海辺の王国

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198601249

作品紹介・あらすじ

空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールの代表作。「児童文学の歴史に残る作品」と評価され、世界十数ヵ国で話題を呼んだ。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • あさのあつこさんが海外児童文学の中でイチオシで紹介していたので、読んでみた。

    まるで、あさの作品「バッテリー」の巧のように、自分に誇りを持って、自分を失わない。けれども、そのまっすぐな少年と相対する大人たちは却っていろんな弱さ、強さ、醜さ、脆さを現す。

    時代は、空襲でひとりぼっちになる処から始まるので、戦争文学に入りがちかもしれないが、決してそうではない。現代日本でも、貧困の中でもし12歳の少年がひとりぼっちになれば、嫌な「保護」を拒否して、これに似た物語が成立するかもしれない。しかし、果たしてこの物語のように、抑制と具体性と気品を持つことが出来るだろうか。

    内容(「BOOK」データベースより)
    空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールの代表作。「児童文学の歴史に残る作品」と評価され、世界十数ヵ国で話題を呼んだ。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。
    2015年5月22日読了

  • 親、人との関わりを考えさせられる本…

  • さすが、ウェストール。子ども向けの本でも安易な誤魔化しはしない。
    少年の成長を描くが、出会う人すべてが現実世界に確かに存在する人物で、いかにも作家が作りだしましたという人は一人もいない。それぞれが自分の人生を抱えているが、戦争中なだけに、楽しく安らかに暮らしている人はいない。
    少年の存在は彼らにとってほんの一瞬の出会いの時もあれば、かけがえのない時のこともある。
    それを刹那として生きねばならなかったからこそ、短期間のうちに少年は(したくはなかったかもしれない)成長をしたんだと思う。
    ラストの苦さは、しかし、子どもの頃素晴らしい人だった親が、つまらない普通の人間だと、気づいたことのある人なら誰しも納得のできるものではないかと思う。
    また、マーガトロイドさんという大きな喪失とともにどうにか生きている人物が少年に希望を与えはするが、自身は更なる悲しみを抱えててしまうところが切なく、この人物こそウェストール自身なのではないかと思った。
    息子を失うという辛い体験を通した、宗教観、世界観は、優しく、厳しい。

  •  昔馴染みのともだちと、コロナステイホームで流行っている「7days7bookcovers」をもじって「100days100bookcores」チャレンジという遊びを始めています。
     忘れていた、思わぬ本を読み直すきっかけになるのが楽しいのですが、これもその一冊。ジブリの宮崎駿が愛した名作です。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202008160000/
     

  • 「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「1. 外国のくらし」で紹介されていた10冊のうちの1冊。

  • 見たくない自分の弱さを見せつけられる。

    ハリーの状況で、同じ子供だったら、

    私は泣いて、座り込んで、動けず、大人に縋り付いて、手を引かれていくのだろうと、10ページぐらいを読んだところで、そう思った。

    とにかく主人公の少年ハリーの行動、心の動きが、リアルに丁寧に

    時間をとって描かれる。

    食べ物、相棒、怒り、歩み、暴力、大人、親切、知識、性、弱さ、

    そういうものが、繰り返し繰り返し、ハリーを叩きのめしにきて

    息つく暇もない。

    幸福や、絶望は、音もなく少年の前に現れる。

    「けれど、ハリーにはわかっていた」

    この言葉が、読み続けた分だけ、じわっと熱く広がる。

    「ハリーは成長した。…パパはそれを知っている。それを憎んでいる」
    この話にあったこの一文を読めただけで、

    よかったと思えた。

    父と息子の物語なのだと実感する。

  • 「第二次世界大戦中のイギリス。空襲警報が鳴った時、家族の貴重品をもって一番最初に防空壕へ飛び込むのは、12歳のハリーの役目でした。ところがある晩、両親と妹はいつまでも防空壕にやってきません。外に出てみると、家は崩れおち、顔z区も死んだと大人が話しているのを聞いてしまいます。あてもなくさまよううち、数日後、やはり飼い主を失ったらしい犬と出会ったハリーは、その犬をドンと名付け、一緒に北の浜辺を歩き始めます。
     わずかな食べ物をドンと分け合いながら、親切な人や心に痛みを抱えた人、心がゆがんだ人など、さまざまな出会いと別れを経ていくうちに、ハリーが探し当てた本当の家族、そして、心の王国とは・・?
    戦時下を生き抜く少年のみずみずしい成長物語。」
    (『大人のための児童文学講座』ひこ・田中著より)

    ・孤児として生きるハリーは、やがて、これまでずっとドン(犬)とだけ暮らしてくたような気がするようになります。失った家族はもう戻らないのですから、忘れること、それも生き抜き方の一つです。ー孤児として、自立していくのです。
    ーこの旅は、ハリーが自分にふさわしい新たな家族を探す旅といってもいいでしょう。戦争が原因とはいえ、普通の子どもには与えられない特権です。
    ・新しい家族を見つけてこの話は終わり―ではない。
    死んだと聞かされていたハリーの両親は生きていた。「ハリーは成長した。(中略)この家に「入りきらないほど、大きくなってしまった。(中略)パパはそれを知っている。それをにくんでいる。」⇒なぜパパはハリーを憎むのか?
    それは、父親の知らぬところで息子が成長してしまったからです。父親が許して冒険の旅に出したのでは、ない。
    (『八日目の蝉で、さらわれた赤ちゃんは実の親の元にもどるが、その後関係はぎくしゃくしてしまう。これも、そうなのかもしれないな。子どもが自分の知らない間に成長してしまった・・)。

  • 空襲で家族を失った少年が主人公ではあるが、戦争そのものにフォーカスするのではなく、少年の自立を描いている。

    信頼できる人、できない人の見分け。家を持たない中での生き方。全てを体当たりで学んでいく様子を、一人称視点で描いている為、没入感が高くて夢中で読んでしまった。

    ビターな終わり方も、作品のテーマをより深いモノにさせている。

  • 1942年、イギリスで空襲により孤児になったと思った12歳のハリーが、たくさんの経験をして家族の元に帰るまでを描いた小説です。
    その間一緒に過ごしたのがジャーマン・シェパードのドンですが、特段の描写はありませんでした。

  • ファンタジーとしてすごく面白かった印象が。

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著者プロフィール

1929~1993.英国を代表する児童文学作家の一人。「かかし」(徳間書店)などでカーネギー賞を2回、「海辺の王国」(徳間書店)でカーネギー賞を受賞。

「2014年 『遠い日の呼び声 ウェストール短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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