私は金正日の踊り子だった 下

著者 :
  • 徳間書店
3.46
  • (4)
  • (2)
  • (5)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 27
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198606800

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 学部時代に購入したと思われる古い本を実家の本棚から発見して再読。同書は北朝鮮最高の芸術団「万寿台芸術団」の踊り子として活動する傍ら、金正日の踊り子、すなわち「喜び組」の初期メンバーとして金正日の秘密パーティーに参加していた女性の手記である。著者は1995年末に韓国に亡命した。

    著者は元々、地方に住む一般庶民の出身であり「出身成分」もあまり良いほうではないという。しかし、舞踊の才能を認められ、「血の海芸術団」を経て「万寿台芸術団」に入団。平壌の住民の中でも特に豊かに暮らすことのできる条件を与えられたほか、金正日の秘密パーティーに出席することにより、多くの「プレゼント」をもらっていた特権階級である。その後、結婚した男性も中央党幹部(大臣級)の息子で、夫や息子と共に(当初は末っ子を「人質」として北朝鮮国内においていかざるを得なかったのだが)イギリスで数年にわたって暮らすという、一般の北朝鮮人からはかけ離れた生活をしている。

    そのためか、生活上の苦しみや貧困については同書の中であまり語られない。その代わり、北朝鮮で極めて強い忠誠心を持つ人が韓国を含む外国に対してどのように考えているのか、庶民とはかけ離れた豪華な生活をしている最高指導者を見て何を考えるのか、ということがよくわかる。
    著者は「喜び組」メンバーとして金正日のパーティーに幾度も参加し、そこで行われる破廉恥なダンスなどを目の当たりにする。北朝鮮社会の厳しい規律の中で生きてきた著者は強い衝撃を受けるが「それで金正日の疲れが取れるなら・・・」とそれを肯定的に受け入れていくのである。

    また、ロイヤルファミリーの1人の嫁候補として選ばれて「面接」のようなものを受ける過程も書かれている。同じ芸術団の友人がその「面接」に合格してうらやましさを感じるが、その後、夫の心が離れ、彼女が「行方不明」になってしまったことを知ることになる。
    特権階級でありながら、一歩間違えれば人生が大きく変化してしまう、そんな危うい北朝鮮の人々の「生」を著者の経験を通して目の当たりにする。

    強い忠誠心を持っていた彼女が、イギリスに住む数年間で北朝鮮に疑問を感じ始め、夫について亡命することを合意するまでの心の動きも比較的詳しく書かれている。
    真の自由を求め、また子供により人間らしい教育を与えたい、と考えて脱北した人々を見ると、人間としての欲求は北朝鮮もわれわれも大きな違いはないのだな、ということに気付かされるのだ。

  • あまりにも滑稽な「北」の事情。
    著者は,ごくありふれた一般人の身分から金正日直属の踊り子にまで上り詰めていく(北での)サクセスストーリーを描く反面,ロイヤルファミリーを間近で見てきた様子の描写,夫との出会いとイギリスでの生活,韓国に亡命を決意するまでの様子が鮮明に描かれている。
    北ではあまりにも滑稽な教育を繰り返す一方で,同じ民族である韓国との差がそこまで広がっている現状に改めて考えさせられた。
    アホが国の上層部にいると,ここまで一般人にしわ寄せがいくとは…

    一読の価値あり。

申英姫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
三浦 しをん
村田 沙耶香
村上 春樹
湊 かなえ
ヴィクトール・E...
ピエール ルメー...
三島由紀夫
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×