風の谷のナウシカ 7

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784197700257

感想・レビュー・書評

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  • 漫画版は、子供の頃はよく分からなかったが、今読むと全然見え方が違う。

    そして登場人物達の個性も大人になったから理解できる強さと弱さがあり、すべての登場人物に愛おしささえ覚える。

    テーマとして、生きる(命)とは何かを深く突き付けられる。それだけでなく、今発生している様々な環境的、社会的なテーマが盛り込まれている。

    生きることは変わること、死も変わることのひとつ。
    繰り返し繰り返し、傷つきながらも毎日を生きる。毎日の生まれ変わり。

    大きな生命体を繋ぐという意味で、王蟲は個が失われることを否定しなかった。森も木は石化しても全体で繁殖し、浄化し続けた。人は自然を忘れてはならない。

    はじめは世界を救う志しがあった勇敢な少年は、長い時と共に、権力にまみれた神聖皇帝となってしまう。人間は欲深く、ひとりで立派な王であり続ける事は難しい。

    調停者である巨神兵(オーマ)は、神のような存在として人に作られ、暴走し世界を滅ぼしてしまう。これは、将来、AIの判断に頼りきって、人間が自己を喪失しないことを願うばかり。

    ナウシカは、全ての自然に神が宿る、と語る。これは日本の神様の考え方。そして、自然に宿る神を忘れた古い人類を敵として対峙する設定には、同じ人間として凄く複雑な気分にもさせられる。

    ナウシカの世界で起きていることは、まだ現代でも起きうる要素を沢山残している。

    また20年後に読んでみたい。

  • 図書館で1-7巻を全貸りした。

    旧人は私達の未来かなぁ…それを滅して嘘を突き通した(?)ナウシカさんは非道で賢く優しいなぁ…とか、色々考えさせられた。

    クシャナさんと蟲使いの人達が可愛いすぎて幸せになって欲しいなぁ。

    この物語の主人公はクロトワさんにするといいかも…


    恐ろしい事に小1の息子がガン読みしてる笑

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「旧人は私達の未来かなぁ…」
      そうならないよう、しなきゃね(って出来るのか?)
      「旧人は私達の未来かなぁ…」
      そうならないよう、しなきゃね(って出来るのか?)
      2014/11/06
  • ラストのナウシカの選択。 二通りの解釈ができるとおもう。
    ひとつは、地球の主役は人間であることを、人間自身の手で終わらせるということ。
    何となく釈然としない読後感が残るのは、エコロジーが人間に勝つことへの違和感そのものだと思う。
    地球のためにナウシカは人間を裏切り、それが結局人間のためになるというパラドクス。
    発展のはてに幸福などないという宮崎駿のスタンスが伝わってくる。

    だからナウシカの選択には勇気と、無邪気なほど人間の発展を信じてこられた人間には虚無とも弱さとも受け取られかねない危うさがある。
    ナウシカの最後の清々とした、ちょっと寂しそうな笑顔が印象的。

    もう一つは生の価値は誰かによって決められるのではないという、ニーチェのような決意。たとえ誰かによって設計された道だとしても、生きることそのものに価値がある。だから、「すでに勝利した者のごとく進め」。

  • 庵野秀明さんによると「宮さんの作品は絵コンテ段階が最も(宮さんの)理想に近い」という(「コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと」より)。映画製作では完成に近づくほどにその純度が下がる宿命にあると。
    そういう意味では本シリーズは宮崎駿さんの最高純度作品と言える。ナウシカから始まるジブリ作品に登場する躍動感あるキャラクターの原型もたくさん登場する。まったく古くならないマスターピース。

  • 急展開とはこのことよ。ユパの最期もそうだし、なだれ込むように世界の謎へと。ユパとクシャナの「わかえりあえる感」……ナウシカと母……精神分析への誘惑……。
    ……。
    すべてはシュワの墓所による、いわば元・人類……プレ・いまの人々による計画だったのだ、と。「おまえは危険な闇だ。生命は光だ!!」
    それへナウシカは「ちがう。いのちは闇の中のまたたく光だ!!」と言い放つ。
    クシャナの父は「気に入ったぞ。お前は破壊と慈悲の混沌だ」と結構いい役どころ。
    このへん、漫画のテンションの高さに圧倒されっぱなしだけれど、冷静になってみると、何も言っていないに等しい。
    一言で言い換えれば「混沌」「清濁」「きれいはきたない、きたないはきれい」くらいか。
    宮崎駿といえば「ラピュタ」の冒険活劇・漫画映画的側面にだまされがちだが、全体を通して見てみると、ほとんどが、わからない、はっきりしない、結論は先送り、善悪が保留される、対立軸がわからなくなる、戦争好きと平和への拘りで引き裂かれ、世界生き延びよと世界滅びよが同時に発せられる、すべてアンビバレントなのだ。

    まずは「ナウシカ考」で深める。
    次に他の宮崎駿作品群を見返す。特に「ナウシカ」「もののけ姫」「風立ちぬ」を重点的に。
    それらいわばマジメな作品をフラッグにして、その間を埋めることで、彼を貫くヒューマニズム/ニヒリズム・ペシミズム、反戦/兵器好き、に再度注目してみる。「/」に引き裂かれている点こそが作家性だとわかったので、そこに着目しつつ。
    手塚治虫、水木しげる、諸星大二郎、高畑勲、など、重なり合いつつ同時代に活躍した作家たちに目を向けるきっかけにする。日本アニメの黎明期とかジョン・ラセターとか「雪の女王」とか。
    などなど宮崎駿を基点にして、いろいろ再鑑賞、整理していきたい数か月。結構巨大な個人的プロジェクトになりそうだ。

  • 歌舞伎化を前に積読解消。
    多くの人が「アニメは前の一部だけ、全館読むとスゴイ」というので何年も前から持っていた。全部読んだ感想。
    ・コンセプトがレイチェル・カーソンの「沈黙の春」
    ・結構話やモチーフが右往左往する。序盤でキーアイテムとして出てきたペジテの石のあっけない処理とか。キャラクターの関係も、ナウシカ-アスベルかと思えば森の人が出てきたり、終盤クシャナが雑に扱われたりもする。長編の割に読了にカタルシスがない。
    ・逆に、アニメ版は見事な起承転結で感動シーンの抽出がうまく、宮崎駿は漫画家ではなくアニメーターだったのだろう。
    ・ナウシカと蟲の描き込みはこだわりというかフェチズムがある。
    ・昔見たアニメではナウシカ大好きだったが今読むと「男が憧れる聖母キャラ」が濃すぎ、むしろクシャナにヒロイズムを感じる。

  • すごい。
    頭が飽和状態。
    ちゃんと理解出来たのかどうか…。

    とある人がナウシカを「破壊と慈悲の混沌」と称する。
    それは人そのもののことかもしれない。
    この物語はナウシカをそういう存在として描いたのがすごいんじゃないかな。

  • うちのめされる。
    映画は映画で好きだけど、深さでいうと、やはり漫画版。
    そしてヴ王の意外なかっこよさ。。

  • 完全なるものが、一番いいものではなく、不完全を前提として、そこにどれだけ合わせていくか。

    綺麗過ぎる水には魚が棲めないように、人が生きていく上で影や闇が必要であること、不浄さも必要であることを認めざるをえない。
    それを受けいれてこそ、成長があるし、前に進んでいけるのだなぁ。

    今の社会や文明や文化は人間が創ってきたものだけど、そこに合わせて人間も変化してきている。
    そんな中で、これからの変化に合わせて、受け入れた上で、それでも前に進んでいく人になろうと思いましたヽ(^。^)ノ

  • 物語のレビューは嫌いである。どうやってネタバレを避ければよいのだ。

    この物語は、自分が生きるということは誰にも支配されてはいけないこと、すべてのものに許しを与えること、すべてのものとともに生きること、やってくる死を受け入れることを教えてくれる。

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著者プロフィール

アニメーション映画監督。1941年東京都生まれ。学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)で劇場作品を初監督。1984年には「風の谷のナウシカ」を発表。1985年にスタジオジブリの設立に参加。「天空の城ラピュタ」(1986)、「となりのトトロ」(1988)、「魔女の宅急便」(1989)、「紅の豚」(1992)、「もののけ姫」(1997)、「千と千尋の神隠し」(2001)、「ハウルの動く城」(2004)、「崖の上のポニョ」(2008)、「風立ちぬ」(2013)を監督。現在は新作長編「君たちはどう生きるか」を制作中。著書に『シュナの旅』『出発点』『虫眼とアニ眼』(養老孟司氏との対談集)(以上、徳間書店)、『折り返し点』『トトロの住む家増補改訂版』『本へのとびら』(以上、岩波書店)『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』(文春ジブリ文庫)などがある。

「2021年 『小説 となりのトトロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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