近代以前 (文春学藝ライブラリー)

  • 文藝春秋 (2013年10月18日発売)
3.83
  • (1)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 92
感想 : 7
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784168130014

作品紹介・あらすじ

文藝評論家の江藤淳氏は1964年、米国のプリンストン大学への留学から帰国し、翌年に本書の元となった連載「文学史に関するノート」を「文學界」で始めた。連載で探求されたのは「日本文学の特性とは何か」という問いであり、探求の対象とされたのは、「近代以前」の江戸文藝であった。

日本にいるとき、「日本文学」の存在は自明であるが、ひとたび日本を離れれば、それは中国文化圏の周縁で育まれた亜種として捉えられる。亜種以上の特性を持っているとするならば、それは何か。本書を貫くのは、そのような切実な問いかけである。

具体的には、幕藩体制を支えることとなった朱子学的秩序を創始した藤原惺窩、その弟子・林羅山の足跡が丹念に追われ、人形浄瑠璃の世界を確立した近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成らの作品が精緻に読み解かれていく。 江藤氏は、中国大陸からの圧倒的な外圧や影響が強く意識され、それによって乱された日本語の「自然な呼吸」を取り戻そうとするときに、日本人が古典として持つに足る「日本文学」が生み出されてきたことを繰り返し書く。

「日本文学の特性とは何か」を探求しながら、日本人や日本語にとって、「文学」とはどのような営為であったのかを深く考えさせる刺激に満ちた文藝批評である。

2013年10月創刊の文春学藝ライブラリーの第一弾。解説=内田樹。

みんなの感想まとめ

日本文学の特性を深く探求する本書は、江戸文藝に焦点を当て、近松門左衛門や井原西鶴といった作家たちの作品を通じてその魅力を解き明かします。著者は、日本文学が中国文化圏の影響を受けながらも独自の特性を持つ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み


  • 日本文学の特性を紐解いた本

    文藝春秋 江藤淳 「 近代以前 」

    著者の日本文学を見る目は かなり鋭い〜日本の文学者は社会の落伍者であり、文学は外来思想に対する恨みを含んだ反発であるとのこと


    江戸文学を近松門左衛門と井原西鶴のニ系列に分け、近松作品を秩序からの離脱、西鶴作品を解放の衝動としている


    近松浄瑠璃の道行
    *正・社会と反・社会のあわいを往きていた隠者の存在〜近松浄瑠璃の道行の死の予感に震える詞章のなかに形象化されている
    *道行の詞章とは、つねに死にいたるまでに求められたエロスの平安を秘めたもの


    人形浄瑠璃の芸
    *生命をもたぬ木偶によって演じられるもっとも濃密な生命の燃焼〜非現実をもっとも現実的なものに変え、虚体を実体以上に実体的なものに変身させる

    *人形劇を大人の鑑賞に耐える芸術まで完成はせたのは日本人だけ

    熊野信仰
    *近松の道行にかくされている現実離脱の願望と関わる
    *熊野は死者の国〜虚実皮膜の間に存在する国

    国性爺の国家意識
    「国性爺は歴史的事実の叙述である以上に日本人の大陸に関する関心の原型であり、戦国時代よ遺風の肯定〜江戸期の秩序の裏側に底流する情熱〜戦争を求めて、開国を求め、外征を求める情熱の祭儀的表現」


    井原西鶴の浮世
    *西鶴の認識の背後には徹底した無関心があり、近松には人物の内部に喰い入って行くような関心がある

    *西鶴はなによりも無関心さのために情欲を描き、勧善懲悪を描かないがために、写実的リアリズムの元祖とされた

    *西鶴の文体に従来の儒学的秩序を破壊する力を感じとり、その解放感に反応していた


    「11世紀に源氏物語が書かれ、17世紀後半以降の日本と西洋で小説が発達したのに関わらず、中国では発達しなかったことから、日本文学は中国文学の一変種としてとらえられない〜記紀万葉以来、日本文学の背後に特性が潜んでいる」

  • 日本の文学は慶長五年(1600年)を境にして30年から60年間完全に空白であった。
    日本文化を中国文化の外縁に位置する一つの変種としてとらえようとする欧米や中国の学者の思潮の中で、日本語という言語に由来する日本独特の文学の存在をみる。記・紀・万葉集以来の日本文学の背後にはある特性がひそんでいる。
    藤原惺窩による

  • 【日本文学の源を探る】日本文学の特性とは何か? 藤原惺窩、近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成などの江戸文藝を丹念に読み、その問いに答える。初文庫化。

  • 14/01/29。

  • 外来思想による統治に対する「呼吸の乱れ」から文学が生まれるという考察

  • 江戸時代の思想と文学について、詳細な資料を元に考察がなされています。


    仏教を離れ、大陸の新たな思想を取り入れながら社会体制を変えるまでに至った儒学者たち。
    浄瑠璃や小説に各々の理想を投影していった文芸家たち。


    この本で紹介されているのは、日本史や国語の授業で名前を覚えさせられるような、「知らない人はいない」レベルの人達です。ですが、はたしてここまで詳細に、彼らの心の奥底にまで肉薄するような解釈がなされている教科書があるでしょうか?


    とにかく手に取って読んでみるのが一番です。日本文学史の、より一層ディープな世界に誘われること請け合いです。

全6件中 1 - 6件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

江藤 淳(えとう・じゅん):文芸評論家。昭和7年12月‐平成11年7月。昭和31年、「夏目漱石」で評論家デビュー。32年、慶應大学文学部卒。37年、ロックフェラー財団研究員と してプリンストン大学留学。東工大教授、慶大教授などを歴任した。新潮社文学賞、菊池寛賞、日本芸術院賞、野間文芸賞など受賞多数。

「2024年 『なつかしい本の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江藤淳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×