ジブリの教科書4 火垂るの墓 (文春ジブリ文庫 1-4 ジブリの教科書 4)

制作 : スタジオジブリ+文春文庫 
  • 文藝春秋
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168120039

作品紹介・あらすじ

世界が驚いた圧巻のリアリティ兄妹の死が物語るものとは――。山田洋次、與那覇潤、妹尾河童ら豪華執筆陣が、戦争とアニメーション表現の本質について掘り下げる。

感想・レビュー・書評

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  • スタジオジブリのアニメにもなった名作。戦争の悲惨さと兄妹の絆を描く物語です。涙なしでは読めません。オススメです!

  • ジブリの教科書4
    『火垂るの墓』
    ナビゲーター・山田洋次
    弱くてもいい、優しい国へ──『火垂るの墓』私論

    Part1 映画『火垂るの墓』誕生
    スタジオジブリ物語『火垂るの墓』編
    鈴木敏夫 宮さんが持ってきた「『火垂るの墓』クーデター計画」
    高畑 勲 「火垂るの墓」と現代の子供たち
    高畑 勲×野坂昭如 清太と節子の見た“八月十五日”の空と海はこの上なくきれいだった
    野坂昭如 アニメ恐るべし
    ・viewpoint・與那覇 潤
    謎を謎のまま忘れないでいるために──戦後映画史のなかの『火垂るの墓』

    Part2 『火垂るの墓』の制作現場
    [キャラクターデザイン・作画監督] 近藤喜文「以後のアニメキャラクターに強い影響を与えた節子」
    [美術監督] 山本二三「ここは反抗的だったかなとは思っているんです」
    [色彩設計] 保田道世「焼け野原の世界に合うような絵の具と茶カーボンを作った」
    [レイアウト・作画監督補佐] 百瀬義行「充実感を持って仕事ができた作品でしたね」
    [音響監督] 浦上靖夫「僕ら録音屋の限界をどこまで出せるかという挑戦でもあったんです」
    [音楽] 間宮芳生 「蛍とふたりの場面とが重要」
    製作委員会 村瀬拓男「そんなに大切なら金庫にしまっておけばいい」
    [監督] 高畑 勲 「映画を作りながら考えたこと」
    高畑 勲 「モロトフのパン籠」の謎
    映画公開当時の掲載記事を再録!

    Part3 作品の背景を読み解く
    齋藤 孝 語りの「心中物」としての『火垂るの墓』
    城戸久枝 「母と子と。変容する物語」
    from overseas
    ロジャー・イーバート 火垂るの墓
    イラン・グェン フランスにおける高畑作品の受容と『火垂るの墓』の特性について
    野中 柊 色は失われても、光は残った
    加藤周一 一九九八年の想出三つ
    野坂昭如 幻想「火垂るの墓」
    [特別対談] 妹尾河童×吉行和子 神戸・『火垂るの墓』・『少年H』
    大塚英志 『火垂るの墓』解題

    出典一覧
    映画クレジット
    高畑 勲プロフィール

    ■山田洋次。柳田國男の、妹の力。兄の寂寥を妹が慰める→田植え、生産、祭祀祈祷。寅さんの妹さくら。
    ■鈴木敏夫インタビュー。高畑「自己憐憫は描きたくない」。お偉いさんとの会合に、宮崎が電話「どう?」「どうって、まだ喋ってもいませんよ」。駿スナックで「火垂るの墓クーデター計画。こうやれば作品は完成する!」という計画表。
    ■高畑勲の企画書。戦後40年の現代の子供たちこそ、清太に感情移入できる。
    ■高畑と野坂の対談★。あれは心中物。二人っきりの天国。純粋化。妹の衰えを、兄は美しいものとして見ざるを得ない、甘美な妄想。ぼくに内在していたずるさ。妹が死んで、街の灯が蘇って、ぼくは怖かった、こちらがわで生きなければならない、と。8月15日、末期の眼だからこそキラキラして物事がよく見えていた。
    ■與那覇潤★。謎を謎のままにしておく=記憶を風化させない。わかりやすい言い換えをしない。クリシェ、決まり文句、安全な語のほうが、いまや戦争の伝え手として求められる、ねじれ。「ビルマの竪琴」とも比較。解かれざる道徳の問いへのレクイエム。中国由来の日本アニメ史の出自に対する自己言及。
    ■近藤喜文の仕事。
    ■山本二三、保田道世はもちろんだが、卓見なのは音楽の間宮芳生。節子の後ろ姿が印象的、というか、場面として多い……清太の視点。
    ■勲の講演★。
    ■「モロトフのパン籠」の謎★。勲の筆。
    ■野坂昭如の独特な文章★。
    ■大塚英志★。風立ちぬは火垂るへの回答。二郎の妹が成長し医師になる。トトロではメイがススワタリを掌で潰す、火垂るでは節子が蛍をつぶす。死骸の有無。「柳川掘割物語」は「新文化映画」とクレジット。これは戦時下の国策映画だが、戦意高揚ではない、イデオロギーの弱い記録映画であり、転校した左翼青年の受け皿ともなっていた。手塚は戦時中に「桃太郎 海の神兵」という文化映画を見に行ったあと、「勝利の日まで」を周作ノートに描き、はじめて死んでいく肉体を与えた。それが今日まんがやアニメーションが生や死や性を表現しはじめて出発点だ。この流れで火垂るこそが新文化映画。駿はあり得ないことをあり得たように。自分はよく知っていることをクッキリした形で再印象させる、そこにリアリズムがある。ナウシカでは死者が蘇る。火垂るでは死者は死者のままであるところから語り始められる。死者として物語の外に立つ。虫はナウシカにとっては希望や再生。勲においては蟲は死骸となり、死骸にたかる蛆でもある。トトロの不在。ファンタジーの拒否。手塚において声明を与えられた身体が死にゆく身体であったのが、結果、本作のアニメーターたちにとってつらかったことではないか。

  •  何回も繰り返し観た訳でもないのに、展開や1つ1つのシーンを鮮明に覚えているのはそれだけ衝撃的な内容だったからだろう。本書でもちらほら触れられていたが、大人になり親の立場になってから西宮のおばさんの態度・振る舞いが決して意地悪過ぎる訳ではないことがわかった。ただのお涙頂戴ではなく、当時を生きた庶民のリアルを描写した記録映画だ。中でも節子が海に入る前に服を脱ぐシーンは、幼児の動きがよく表現されており、そういう細かなところからアニメの中の話でなく節子のような女の子が実在していたことを観客に認識させる。

  • ジブリの教科書「となりのトトロ」を読んで、「火垂るの墓」も読みたくなって、発売を心待ちにしていた。
    でも表紙の2人に見つめられたら、浮ついた気持ちが萎んでいった。

    私が「火垂るの墓」を観たのは、たしか小学生高学年か中学生の時、節子よりは年上、清太よりは年下ではなかったかと思う。
    記憶がぼんやりとしているのは、日頃から嫌なことはさっさと忘れるようと努めている脳が、「火垂るの墓」の記憶も消去しようと試みたからではないか。
    それでも、消去したはずの記憶が表紙の絵によって少し蘇ってきた。

    「火垂るの墓」は私にとって繰り返し観たい作品ではない。
    まだ一度しか観ていないし、観直す予定もなかった。
    でも、ジブリの教科書を読んで、原作に込められた想いと、映画化に込められた想いを知って、もう一度観たいような気がし始めている。
    清太の年を追い越してからさらに何年も生きたけど、清太のように節子を養う力は依然としてない。
    今この映画を観ることで何を感じるのか、それを知りたい。

  • 火垂るの墓のただ悲しいだけ、ただの反戦ではない、本当のメッセージについて、制作プロセスなども含めて書かれている。
    本当は、心中もの。単純な反戦ではなく、人との関係に馴染めなかったコミュニケーションが苦手な少年が、妹を死なせてしまうと言う悲惨な物語。

  • アニメ化された『火垂るの墓』の紹介本です。解説に徳島大学出身のノンフィクション作家城戸久枝さんが、母となって子どもとみてまた見方が変わったと述べています。あの戦争から遠く離れてしまった世代にも親しまれる作品です。(yori)

  • きっと、一度は目や耳にしたことがある作品ですよね。でも、どのように作られたのか知っていますか?
    故・高畑勲監督が、この作品に込めた、もう語られることのない思いを、この夏、受け取ってみるのはどうでしょうか。
    当時のジブリの様子や、制作秘話も知ることができますよ。また、貴重なカラー絵や、キャラクター設定画なども、載っているので、ジブリファンでなくても、面白い本です! 

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 不思議だ。
    「トトロ」で語られる言葉は、全部いらない言葉に聞こえるのに、「火垂るの墓」で語られる言葉は、1つ1つが重くて、何かを伝えようとしていると感じられる。

    どっちの作品が、優れているとは言えないと思うのだけど、「トトロ」は語られることを拒否する物語で、「火垂る」は語りを誘発する物語であるようだ。

    そこが、宮崎 駿と高畑 勲という2人の天才の、違いなのかも。

    信用できないと思っている妹尾河童の語る野坂のエピソードさえ、ちゃんと聞こえてくる。
    そして、野坂本人にすら、語らせる力が、この映画にはあったのだろう。

    そして、そこまでの作品であるにもかかわらず、監督の高畑自身の欲望は、深く深く、物語のなかに、原作の中に隠されている。

    大塚さんの話は、楽しいのだけども、最近のいつものように、ちょっと自分の政治的な思想に寄せて考えすぎだ。
    自分の政治的な主張を強化するためだけに「作品」があるのだとしたら、それはつまんないことだと思う。
    それから、多くが宮崎との対比で高畑が作った的なことを書いているけれど、どうも、鈴木 敏夫の話なんかを聞いていると、相手の作品を気にしているのは宮崎の方で、もし本当に対比させて作ったのだとすれば、それは、「火垂る」に対比させて「トトロ」が作られているということだと思う。

    おそらく、それ以前の宮崎作品への高畑からのメッセージというのはあると思うけど、多分、「トトロ」の表現の細部を気にして「火垂る」が作られた訳ではないだろう。

    もちろん、この題材を選ぶ時点で、「トトロ」との対比ということは意識されただろうし、宮崎が自分のいなところで、なにをどんな風にかくのか、ある程度は、高畑は知っていたし想像しただろうけども。
    多分、高畑からの直接のメッセージは、「天空の城ラピュタ」と「かぐや姫の物語」が対応しているみたいに、ものすごく長いスパンのもののような気がします。

    歴史に残る映画です。
    見たら、トラウマも残るけど。

    けど、その棘を心に突き立てたまま、ぼくたちは活きていく。

  • 【世界が驚いた圧巻のリアリティ】兄妹の死が物語るものとは――。山田洋次、與那覇潤、妹尾河童ら豪華執筆陣が、戦争とアニメーション表現の本質について掘り下げる。

  • 登録番号:10941 分類番号:778.77ス

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