アメリカ後の世界

  • 徳間書店 (2008年12月1日発売)
3.40
  • (2)
  • (11)
  • (15)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 118
感想 : 15
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198626556

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アメリカの覇権が終わって、中国、ロシア、インド・・・と、単一の覇権ではなく、アメリカ以外の国々の台頭によって多元的な世界になる、という話。

  • 製造業などにおける、低コストの中国には優位性がある。だが将来的には、中国はひとりっ子政策で、労働力不足に直面するはずだ。その点、インドの人口ピラミッドは、下部が膨らんでいる。人口統計が示すインドの未来は明るい。

    一方、アメリカは過去の経済大国であり、イギリスがたどった贅沢と怠け心を膨らませ、ハングリー精神を失ったのだろうか・・・アメリカは移民大国なので、新しい労働力は潤沢にある。アメリカの庇護下で成長したドイツ、日本が浮上する目はなく、下落に歯止めはかからない。絶対王者の地位は滑り落ちたが、近々にはアメリカの優位性が覆ることはない。

  • とにかく長い!

    冷戦後、ソ連が崩壊しなんだかんだいってアメリカが世界に台頭していたが、21世紀に入り中国、インドの新興国が現れ、今後このような国が増え、世界が相対化していく世界とはどのようになっていくのか書いた本。アメリカ後とはアメリカの一極台頭がそろそろ崩壊かと思われるこれからの世界のこと。

    大部分はアメリカ、ヨーロッパ、中国、インドの近現代史をベースに現在のそれぞれの国の成り立ちを解説して最後に今後のアメリカの立ち位置を示してるようなもの。

    久しぶりにこんな本読んで頭から湯気がでた。これで会社の役員が残していった本もすべて読み終えた◎

  • アメリカ一極支配の時代が終焉をむかえた。アメリカはどうなるのか?

    こうした問題意識に対して、
     ・どのように西洋が台頭したのか?
     ・どのようにアメリカが一極支配が確立したのか?
     ・中国の世界に対するインパクト(歴史的考察及び現状分析)
     ・インドの世界に対するインパクト(歴史的考察及び現状分析)
     ・アメリカはどのように没落したのか?
    といった解説とともに、「アメリカ自体がどのようにグローバル化すべきなのか?」といったテーマに取り組んでいる。

    世界史を振り返り、世界から見たアメリカの位置づけがどのように変化しているのかを改めて整理することができた。

    本書の取り組みは「21世紀初頭、アメリカは世界のグローバル化という歴史的偉業を成し遂げたが、その過程で自国のグローバル化をし忘れた」という一言に集約できる。

  • 中国の発展は世界史上で最高のサクセスストーリー
    中国の最大の問題は政府が腐敗していることではく地方分権が一線を越えて暴走し中央政府が中国全土をまとめる能力を失いつつあること。
    中国はでかすぎて兎に角、目だってしまうのだ。

    ソフトパワーを利用し始めたのは19世紀のイギリス人。
    英語の普及。文学の普及。

    アメリカの軍事力は、アメリカの強さの原因ではなく強さの結果。
    経済基盤と技術基盤が強大な軍事力を支えている。

    インドと中国は一部を除くと教育は質量ともに悪い。
    高等教育こそがアメリカの最優良産業。

    第二次大戦後のドイツと日本は特殊だから参考にはならない、

    文化はとても重要だが変わってしまうこともある。文化は複雑だ。ある時点ではある文化特性が永久不滅に見えても、政治と経済の分野で転換が起これば、同じ特性が重要性を失い、ほかの特性が台頭してくる。文化論というのは成功期と失敗期の両方を説明できなくてはならない。

  •  08年の本。少し古いが、大英帝国の後の米国支配を経て、ポストアメリカの時代が訪れている。中国やインドなどの「その他の国」が台頭してきているが、いずれかの国が覇権を握るのではなく、相互依存の仕組みの中で綱引きが進んで行くとしている。
     米国の立ち位置は難しく、引き続き、経済力、科学技術力、教育力などで優位性を保ち得るが、政治力、つまりワシントンDC内の相互対立が問題とする。これなど先般のDC議会の争いをみていると正しい指摘ではないかと思う。
     良書であるが、とても読みにくい。

  • 政治学ってこういうもんなのかな、という感想。

  • 『気鋭のジャーナリストが国際政治の今後への展望をつづった本。
    かなりの教養の持ち主のようで、世界史的な裏付けに基づき大胆な論を展開している。
    彼の中心的な主張は、「アメリカ以外のすべての国が台頭する」ことによってアメリカの相対的な地位が低下していくだろうということであり、特に彼の出身国でもあるインドと最大の人口を抱え急成長を続ける中国、それに彼の今の活動拠点でありこの本の、そして国際政治の主役でもあるアメリカに関する記述が大半を占める。
    もっとも、日本のゆとり教育についても言及がなされていたり、ジャーナリストらしく世界各地の事情に満遍なく精通しているようでもあった。
    また、上にあげた主張自体はそれほど斬新ではないが、個別の記述や政治家やジャーナリスト、学者などの著作や発言からの広範な引用は非常に示唆に富んでいる。
    日本語訳もあくまで素人目だが、格調高く読みやすい訳に感じられたので、国際政治に関心がある人はぜひ手にとってみてほしい。 』

  • 本書のテーマは“アメリカの凋落”ではなく,“アメリカ以外の全ての国の台頭”である.

    『第4章 中国は“非対称的な超大国”の道をゆく』
    ・結局,中国をユニークな存在にしているのは,世界最大の人口,大国のうちで最速の経済成長,世界最大の製造能力,世界第二位の消費力,世界最大の貯蓄量,世界第二位の軍事支出という組み合わせなのだ.
    ・政治的,経済的戦略を遂行するにあたって,国民の要求を顧慮しなくてよいという立場上の優位が,北京政府をしばしば後押ししてきた.民主主義の国では,有権者を満足させるために,膨大な資金が短期的な補助金に回される.
    ・依然として中国政府は,ゆるやかな改革という手法をとったおかげで経済の多くの分野を支配している.今日でも,GDPのおよそ半分を稼ぎ出すのは国有企業だ.また,ほとんどが国有のままである中国の銀行業界は,傾いた企業を支えるため,そして地域と集団と個人に金を流すため,採算を度外視して資金をばら撒いている.
    ・植民地時代の確執が存在しないこともあり,北京政府とアフリカ諸国の政府は新たな貿易関係を歓迎した.2006年1月,胡錦濤主席は中国アフリカ首脳会議を開催した.この席で中国は,2年間で対アフリカ援助を倍増する,アフリカ向け投資を新興するため50億ドルの基金を創設する,サイケインを放棄する,中国市場の開放を進める,職業訓練を提供する,病院や学校を新設するなどの約束をした.見返りに,天然資源を得た.
    ・中国は自国製品を売るためにアメリカ市場を必要とし,アメリカは国債を買ってもらうために中国を必要としている.

    『第6章 アメリカはこのまま没落するのか』
    ・アメリカにとって真の試練は,1900年代のイギリスが直面した試練の対極にある.アメリカの経済と社会は,眼下の競争に対応する能力を備えている.つまり,アメリカにとって真の試練は政治的なものだ.アメリカの挑戦は,国内政策よりも,外交政策の面で試練にさらされるはずだ.みずからの支配下にない世界で,アメリカは繁栄を実現することができるのか.
    ・アメリカがおこなった意思決定を,残りの国々がありがたく黙って受け入れる,というような上位下達のヒエラルキーはもう成立しない.仲裁者としての役割が重要となるのだ.
    ・アメリカが“その他の台頭”の中で成功を掴み取るためにすること.人世代前に18歳の無骨な学生が感じたのと同じ魅力と刺激を,これからアメリカの地を踏む若き留学生たちにも提供し続けることなのである.

  • 登録:2009/09/25 図書館
    読了:2009/10/06

  • (20090531読了)
    ・一日一ドル以下で生活する人々の割合は1981年の40%から2004年の18%に激減している。P14
    ・全ての次元−産業、金融、教育、社会、文化−で見れば、権力の分負は脱・一国支配の方向へとシフトしている。これは”反アメリカの世界”が出現しつつあるという意味ではなく、”アメリカ後の世界”に移行しつつあると言う意味。P16
    ・西洋ではテロ攻撃の効果は回を追うごとに縮小している。9・11の直後に大暴落を起した世界中の金融市場は9/10日の水準に戻るまでに2ヶ月を要した。P29
    ・人々は暗黙のうちに、最善の対テロ政策が、”復元力”であることを認識している。P31
    ・ハイパーインフレは国家が罹患しうる最悪の経済病。通貨、貯蓄、資産、労働の価値を消し去るという点で、深刻な不景気よりもたちが悪い。P39
    ・グローバル化された世界においては、ほとんど全ての問題が国境を超えて伝播する。テロリズム、核兵器、疫病、環境悪化、経済危機、水不足・・・どの問題をとってみても、多くの国々が真剣に強調しない限り、解決はおぼつかない。P48
    ・参考「グローバル化の逆襲」(ガボール・シュタインガルト)・・・グローバル化の元でライバル諸国が反映するにつれ、アメリカ経済は基幹産業を次々と失い、あまりか国民は貯蓄する事を止め、アメリカ政府はアジアの中央銀行に対する借金を膨らませてきた。P60
    ・機械時計のおかげで人間は太陽とつきに頼らず時間を測れるようになった。機械時計の登場は、昼と夜の定義を可能にし、仕事の計画化を可能にした。おそらく最も重要だったのは事業に注ぎ込んだ時間数を記録する事によって労働コストの数値化が可能となった点。P81
    ・アメリカ有数の学者議員ダニエル・パトリック・モイニハン・・・「政治ではなく文化が社会の成功を左右すると言うのが、保守主義の中核的真実である。一方、政治には文化を変える力、文化を文化そのものから守る力があるというのが、自由主義の中核的真実である」。P88
    ・1853年にはアメリカの船団が日本の領海に入り、”鎖国”政策に終焉をもたらした。日本は西洋諸国と次々に通商条約を結ばされ、相手国と相手国民に特権を認めなければならなかった。P96
    ・今後10数年の間に世界第四位までの経済大国の内3カ国が非西洋国家(日本と中国とインド)で占められるだろう。そしてこの李の一国であるアメリカは国内の非ヨーロッパ系人口の増加によって内側からどんどん形を変えていくだろう。P103
    ・世界中の企業幹部たちは、”スタンダード”なビジネス習慣に則って会社を経営している。複式簿記や配当などの”スタンダード”は全て起源を西洋にもつ。P107
    ・全ての非効率的な企業を即刻閉鎖し、不良な融資を打ち切り、大規模な民営化を断固する代わりに中国は不採算分野を囲い込む形で全体の経済成長を図った。P132
    ・ビルゲイツ・・・「人間はどんなときでも、より良い結果をもたらす為に、自分自身で価値判断を行う必要がある。私の個人的意見では、中国の指導者層はこの点をとても気にかけているようだった。」P135
    ・中国の指導者達にとって”民主主義”とは何を意味するのか?に対し、温家宝は、「選挙、司法の独立性、抑制と均衡にもとづく監視」の三要素を挙げた。P140
    ・西洋のビジネスマンは折りに触れて、交渉相手の中国人が規則や法律をあまり重視しないと主張する。彼らにとって抽象的概念を遵守するという考え方は、中国人の思考様式とは相容れない。彼らにとっては、社会における関係と信頼のほうが、紙の上の約束よりも遥かに大切。P154
    ・中国が目標達成のために最終手段の軍事力ではなく、経済力と政治力を用いる可能性が高い。P172
    ・先進工業国が高齢化に突入する一方、インドでは今後も大量の若者−労働力の供給が続く。中国は、”一人っ子政策”の成功によって若者不足に直面している。P179
    ・インドの最大の特徴は人的資本。企業家や経営者や、ビジネス手腕に長けた人々は、誰も想像できないようなペースで増えつづけている。原因のひとつは近代化社会の言語、すわわち英語に接する機械が多いこと。P183
    ・インド政府は、健康や教育など人間に対する投資はほどんど行われず、予算に計上される分も効果的につかわれていない。P191
    ・インドの初代首相ネール・・・「父が子に語る世界歴史」P197
    ・高等教育こそがアメリカの最優良産業。P250
    ・「日本の”ゆとり教育”への転換は、基礎学力重視という反動を引き起こした。授業不足と学力低下を、生徒の親達が懸念した」P256
    ・人口高齢化の影響はかなり大きい。第一に増加する年金受給者を減少する労働力が支えなければならない。第二に経済学者のベンジャミン・ジョーンズが指摘するとおり、亜Hつ銘菓のほとんど−そしてノーベル賞受賞者の圧倒的多数は、最も重要な実績を30歳から44歳までの間に挙げている。P259
    ・過去30年間アメリカは先進工業国の中で一番低い法人税率を保ってきたが、今日、アメリカの例率は二番目に高い。ほかの国々が下げた。P269
    ・1990年代はロシアは完全にアメリカからの援助と融資に依存していた。それが現在は年間数百億ドルの財政黒字を誇っている。P286
    ・”たとえ高位の外交官でも、アメリカ政府との交渉におもむく時は、表敬訪問をする属国の将の気分にさせられる。”P295
    ・アメリカにとって一つだけ確かなのは、各地域にライバル関係が存在するおかげで、世界秩序の中心で大きな建設的役割を担うチャンスが広がるという点。P306
    ・2国(アメリカ、ロシア)で全世界の核兵器の85%を占める米ロ間に核兵器の削減。P315
    ・アメリカは今、冷戦初期と同じ重大な過ちを繰り返そうとしている。P331

  • 著者の立場は、
    アメリカは他国の影響力拡大に寛容になり、
    世界の仲裁者になるべきだという考え方。

全13件中 1 - 13件を表示

著者プロフィール

ファリード・ザカリア(Fareed Zakaria)
CNNの報道番組「ファリード・ザカリアGPS」のホスト役、ワシントン・ポスト紙コラムニスト、アトランティック誌編集者を務める。ベストセラー著作家でもある。2019年、フォーリン・ポリシー誌により「この10年における世界の思想家トップ10」に選ばれている。イェール大学卒業、ハーバード大学政治学博士。フォーリン・アフェアーズ誌のマネージング・エディター、ニューズウィーク誌国際版エディター、タイム誌コラムニスト、ABCニュースのアナリストなどを歴任。
主な著作に、高く評価され、ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーとなったIn Defense of a Liberal Education、『アメリカ後の世界』、『民主主義の未来』などがある。

「2021年 『パンデミック後の世界 10の教訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ファリード・ザカリアの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×