あるキング

著者 :
  • 徳間書店
2.75
  • (104)
  • (390)
  • (1204)
  • (750)
  • (259)
本棚登録 : 6493
レビュー : 981
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198627799

作品紹介・あらすじ

弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求。"王が求め、王に求められる"ようにと名づけられた一人の少年は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常ともいえる情熱を彼にそそぐ。すべては「王」になるために-。人気作家の新たなるファンタジーワールド。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 天才とは、才能を有する人のことではなく、その才能によって人生を台無しにされてしまう人のことをいう、というのは、誰あろう私の言葉である。
    絵描きの天才は、絵を描くことで身を滅ぼし、音楽の天才は、音楽によって身を滅ぼし、愛の天才は、愛によって身を滅ぼす。野球の天才は、やはり野球によって人生を滅ぼすのだ。故に、本当の幸福は凡人にのみ与えられる。
    この小説の主人公は王様である。そして天才である。生まれてきたときから、誰かに注視され続ける存在である。味方がいて、敵がいて、信者がいて、従者がいて、友がいて、過酷な運命がある、否の打ち所のない、正真正銘の王様だ。そしてやはり、才能によって人生が台無しになってしまう。正真正銘の天才だ。最後に生まれてきた子供は、王様であり天才である男の力によって、天才でも王様でもない、凡人としてとても幸福に生きて死ぬ未来を授かったのだろう、と私は思っている。そうでなければ。

  • 熱狂的な仙醍キングスファンの両親のもとに生まれてきた王求(おうくと読む)。両親は王求をプロ野球選手に育てるため、明らかに一線を越えた援助をし続ける。影に日向に奔走し、運よく才能に恵まれて生まれてきた王求を怪物バッターへと育て上げる。王求の内面はあまり語られない。いいなり、というわけでもない野球への熱心な姿勢に貫かれている朴訥とした青年。途中、黒ずくめの魔女が現れたりクラスメイトの父親が怪物だったり(というか節目節目にこいつは出てくる)というファンタジー。(マジックリアリズムとよびたい)
    伊坂作品に通底しているご都合主義の裏返しのような(不都合主義と私はくくる)、まぁいわば出来過ぎた偶然が重なる物語で、王求がプロになってバッターとして活躍してからは、一体何を自分は読んでいるんだろうかという不思議な気持ちになる。で、最後でようやく自分が何のどういうお話を読んでいたのかがわかる。舞台だったらスタンディングオベーション並みのラストでした。

  • 本は薄いけど内容はずっしり来た。一回読んでみてほしい作品。

  • 不思議な話だなという一言につきました。
    野球の話をしているのですが、
    野球の話を超えた抽象的な話のような感もあります。

    ただ野球が好きなだけの天才・王求の人生が、
    周囲の人間が絡むごとに徐々に変化していくわけですが、
    決して天才だから歪められたわけでなく、
    他人の関わりなくして生きてはいけない人間の
    さだめのようなものをそこはかとなく感じました。

    なんて、書いてみましたが、
    正直、よく分からんなぁという話です。以上。

  • やっと!!初伊坂です。
    私より少し年下の年代に、すごく人気のある作家。
    東野さんなんかよりずっと人気あるだろうに、直木賞は未だ。

    とにかく乾いた印象。感情移入を拒むかのような。
    かと言って磯崎さんのように、不親切ではない。
    この辺が若い人に受ける理由の一端でしょうか。

    よくある風景の中の、おとぎばなし。
    よくあるというのは、日本人にはお馴染みの「プロ野球」が舞台の作品だから。
    でも、おとぎばなし。・・・それもなんとシェイクスピア。

    実を言うとシェイクスピアを読んだのは10代の頃なので、
    既に、かなりいろいろな物語が頭の中でごっちゃになっているのだが
    人物の役割や、せりふ回しから、ああ、とわかる。
    日本人の日常であるプロ野球の中にあって、かけ離れた世界を描いているんですね。
    その余裕の文章、テクニック。
    この作者の、物語作家、小説家としての力量を感じました。

    作者自身が、自分らしくない作品になりました、と書いているので
    私はもっと彼の作品を読まねばならない、と思ってます。

  • 不思議なことにこの本の登場人物たちには顔がなかった。
    私には顔が思い浮かべられなかった。
    情景、音、感触はありありと伝わってくるのに、登場人物たちの顔だけは思い浮かべられなかった。

    伊坂幸太郎の小説はほとんど読んでいるが、これだけ登場人物の顔が思い浮かべられなかったのは初めてだ。
    いつもは登場人物たちが愛すべき形を持って、個性豊かに生き生きとしているのに。

    それはこの本がある男の伝記のような語り口で書かれているからなのだろうか。
    語り部の語りで進められるから、語り部の介入があるから顔が思い浮かべられなかったのだろうか。

    他の伊坂幸太郎の作品のテイストはそのままに、また異質な小説だと思った。
    私は伊坂幸太郎好きなので伊坂作品には贔屓目だが、これは伊坂好きも賛否があるのも納得な気がした。
    私はつまらないとは思えない。
    ただ今までのような、どきどきはらはらのストーリー性はない。
    比較するなら『陽気なギャングが地球を回す』のようなものとは真逆。
    『魔王』『モダンタイムス』とも違う。
    伊坂幸太郎特有の洒落たセリフはない。
    ただ淡々としている。
    それはこれが伝記調なのだからだろうか。
    とにかく異質。



    いっきに読めるという点では小説を普段読まないという人にはおすすめだけど、初伊坂幸太郎という人にはあんまり読んでほしくないと思う。
    なぜだか。
    おすすめの難しい本。
    でも伊坂好きには外さず読んでおいてほしいと思う本。

  • 面白かったかつまらなかったか、と聞かれたらつまらない、と答えるかもしれない。
    でも何か語りたい、読んだ方の感想が知りたい、と思わせてしまう読後にものすごく「残る」一冊。
    超常現象並みの野球の能力を持った少年の人生。

    作者はものすごく普通ならざる題材を使ってものすごく普通のを書きたかったのかなあ、と思ったりしました。

  • 普通にストーリーをなぞるだけならなかなかの悲劇だったのではないか、そう思えて仕方ない。
    王として生まれ、王として育てられ、王としてあり続ける。頂点として誰からも認められる実力を持っている者の宿命とはいえ、過酷すぎる。
    本当に王は求められているのか。それすらもわからず話は巡り巡る。

  • 天才が同時代、同空間に存在する時、周りの人間に何をもたらすのか?野球選手になるべく運命づけられたある天才の物語。

    一気に読破しまいたが、賛否評価がわかれる作品だと思います。若干、いつもの伊坂幸太郎とは違った印象をうけた。あくまでも一個人の印象の感じかた・・・ファンの方は、ぜひ読んでみて感想を!!

  • 「あるキング」
    野球選手になるべく運命づけられたある山田王求はプロ野球仙醍キングスの熱烈ファンの両親のもとで、生まれた時から野球選手になるべく育てられ、とてつもない才能と力が備わった凄い選手になった。彼はいわゆる天才であった。しかし、その天才の運命は少しずつ歯車が狂いだす。


    天才野球選手・山田王求の生まれる瞬間から幼児期、少年期、青年期のそれぞれのストーリーが、王求の周囲の者によって語られる形で進んでいく「あるキング」ですが、やはり気になる要素は「黒尽くめの3人の女性」と「緑色の獣」です。どうやら「マクベス」も取り込まれているようですけど、肝心のそれを私は詳しく知らないのでなんとも言えませんw


    黒尽くめの3人の女性は常に王求の周りに登場し、当たり前のようにその場に存在し、じわじわと周りを侵食していきます。そして、緑色の獣ですが、私は最初狂った人間の描写表現であると思ったのですが、どうやら違うようです。


    そんな2つの未知に加え、天才を超える才能を身に付けた王求には苦難ばかりが襲い掛かります(少なくとも父親の言う名前でからかわれる試練などとうに超えた)。凄すぎてすぐに日本の野球界から異質扱いされる王求ですが、これが王なのか?とも思えます。


    勿論、「王は何でも出来る」という描写と「マクベス」の要素から、人から信頼と尊敬を集める偉大な王ではないより特別で且つ孤独な王ということは分かるのですが、どうしても王求の人生には悲しみを覚えます。


    果たして彼は野球をしていて幸せだったのか?私は物語の終盤で王求はそれでも野球が好きであるということを知ることが出来ますが、それでも幸せなのか?と思ってしまいます。


    凄いを超えることでより凄くなれるのではなく、より孤独になり、それでも王は前を進まなければいけない。そんな王求の王の道はあまりにも悲しすぎます。

全981件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

あるキングのその他の作品

あるキング (徳間文庫) 文庫 あるキング (徳間文庫) 伊坂幸太郎
あるキング (徳間文庫) Kindle版 あるキング (徳間文庫) 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の作品

あるキングを本棚に登録しているひと

ツイートする