日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

著者 :
  • 徳間書店
4.15
  • (97)
  • (62)
  • (43)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 757
レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198611682

作品紹介・あらすじ

本書は、本格的な宗教原論である。各宗教の蘊奥(奥深いところ)から説き起こし、比較歴史的に、どのようにして、これらの蘊奥に達したかについて解明し、現代にどんな影響を及ぼしているのかを論ずる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 憲法原論に続き、やっと読了した。
    良い点などはアマゾンレビューなども参照すれば伺えると思うので疑問を抱いたことについてメモする。

    まず、ざっくりと内容に触れると、著者はオウム真理教事件の例を引いて副題の「あなた(日本人)を宗教はどう助けてくれるか」という問いを提起し、「宗教を正しく理解」することから始めようとしている。
    そこから宗教のハードな実際を説明し、各宗教を一章ずつ使って解説する。
    キリスト教、イスラム教、儒教については流し読み。一番関心のあった仏教について通読すると、著者が仏教の肝心であるとする「法相宗」と解説の手本とした三島由紀夫の「豊饒の海」、中村元の「空の理論」「ミリンダ王の問い」を引き解説して見せる。
    法相宗のあり方が元来の仏教的なあり方であるとし、続けて「輪廻転生」および大乗仏教の論理である「空」を説明するのだ。
    あまりに簡潔な解説ぶりに目を見張る・・・とまでは行かないぐらいざっくりとした解説である。
    そして煩悩から解脱して涅槃に至ることが仏教のさとりであり、「色即是空」がその境地であるとして、「色即是空」に迫ろうとする。それにはたとえ話が有効らしい。法華経でもたとえ話が採用されているとのこと。
    各論を終えてまとめとなる第7章にて、日本における宗教を概観して、アノミーが進んでいるために人々は団結することを欲しているため宗教が台頭しているとして、「日本人をどう助けてくれるか」の答えを提示して終わる。

    限られたページ数で、この解説ぶりはさすが碩学と言わざるを得ないが、どれを取ってもざっくばらんとしており、そもそも一つの宗教(あるいは宗派)を理解するだけでも一生を費やす場合さえある。経済学者として数学者として社会学者として実績のある著者であるが、宗教にかけては大まかにしか理解できないだろう。それを参考文献を持ってきて要の部分だけ理解して枝葉末節は置いとこうっていう感じである。
    全体としてマックスウェーバーの理論や宗教学用語を語句の解説をあまりせずにまた学問を例に当てはめてだだっと説明してしまうのでわかりやすい解説を求めた著者は割と置いてけぼりを食うのではないだろうか。
    ブクログにもさっぱりわかってないよ、て感じのレビューもあるし…。

    また、仏教だけにしても大元のインド仏教を大事にしているのかと思えば、鎌倉仏教についても触れ(しかもちょっと辛辣だ)、鎌倉仏教を元にカルト宗教を批判している。マトリョーシカのような入れ子の説明をしていながらキリスト教も元々はカルト宗教だったっけね、とぶっちゃけている。
    奇蹟についての扱いも最後の方ではお粗末である。さんざん仏教では奇蹟は有り得ないとしていながら日蓮上人の奇蹟は一応ありにしている。
    仮にだが、「縁」を元に解説していた「縁って」の論理に従えば、日本の仏教によくある、公正世界仮説におけるような、因果の法則も正当化されるのでは。そしてそれは「奇蹟」に近い功徳や罰にも適用されるのではとか思ったりもできるのでは。
    とまあこんな感じで疑問がいくらかある。
    概観するには悪くないが、著者にこだわらないならそれぞれの宗教に知りたいなら他の本でも良いと思います。

  • 宗教が不思議だ。
    宗教そのものというより、宗教を信じる、という心の動きが不思議だ。
    あまり不思議なので、聖書を創世記から読み直してみたりしたのだが、やっぱりよくわからない。

    まあ、そりゃそうで、「なぜ宗教を信じるのか」という問いは、宗教に投げかけるのではなく、宗教を信じている人に投げかけなくちゃならない。でも敬虔な○○教徒の人に、「あんたなぜ○○教なんか信じているの?」と聞いたら喧嘩になりそうな気がする。喧嘩で済めばいいけれど、もっと怖いことになりそうな気もする。聞けない。

    「信じる」という心の動きは、ある事象や指示について、自分ではそれを検証、評価せずに受け入れる、という危ない一面を含んでいるが、それ自体はやむを得ない。例えばぼくは、地動説を「信じて」いるが、この目で地球がぐるぐる回っているのを見たわけではない。観測と実証と批判を重んじる科学がそうである、と断じているから、ぼくは地動説を信じているのだ。そういう意味では科学を信じている、と言ってもいいかもしれない。
    でもそれは、たとえば死んだ人が生き返った、という話を信じる、というのとは「信じる」の意味が違うように思えるのだ。

    ぼくが宗教関係の本を読むのは、この不思議が気になってしょうがないためなのだが、なかなか真正面から答えてくれる本には巡り合わない。

    本書は、それぞれの宗教の中身に踏み込んだ本だ。それはそれで大変興味深い。ぼくは旧約聖書を読んでかなりショックを受けたけれど、そのショックはもっともなことであると言われたようでちょっと安心した。仏教は宗教というより哲学の体系なのだといわれたほうがわかりやすいかもしれない。イスラム教も興味深い。
    ただ、やっぱり「なぜ宗教を信じるのか」はよくわからなかった。ぼくの彷徨はまだまだ続く。

  • この著作の終盤箇所を引用すると、

    世相はますます混乱の様相を呈している。
    (中略)日本が壊れるどころか、日本人が壊れてきているのだ。
    新世紀、事態はさらに悪化するであろう。
    ことここに至れば、日本を救うのも宗教、日本を滅ぼすのも宗教である。
    あなたを救うのも宗教、あなた殺すのも宗教である。

    ここで、著者は、殊更、宗教の重要性を指摘しています。
    この箇所を読むと、「やはり宗教だ!」と肯定的に思ってしまう人もいるかもしれない。
    ただ、人口の8割以上が無宗教の日本人からすれば「宗教、、、、かぁ、、、」と、
    宗教に対してマイナス寄りの複雑なイメージを持っている人も少なくないと思います。

    正確には、「宗教に関する正しい知識」が必要だと、小室博士は言いたいんだと思います。
    この著作は、博覧強記かつ宗教社会学にも、かなり精通した著者だから、書けたことです。
    それは、「自分の信仰」に関して、著者は一言も語っていないことからも、
    伺いしることができます。

    その科学的とも言っていい態度は心から尊敬します。
    この本は難解な世界宗教(キリスト、イスラム、仏教)の基本となる教義や用語の意味、
    背景となる歴史、そして比較分析を、平易な用語を使用して解説しています。
    こんな芸当ができる知識人は、滅多にいません。

    この著作は00年代の出版され、また著者は既に鬼籍に入られています。
    著者の分析した「日本が壊れるどころか、日本人が壊れてきているのだ」は、
    18年の日本の現況を見ても「そうだな。。。」と思う方は少なくないかもしれません。
    「そう思った」なら、是非、この本を手にとることをおススメします。

    この著作の価値は出版されてから8年以上経ちますが、
    未だに色褪せていない名著です。
    それは、やはり「宗教」に対する少なくない日本人の無知と、
    その悪用が、以前よりも、より日本社会にマイナスの影響を与えているからです。

    個人にとって宗教が救いか、救いにならないかは、わかりませんが、
    宗教の正確な知識は、絶対必須なものといってよいと思います。
    それだけ、今の日本は宗教的な危機に直面して、
    誰もそれが、宗教的なものであると、わからない、その気味悪さが、
    日本社会を覆っているからです。

  • 読み始めてまず、いやに振り仮名が多いと思った。多いどころか総ルビに近い。それだけではなく、「輩出(続々と世に出ること)」とか「畢竟(つまり)」とか、熟語によってはかっこ書きで意味まで説明してある。例えば小学校高学年の児童でも読めるようにという配慮だろうかと想像してみたが、本当のところは分からない。まあ確かに、「蘊奥」などという熟語は、「うんのう」と仮名を振るだけでなく、「蘊奥(奥深いところ)」と意味を説明してもらった方がありがたい。同じ啓典宗教のユダヤ教やイスラム教と違って、キリスト教には本来戒律がないということなど、この本を読んで初めて知ったこともあるが、同じ概説書なら、橋爪大三郎の「世界がわかる宗教社会学入門」の方が分かりやすかった。

  • 世界の主要な宗教の基本的な思想を互いを比較しながら分かりやすく解説した本です。①今までぼんやりとしか知らなかった各宗教の教えを知れた事、そして②かなり抽象度が高いことを「比較」と「例示」を用いて分かりやすく説明する方法に触れられた事(特に仏教の「空」の考え方に関する説明が秀逸でした)、その2つの意味でとても素晴らしい本でした。私自身は無宗教だと自認しており、生涯特定の宗教の信者になることはないと考えております。ただ、それは宗教に対して無知で良いということではなく、無宗教であるからこそ、社会をよりよく知る為に、社会に強い影響を及ぼしている宗教というものについて、より関心を持って学ばなければならないと考えており、その入門書として非常に良い本でした。

  • マックス・ウェーバーは宗教はエトス、行動様式であると説いたが、本書は宗教を通じて世界の行動様式の根を探るものである。

    キリスト教、仏教、イスラム教、儒教と眺めて迎える第7章「日本人と宗教」では、そういった各種のエトスから現代に至る日本人の心性に迫るものとなっていてとても勉強になった。

  • 宗教とは何ぞや、というのが知りたく読む。一度読んだだけでは深く理解できない。もう一度読もう。
    疑問としては、例えばキリスト教は予定説であり、行動様式は無く、心の中で信じればよいもの、とのことであるが、キリスト教の人はそれを受け入れ信じているのであろうか?通常キリスト教とか仏教とか、例えば創価学会とか、そういう家に生まれれば親もそうであるし、親と同じ宗教になる。しかし一般的には例えば予定説とか納得しない気もするし、納得いかないからじゃあ〇〇教に変わる、とかめったに無い。生まれながらのしきたり、文化、教育と宗教は切っても切れない関係にあるかもしれないけども、人はなぜその宗教にとどまるのか?なぜあなたはその宗教ですね、と特定してしまうのか?別にそういう考えもある、ああいう考えもある、そういうお祈りをすればいいのね、とか、自由に色々な考えを取り入れる、という寛容さはなぜないのだろう?

  • 変化は変化を生み、それがまた変化を生む。その過程で、原因は結果となり、結果が原因となる。これが仏教の「空」である。つまり、「空」とは有無を超越し、相互依存と同義である。すべては仮のものである

  • 1
    知の巨人と言われた小室直樹さんの本です。私のイメージは親戚のおじいちゃんみたいで、泊まりに行った時に笑顔でお話を聞かせてくるという感じで読んでいたので楽しく読めました。
    日本の仏教はインド仏教からみるとかなり異質なんだということも分かりました。確かにお経読んだり、戒名付けてお金をもらうのはビジネスだなと。

    あと、宗教と訳される「religion」は繰り返し読むという意味だそうです。だから私の宗教は本なのかもしれません。

  • 宗教が何か分かりました。

全69件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1932年、東京都生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『国民のための戦争と平和』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』がある。

「2020年 『封印の昭和史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小室直樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
マックス ウェー...
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのかを本棚に登録しているひと

ツイートする
×