エヴァが目ざめるとき

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198601584

感想・レビュー・書評

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  • Na図書館本

    近未来の地球。
    自然破壊と資源枯渇。
    事故にあい目ざめたエヴァは、チンパンジーの脳に記憶を移し変えられた存在。
    でもチンパンジーの種としての記憶は残り。。。
    エヴァの一生。

  •  野生動物がほぼ死滅した近未来。13才のエウ゛ァはチンパンジーの研究者である父とともに事故に遭う。
    200日という長い昏睡から覚めて、彼女が鏡の中に見たものは…
    幼い頃から家族同様育ってきた、チンパンジーの姿だった。

    父は、脳以外は生存不可能になった彼女を生かすため、脳をチンパンジーに移植したのだ。


    …それからのエウ゛ァの葛藤や苦悩は 計り知れないものがあります。

    だけど、チンパンジーになってみて気付く人間の愚かしさ、醜さ…


    彼女はキーボードで会話をし、マスコミに注目され・・・そのせいもあり、人間不信になっていきます。

    また、彼女の例に続けと、脳を移す手術が行われ、けれど、ことごとく失敗し、その被験者の苦しみを見て、自らも苦しみます。</

      自分の居場所が人間社会ではないと思いはじめた彼女は…


    …ラストのエヴァの心の声には、様々なことを考えさせられます。

    初めて読んだ時は、脳を移植した時点で挫折しました。
    友人に勧められ、も一度トライしてみると、なかなか考えさせられる作品です。
     骨組みのしっかりした、近未来小説です。

  • ネタばれといいますか、最初の衝撃を書かずには感想を展開できないのでそれは書きます。

    13歳の少女エヴァは事故により体を失い、その記憶をチンパンジーの脳に移された状態で目覚めるのだった。
    チンパンジーの体に少女の思考と記憶という衝撃的な始まりですが、エヴァが幼少時から父親の研究の関係でチンパンジーと共に育ったため思うよりは抵抗少なくその状況を受け容れます。エヴァ自身よりも周りの人々の方が戸惑い、どのように彼女に接すればいいのかを逡巡する場面も見えます。そのことについてエヴァ自身も気付いており、自分から他人はそのままだが他人からは見た目がチンパンジーであるという部分が大きいためだろうと推測する。そのように実にエヴァは聡明で本当に13歳の少女なのだろうかと思える場面が多々あります。それは天性のものなのか、自分の運命を受け容れたから得た達観した観念なのかどうなのか。
    エヴァ自身の内的葛藤よりも、エヴァと社会の葛藤に物語の焦点は合わさります。エヴァの記憶を移した元のチンパンジーの記憶は消去されているのですが、その記憶の奥にある本能のようなもの、種が持っている記憶は残り、そのためエヴァは自分が人間として生きるのかチンパンジーとして生きるのかを悩みます。舞台となっている近未来の世界では、人々は屋内に閉じこもりシェーパーと呼ばれる立体テレビを見続けている。そんな人間という種の未来がどこに行くのか。それをチンパンジーの体とその種の記憶を引き継いだエヴァが静かに見つめます。

  •  交通事故に遭って肉体を激しく損傷した少女・エヴァを延命するべく、その記憶を雌のチンパンジーに移植するというおはなし。
     たしか、わたしが中学生のときに使っていた国語教科書の巻末にあった読書案内コーナーで紹介されていた。そのときから気になってはいたんだけど、ほかの娯楽に気をとられているうちに、いつのまにか年齢がほぼダブルスコアになってしまっていた。
     ちょっと安部公房の『盲腸』や、『狐になった奥様』を思い出した。ただ、「盲腸」では羊の盲腸を移植された男が、性格までおとなしい羊のように変化していくし、『狐になった奥様』も、やがて人間の理性を忘れて一匹のけだものと化してしまう。
     それに対して、エヴァはチンパンジーの身体の中で、チンパンジーの本能と人間の知性を共存させて生きようとする。エヴァの聡明さ、勇敢さには胸を打たれるものがある。自分だったら、嘆き悲しみ、でもそのうちおなかがすいて、プレッツェルをのどにつまらせてしまうことだろう(古い話だけど、どこかの国のチンパンジーさんのように)。
     そのほか、娘を研究材料として見てしまう父親、チンパンジーの姿の娘をなかなか受け入れられない母親、好奇の目でエヴァを見る一般大衆、それを利用してイメージアップを図る企業や有名人、などなど、異質な「人類」が誕生したとき周囲の人間がどんな反応をするのかまで、しっかり描ききっているところが、すごい。

     最終章、滅びゆく人間たちの選択が怖い。
     彼女は人間の支配が終わった後、新しい「エヴァ」になれたのだろうか。

     引用した部分を政治家Rに読ませてやりたいなー。これも古い話だけど。

    原題:Eva

  • ラストで主人公の名前が"エヴァ"であることに必然性を感じた。エヴァたちは何万年か先にはまた人間になっているかもしれない。

  • 20年近く前、小学生の頃に初めて読み、内容が印象的だったんでしょうね、タイトルや表紙もずっと覚えていました。この度、書店で本作を見かけて懐かしくなり再読しましたが、なかなかどうして、とても面白い。重厚なサイエンス・フィクションを通して描かれる、意識とは、種差とは、進化とは……。近未来に生きる、黄昏の人類の様子もまた面白い。シェーパー(立体動画)漬けになっている人類の様子は、まるでYouTube漬けになっている現代人のようですらあります。30年前に刊行された小説ですが、内容はとても未来を予見していますね。
    小学生の頃にこの本を読み、この本だけが理由ではないですがその後生命科学を志すようになり、神経学の分野で博士号も得ました。わたしにとって羅針盤のような一作です。

  • 中学生の時に読んだ本のタイトルを偶然知りました。当時、とても新鮮で悲しい話だったのを覚えていましたが、大人になって読むと悲しみよりもSFとして楽しめました。
    あと、人間と動物の境目、娘の脳を持つ猿を娘と呼べるのか?は、考えさせられるところがありました。

  • 交通事故から目覚めてみると、自分の脳はチンパンジーに移植されていた13歳のエヴァ。

    こんなショッキングな設定の近未来小説。

    エヴァの父親は、チンパンジーの保護・研究をする学者で、エヴァのまわりには小さい時からチンパンジーが一緒だった。
    そんなわけで、エヴァは目覚めて、チンパンジーに移植されたときに、強い拒否はなかった。それよりもチンパンジーの身体を提供したであろうケリーのことを思うほどであった。(のちに別の実験で移植された2ケースではあまりの強い拒絶で死に至った)

    父親は、自分の娘の命を助けることも大事だったが、未知への領域への実験に学者としての興味を禁じえなかった。
    また研究所の資金繰りのために。

    母親は、チンパンジーになってしまった娘を受け入れることがつらい。死ぬよりも、という覚悟でないと受け入れられない。

    エヴァをチンパンジーとして生かしたこのケースをTVで報道すると、その反響は激しいものだった。
    それにかこつけこみ、エヴァを独占する契約をかわそうとするシェーパーの会社。

    エヴァ自身は、彼女自身の記憶とケリーの本能や運動能力とのズレを感じながらも、調整しようと努力を重ねる。
    そんな彼女が夢に見るのは、森。ケリーのDNAにかきこまれているのだろう。
    また、飼育研究所の他のチンパンジーとも一緒に過ごすことにも挑戦。それを心地いいと思う自分もいることを受け入れるエヴァ。

    彼女のCM契約の関係で知り合ったグロッグは、エヴァの将来について提案をする。
    チンパンジーとして生きていくのであれば、それはどこなのか?それは人間の生きざまとどのようにかかわりがあるのか。

    そしてふたりは、ある島への移動を試みる。

    チンパンジーの生態の細やかな描写、近未来に遭遇するであろう人口の推移問題、見事に描かれている。
    不可能なことなのに、可能になるのではないかと思うように読めるのがすごい。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%B3

  • 児童文学として出版されていますが、大人が読んでも充分に満足できる一冊です。
    主人公のエヴァは13歳ですが、ひとりの人間としても、人類という種族としても負うべきものの重さに負けず、一番正しいと思われる行動を冷静にとり続けます。

    ネタバレになるのかなあ。
    気になる方はこの先読まない方がよいかと存じます。



    エヴァが目ざめると、自分の身体はチンパンジーになっていました。
    エヴァは賢い少女ですから、人間である自分と同じくらいチンパンジーである自分を認め、愛そうとします。
    そうでないと自分の心と身体がバラバラになってしまうから。

    エヴァの父親はチンパンジーの生態を研究する学者なので、小さい時からチンパンジーに慣れていたエヴァは、チンパンジーを毛嫌いすることなく、チンパンジーとしての生理や本能を受け入れていきます。

    しかし、エヴァの意識が元々の身体の持ち主ケリーの意識を駆逐していくとともに、チンパンジーの本能が表に出てきました。
    人間として家族を愛し、学校に通い、友だちとも付き合いますが、時にチンパンジーとしての衝動が抑えられなくなることも…。

    エヴァのいる世界は、地球上に人類が溢れかえり、自然はほんの少し(人類が入り込むことのできないジャングルや、海洋牧場に適さない海の部分など)しか残されていません。
    増えすぎた人類はすべてのことに消極的になり、生命力が衰えてきています。

    “人類全体がどんどん短絡的にものを考えるようになってきている。頭のいい若者は研究なんかしない。投資家たちは、すぐに見返りが得られないものには一銭だって出そうとしない。政府も研究機関も、基礎研究には金を出さない。宇宙開発からも手を引きかけている。まだまだある。とにかく、なにもしようとしないんだ。人類はあきらめかけてるんだよ。なにもかも放り出そうとしてるのさ。”

    人類がまだ余力を持っているうちに、チンパンジーを自然に返そうという運動が起こります。
    そのためには知恵のあるチンパンジー、エヴァに群れを率いてもらいたいと。
    しかしそれは人間として生きることに別れを告げなくてはなりません。
    愛する家族と永久に別れなくてはならないのです。

    エヴァの逡巡、エヴァの努力、エヴァの決意。
    ティーンエイジャーのエヴァが、自分の一生をかけてチンパンジーたちを自然に返すのですが、エヴァが年老いて死を迎えるとき、彼女の仲間であり華族であるチンパンジーたちは…。

    この作者は相当にチンパンジーの生態を勉強したと思います。
    エヴァは知識としてチンパンジーの生態を知るとともに、本能で理解していく様子がとても自然でした。

    人間としてのエヴァの心、チンパンジーとしてのエヴァの身体、それが合わさったエヴァの個性。
    どれも説得力があり、だから物語の終焉を静かに受け入れることができるのだと思いました。

  • 人類の地球環境破壊が進んだ近未来。
    わずかに残された動物を研究する父を持つ少女エヴァ。
    交通事故に遭って瀕死の重体となるも、奇跡的に生還。
    人間の脳(記憶)をチンパンジーに移植しての延命だった。

    エヴァ(人間)としての記憶とチンパンジーとしての本能。
    2つの感情・感覚の不一致にとまどいながらも、「自分」を受け入れてゆくエヴァ。

    動物愛護団体や、エヴァの両親、その他さまざまな人間の思惑の中で、エヴァがまさに「目覚め」てゆく。


    ストーリーの流れはある程度想像できたものではあったけれど、楽しく読めました。

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