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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784183735263
作品紹介・あらすじ
教職は創造的な仕事です。子どもの学びに携わる教師が自分の仕事を愉しみ、にこにこわくわくしてこそ学校ではないでしょうか。そういう環境の中で子どもは学ぶことの楽しさや喜び、働くことの愉しみを感じ取るものです。今こそ伝えたい、「教師の魅力」「授業の魅力」。
感想・レビュー・書評
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第1章「子どもとのかかわりを愉しむ」は頷きながら読み進めた。
近年になって、やっと肩の力を抜いて子どもに向き合うことができるようになった気がする。
お二人とも育児や介護を通じて、「人は思い通りにならない」という体験から肩の力を抜けるようになったそうである。
自分の場合は、自分の病気。
体がギブアップをして休みを求めるほど働いて、病気になった。そして、自分自身のことさえ思い通りにできなくなった。そこから、肩の力を抜けるようになったと思う(と言いつつ、何度となく力が入り、体がヘルプを求めるということを繰り返しているわけだが)
児童生徒と戯れ、いじられることもある宇野先生はこのように断言する。
”まあ、廊下で驚かされたり、変な髪形にされて笑ったりしている私を見れば、心配したくなる気持ちはわからなくはありません。でも、私はいじられはするけど、バカにされてはいません。必要な指導はちゃんと通ります。(p.13)”
それに対して、堀先生はこのように解説している。
”普段いじられている宇野さんがひとたび指導の言葉を発したとき、その言葉には温度と湿度があるのです。その温度と湿度が、周りの空気に情感の濃度と密度をもたらすのでしょう。(p.24)”
中学校にいると、自分もそうだったが生徒に舐められまいと強い自分を演じがちだった。厳しくしなきゃを手放せなかったのである。それで「強面な自分」を全面に出し、生徒と距離ができたり、関係性がこじれたことがある。あの時、自分が発していた言葉は上っ面の言葉で、温度と湿度が伴っていなかったと思う。
なぜ少しずつでも自分の言葉に温度と湿度が伴うようになったのか。それは自分の限界を経験したこと。正論や正しいことなどの「論」だけで人は動くのでなく、「情」や「関係性」もあって人を動かせる(それも場合によって〉と知ったこと。そのような経験があったからだと思う。
堀先生はこうも言う。
”いじられ、戯れることもできるし、大人として「正しい道」を鮮度高く発することもできる。これは教師が子どもにもなれるし大人にもなれるということです。自分の立ち位置を自由自在に操れるということです。(p.25)”
教師が子どもになれるということを、教師が子どもになって一緒に馬鹿げたことも楽しめると解釈した。その中で、教師が大人になる瞬間や時間帯もある。そのように立ち位置を変えられる。年齢を重ねると子どもになることが難しい。まずは、その気持ちは忘れないでいたい。
第2章「授業づくりを愉しむー国語編」第3章「教材研究を愉しむー国語編」からはページを捲る手が時折止まってしまった。
それはお二人のように、自分が言葉にとことん向き合って国語の授業をつくってきたか振り返ざるを得なかったからである。
堀先生は初任研での「少年の日の思い出」の研究授業の準備を振り返り、こう言う。
”若い人たちにこんな教材研究と指導案づくりを勧めたいと考えているわけではありません。別に指導案に百枚以上の資料をつける必要もありません。しかし、私が「少年の日の思い出」の冒頭三行を例に提示したような、あのような自分の読解力だけを頼りに細部まで読み込んでみるという読み方を一度も経験したことのない教師には、国語は教えられないとは考えています。自分が人生において一度も文章と格闘したことがないのに、主語の助詞一つ、文末の助動詞一つにとことんこだわって吟味したこともないのに、子どもたちに文章を読ませることも書かせることもできません。(p.77)”
自分はここを読み、天を仰いでしまった。自分は己の読解力のみで文章と格闘したことがあるだろうか。それをしないことで、教材の良さを読みに活かせていないことに気づかず、また生徒の書く文章の良さに気づかずに、授業をやってきたのではないか。そう思えてしまった。
お二人の提示している「愉しみ方」はインスタントなものでもなければ、すぐ効果がでるものではない。前書きでも堀先生はそうおっしゃっている。だからこそ、深い愉しみを得ながら、お二人は教職の仕事を続けている。
本書を読んだ後に、圧倒感と居心地の悪さが残った。自分がお二人の感じている「愉しみ」から遠いところにいると感じたからだ。
それでも、自分はお二人が感じている愉しみ方を少しでも味わいたい。そう思っている。
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