- Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198604493
作品紹介・あらすじ
夏、北欧からギリシャへ、美しい母を求める息子と父は旅に出た。息子だけが手にした「魔法の本」、父だけが語ることのできる哲学と智恵、そして二人を過去の魔法の結びつけた、謎の小人の冷たい手…。緻密に大胆に織り上げられ、「ソフィーの世界」に先だって、「ほんとうに面白い小説」としてヨーロッパ各国で話題を呼んだ小説。ノルウェー批評家連盟賞、ノルウェー文化庁文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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哲学の入門書として有名な『ソフィーの世界』の作家が、ソフィーの前に書いた作品だそう、全然知りませんでしたが作家名であれ?と気づいて借りてきました。ソフィーは10代で読んで30代の頃に再読して、独特の世界観と終盤で混沌とした夢の中のようなカオスになるところ、ソクラテス、アリストテレス、プラトンなど、とっつきにくい哲学の巨人たちのことが無理なく学べたこと(詳細はすぐ忘れてしまうものの)、などが大好きだったのでこの作品も期待して読んだのですが、大変面白かったです。ソフィーが経験した冒険が内面的な思考の世界だったのに対し、こちらの主人公ハンス・トマス少年は実際に8年間離れて暮らしている母親を訪ねて父親と二人でヨーロッパを旅していきます。想像もしていなかった不思議な物語が展開して、ぐいぐいと引き込まれてゆきました。マトリョーシカのように物語が入れ子になっていて入り込むまでややこしいのですが、ゴルデルさんもその点について自覚があったらしく、作中の語り手に良いタイミングでそのあたりをざっくばらんに説明させていたりして、いろんな仕掛けがありつつも読者を置いてけぼりにしないような心配りもあって、助かりました。物語の中に別の物語が進行しているので、キャサリン・ネヴィルの小説『8(エイト)』を思い出したりしました。いつか、この作品とソフィーを続けて読んでみたいです。
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「子供向け」とは「子供だまし」ではない。
きちんと一人の人間として子供に向かって語ることが出来るか。
そこが受け入れられるか拒絶されるかの違い。
「ソフィーの世界」の前作とのことだが、これを読んだ流れで
ソフィーの世界を読めればそれはとてもいい経験だろう。
ただし、おそらくこれは大人が「読みなさい」と言って
読ませてはいけない本。
自分で見つけて読まなくてはいけない。 -
友人に勧められて手に取った(こういう広がり…新しい世界が拡がっていくような感覚がたまらなく嬉しい)
あっという間にストーリーに引き込まれる
少年が手に入れた「本」の世界と 現実の世界が 同時に…進んでいく。どちらの世界が本当なのか…
「トランプ」のカードとともにストーリーが進んでいく
ちょっと魔法にかかったような…
読んでいる私は年齢的には「大人」なんだけど 子どもになれるような…
時間を忘れて読み進めた1冊
ファンタジーのようで哲学書のようでもあって 読み返すたびに新しい発見がありそうな予感がする
願わくばそういう時間をたっぷりと持てる状態でありたいな~って思うこの頃
時間を作って本を手にとる
物語の世界に没頭できるって 幸せなことだったんだということを 改めて思い出させてもらった気がする -
「ソフィーの世界」の前年にゴルデルが書いたもうひとつの傑作。何十年も放置していたが読んでみた。テーマは自分という存在は何か、この世界、生命はどこから来たのかというソフィーの世界と同じテーマだ。話はハンス・トマス少年と哲学な父さんと2人で8年前に家出したお母さんを探しにアテネまで行く話だ。その途中で小人にルーペをもらい、パン屋のおじいさんにもらった丸パンの中から出てきた魔法の豆本を読むと…!すべてのことは脳内で起きている、肉体は滅んでもイデアは残るということを伝えている。作者の意図は考えるという哲学的行為を子供でも読みやすいファンタジー仕立てで書き上げている。更に面白い!子供から大人までおススメする
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中~高校通じて読み続けた本のうちの一つ。大人になると殆どの人間が考えなくなる内容を、ぼうっと考える時間があるうちに読んでおきたい本だが、積極的に他者に勧めることはしない本でもあった。ふと手にとって、気に入れば読まれるし、読まない人間は早々に本棚に戻すだろう。10代の頃に読めてよかったと思っている。
哲学の初歩のために書かれたと言われているので、その方面に薄らとでも興味があれば読んでみるのもいいかもしれない。
ソフィーの世界を読もうか検討しているが、時間のない大人になっていないことを祈る。 -
10/20 読了。
再々々読くらい。読むたびに短く感じるようになっている。ジョーカーゲームのくだりは本当にゾクゾクする。 -
ソフィーを文庫にしたんなら、コレもしてくれorz
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初版の次の年、中学校の図書室で鮮やかな背表紙に惹かれて借りて読み、大人になってから自分で買いました。その後引っ越しのどさくさで紛失したので買い直し、久々に読み返しました。
この物語には親子が辿ったルートや立ち寄った街や観光施設の名前が出てくるので、ストリートビューでなぞったり建物の中の写真を見ながら読み進めました。30年近く前自分の生まれ育った街のこと以外何も知らない中学生の頃には想像する材料さえなかった旅の風景に色が付き、その移動距離にも驚きました。一番驚いたのは本場ベネチアのベネチアングラス博物館が北海道の小樽のベネチアングラス博物館よりずっとしょぼかったことです。
物語の始めと終わりに、もうすぐ少年時代を終えようとする主人公が出てくるところ、本編で考えていたようなことをそろそろ忘れて考えもしなくなっていくのかなと少し寂しくなりました。