現代中国知識人批判

  • 徳間書店 (1992年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784193549744

感想・レビュー・書評

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  • (2010.11.26読了)(2010.11.23借入)
    著者は、2010年のノーベル平和賞受賞者です。
    受賞理由は「中国における基本的人権のために長年、非暴力的な闘いをしてきた」ことです。現在は、2008年、「世界人権宣言」発表60周年を画期として発表された、中国の大幅な民主化を求める「零八憲章」の主な起草者となり、中国当局に身柄を拘束され、2010年2月に「国家政権転覆扇動罪」による懲役11年および政治的権利剥奪2年の判決が下され、4度目の投獄となり遼寧省錦州市の錦州監獄で服役中、とのことです。
    ノーベル賞授賞式には、出席できないでしょう。

    現代中国に関して、テレビでニュースを見て知っている程度の知識しかないので、この本の内容は、衝撃的でした。中国では、孔子以来、権力に役立つための知識以外不要で、知識人も権力者に役立つためにのみ学んでいる、ということを主張しています。
    中国4000年の歴を通して、学問の自由などなかった。知識人の諸君!学問の自由を勝ち取るために立ち上がろう!と言っています。

    ●劉暁波の目標(267頁)
    現在の一党独裁、公有制、計画経済、言論・思想の統制、「人治」政治の専制主義体制を打倒するとともに、それを支える伝統文化を否定し、多党並存、私有制、市場経済、法律至上の民主主義体制を樹立して全面西洋化を実現する。
    ●訳者による概括(268頁)
    この評論において劉暁波は、現代中国の知識人と政治との関係を軸として、知識人の意識形態、思考方法、行動様式を、権力者との関係、社会的地位、経済的力量、人格的性向、学問的態度など様々な角度から通時的・共時的に考察している。
    そして、現在の専制主義体制下における知識人の堕落、腐敗、軟弱、卑屈、怯懦を容赦なく剔抉したうえで、知識人が「奴隷的立場」から抜け出て精神的・思想的にも社会的・経済的にも真に自由で独立した存在となるためには、内面においては伝統文化と決別して意識変革をおこない、外面においては専制主義体制を打倒する闘争の先頭に立たなければならないと主張している。
    ●共産党優位(49頁)
    現代中国において、人々が共産党に対する忠誠を憲法や心理や信仰に対する忠誠よりも重んじる。
    党法が国法より上にあり、党の権力が国家の利益より上にある中国においては、共産党に忠誠で、共産党に追随することは、実際には党法が憲法に対して、党員が公民に対して享有している特権に忠誠であることと等しいのである。
    ●唯我独尊の人格(73頁)
    中国人は「俺さまが天下第一」という傲慢さで世界を見下した。指導者は自分こそ世界でもっとも傑出した天才であると言い、共産党は自分たちこそ偉大で栄誉ある正しい党であると言い、政府は自分たちこそ世界で最も民主的な政府であると言い、人民は自分たちこそ世界で最も勤勉で、最も勇敢で、最も賢い人民であると言った。
    ●軟弱な人民(78頁)
    中国においては、弱者が多いことで専制主義が勝手放題する絶好の土壌となっている。まさに人々のあまりの軟弱さこそが、専制、暴政を強大ならしめたのである。軟弱は中国の専制主義をかくも放縦専横にした重要な原因の一つである。
    ●幻想的権利(111頁)
    「人民は国家の主人である」「人民のために尽くす」「労農兵がすべてを指導する」
    これらのスローガンは民衆に抽象的、幻想的な最高の権利を賦与しているが、現実的、具体的な生活の中では民衆の一切の権利を剥奪しているのである。
    ●毛沢東(118頁)
    今世紀の初め、毛沢東が湖南の農村から初めて北京に出てきたとき、彼は地方では秀才だったけれども、長く都に住んでいる状元たちや留学帰りの文化人の目には、まったくの田舎っぺであった。そのため、彼はあちこち職を求めて訪ねたが、当時の文化界の有名人たちの冷遇と軽蔑にあい、北京大学図書館の管理員にしかなれなかった。
    ●知識人の要件(129頁)
    私の考えでは、知識人とは社会全体の他の階層から独立、超越し、「超前性」のある精神的財産を想像することを己の責任とし、純粋な知識を追求することを最も重要な価値とする集団である。以下の特徴を備えているべきである。
    ・独立した社会的地位
    ・独立した価値の選択
    ・独立した社会的影響
    ・懐疑的、批判的な自省意識
    ・超越意識
    ●共産党宣言と現実(140頁)
    マルクスの「共産党宣言」
    「無産者がこの革命のなかで失うものは鎖だけであり、彼らが得るものは世界全体であろう」
    ソ連と中国
    「無産者がこの革命のなかで失うものは自由だけであり、彼らが得るのは鎖であろう」
    ●現代中国の民本思想(147頁)
    労農大衆の不満に対しては慰撫と説得と経済的買収で対処するが、知識人の抗議に対しては弾圧と監獄と党籍あるいは公職の剥奪で対処するのである。
    ●現代中国(197頁)
    中国に数千年にわたって提唱されてきた「大公無私」、「先公後私」の道徳は、現在では殻だけしか残っていない。権力者は「権をもって私を謀り、一般庶民は公職をもって私利を謀り、全国人民が走後門で私利を図っている。個人の利益が公開の合理的なルートで得られないとき、隠れて私利を図るようになるのは必然のことである。こうした隠れて私利を図ることは、必然的に社会全体の腐敗と混乱をもたらし、すべての法律が非公式の取引を通じて修正され、はては排除されてしまう。
    ●文化砂漠(213頁)
    中国では、シロウトがクロウトを指導し、文盲が知識人を指導している。それは知識を壊滅することであり、その結果、文化砂漠が出現した。

    ※日本人に分かりにくい人名、事件、等には、訳者による丁寧な解説がついているので非常に助かりました。

    ☆劉暁波(りゅうぎょうは)
    1955年、吉林省生まれ
    1978年、吉林大学中国文学系に入学
    1982年、北京師範大学大学院に入学
    1984年、文芸学で修士号を取得
    北京師範大学の教師となる
    1988年7月、「美と人間の自由」と題する論文で博士号を取得
    ノルウェーのオスロ大学に三カ月滞在、ハワイ大学にしばらく滞在
    1989年3月、方励之らが魏京生の釈放を求めた公開書簡に署名
    1989年4月27日、北京空港に降り立つ
    民主化運動に参加
    1989年6月6日、「反革命罪」で投獄
    (2010年11月29日・記)

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著者プロフィール

1955年12月28日、吉林省長春に生まれる。文芸評論家、詩人、文学博士(北京師範大学大学院)。1986年、「新時期十年文学討論会」において「新時期文学は危機に瀕している」と歯に衣を着せぬ発言で論壇に注目される。
1989年3月から5月、米国にコロンビア大学客員研究員として滞在するが、天安門民主化運動に呼応し、自らも実践すべく予定をきりあげ急遽帰国。
1989年6月2日、仲間3人と「ハンスト宣言」を発表。4日未明、天安門広場で戒厳部隊との交渉や学生たちの無血撤退に貢献し、犠牲を最小限に止める。6月6日に反革命宣伝煽動罪で逮捕・拘禁(1991年1月まで)、公職を追われる。釈放後、文筆活動を再開。
1995年5月~ 1996年1月、民主化運動、反腐敗提言、天安門事件の真相究明や犠牲者たちの名誉回復を訴えたため北京郊外で事実上の拘禁。1996年9月から
1999年10月、社会秩序攪乱により労働教養(強制労働)に処せられる。劉霞と獄中結婚。
2008年12月8日、「〇八憲章」の中心的起草者、及びインターネットで発表した
言論のため逮捕・拘禁。2010 年2 月、国家政権転覆煽動罪により懲役11年、政治権利剝奪2年の判決確定。
2010年10月、獄中でノーベル平和賞受賞。
2017年7月13日、瀋陽の病院で多臓器不全のため死去。
中国語の著書多数。日本語版は『現代中国知識人批判』、『天安門事件から「〇八憲章」へ』、『「私には敵はいない」の思想』、『最後の審判を生き延びて』、『劉暁波と中国民主化のゆくえ』、詩集『牢屋の鼠』。その他劉暁波の評伝に『劉暁波伝』がある。

「2018年 『独り大海原に向かって』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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