海がきこえる

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784191250642

感想・レビュー・書評

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  • とある方から紹介されるもすでに絶版で、大事にしている方からお借りして読んだ。
    氷室冴子さんは私の青春。コバルト文庫は青春だった。

    ちくちくしている青春の香りというか情景というか、あまりに尊すぎて何回か本を閉じた。
    田舎と都会の対比がキレイすぎる。
    高知弁がまた良いのである。

    リカコ、とっても嫌なやつなんだけど、同時にめちゃくちゃいい女で、だからやっぱりまわりは放っておけないんだよな。そうなんだよな。

    あーー、若い頃に読んでおきたかった。
    続編もお借りしているけど、読むのが勿体無くて、ちょっと考えている。


  • 望月智充監督のアニメ映画『海がきこえる』を1年とちょっと前にTSUTAYAで借りてきて初めて観て、その自分好みさに衝撃を受け、すぐに原作小説を注文して積んでいたのを、この年末年始にアニメ映画を実家で母と一緒に見返して「やっぱり好きだなあ」としみじみ思ったのをきっかけにしてようやく読んだ。

    杜崎も里伽子も松野も、のびのびと育った人間で、そんな恵まれた若者たちの客観的にはしょうもない悩みや葛藤のドラマだからこそ魅力的に映るのだろう。
    子供と大人の中間の、青春期の若者の風景をどこかのんびりと優しく描く手つきが好きだ。

    映画版との相違点では、まず東京での里伽子との再会がまったく違う形であることに驚いた。映画の冒頭と結末に置かれた吉祥寺駅での再会はオリジナルで、原作では大学の先輩に誘われたパーティーで初めて再会し、その後で体調を崩した里伽子のアパートに行ったり、野球観戦デートをしたりしている。
    高知の高校の同窓会にも(二次会からだが)里伽子は来ており、ライトアップされた高知城を見上げるシーンは2人きり(映画では里伽子ではなく他の同級生たち4人とだった。しかし松野は別クラスのはずなのになぜいたのか)
    物語の結末も、里伽子と東京で晴れて再会するドラマチックで幸せなエンドだった映画版と異なり、原作は高知での同窓会に里伽子を呼んだのが松野のせいだと知り、深夜に実家で松野に電話をかけにいく場面で終わる。
    場所が東京と高知で異なっているのはもちろん非常に重要だろうが、原作の締め方は里伽子とのラブストーリーよりも親友松野との男同士の関係に重きが置かれている印象を受ける。両方が好きな女子について、互いのやったことを分かち合うために電話をかけにいく幕切れには古典的なホモソーシャルの香りがする。
    松野とのシーンでいえば、高知に帰省して松野の車で実家まで送迎してもらったあとで、高知の海をふたりで眺めて佇む、映画版の(爆笑ものの)名シーンが原作には無く、軽く杜崎ひとりが家から海を眺めるだけだった。
    また、そもそも2人の出会いのきっかけとなる、中等部修学旅行中止の抗議のくだりも色々と変更されていた。映画では初めから杜崎と松野しか抗議の挙手をしていなかったが、小説では学年全体で数十人いるところから、だんだんと減ってゆき最終的に2人だけがあの放課後の美術室に残る仕組みで、ここでの学校や同級生や自分への苛立ちや理解といった杜崎の心理が丁寧に描かれていたからこそ、松野との運命的な出会いのインパクト、彼がいかに杜崎にとって嬉しくかけがえのないものであったかが見事に伝わってきてとても良かった。

    映画版には出てこない大学3年の津村知沙は、里伽子とは違うもののやはり身勝手で恵まれすぎた悩みを抱える人物で、この作者はこういう女性キャラを生み出すのが好きなのか……笑とややウケた。
    里伽子だけでなくこの歳上女性にも接近され気に入られることで、杜崎の無自覚ハーレムラノベ主人公感は映画版よりも強いが、ぼうっとした地の文(一人称)でそれが語られるのでのらりくらりとかわされて、そんなに気にならずに受け入れてしまうから凄い。
    物語全体で見ると、津村さんは杜崎が東京で里伽子と再会していい感じになるために置かれたキャラクターである、と言ってしまってもそれほど間違いではなく(新婚者との不倫なんていうオトナな世界をチラ見して、自分たちの高知でのいざこざなんて大したこたないな……と杜崎に思わせる役目)、この観点では道具的なハリボテの人物ではあるので哀れだとも思う。(特に杜崎のアパートの部屋の前で待ち伏せていて、無言で1分間も背中合わせにもたれかかるシーンなんて、ドラマより、まだひどい。)

    スッキリ終わる映画版とは違って、こちらは全然終わり感がなく、実際に後日談も刊行されているようなのでそちらも読みたい。

  • 高校生から大学にかかる多感な時期の甘酸っぱい小説。
    高知ののんびりした雰囲気の描写が素敵。
    家庭環境に恵まれなかったヒロインの心の不安定さが、それに振り回される主人公がよい。
    高校の修学旅行が海外だったり、生活のためというより小遣いのためのバイトだったり、今より経済的には恵まれている日本が描かれている。
    私はそういう時代を見てきているので、とても読んでいて楽しかったが、若い子たちが読んでも実感が湧かないだろうなぁと想像した。

  • 思春期の恋愛や友情を懐かしく思う一冊。

  • 毎日水平線の上がり下がりを校舎の窓から眺めていた高校生活だったので、こういうのたまらない。胸がギュッとなる。

  • ジブリ版の原作となっているが、こちらは東京での学生生活がメインになっている。90年代、バブルの残り香が強い時代を私は知らないけど、懐かしさというのか羨ましさといった感情が湧いた。続編ではさらにその気が大きくなり青春ストーリーダメージでやられてしまうが、このときの私は知る由もない。
    ジブリ版では、同窓会で清水さんが「あの頃は世界が狭かった(から里伽子を嫌っていたけど、それはあっちも同じでしょう)」というのが、お前も随分身勝手だな!と納得できなかったけど、本作ではその同窓会に里伽子も来てお互いに和解?しているのでこちらは納得できた。

  • スタジオジブリの作品として映像化されています。
    高校生の時にアニメをみて好きになった作品です。

    小説に出会ったのは、大学生になってから。

    4年前に高知を初めて訪れました。
    その時、舞台になった高校、帯屋町、桂浜、高知城を見て妙に感動したのを覚えています。



    高知と東京を舞台に描かれている高校生の物語
    拓、松野は中等部の修学旅行の中止の決定に対して不服を持ち、説明会で出会う。
    それぞれがいつの間にか特別な存在になっていく。
    夏休み、里佳子が東京から引っ越してくる。
    ものすごく、勝気な子で、周りの空気から浮いていく。
    そんな中、松野はひそかに思いを寄せる。
    桂浜でのシーンで拓と松野の里佳子への思いが・・・

    さわやかでいて、何とも温かさと、土地の人情味というか雰囲気が出ている作品だと思います。

  • スタジオジブリ作成のアニメ版は何度も鑑賞済み。原作も文庫版で読了済み。再読になるが、図書館で単行本があったので迷わず借りた。文庫版よりもイラストが多いなというのが印象。話の感想は「こんな学生生活送りたかったぜコンチクショー」と読んでいて感じた。うらやましいですよ。ホント。アニメも「あーいいなあー」という感じでずるずると何度も視聴してしまいましたし。つくづく自分がこういうベタな恋愛物の話好きだなと実感させられる作品だなと思います。(実際の人の心の機微の理解については全くダメですが)感想はこんなところです。

  • 青春小説好きなので、氷室冴子が今までの枠を作って書く描き方ではなく、自由に作ったという作品。
    高知での高校生活と、東京での大学生活が行き来する。
    松野との高校生活をじっくり読みたかったな。

  • 以前映画を見た家族が、コクリコ坂みたいな良い眼鏡だったよ、と言ってましたが、確かにー、と。
    自分の中で、たぶん唯一見ていないジブリ系映画で、きっとすごい青春ものなのだろう、と…思っていた程すごいことは起こってはいなかったです、想像だけが大きくなってました!
    アーバン大学ライフですよ。きらびやかな雰囲気と、ちょっとした虚しさですよ。これが90年代大学生観でよいのでしょうか、それともちょっと前なのか。いやー、自分、全然…と反省しました。(?)
    ミステリアス槇さん系統の女子で良かったです。

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著者プロフィール

氷室冴子(ひむろ・さえこ)
1957年、北海道岩見沢市生まれ。 1977年、「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。集英社コバルト文庫で人気を博した『クララ白書』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク』『銀の海 金の大地』シリーズや、『レディ・アンをさがして』『いもうと物語』、1993年にスタジオジブリによってアニメ化された『海がきこえる』など多数の小説作品がある。ほか、エッセイに『冴子の東京物語』『冴子の母娘草』『ホンの幸せ』など。 2008年、逝去。

「2021年 『新版 いっぱしの女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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