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- / ISBN・EAN: 9784198616649
感想・レビュー・書評
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お母さんとおじいちゃんはケンカ別れしてしまったけど、お互い大好きだった。
強い信念で扉を押し開いた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
10歳の少年バドが父親を探す旅に出る物語。1930年代の大恐慌の只中、黒人差別の激しいミシガン州を舞台に、孤児であるバドが生きていく現実の厳しさと、「ほんとうの居場所」を見つける幸せを描き出している。
序盤は、バドのつらい境遇にやるせなさや憤りを感じながら読んだ。その中でも、図書館の女の人、伝道所で並んでいた人、フーバービルの人たちなど、さまざまな大人たちの優しさに心が和んだ。そして、ルイスさんに出会い、バンドメンバーのもとで暮らし始める頃には、安心感に包まれながら過ごすバドの幸せが自分の心にも流れ込んできた。「自分の居場所」で過ごす幸せを感じて泣きじゃくるバドを、トーマスさんが自分のひざに乗せてやる場面なんてもう……。よかったね、バドって、嬉しくて泣いちゃいそうだった。
翌日、バドのあだ名を決めようとバンドメンバーたちが話し合うシーンも最高。バドが泣きじゃくったことをからかって「議長、きのうのスイートピーでの少年のおこないからして、水道管バドがいいと思います」と提案したときには、声を出して笑っちゃった。
特に前半はつらい物語だと思うけど、バド自身が随所で「バドの知恵」をもち出してめげずに乗り越えていこうとするし、いろいろな登場人物のユーモアにも救われて、つらい状況なのに笑っちゃうような明るさが、物語全体を通してあった。ルイスさんがバドのことを「バドデスバディジャナクテ」とずっと呼び続けているのもクスクス笑った。そんな明るさも魅力。
最近出版された『図書館の宝物』と、読んでいるときの感覚に似ている部分があった。どちらも孤児である子どもが主人公だし、けっこう長くつらい境遇に寄り添い続ける点もそう。後半に子供達が「家族」や「居場所」に辿り着き、大きな感動に包まれるのもそう。
どちらも、少年(たち)がつらい境遇でもがきながら、幸せになることを諦めない。そして、温かい大人と出会い、愛情をたっぷり受けることができる。訳者も書いていたけど、本を閉じたときに「人間っていいなあ!」って心の底から思えた。
こういう素敵な物語に出会えるから子どもの本を読むことはやめられない。そして、子どもたちに届けたいという思いの源泉が大きくなっていく。
「バド、おぼえておいてね。扉がしまって道がふさがれたとしても、どんなにたいへんで、どんなに闇が深くても、ちゃんとべつの扉がひらくからね。心配しなくていいのよ」P45
「とつぜん、わかった。今まで、いろいろなところで暮らしてきたけど、ここだったんだ。いろいろな人たちと出会ったけど、この人たちだったんだ。ここが、ぼくのほんとうの居場所だったんだ。」P189
「いろんな楽器の音色が全部とけあって、どれが一番好きなのかわからない。図書館のにおいと同じだ。」P218
「ママ、また、扉がひらくよ! 今度の扉は、ぼくからとびこんでいきたいくらい!」P254 -
原作を読んだ時にはピンとこなかったコミカルな部分がよく出ていた。
あらためて口語表現の多い小説は苦手なのだと認識。 -
扱いようによっては悲惨なテーマを、明るく、ユーモラスに。ルイス一家が素敵。