心やさしく

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198615352

作品紹介・あらすじ

自分の居場所が見つけられず、やさしくしてくれる相手を求めて家出をくり返していた十五歳の少女ローリは、ある日、両親を殺した十八歳の少年エリックが釈放された、というニュースを見て、彼に魅了されてしまう。ローリは子どもの頃、一度だけエリックに会ったことがあった。そのときの彼は、やさしくて頼もしかった。親を殺したのも、虐待を受けたせいだというし…。彼に会いたいと、あとを追い始めるローリ。エリックもまた、切実に"やさしさ"を求めていた。だが、彼の求め方はひどく歪んだものだった。刑事は彼を「怪物」と呼んだ。今、表面上罪をつぐない終えたエリックは、次の「計画」に着手しようとしていた…。二人が出会い、ともに旅していく先に、待っているのは絶望か、救いか…?アメリカの鬼才コーミアが、十代が抱く「だれかとつながりたい」という切実な願いと、心の闇とを描き、思いがけないラストまで、圧倒的な迫力で一気に読ませる話題作。

感想・レビュー・書評

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  • えり*「怪物」と呼ばれた少年と、彼を愛した少女の物語。胸がぎゅーっとなって泣きました。

  • すごく良かった

    ハッピーエンドの展開でもよかったけど
    やっぱり、そうなるかって感じ。

    心臓つぶされるかと思った・・・

    もう1回読みたくなる




    でもなぁ
    ふたりで幸せになってほしかったなぁ・・・

  • 次々に仕事と恋人(みんなろくでなし)を替える母に育てられた、体は発達しているが、心は無邪気さと幼さをまだ残している15歳の少女と、シリアルキラーの18歳の少年。この二人が出会って旅をする。設定がかなり危ういのだが、ギリギリのところでやはりYAだなあと思わせる。
    少女が、普通の男が劣情を抱かずにいられないようなルックスでありながら、性的には放埒ではないこと。
    少年の殺しの場面は詳しくは描かれないこと。
    そして何より、少年がもしかしたらこれからはまっとうな人生を送れるような、大きな変化があったのではないかという期待を抱かせる終わり方をしていること。

    少年も母から異常な愛情を受けて育ち、まともに人を愛することができず、母に似た女性を殺すことで、やさしさを感じる異常性欲の持ち主なのだが、シリアルキラーはこんな少年だったのかもしれないというリアリティがある。そして、その性癖は治すのが不可能ではないのだと考えるのがコーミアのやさしさなのかも。それには犠牲が必要だったのだが。
    少女ローリが、母の恋人からいやらしい目で見られ、これ以上母といたらやっかいなことになると感じて家出するシーンが切ない。
    やっかいなことというのは、もちろん自分の身に危険が及ぶということもあるが、母の恋人が自分を好きになって、母が彼女を、娘としてではなく恋人を横取りした女として憎むことを恐れたのだし、憎まれることがイヤだというより、母を恋に狂った惨めな女にしたくないという思いやりすら感じるところが悲しい。きっと何度もそういう経験を15歳にしてしてしまっているのだ。
    恋愛ではないけれど、少年と少女に奇妙な愛情関係があったのは確かで、それは二人が今まで親に求めても決して得られなかったaffectionだったのかもしれない。

  • 「やさしさ」を求めた2人の物語。両者とも難しい境遇のなか育ち、やさしさを求めていた。

    絶対あなたを裏切ったりしない。
    あたしのこと愛して、エリック。

    エリックは純粋な愛情を知れた。ローリの顛末は別として、その点は良かったのかなあ…。
    湖のなか沈んでいったローリを何度も潜って探しに行く場面は辛かった。ふたりとも、わかりかけていたのにね。

  • きのう読み始めてきょう読了。久しぶりのコーミア。
    ローリとエリック、ふたりの視点が交互に語られる。はじめしばらくがローリ視点で、しかも一人称の「あたし」語りだったから、てっきりローリ中心の展開かと思っていたのだけど、途中でエリック視点(こちらは三人称)が入り始めると、徐々にエリックへと比重が移っていく。その感じが、ローリがエリックのための生贄、という印象を増幅させた気がするのだけど、これはコーミアのねらいなのかしら。
    おしまいの展開は、個人的には詰めが甘い、と、思う。

  • 私的さよなら子ども図書館フェア第2弾。
    美しい笑顔で周囲の人をたやすく魅了するが、「やさしさ」を感じられる瞬間を求めて殺人をくりかえす少年と、豊満な体に子どもっぽい心をもち、無邪気に愛情を求める少女。2人の出会いは最初から悲劇に至るほかないように思える。しかし、感情のない悪魔だと刑事に評される少年のかたくなに完結した世界は、少女によってしだいに揺り動かされ、もろさがあらわになってくる。もしかしたら、2人はこれまでとは違う方法で、それぞれが求める「やさしさ」にたどり着くことができるのかもしれない・・・そう思えてきた矢先に悲劇は起きてしまう。ラストに救済はないけれど、予感のようなものが漂っている。2つの不安定な心の出会いから生まれた、可能性とさえ呼べないような、方向のさだまらない何か。見えかけた瞬間に消えてしまったものの感触がせつない。

  • 最初、彼の言う'やさしさ'がよくわからなかったけれど、だんだんわかってきて、最後は「ああ」というしかなかった。掴もうとした途端、消えちゃったね。

  • 最初のうちはなかなか読み解けなかったが 徐々に話にひきこまれていった。
    最後に2人とも幸せになれそうでなれなかったのが 悲しくまた余韻深い。

  •  作者はおじいちゃんだが、凶悪犯罪を犯す少年の心を知っているかのようだった。手に入れた瞬間に裏切られるものとして、エリックに認識されている「やさしさ」。「こだわり」をなんとかしようとするローリの描き方もすごい。あまりにも刹那的で、自己中心的、愛と呼ぶには未熟すぎる衝動が悲しい。児童書として書かれているけど、大人にも堪えられる深さ。
     「アフェクション」というべきところで「ラブ」と言ってしまう、という一節には興味を惹かれた。少し違うがなんでも「かわいい」と「ビミョー」ですましちゃう若者が取り沙汰されるように、言葉の使い方を気にするのは、当たり前だけど日本人だけじゃないんだな。

    原題:Tenderness

  • 自分の居場所を探して家出を繰り返す15歳の少女ローリと、両親を殺し、ほかにも少女殺害の疑いをかけられている18歳の少年エリック。エリックに魅せられたローリは彼を追い、二人は旅に出るが・・・。自分にやさしくしてくれる相手を求めるローリ、しかしエリックの求めるやさしさはひどく歪んだものだった。十代の心の闇を描いたこのお話、ほろ苦い読後感かもしれません。

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