風神秘抄

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198620165

作品紹介・あらすじ

坂東武者の家に生まれた十六歳の草十郎は、腕は立つものの人とまじわることが苦手で、一人野山で笛を吹くことが多かった。平安末期、平治の乱に源氏方として加わり、源氏の御曹司、義平を将として慕ったのもつかの間、敗走し京から落ち延びる途中で、草十郎は義平の弟、幼い源頼朝を助けて、一行から脱落する。そして草十郎が再び京に足を踏み入れた時には、義平は、獄門に首をさらされていた。絶望したそのとき、草十郎は、六条河原で死者の魂鎮めの舞を舞う少女、糸世に目を奪われる。彼女の舞には、不思議な力があった。引き寄せられるように、自分も笛を吹き始める草十郎。舞と笛は初めて出会い、光り輝く花吹雪がそそぎ、二人は互いに惹かれあう。だが、その場に、死者の魂を送り生者の運命をも変えうる強大な力が生じたことを、真に理解したのは糸世だけだった。ともに生きられる道をさぐる草十郎と糸世。二人の特異な力に気づき、自分の寿命を延ばすために利用しようとする時の上皇後白河。一方草十郎は、自分には笛の力だけでなく、「鳥の王」と言葉を交わすことができる異能が備わっていることに気づく…。平安末期を舞台に、特異な芸能の力を持つ少年と少女の恋を描く、人気作家の最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 萩原規子さんの描く世界のテーマは、正しい愛が苦難を乗り越えること。だから全部ハッピーエンド、決してデッドエンドにはならないんだなと思った。正しい愛があるなら、必ず共に生きたいと願うから。
    だから荻原さんの本が好きだし、読むと生きる勇気が湧く。

  • 子どもの頃、というには大人びた頃に読んで以来、久々の再読。
    あの頃は、糸世と草十郎と鳥彦王ばかりが印象に残ったけれど、今読み直してみると、上皇の孤独が身にしみる。
    草十郎が傍にいれば癒えたのかもしれないと思う一方、きっとそうなれば草十郎も上皇も不幸になっていたのだろうとも思えて、どこかやるせない。
    糸世たちに幸せになってほしい気持ちは相変わらずなのに、どうしてこんなにも上皇の寂しさが気になるのだろう。

  • 『あまねく神竜住まう国』を読むにあたって、読み返さねばと思ったので。
    平治の乱から始まって、草十郎の笛と糸世の舞が出会い、別れ、そして取り戻すまでの物語。
    やっぱりどこまでも一途であるということはよいものだ。
    そして鳥彦王かわいいなあ。

  • 平安末期あたりをベースにしたファンタジー。
    実在の人物との関わりがとても自然だった。
    後白河上皇がヒールなのだろうが、憎みきれない魅力があった。主人公を辛い目に遭わせる立場ではあるものの、彼の行動のもとが、悪意ではないところが物語を厚くしているように思った。

  • 草十郎と糸世と鳥彦王。
    起こってしまったことはもとには戻せない。
    今できることに最善を尽くす。
    何かを得るためには何かを失う。

    ファンタジーだから異界と繋がる話。
    平安末期の現実に存在した鳥羽上皇や頼朝に絡ませながら孤独な少年が成長する、大勢の人たちに見守られていたこと、一人ではなかったことに気づく、
    勾玉シリーズ、神竜あまねく住まう国、もう一度読みたくなった。

  • 数年ぶりに再読。
    前読んだ時は恋愛模様の部分にだけ興味を惹かれていたけれど、今読むと魅力はそれだけじゃなかったとよくわかった。
    まず時代考証が滅茶苦茶ちゃんとされてるんですよ。出てくる建物や小物や街並みなど、まるで見てきたかのように克明に描写されてる。読んでいるだけで当時の今日の情景をありありと思い浮かべることができる。
    それから実際の歴史的事実もファンタジーに上手く絡めているなあという印象。和風ファンタジーって最近溢れてるけど、「なんか和っぽいファンタジー」が多い中これはちゃんと地に足つけた和のファンタジーだ。日本の平安時代、そこで起こった実際の政争と戦争、それが主人公たちに影響与えている。
    文章も適度に固くて、でも読みやすくてとてもいい。この著者の「授業のゆりかご」だったかな、にその本の主人公が「あなたは平易な文章を書ける人ですね」と先生に褒められる場面があるのだが、この著者の文章を読むといつもその言葉を思い出す。そう、くどくなくて知識開陳パートもなくて、詩的に走りすぎるとこもなくほんとうに平易なのだ。かといってラノベのように軽いわけでもない。(同著者のRDGでは随分軽い文章になっていて驚いたが、作品によって使い分けているのだろう)
    というわけで、これをティーン向けの児童文学にしておくのは勿体ない。大人にも読んでほしい。まあ内容的にはボーイミーツガールなので、そういう意味ではやっぱりティーン向けと言えるのだが。
    要は和風ファンタジーが好きなら老若男女訪わず楽しめるということだ。戦いのシーンもあって格好いいし、あと音楽についてもかなり描写されているし、そういうのが好きな人にもおすすめ。
    キャラも勿論魅力的ですよ。一番のお気に入りは鳥彦王。次点で日満。

  • 歴史と神話、土着の神々との交流。違った角度から見る日本史にワクワクした。鳥彦王の自由でこだわりのない性格が好きだ。妃候補の三羽のカラスの関係もユーモラスだ。それにしても、雅楽の世界は奥深い。糸世と草十郎の創り上げる舞台空間、一度見てみたい。

  • (15-22) 「あまねく神竜住まう国」を読む前に再読。初読の時、一番記憶に残ったのは上皇。上皇の不自然なまでの長寿は彼らのおかげだったのか!と、ファンタジーと知っていながら納得しちゃった。私は前から気になってたので、荻原さんもそうだったのねと共感した。今回は草十郎と頼朝がどれほどの交流をしたか気にして読んだ。案外少なかったが頼朝にとって、ぎりぎりのところで共に過ごした経験は強く心に残っただろうと思う。

  • 最近、1番お気に入りの作家・荻原規子です。
    といっても、「勾玉シリーズ」しか、読んだことないのですが。それだけで、魅了されてしまいました。
    最近は、「もうひとつの空の飛び方」*1なんてのも、楽しんでます。

    今、文庫で「西の良き魔女」も出ていて購入していますので、読むのが楽しみです。
    こっちも、オススメした人が、2日ぐらいで読んじゃったので、きっとはまると思います。

    最初の「空色勾玉」から、かなりうまかったのですが、これは、勾玉3部作を書いてからかなり時間をあけてから書いているからか、さらに磨きがかかっています。

    「空色勾玉」とか、「白鳥異聞」のときは、基本的に女の子視点がうまい人なんだなぁと思っていました。
    でも、「薄紅天女」で、男の子も、すごくしっかりと書けることがわかりました。

    そして、本作。これは、すごいです。

    基本的には、男の子から見た女の子なのですが…。

    男の子から見た、あこがれの女の子(謎な女の子といってもいいかも)というのを書けてる物語って、けっこうあります。
    それから、女の子から見た、あこがれの女の子の書けている物語っていうのも、けっこうあります。
    そして、もちろん、男の子から見た等身大の男の子の物語、女の子から見た等身大の女の子の物語というのも、あります。

    でも、この「風神秘抄」は、そういうのみんなかいた上で、「あこがれの女の子」も「等身大の女の子」も、「あこがれの男の子」も「等身大の男の子」も、実は同じものだよと、かききってしまって、それを登場人物にも、読者にも気づかせてしまう(しかも、あこがれの部分をちゃんと残したまま)。
    ものすごい物語です。
    そして、とてもストレートな恋愛小説です。

    もちろん、草十郎も、糸世も、普通の人間ではなくて、選ばれた人間なんですが、それを感じささないものがあるんですねぇ。

    そして、この2人だけだったら、とっても閉じた物語になってしまったと思うのです。そこにでてくる鳥彦王。
    彼が、この物語の真の主人公であるかもしれません。
    鳥彦王と草十郎の掛け合いは、最初の瞬間から、めちゃくちゃおもしろい。
    草十郎と糸世の物語であるのですが、草十郎と鳥彦王の成長の物語でもあると思います。

    「糸世が行っていた世界」についての言及は、ちょっといらなかったかも。と思ったりもしますし、勾玉シリーズにあった神様の力みたいなおおらかさは少なくなってしまったのですが。
    それでも、今までのお話になかったいろいろなものをもっていると思います。

    なんとも、すごい話を書いたものです。

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著者プロフィール

荻原規子・東京生まれ。早稲田大学卒。『空色勾玉』でデビュー。以来、ファンタジー作家として活躍。2006年『風神秘抄』(徳間書店)で小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞(JR賞)、日本児童文学者協会賞を受賞。著作に「西の良き魔女」シリーズ、「RDGレッドデータガール」シリーズ(KADOKAWA)『あまねく神竜住まう国』(徳間書店)「荻原規子の源氏物語」完訳シリーズ(理論社)、他多数。

「2021年 『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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