春喪祭 (徳間文庫 411-2)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784195977965

感想・レビュー・書評

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  • 「七夜の火」の読後、なんだかジトーっとするようなものを感じた。春喪祭という本は、全体を通して何か拭えないものがあるように思えた。これも赤江瀑という作家の魅力なのかもしれない。

  • 70年代発表6作品。
    「夜の藤十郎」江戸時代京都狂言の世界の極みで狂っていく女形の行きついたのは両国。その目的とは?
    「春喪祭」結ばれた朝に姿を消した深美(牡丹の別名)の名を持つ恋人の死の謎を追い奈良の牡丹寺に向かう青年。
     『深美は、皮膚の下で花びらがそよぐといった。いたるところの肉の深みで、薄い大輪の花びらがひらく、と訴えた。』…『だめよ、そんなことしたら、わたしは花だらけになっちゃう。花になっちゃう。ほんとうよ。わたしはなくなっちゃう。』
     花開かせたために彼女は牡丹に憑りつかれたものか…とわりとまじめに耽美的哲学的に読み進めてたのですがラストがまるで「あなたの知らない世界」再現ドラマになったので目を疑った。おばけなんていないさと歌いたくなった。暑い晩夏に似合う一篇。
     「宦官の首飾り」高名な作家になった幼馴染の、近所に住んでいた清朝の宦官についてのエッセイで描写される光景に、同じ時間を共有した男は釘付けになる。そんなはずはないと。パッとしない失敗の多い自分の人生への思いと、少年時代に垣間見てしまった宦官の秘密の追憶が交互に浮かんだ果てに取った行動は?
     「文久三年五月の手紙」修学旅行中の萩で一時的に行方不明になりその間の記憶を失った女子学生。その手には古い和紙の手紙、そして彼女は文久時代を舞台にした脚本を書き始めて…。あなたの知らない世界がまた浮かんだ。なつかしいなあ70年代ってこういうオカルトが良かったのかなあ。
     「百幻船」短歌を詠みに山陰の海辺を訪れる数学教師が発見した裸の女の死体。不審死ではないかと教師は気にするがいわくある女のことを村ではあっさりとその死は流されて、最後にその死について真相に近いことを耳にするが葬式は終わり荼毘に付された後。
     「七夜の火」大学研究室社会学の調査班の手伝いの高校生たちがある瀬戸内海の島で老婆から人形を使った呪いの儀式について聞かされる。遊び半分、そして無意識の本気半分で実行した女子高生2人。そして実際に死を招き寄せ…松本洋子作のなかよしのオカルト漫画みたいな。

     70年代のオカルト趣味が詰まった作品集だった。(「宦官の首飾り」除く)

  • 2017.12.09

  • 320
    相思相愛の野田涼太郎と初めて結ばれた翌日、なぜか吉村深美は野田の前から姿を消した。そして一年後、牡丹で知られる奈良の長谷寺の門前町・初瀬で、死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が書き遺されていた。野田は深美の死因を求めて初瀬に赴くが、そこでみたのは不思議な無明世界であった。(「春喪祭」)。耽美派の気鋭、泉鏡花賞受賞の著者が描く妖かしの世界。
    夜の藤十郎・春喪祭・宦官の首飾り・文久三年五月の手紙・百幻船・七夜の火

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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