クリスマスの猫

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198601881

感想・レビュー・書評

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  • 季節外れのクリスマスの本。
    だが、コロナ禍の現在、少しでも気持ちを明るくしてくれる本が読みたくて…童話でタイトルにクリスマスと猫、とくれば間違いないと…期待に違わず心を温めてくれる本だった。

    時は1934年。第二次世界大戦前夜のイギリス。

    主人公は、目が覚めるような赤毛が腰まであるスラッとした魅力的な(自称)11才の女の子、キャロライン。
    余談だが、欧米では髪の色に伴う人物イメージというのがあるのは有名な話だ。赤毛は、個性的でちょっとエキセントリックといったとこだろうか。
    キャロラインも上流階級のお嬢様だが、おしとやかとは程遠く、自立心旺盛で、行動的。

    寄宿舎もクリスマスの休暇を迎え、家に帰るのを楽しみにしていたら、独り者の牧師の伯父さんの所へ行くようにと父親から手紙が来てしまう。

    訪れた北の港町は、貧しい労働者ばかりだし、牧師館のお手伝いさんミセスブリンドリー(ブリブリばばあ!)は、暖炉に火も入れてくれない冷徹な人。牧師の伯父さんは優しいけれど、キャロラインをどう扱っていいのか分からず会話が出来ない。
    寂しく、辛い気持ちになっていたところに、牧師館の塀を乗り越えて敷地に入ってきた同い年のボビーと、友達になる。
    辛くてつまらないと思っていた、クリスマス休暇が、にわかに楽しく冒険心をくすぐるものに!


    子どもの頃、空き地に基地を作って遊んだな〜、なんてことを思い出しながら、あっという間に読んでしまった。

    格差は、それこそケン・ローチ監督の「私はダニエル・ブレイク」以上に酷いのだが、人々の貧しさに負けない逞しさに重点が置かれているので、明るい気持ちで読める。
    実はこれ、おばあちゃんが孫娘に語る形で始まる物語。最後には、なるほど!のオチもある。
    ウェストールの話は暗い影のある物が多いようだが、本書は例外的なのかもしれない。
    2020.4.27

  • 牧師でやもめ暮らしの叔父さんの家に預けられたキャロライン。退屈な暮らしの中で、貧しくも元気な少年ボビーと出会い、お腹の大きな母猫を協力して養う。性悪な家政婦ミセス ブリンドリーと真正面からやり合いながらも、クリスマスだというのに寂しい牧師館に奇跡をもたらす。

    読んで良かった。特にラストが、ほのぼのしみじみといい気分になる。ありふれたおとぎ話のようだけど、でもいい終わり方だよね。

  • 1934年冬、上流階級の子キャロラインは教区牧師のおじさんの家に預けられることになるが家に到着すると性悪な家政婦のミセス・ブリンドリーに追い払われる。とてもつまらない生活の中で家の塀を乗り越えて家にやってきた町の少年ボビーと仲良くなる。

    2人にハッピーなクリスマスはやってくるだろうか?

    90年前のイギリスの階級社会を体感しつつ、イギリスのクリスマスを味わうことができました。最後はほっこり。

    最初ボビーが「宗教は大衆を酔わすアヘンである」(P36)や「革命がおこったら、われわれはその時計を国有化する。」(P37)と言い出したり、さらにキャロラインのモノローグで「労働者たちはこの銀行を襲って、まず手始めにこの人を手ぢかの街灯につるしちゃうだろう。」(P63)や「ミセス・ブリンドリーだって使用人のはずだ。」(P65)と思い至るくだりは、なかなか今の日本人にはない発想だなと感じました。イギリスだと今でも当たり前なのかな。

    ミンスパイ、食べてみたいなぁ…とふと思ったらクックパッドにありました。英国大使館の公式キッチンのミンスパイ
    https://cookpad.com/recipe/2439579

  • 1934年のクリスマスに11歳のキャロラインは牧師のおじの家にあずけられる。おじの家には意地悪な家政婦がいて、家は寒く外出は禁じられていた。
    庭で見つけた猫に食べ物を分けてやり、庭に忍び込んでいた少年と仲良くなる。

    上流階級と労働者階級、街には失業者で溢れていて猫や犬に食べさせる余裕もないといった当時の様子も分かりやすい。

    クリスマスはこうでなくっちゃというラストに心温まった。

  • すんばらしいクリスマスストーリーに、カフェのすみっこで泣いてました←不審なおばちゃん。。

    イギリスだけでなく、ヨーロッパの物語にはやっぱり貧富というよりも階級の差のことが描かれますね。本当に憎らしいんだけど、それが子どもたちのお話しとなると、なんて清々しいんでしょ!

    どの階級にもそれぞれ素晴らしい人、憎らしい人がいて、子どもたちは、愛のある人のもとへ導かれる。

    ブルジョアな家庭で育つキャロラインは、クリスマスシーズンを牧師である叔父の家に預けられてしまう。おじさんは優しいけれど孤独で寡黙な人。街の人からいつしか敬遠されている。
    おじさんの牧師館に仕える家政婦が悪い女!
    牧師館から出られないキャロラインは、馬小屋で見つけた痩せっぽっちの猫に隠れて餌をやることに楽しみわを見つけていた。
    ほどなくしてボビーという男の子と庭の塀越しに出会い、内緒で街へと抜け出して、牧師館が街の人たちからどう思われているのか知るようになる。また、街の人たちの本当の暮らしぶりを目の当たりにするのでした…

    そこから先の二人のスパイごっこは、素晴らしいクリスマスの絵葉書のような出来事へとつながるのです。。

    あ〜!こんな素敵なお話しがあったなんてねぇ。知らないまま生きていくところでした!
    そんな人生もったいない。

  • 1934年のクリスマス。キャロラインは牧師のおじさんの家に預けられます。おじさんの家には意地悪な家政婦がいて、外出もままならないw。しかし、ある日、キャロラインは侵入者のボビーと友達になります。そして、いつのまにか住み着いた身重の猫を保護する事に。
    よくある設定なのだが、イギリス社会の階級が子どもたちにも影響しているのが印象的だった。さらに、そんな事をモノともしない2人がとても良かった(^^)ロアルド・ダールっぽい印象。

  • 大切な友達が、大好きな児童書店の店主と相談してクリスマスに贈ってくれました。

    猫はどうなっちゃうの?とハラハラしたり、キャロラインの寂しい気持ちに寄り添ったり、ボビーを通して貧しい暮らしとは何かを初めて知ったり。真心をこめて誰かや何かのために一生懸命になれば、協力してくれる大人もいる、ってわかったり。

    時代や国を超えて、大切なことをたくさん教えてくれる、温かいお話です。

  • 牧師のサイモンおじさんのところへ冬休みに行かなければならなくなったキャロラインの話。
    とても優しい文章でした。

  • ある女の子が、クリスマス休暇に体験した冒険。

  • 暖かく優しいクリスマスストーリー。
    悪役のお手伝いさんがもっと悪役に描かれていたらどきどきワクワクしただろうに…と思うけど、そういう種類のお話ではないから仕方ない。

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著者プロフィール

1929~1993.英国を代表する児童文学作家の一人。「かかし」(徳間書店)などでカーネギー賞を2回、「海辺の王国」(徳間書店)でカーネギー賞を受賞。

「2014年 『遠い日の呼び声 ウェストール短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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