、事務的に処理していく様子が書かれています。二人に寄添ってあげるのが親でしょう。
    4.まとめ;この小説は非常に重いテーマを提起しています。不妊治療、中学生の妊娠・出産、特別養子縁組。これらを、❝家族❞といキーワードで描いているのが印象的。読者の救いになっていると思います。❝①ジャングルジム事件での佐都子のわが子を信じる強固な意思 ②不妊治療を介した夫婦の絆 ③厳格な家庭で育ったひかりの気持ち・・・❞。私も普通と言えない環境の中で育ったので、ひかりの親に反する人生観に一定の理解をします。それにしても、第四章のラストシーンには涙腺が緩みます。朝斗・佐都子・ひかりに幸多からんと願うばかりです。(以上)

    • アールグレイさん
      こんにちは♪ダイちゃんさん

      お名前は以前より存じていました。私のフォロワーさんだとばかり思っていました。違ったようなので、迷わずフォローさ...
      こんにちは♪ダイちゃんさん

      お名前は以前より存じていました。私のフォロワーさんだとばかり思っていました。違ったようなので、迷わずフォローさせて頂きました。
      今私は、赤い月の香りのレビューを書き終え、答えは市役所3階に、を読み始めるところです。
      どうぞよろしく(#^.^#)
      2023/08/06
    • ダイちゃんさん
      アールグレイさん、今晩は。ダイです、コメントありがとうございます。フォローして頂き、恐縮です。私は、千早茜さんの本を読んでいないので、読んで...
      アールグレイさん、今晩は。ダイです、コメントありがとうございます。フォローして頂き、恐縮です。私は、千早茜さんの本を読んでいないので、読んでみたいと思います。こちらこそ、よろしくお願い致します。
      2023/08/06
  • 思っていた内容と違った、というのがまず読み終えてすぐの印象。
    いや、正確に言うと、読み終えて少ししてからの印象。読み終えた直後は、なんだかうまくまとまらなくて、しばらく呆然としてた。

    「思っていた内容と違った」というのはもちろんいい意味で、だ。
    文庫本の裏に記載のある、あらすじ部分だけ見ると、特別養子縁組で子どもを授かった夫婦のもとに、産みの親が「子どもを返してほしい」と言ってきて、とミステリーでも始まるような印象を与える。けれど、一番描きたいのは、産みの親が「子どもを返してほしい」と言うに至った過程にある。

    解説は、10月に映画化が決まっているこの作品の監督を手掛ける、河瀨直美さん。
    その河瀨さんの解説の中で、「全体のバランスとしては352ページの中、佐都子を描く前半の第一章、第二章が合わせて151ページ、ひかりを描く第三章が173ぺ―ジと、概ねふたりの女性の人生はバランスよく描かれている」と記載があり、続く「けれど読み終わった後の印象としては、『ひかり』に感情移入している人も多くいるのではないだろうか?」にあるように、産みの親であるひかりの人生があまりにも濃密で壮絶であることから、この作品の三分の二がひかりに費やされていたかのような感覚を持つ。

    特別養子縁組だけに限らず、赤ちゃんを産み育てられないという方と赤ちゃんのための制度がある。「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」でも辻村さんが描いている「赤ちゃんポスト」。こちらもその支援策の一つだ。
    これらの制度についてはここでは論じない。けれど、テーマとして特別養子縁組や赤ちゃんポストを挙げて作品を描くというところに、辻村さんの、児童虐待に対する問題意識の高さを感じる。児童虐待を取り上げるにしても、ありふれたわかりやすいものを取り上げるのではなく、望まない妊娠という、かなり根深い部分にフォーカスしているところに、この問題の複雑性を、より多くの人に理解してもらいたいという思いの強さを感じる。
    この作品では、ひかりの人生が、その複雑性をよく現している。作品の中で「潔癖」と表現されている世界で育ったひかり。傍から見れば普通の家族。しかし、ひかりに焦点を当てて親を見ると、その世界は全然普通じゃない。望まない妊娠の背景には様々な事情があるけれど、ひかりが抱えている背景は、一見わかりづらい。ひかりのプロフィールだけ見ると、「普通の家の子」だからだ。なぜ彼女は「普通の」実家を頼ることができないのか、それがわかりづらい。でも望まない妊娠というのは、こうしたわかりづらさの中にあるからこそ根深いのであって、だからこそみんな想像力で補えきれずに、わかりやすいストーリーに落とし込もうとする。そうすると、「子どもを捨てるなんて信じられない」「避妊しろ」という分かりやすい構図の中に当てはめられる。そして、自身を守れなかった女性が悪者にされる。
    その想像力の乏しさの象徴が、この作品でいうとひかりの彼氏だ。女性は妊娠すると、体調の変化から始まり、どんどんお腹が大きくなり、その中に明らかに生命を感じ取ることができる。女性が生命を宿し、出産に至るまで、一年弱。男性は数十分。この物理的な不平等さはどうにもならない。女性が一年弱、お腹にいる子どもに向けて語り掛ける言葉や、赤ちゃんが生きていることを知らせるサインを、どうしても男性は、女性ほど計り知れない。
    だから、流産や堕胎に対しての想像力も乏しい。もし自分の中に命が宿っていたら。堕胎が何を意味するのか。流産によって、妊婦がどんなダメージを受けるのか。想像してみてほしい。

    ひかりは、意図しない妊娠によって大きく人生が変わった。それを彼女がどうとらえているか。それを、後悔しているのか?そして、この大きく変わった、「失敗した」人生は、若年で妊娠したことによるものなのか?もし、「普通の」人生を送っていたら。「失敗しない」人生を送っていたら。ひかりの人生はどうなっていただろう。
    わたしは思った。それでも、ひかりの母がひかりの母のままである以上、遅かれ早かれ、どこかのタイミングで何かが起きたのではないか、また別の何かが家族を襲ったのではないか、と。

    ※こちらはnoteにも記載させていただきました。
    https://note.com/tattychannel/n/nade385b63f8c

    • naonaonao16gさん
      ドラ小瓶さん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      湊かなえさんの「告白」。
      あれは本当に衝撃ですよね。映像作品に...
      ドラ小瓶さん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      湊かなえさんの「告白」。
      あれは本当に衝撃ですよね。映像作品にもなっていますが、それでは表現しきれない、まさに活字だからこその力を秘めた作品のような印象です。

      コメントいただいた件ですが、そのように言っていただけて嬉しいです!
      わたしは大量に湊さんの作品を読んだわけではないのと、既読の作品も偏っております…ご了承ください。

      文庫になっているものだと①「ポイズンドーター・ホーリーマザー」。
      めちゃくちゃイヤミスです。母子関係に切り込んだ短編集です。
      母子関係でいうと②「母性」はまさに湊さんによる、母子関係の真骨頂のように思います。
      まだ文庫化されていませんが③「カケラ」も面白かったです。
      ①と③はレビューがあるのでもしよろしければご覧ください。

      個人的にイヤミスが好きなのと母と娘をテーマにした作品を選びがちなので、ドラ小瓶さんがあまりそこに興味がなければ、スルーしていただいて大丈夫です(笑)
      自分でもこうして挙げさせていただく機会をもらって「偏ってんな~」と改めて思いました…(笑)

      もしお読みいただく機会があれば、是非、感想聞かせてください!!
      2021/10/10
    • naonaonao16gさん
      おはようございます!

      「ルビンの壺が割れた」、かなり衝撃のラストってことで話題になってますよね!
      気になりつつ読んでないですが…(笑)

      ...
      おはようございます!

      「ルビンの壺が割れた」、かなり衝撃のラストってことで話題になってますよね!
      気になりつつ読んでないですが…(笑)

      「母性」話題になってたと思います。
      是非ご覧ください!
      レビューお待ちしてますね^^
      2021/10/11
  • 2015年 第3回新井賞受賞
    2015年 第4回静岡書店大賞受賞

    第一章 平穏と不穏
    恵まれた家庭に育つ幼稚園の男の子とその両親の平穏な生活
    そこに不穏な幼稚園でのトラブルが発生する
    このトラブルでまず気持ちを掴まれ、解決すると
    男の子の母親という女性から連絡が入る

    第二章 長いトンネル
    前章の夫婦は、長く辛い不妊治療を経て特別養子縁組を決意し、中学生で妊娠した少女の子供を引き取る事にした
    その現実的な過程と心情が丁寧に書かれる

    第三章 発表会の帰り道
    中学生で妊娠した少女の 幼児期の記憶
    中学での恋
    「ベビーバトン」での出産
    その後、親や既定の生活から転落していく様子を描く
    少女の無知で短絡的な行動の数々は、同情さえできないが、こういった現実はあるのでしょう
    少女は自分の意思で子供を手放したわけではなかった 彼女の人生を修正しようとした家族も疎ましかった
    頼る事を恐れた少女は、堕ちていくが、
    最後の崩壊を救ったのは、彼女が産んだ子供への気持ち 彼女の子供を育てている母親の慈愛
    どの子供も望まれて生まれて欲しいと思わせる良作でした

    • みんみんさん
      この作品って表紙が辻村さんぽくないから後回しにしてた(๑•́ ₃ •̀๑)
      この作品って表紙が辻村さんぽくないから後回しにしてた(๑•́ ₃ •̀๑)
      2024/06/24
  • 不妊治療や家庭環境の場面などは辛く過酷な描写も多かったですが、心洗われるようなラストだったと思います。

    ストーリーとしては、子どもを望むも不妊治療が上手くいかず、特別養子縁組にて子供を育てる夫婦のもとに、1人の女性が現れる。その女性は自分が実母であると名乗るが、夫婦は実母と1度会っているため、容姿が似ていないこと、情報に怪しい点があることなどを理由に拒絶する。そして、後日、警察からその女性が本来の実母であったことを伝えられ…といった内容。

    個人的に1番印象に残ったのは、不妊治療の描写かなと思います。ただでさえ、お金もかかり治療内容もしんどいのに加えて、周りから子どもを急かされたり、プレッシャーをかけられたりするのは読んでて、とても心苦しいものがありました。

    最近、身の回りで子育てをし始める友人が増えていく中で、親としての強さというものを本作で感じれたような気がします。

  • 子供に読ませたり
    映画を見せた方が良い作品

    命の大事さ
    性への責任
    自立の大変さ
    お金の大事さ
    人の怖さ
    思いやる気持ちの必要性

    全てが詰まってます

  • 劇的な終わり方でその映像が瞼に残っています。
    そして、各場面が、蘇ってきます。
    こんな本は、めずらしいです。
    2022年のベスト本です。

    建設会社で働く栗原清和(きよかず)と専業主婦・佐都子(さとこ)夫妻が、特別養子縁組で生まれたばかりの男の子(朝斗)を貰い受ける。朝斗と栗原夫婦の生活と、過酷な生活を生きてきた朝斗の実母との物語です。

    初夏、六月。同い年の栗原清和と佐都子夫妻は、神奈川県、武蔵小杉のタワーマンションの34階を購入して。41才の時に、特別養子縁組を仲介する民間団体「ベビーバトン」から、広島で中学生の「片倉ひかり」から生まれたばかりの朝斗(あさと)を貰い受け特別養子縁組を組む。
    夫婦は、真実は早いうちにと思い息子の朝斗が3才の時に、朝斗を生んだお母さんがいることを伝えている。朝斗は、実母を「広島のお母ちゃん」と佐都子を「お母さん」と呼んでいる。いま朝斗は、6才になり照葉幼稚園へ通う。
    突然に片倉ひかりと名乗る20才ぐらいの女性が、朝斗を返すか、お金をと言ってくる。その後、突然に警察官が片倉ひかりの写真を持って訪ねて来て、ここに立ち寄ったあと行方が分からないと。物語は、ここから始まって行きます。片倉ひかりは、どうなったのか……。

    同じ職場に勤める佐都子と清和が知り合ったのは29才の時だ、交際1年を経て結婚した。佐都子は、仕事をしながら子供は、出来ればその時に考えればいいと思っていた。佐都子が、35才の時に実家の母から言われて、不妊治療専門のレディースクリニックへ行きはじめる。
    清和は、無精子症だと診断される。顕微授精を試すことになる。清和の睾丸を切り裂き、精子を取り出し、佐都子の中に注射でいれる。その苦難で、過酷な治療を5回行うことが出来るが、3回目で2人は涙を流して治療に行くことが出来なかった。

    40才に近い佐都子と清和夫婦が、不妊治療をやめて1年ほど経った頃にテレビで特別養子縁組を仲介する民間団体「ベビーバトン」の番組を見て、説明会に参加した。40代ぐらいの女性が、40才で区切るのかと。主催者は、40才は、子供が20才になった時に、親が60才ということを考慮していると。
    ただし当会は、40才で区切っていないと。それから1年後に広島で朝斗を貰い受けた。片倉ひかりを探してきた警官が、片倉は勤め先から現金を盗んだ、ここに来ればお金が手に入ると言っていたと。

    栃木県、鹿沼市に住んでいる片倉ひかりは、中学1年生の時から同じ学年の麻生功(たくみ)と付き合っていた。そして2年生の時に体調を悪くして母と内科を受診した時に、妊娠を告げられた。その足で産婦人科を受診したら23週目に入っていると。
    中絶が可能なのは妊娠21週と6日までだと。それからは、ひかりが知らない所で「ベビーバトン」と話し合って。ひかりは、妊娠2ヶ月前に広島にあるベビーバトンの寮に入り出産にそなえる。

    ひかりは、出産して男の子を40代と思われる夫婦に渡し、とめどなく涙を流しながら我が子と別れる。そして栃木の両親のもとに帰り同じ中学校に戻り、麻生功と別れ、学校に馴染めず。高校へ進学するが、母の希望する高校に進学できず、母を落胆させる。
    母の否定的な言葉が重荷となり。我が子を生んだ幸せだった広島へ家出する。そこで勤めた新聞店の過酷な労働の中で心を許したトモカに勝手に50万円の保証人にされて、集金に来たヤクザから逃げるように広島を出て行く。

    ひかりは、何気なく横浜で電車を降りて、ビジネスホテルの清掃婦として働きだした。大変な労働だったが、日々充実していた。そこにヤクザが集金に来る。ひかりは、ヤクザを目の前にすると、払わなくていいのは分かっていたが、どうしても恐怖で払ってしまった。
    手持ちの金以外は、ホテルの金庫から盗んだ。そして武蔵小杉の栗原家に行けばお金が手に入ると思っていったが。栗原夫妻に、あなたは朝斗の実母ではないと。栗原夫妻は、広島で会った小さく色白のイメージが強く、いまの日に焼けて、黒く体も大きくなったひかりを「片倉ひかり」と思えなかったが。警官がきて、片倉ひかりだと分かり……。

    ひかりは、とうとう行き場をなくして、自分を消すために歩道橋から、下の車をめがけて飛び降りようとした所に。ひかりを探していた佐都子が、後ろから、ひかりの体にしっかりと抱きつき手放さなかった。「ごめんなさいね。わかってあげられなくて。ごめんなさいね。追い返したりして。ごめんなさい、わからなくって」。一緒にいた朝斗が「ねえ、お母さん。この人、だあれ?」。佐都子が「朝斗の"広島のお母ちゃん"だよ」と。朝斗の目が、驚きから、明るい光が差し込まれる。

    【読後】
    音読していて、先が気になって読もうとしたが、途中で涙が出て来てもう声を出して読むことが出来なくなって、その日の音読をやめたことが最後を含めて3ヵ所ありました。
    不妊治療の所では、あまりにも清和の……気持ちが伝わってきます。こんなにも、不妊治療というのは人格を、心を傷つけられるものか。世間一般では結婚したら子供を授かるのが、当然と思われているなかで子供を授からない夫婦の苦悩が感じられます。
    この物語は、子供の心の動きを巧みに書いた描写が凄いです。そして朝斗を信じる佐都子の芯の強さが書かれています。最後は、子供の目線で語るところが、いままでの映像が頭に浮かび、泣きながら最後まで声を出して読みました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2022年8月22日から27日まで、音読で 辻村深月さんの「朝が来る」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2018年9月に文春文庫から発行された「朝が来る」です。本の登録は、文春文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    朝が来る
    2022.05埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2022.08.22~27音読で読了。★★★★★
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • すごい!圧倒的なラストに感動!

    不妊治療の末、特別養子縁組で息子・朝斗を授かった栗原夫妻のもとに、産みの母親・片倉ひかりから「息子を返してほしい」と電話がかかってくる…

    前半は栗原夫妻の視点、後半はひかりからの視点で書かれている。
    栗原夫妻の壮絶な不妊治療の辛さは、読んでいて胸が苦しくなったし、中学生で妊娠して、子どもを手放さざるを得なかったひかりの無知が故の悲しさには、やるせない思いを抱いた。

    心がかき乱された上での想像もつかない結末。幸せとは何か?否が応でも考えさせられる。

    辻村深月さんの小説を読むのは、「傲慢と善良」に次いで2作目。どちらの作品でも傲慢で善良な親が子どもを苦しめる。親は子どもの幸せのためにもっと謙虚にならないと…と、自分のことを省みつつ、思った。

    • やまさん
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管...
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管理するようにしています。
      ① なんとなく・青空 / 工藤直子 / 詩 / 本 /読了日: 2019-12-11
      ② 螢草 / 葉室麟 / 本 / 読了日: 2019-12-16
      ③ あなたのためなら 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 /読了日: 2019-04-10
      ④ 甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 / 読了日: 2019-05-04
      ⑤ あきない世傳 金と銀(七) 碧流篇 / 田郁 / 本 /読了日: 2019-09-14
      ⑥ てらこや青義堂 師匠、走る / 今村翔吾 / 本 / 読了日: 2019-08-27
      ⑦ ひかる風: 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(四)  / 中島久枝 / 本 / 読了日: 2019-07-23
      ※もしよろしければ、皆様の昨年感想を書かれたものの中からベストの順位を教えて頂けたら嬉しいです。

      やま
      2020/02/07
    • たけさん
      やまさん、コメントありがとうございます。昨年読んだ本の中のベストですね。ご紹介ありがとうございます。
      時間ができたら自分も振り返ってみたいと...
      やまさん、コメントありがとうございます。昨年読んだ本の中のベストですね。ご紹介ありがとうございます。
      時間ができたら自分も振り返ってみたいと思います。
      2020/02/07
    • やまさん
      たけさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      やま
      たけさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      やま
      2020/02/08
  • 最後の解説で「ひかりに感情移入した人は多いんじゃないだろうか」との一文がありましたが、はじめはひかりに全く感情移入できませんでした。

    ひかりのことを思ってくれる人はたくさんいたのに、何故それを受け入れないのか。何故堕ちるところまで堕ちて、犯罪を犯してしまったのか。
    ベビーバトンの浅見さんだって、ホテルの浜野さんだって、ひかりのために考えて行動してくれたのに。

    でもよく考え、ひかりがそうなったのは誰も信じられなくなったからじゃないか、と思います。
    親からは携帯を隠れて見られ、何の疑いも持たず一生添い遂げると思っていた巧からは別れを迫られ。もう誰もひかりを信じてくれないし、自分も誰も信じない。そう思うほどひどいことが起こってしまったから。

    自分の身近にはないことだし、多くの人が他人事に捉えて終わるような話。
    ひかりがしたことは許されることではありませんし、学もなく経験も浅い少女が一人で生きられるほど、世間は甘くありません。

    でも自分は朝斗の母親ではないと言った時の、ひかりの心情はどんなものだったろうと思います。
    あのラストをきっかけに、ひかりの人生が少しずついい方向に進んでいくことを望みます。

    そして、朝斗は本当にいい夫婦に育ててもらっていますね。特に佐都子さんの最後の行動には驚きました。

    • アールグレイさん
      こんばんは、勉強は、はかどっていますか?
      明日は月曜日、また仕
      事かな。FIGH !
      時間がもったいないので返信無用!(-_-)
      こんばんは、勉強は、はかどっていますか?
      明日は月曜日、また仕
      事かな。FIGH !
      時間がもったいないので返信無用!(-_-)
      2021/04/11
  • 幼稚園や保育園に子どもを預ける家庭ではよくある子ども同士のトラブル、そしてママ友たちとの付き合いに見え隠れする光と影。そういったお話を主軸に展開していくのかと思ったら、一本の電話をきっかけに幸せだった日常に暗い影が差し始め、不妊治療、そして『特別養子縁組』の過去が語られます。

    子どもを持つことが如何に難しいのか、欲しいと思えば思うほどに遠のいていくあまりにも厳しい現実。それが包み隠さずに描かれる、あまりに生々しいストーリー展開に読むのがとても辛くなりました。実際、日本で不妊に悩む夫婦は5.5組に1組、不妊治療を受けている人は50万人を超えているという統計があるようです。でも、当事者になってみないとなかなかピンと来ないのも現実なのだと思います。読み終わった後に、本文で語られていた不妊の治療法について調べてみましたが、それが如何に厳しく、辛いことかを改めて認識させられました。この瞬間も夜が明ける日が来るのかと思う日々を過ごされている方がたくさんいる。これは決して作り話とも言い切れない世界、そんな風に思うと余計に胸が締め付けられるように感じました。
    一方で後半はさらに重い展開を見せます。『特別養子縁組』の対になる側の視点です。望まぬ妊娠とどこまでも堕ちていく青春が描かれます。他の作品でもそうですが、辻村さんが描く『人が堕ちていく様』は気持ち悪くなる位に胸を締め付けてきます。『ひかり』は決して特別な子でも特別な家庭の子でもなかった。ごく『普通』の中学生だったはず。それが、ほんのちょっとしたことで、ほんのちょっとしたズレをきっかけに人生が歪み暗転していく、歪みだすと止めどもなく崩れていく人生が描かれていきます。こんなに苦しくて生きていく意味があるのか。自分の存在は何なのか。『普通』に生きていくって本当に難しいことなんだ、『普通』というのはもしかしたら偶然と言ってもいい位『特別』なことなのかもしれない。『ひかり』の話を読んでいてそのようにも感じました。

    人は弱い生き物です。立ちはだかる壁、負のスパイラルから抜け出すには闇が深ければ深いほど困難で勇気が必要です。そして、そこから抜け出し、前を向くには自分自身の強い意志が必要です。でもこれが何よりも難しい。そんな中、『ひかり』は、再び前を向くきっかけをもらいます。うっすらと空が白む瞬間。これまでの道のりがどんなに暗くても、どんなに長くてもきっと夜は明ける。そして必ず朝が来る。これをきっかけとして『ひかり』はまた新たな道を歩き出せる、走りだせる。本来交錯するはずのなかった産みの母と育ての母、子どもを作りたくても作れなかった女性と、子どもを作る気など全くなかった女性の人生が交錯する。希望を感じさせる『朝』と無限の可能性を連想させる『斗』を組み合わせた『朝斗』という名前、漆黒の闇から抜けて二人に朝を連れてきてくれた存在、お母さんとお母ちゃんの人生ももう心配ない、きっかけを与えてもらった『ひかり』はきっと大丈夫。

    『朝斗』と『ひかり』、運命的な名前に結びつけられた二人だからこそ、きっと輝く未来が待っている。少しアッサリとしたエンディングに物足りなさを一瞬感じましたが、そうだからこそ、読み終わって逆に大丈夫、これで未来に続くんだと感じました。そう信じたいと思いました。

  • 覚悟みたいなものって大切ですよね。思い通りにならなくても

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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