「The 教師力」ハンドブック 特別支援学級の子どものためのキャリア教育入門 基礎基本編 義務教育でつける「生涯幸せに生きる力」 (「The 教師力」ハンドブック)

  • 明治図書出版 (2017年9月14日発売)
4.50
  • (3)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 22
感想 : 4
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784182261282

みんなの感想まとめ

特別支援教育におけるキャリア教育の重要性を深く掘り下げた本書は、特別支援学級や学校に関わるすべての人々に向けた実践的な指南書です。九九の習得よりも、子どもたちが将来どのように社会で生きるかを考慮した内...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 西川:今まで、もの凄く多くの保護者と話したけど、一人も、ただの一人も、「九九を覚えさせて欲しかった」「漢字を読めるようにして欲しかった」という人、逆に「九九や感じを覚えさせてくれてありがたかった」と言う人はいない。


    鈴木:いろいろな企業の方とお付き合いさせていただいていますが、大方、同じようなことを仰います。
    障害者を積極的に雇用しようとするところは、一人一人には特性や性格があって、一人一人のスピードやスタート地点が違うので、あくまでその人の出来る範囲で仕事をしてくれればいいと思っています。しかし、長く勤めてもらうためには、社会で生きるために必要な行動が育っていなければならないと思っています。

    田中:具体的にはどんなことが必要ですか?

    鈴木:第一には、自分に出来る範囲でのあいさつができる子です。うまいあいさつである必要はありません。あいさつしようとする気持ちがあれば、どんなあいさつでも充分です。
    第二は、自分に出来る範囲での感謝ができる子です。
    第三は、自分に出来る範囲での意思表示ができる子です。
    第四は、自分に出来る範囲で責任が持てる子です。
    第五は、自分に出来る範囲で他者と一緒に何かができる子。これは、必ずしも、「仲良しこよし」ではなく、合理的配慮があれば集団の中で存在できる、ということです。
    第六は、誰かに押しつけられたのではない、自分の夢や将来の目標、もしくは近い未来でやりたいことがある子です。それが生きる上での指針になります。
    第七は、必要なときに困っている、分からない、助けて欲しい、が伝えられる子です。何らかの困っているというサインは、ほとんどみんな出すことが出来ています。でも、自傷他傷、不安定になる、突然走り出すなどで表現されると困ります。


    馬場:あくまでも一般論ですが、普通科高校に比べならばよいと思います。ただ、特別支援学校出身者だって完璧じゃない。ただ、特別支援学校出身者だって完璧じゃない。とても懸念される欠点があります。
    先生が配慮に配慮した丁寧な指導をされるために、指示待ち人間になってしまうのです。そして、それを注意されると、イジメられたと思い仕事を辞めてしまうのです。おそらく学校ではほとんど注意をされることはなかったのでしょう。
    4、5人が一緒になって作業をして、その中で様々な作業に取り組みながら、もし仮にトラブルになっても仲間として認め合えたり、許し合ったり、声をかけ合ったりして欲しいのです。たとえ、問題が起きても仲間を意識して支え合う気持ちを持って欲しいのです。


    西川:いろいろな事業所の社長さんや担当者さんや担当者の方と話したけど、「国語の力をつけて下さい」「最低限の計算の能力は必要です」のようなことを話した方は一人もいなかったよ。企業に勤めている障碍者の方々にインタビューをしたけど、話す力が欲しかったという話しがとても多かった。30代から70代までの障害者の方々にほぼ共通して必要とされる力は、人に伝える力だった。

    田中:そうなのですか?でも、文字が読めなかったり、計算が出来なかったりすれば仕事にならないのではないでしょうか?

    西川:田中さんが言うように教師や保護者の多くは、そう思っている。だから学校教育では、とても基礎基本いこだわって念仏のように唱えているよね。でも、就労現場はそうではない。
    それが分からなくても出来なくても、仕事はできる。会話のやりとりや意志の疎通が出来れば、仕事内容の理解はできるから、何とかその人に会った仕事が見つかる。極端な例でいえば、言語能力がない場合でも、身振り手振りであっても意思疎通が出来れば大丈夫だよ。理屈はいらない。まずは、できる作業で健康に毎日働くことが出来ればいい。必要な知識やスキルは、yりながら身につけていく方が理解しやすい。数字や感じが読めない人だって、作業や動作に関連付けて覚えていけるよ。この関連付けることと日々の繰り返しの作業で、頭より身体が覚えてくれる。だから、そういうことは企業も事業所も初めから問題にはしない。むしろ鈴木さんの話しにあったような、大人として人と接することが出来るような能力の方が大事だ。


    西川:ある企業の話しをするよ。その人は小中学校で不登校だった。苦労して高校に進学し卒業したけれども、25歳で引きこもりになった。それから、精神障害者手帳を持つようになった。当時、離職を繰り返していたのでそれを心配した知人がいてね、何とかある企業に就職できた。それが、この企業に入社して彼は変わった。それは、彼の困難さを入社後に理解し支えた社員がチームで存在していたからだよ。入社してからずっと彼を陰になり日向になり支え続けたチームだよ。一人の担当者だとつぶれるからね。彼の感情の嵐をどのように対応するかをチームで話し合っい、それぞれが役割を分担して、仕事上のストレスを発散させるために飲みにいく、遊びにいく、話を聞く、仕事を根気強く教える、声をかけるなど、チームに選ばれた人は長期にわたって支援をした。困難なことにぶつかったときは、様子を見守りながら誰がどのように関わるのかをチームで決めてその人を大事にした。インタビューで彼は感謝という言葉を何度も口にしたよ。そして、今の職を大事にして奥さんと生まれたばかりの子供を幸せにしたいと語っていた。
    彼に「働くときに大事だと思うこと」を書いてもらった。彼は「信頼関係を築いていくこと、そのために自分自身が素直であること、正直であること、人にやさしく、人を(仲間を)大事だと思うこと、何よりも自分自信が真面目に向き合い、取り組むこと、何事にでもいつでも一生懸命であること、どんなときでもプラス思考に変えていく力」と書いた。そう書けるようになった。


    田中:ある保護者から聞いたことです。その保護者は2つの放課後等でいさーびすを利用していたのです。しばらくして、気がついたそうです。2つのうち1つのデイサービスの話しは、とても詳しく話してくれるそうです。でも、もう1つのデイサービスの方は何も話さない。不審に思うようになったそうです。そこで、一体何をしているのか見学したり経営者に話しを聞いたりして、我が子に全然あっていないと判断して辞めたと言っていましたね。


    西川:でも、公的機関は基礎条件を与えてくれるけど、それ以上のものではない。

    田中:じゃあ、何が必要なのですか?

    西川:対人関係能力と仲間だ。最悪、対人関係能力が弱いままであっても、仲間さえいればいい。


    西川:『学び合い』をやると、特別支援の子供だと思われていた子供が算数で満点を取るようになるよ。

    田中:え、信じられません。

    西川:私のクラスにもそれはあったし、学術論文でも紹介されているよ。国語、社会、理科あたりだと、テストの8割以上ぐらいだったらそれほど難しくはないよ。

    田中:あははは。すみませんが、とても信じられません。

    西川:ま、分かるよ。でも、考えて。文部科学省の発表によれば、通常学級に6.5%の特別な支援の必要な子どもがいる。特別支援学級で約1.5%の子供が学んでいる。その子たちは大人になる。つまり、日本人の約8%、つまり、1千万人がなんらかの障害を持っている。それはだいたい東北6県の全人口だよ。

    田中:え!?

    西川:多すぎるよね?

    田中:はい、確かに。

    西川:何でそんなことが起こると思う?

    田中:分かりません。

    西川:障害がある子どもも障害があると学校で分類するからだ。そして、「障害」という言葉を学校がどのように捉えているかにもよるけどね。学校の中でしめる特別支援学級の子供の割合は、学校によって大きく変わっている。あれは、その学校の教育力を端的に示すものだと思う。

    田中:何故ですか?

    西川:統計学的に言って、地域によって特別支援の子供が生まれる割合はそんなに違いがない。ところが、学校によって特別支援学級の子供の割合が違うとしたら、そりゃ分類の仕方が違うからだ。具体的には、教師が「面白い子、ユニークな子」と思っているならば分類されないけれど、教師が「困った子、大変な子」と思ったら特別支援の必要な子どもと分類される。

  • 特別支援学級、特別支援学校に関わるすべての人へ。九九より大切なこととは一体何か!?

  • 「よくもここまで濃縮して言ってくれちゃうなあ.」
    と,ニタニタしながら前半に目を通しました.

    一部の人たちは「障害に理解が足りない」というでしょうが,
    その人たちの「社会に対する理解」が足りないのだと思う.

  • 星10個をつけたいくらいオススメ。

    長い目で見て子どもたちに必要なことをするために非常に勉強になることがたくさん書いてある。「気を見て森を見ず」にならないように気に留めておきたいことばかりだ。

    一例を挙げると、筆者は、九九の習得が難しい子どもに九九を教えることよりももっと大事なことがあるのではないか、と主張。大変うなずけるものである。九九が大事ではないということではなく、障害のある子どもたちが実際にどのような暮らしを大人になってからしているのかと考えたとき、人と関わる力の方が圧倒的に有益である。

    個別指導などで子ども集団と切り離して障害のある子どもに指導をするよりも、仲間と関わり合いながら学習を進めるという基本的なスタンスをやはり大事にしたい。

    本書は障害のある方たちの進路先としての事業所等に丹念に取材をされて、その情報を整理されている。これだけでも喉から手が出るほど欲しい情報である。
    僕自身は小学校教員であるが、例えば障害者手帳を持っている場合の福祉就労等についてしっかりと知り、大人になったときにどのような暮らしが待っていて、大人になった時から逆算して今どのような取り組みをすべきかを猛烈に知りたかった。僕は自分で調べたり、聞きに行ったりして情報収集したが、本書はそれが1冊にまとめられている。僕の知る限り今までこのような本は出ていなかったと思う。そういう意味で非常に画期的で意義深い本である。

    特別支援学級担任や障害のある子どもたちに関わる人だけでなく、多くの人にぜひ読んでもらいたい本である。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1959年、東京生まれ。1982年、筑波大学第二学群生物学類生物物理学専攻を卒業。1984年、筑波大学教育修士修了(教育学修士)。1985年、東京都高校教員。現在、上越教育大学教職大学院教授。2003年、博士(学校教育)(生物、地学/「巨視的時間の距離感形成に関する研究」)。科学教育研究奨励賞(日本科学教育学会)、教育研究表彰(財団法人 教育研究連合会)、理科教育研究奨励賞(日本理科教育学会)、理科教育学会賞(日本理科教育学会)受賞。主な著書に、『気になる子への言葉がけ入門』『クラスと学校が幸せになる『 学び合い』入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『アクティブ・ラーニング入門』((明治図書)、『クラスが元気になる!『学び合い』スタートブック』『クラスがうまくいく!『学び合い』ステップアップ』『学校が元気になる!『学び合い』ジャンプアップ』『すぐわかる!できる! アクティブ・ラーニング』他

「2022年 『部活動顧問の断り方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西川純の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×