独逸デモクラシーの悲劇 (文春学藝ライブラリー 思想 14)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168130427

作品紹介・あらすじ

当時、世界でもっとも先進的といわれたワイマール憲法下で、なぜヒトラーの独裁体制が生まれたのか? 本書は、その難問に立ち向かった政治史家・岡義武氏(1902-1990)がワイマール共和国の成立からヒトラー総統誕生までを綴った名著です。 岡氏は、当時のドイツ社会の構造を掘り下げ、ナチス・ドイツがなぜ台頭したのかを鮮やかに分析し、克明に描いていきます。 ナチスは社会民主主義的なワイマール共和国の価値観に違和感を持っていた保守的な中産階級に対しては、ドイツの伝統的な価値観を守ることを唱えて、支持を集める一方、世界恐慌以後に増大したルンペン・プロレタリアート(プロレタリアートよりも不安定な待遇で働かざるをえなくなった労働者たち)に対しては、資本家を攻撃し、排外主義を唱えて、安定した雇用を生み出すことを約束し、支持を集めていきます(SA=突撃隊がその受け皿となっていきます)。また、大ブルジョワジーに対しては、国民からの支持を広く集め、当時議会でも勢力を伸張させていた共産主義(共産党)に対する防波堤たることを唱えて支持を集めていきます。こうして、議会制民主主義の下、整合性のない玉虫色の「国家社会主義」とも呼ばれるナチスの政策体系と第一次世界大戦で巨額の賠償金にあえぎ、自信を失った大衆へのアピールが、ドイツ国民の支持(票)を集めていくのです。 議会制民主主義の国に生活する人々すべてが知っておくべき歴史がここにあります。他にドイツの民主主義が脆弱だった理由を19世紀末に遡って探った、単行本未収録の処女論文(1928年発表)「環境に関聯して観たる十九世紀末独逸の民主主義運動」を収めます。 解説・三谷太一郎

感想・レビュー・書評

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  • 1949年の『独逸デモクラシーの悲劇』と1928年の『国家学会雑誌』掲載論文を一冊にまとめたもの。後に筆者が物した伝記的著作とは異なり、経済的状況や社会階層に引き付けた叙述がされている。三谷太一郎の解説が、岡の議論とヴェーバーの「指導者なき民主制」論との関連を論じていて、とても参考になった。

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