- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198621742
感想・レビュー・書評
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児童書だけど大人が楽しめる一冊。
どうして絵画ミステリって面白いんだろう。
宮廷画家ベラスケスが描いた「ラス・メニーナス」
そこに秘められた謎を描いた物語は児童書以上の出来栄え。
この絵に描かれた少年、そして一人の謎めいた人物を軸に作者の想像と絵画が見事に溶け合う様を堪能した。
徐々に明確な色彩を伴っていく少年、逆に徐々にぼやけていく男。
このコントラストの描き方も巧い。
この時代の王族の慣習、時代背景、少年の成長をせつなさと共に知ることができたのも良かった。
大人ならではの感じ方、楽しみ方ができる作品だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一気読み。
児童書なんだから当たり前だろ、というのではない。それほどに巻措く能わざる内容なのだ。
イタリアに生まれた小人症の少年が、スペイン貴族によって親元から引き離される。行きの船の中で出会うは、自分と同じ小人症の、しかしそこらの木偶よりよほど堂々とした、おとなの男。宮廷に着いてすぐ、溺死させられるところだった子犬を助け、飼うことに。
元ネタを知る向きには、すぐにぴんと来るだろう。もーうニヤニヤしっぱなしである。有名人がオンパレードの、「歴史のif」物語。こういうのが好きな人にはたまらない。
さらに本書は、物語としてもよくできている。
まず、主人公の造型がいい。父に疎まれ、あげく売られて冷静に考えずとも悲惨な身の上なのだが、賢く前向きで負けん気が強いキャラ設定のおかげで、じめじめしない。
さらに彼を取り巻く人々もまた善良で、無駄な不幸や理不尽がない。少年のド根性サクセス・ストーリーとして、とても気持ちよく読み進むことができる。ジュヴナイルは(基本的には)、こうでなくては。
「児童書」とは言うけれど、年齢1ケタではやや手ごわいか。むしろ、おとなが読んでも(読んだほうが?)楽しめる。良質の「おはなし」である。
2018/3/13読了 -
元来好きなベラスケス・・スペインではぴかいちと思っていたし、本物は手が届かないから「グレートアーティスト」のばら売りで購入していた。
「ラス・メニーナス」の解説で彼が「技術的に、人間の本質をとらえる才能に長けていた」とあった。
宮廷における地位を考慮しつつも、外面的な見せかけをこえ、内に秘められた人間の神秘を見通していると。
宮廷の憐れな道化師たちは神々しい生気を帯びている。
ベラスケスにとり、モデルとなった道化師たちは例外なく魂を持っており、神の目の元に平等であるからこそ、ベラスケスにとって等しく尊敬に値していたと。
児童書とあるが13歳を越えたあたりでないと理解できないのではと思う・・それだけ人の魂に訴えかける様な叙述が為されており、余りの面白さで、2時間ほどで読み切った。
美術本紹介と言えばあの女性が有名だけど、こういった現地・セヴィリアの方が書いた「スペインの国情・歴史宗教観などを肌で感じて育ってきた」作品はかなり異なったニュアンス。
「群像をこうした大画面に描ききること・・・それには並外れた才能が必要とされる」と述べたのは、ケネス・クラーク
作品を読みながら、かの名画を何度も何度もながめ返して眺め余情に浸った。
作者の手腕は「アートサスペンスファンタジー」とでもいうのだろうか・・・ベラスケス亡きあとに描き加えられた騎士団の赤い勲章‥そこから敷衍されて広がるベラスケスの想い、それを受けとめたと設定されるニコラス、そのキャラ設定とバックで支えたマスティフ犬・マレバリボラとバレハ等・・対する闇の人物(絵画でもそう描かれたネルバルの描きに引き込まれた。 -
この本が無くても「ラス・メニーナス」が名画であることに変わりはないけど、こういう本を読むことで、描かれた時代の雰囲気や描かれた人々についてより興味が湧く。ベラスケスがモデルの身分や外見をきちんと描きながら、その人物の人となりが時に容赦なく伝わってくるのは、ベラスケスが人を中身で判断する人間だったからだ、というキャラクター設定には説得力がある。
道化として雇われながら、鋭い観察力と洞察力で地位を確保したマリバルボラやデ・アセドも魅力的に描かれている。
マリバルボラの後ろに立つ男が誰か、というところがこの物語の仕掛けになっている。
物語としては短いのがちょっと残念な気もする。でも、大人はもっと時代や人間関係を濃厚に書いてほしいと思ってしまうけど子供に読ませるにはちょうどいい長さかも。大人が読んでも面白いけどね。 -
20200223読了
こちらは図書館や学校で本を読むおばさん(おばあさん)の叔母が面白いよーといって勧めてくれた一冊
ベラスケスの絵画 『侍女たち(ラス・メニーナス)』の手前右端に描かれた少年を主人公にして、この絵の謎を解き明かすファンタジー。当時スペイン王室は、身体的な異常者を集めており、この少年も大きくなれない体質。ただ記憶力が良かったことや立ち回りがうまかったことから出世するのですが、その間に仕えたベラスケスと、その時自分まで描かれたというこの絵についての謎。
ベラスケスがこの絵を完成したときは騎士団ではなく、その印の十字の紋章はつけられなかったのに、後で描き加えられている⁉︎
というような謎を解き明かしてくれます。
児童書なので、読みやすかったですが興味深い内容で面白かったです。
三枚目の絵は、ピカソがこの絵にインスパイアされて、沢山の絵を描いたものの一つ。
バルセロナのピカソ美術館にはこの絵を集めた大きな部屋が1室あります。 -
ニコラスはスペインの宮廷でベラスケスと出会い、その絵の中に描き入れてもらうことになる。ベラスケスの名画「侍女たち」の中にある謎に迫る物語。ニコラスはその才覚で出世していくが、ある事件をきっかけにベラスケスから遠ざけられてしまう。
ベラスケスの名画に秘められた謎をめぐるミステリー。
あっという間に読めてしまいました。面白かった! -
17世紀スペインの宮廷画家ベラスケスの大作「ラス・メニーナス(侍女たち)」にまつわる二つの謎に着想を得た子供向けミステリアスファンタジー。
主人公は「ラス・メニーナス」の右端に描かれている犬(マスティフ犬)に足をかけている少年。彼はニコラスという小人症の少年でその障碍故に父に売られイタリアから連れてこられた。紆余曲折を経て、宮廷画家ベラスケスの工房に出入りするようになったニコラスは、画家が取り組んでいる絵(のちに「ラス・メニーナス」と呼ばれるようになる)の秘密を知ることになる・・・。
「ラス・メニーナス」に描かれている人物についてはほぼ確定されているが、一人だけ顔がはっきりわからない男がいることと、画家本人の胸に印された赤い十字章は後に書き加えられたことがわかっているが、誰が描いたのか不明であるという二つの謎を、ファンタスティックな解釈で解き明かした歴史ファンタジーといえる。宮廷で暮らす人々の様子が、ニコラス視点で生き生きと描かれ、まるで17世紀のスペイン宮廷に入り込んだように感じられて楽しい。
この二つの謎は作家の創作意欲をかき立てるものらしく、以前に呼んだ「赤い十字章」では、本書にも登場する、奴隷出身のベラスケスの助手フアン・パレハの視点で、またちがった十字章の謎解きに迫っている。
大人ならすぐ読めるし、小学生でも中学年以上で読めるのではないか。「ラス・メニーナス」の前に立ってみたくなった。 -
このテーマは答えが歴史的に分かってしまっているから、児童書にしかならなかったのだろうか?
少々複雑にしたら結構いい小説になるだろう。 -
子供の本だけど大人が読んでも面白い。少し予備知識があった方が楽しめる。あの絵(ベラスケスのラ・メニーナス)の右の隅っこの、犬を踏んでる?子が語り手。絵画の謎解きもの大好きです。