死の器

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Amazon.co.jp ・本 (220ページ) / ISBN・EAN: 9784195973707

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  •  いやああ、すごい。野坂昭如、すごい。「火垂るの墓」以上に、何だろう、このリズム感。句読点が独特というか、ずっと淀みなく、立て板に水でしゃべるような文体が、読んでいると面白く、心地よい。
     内容は、全体的に「男と女」。それも、「体を売る女」の話が多い。悲壮感はなく、出てくる女の多くは、したたかで、自分のそんな状況をしっかりと捉えながらまっすぐに進む。独特の死生観なのだろうか。強く、まっすぐで、じめじめしていない後腐れのなさがいい。

    「娼婦三代」
     海外で「その身一つ」で成り上がる女性三代。傷つき、没落し、時に騙され、苦しく、それでも彼らはしたたかに「生きている」。遺伝ってこわいな。
    「辻占の宿」
     辻占の結果を残した紙を見ながら、たまたまであった辻占の女性から、その母の話を聞く。
    「上海帰りのリル」
     船働きのばあさんが白粉に紅ではしゃいで働くのは、彼女が昔「リル」としてそれはそれはすごい半生をおくってきたから。
    「エストリールの夏」
     海外で出会った女性、短い恋。再会したとき、彼女は…。「わかれてしまえばあなたは他人、わすれられたわたしは死人、だけど私は抱かれた記憶、抱き続ける いつまでも」
    「チチキトク」
     工場で働く三男に、田を守るために田舎に帰れという父。決断力に欠ける青年の、都会の最期の夜は。
    「死の器]
    「死に水屋」として肉親にかわり、孤独な老人の死を見とる老人たちのアパート。死の器に入り、手足をさすられて、女の名を言えばなりきって答え、軍歌を歌えば一緒に歌い、そうして送り出す。
    「待つ」
    添った女とその父はおかしい。自分もそうなることを、そして自分の子もそうなることを、男は待つ。

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著者プロフィール

野坂昭如

一九三〇年(昭和五)神奈川県生まれ。親戚の養子となり神戸に育つ。四五年の空襲で養父を失い、のち、実家に引き取られる。旧制新潟高校から早稲田大学第一文学部仏文科に進むが、五七年中退。CMソング作詞家、放送作家などさまざまな職を経て、六三年「エロ事師たち」で作家デビュー。六八年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞を、九七年『同心円』で吉川英治文学賞を、二〇〇二年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞。そのほか『骨餓身峠死人葛』『戦争童話集』『一九四五・夏・神戸』など多くの著書がある。二〇一〇年(平成二十七)死去。

「2020年 『「終戦日記」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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