賢者たちの決断

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198630300

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  • 序章 意思決定術を教えてくれる学校はない

    第1章 源へ赴け

    第2章 会議室を野人で満たせ

    第3章 リスクへの恐れを克服せよ

    第4章 理念を日々の指針とせよ

    第5章 狙いすまして聴け

    第6章 透明であれ

    1.現場でカテーテルを投げつけられてわかったこと
     レノックス・ヒル病院の手術室で味わった衝撃的な体験をを、ジョージは"一見の力"と呼ぶ。たった一度見たカテーテルの破損事故が、百件の報告書より如実に、メド・メドトロニック社のかかえる問題を指し示してくれた。ただし、カテーテル事業の態勢を全面的に見直すという決断は、その一度の経験だけから出てきたものではない。事業に関するほかのすべての知識とのつながりの中で、考えを深めていったのだ。ジョージには、カテーテルの欠陥だけではなく、自社の情報処理手順の欠陥まで見通す力があった。

    2.恒久的な情報源を確保する
     オリン・スミスがスターバックスの店舗運営に関する情報を仕入れる際、頼りにしている恒久的な情報源のひとつとして、最前線で働くバリスタたちの存在がある。スミスは"直談"という手順を編み出し、出張に行くと、宿泊先のホテルに会議室を確保して、現地のバリスタを何人か招き、上司たちを交えず、じかに話を聞くようにした。(中略)

    スターバックスは当時、コーヒー以外の収入源による売上増をめざして、さまざまな商品の店頭販売を始めていたが、顧客の反応はあまりかんばしくなかった。ある"直談"で、スミスが多角化のむずかしさを嘆くと、ひとりの女バリスタの口から大胆な発言が飛び出した。
    「店で何が売れると思うかを、誰もわたしたちにきかないんです。品物が届くと、わたしたちは箱をあけて、つい笑ってしまいます。売れないことがわかってるんですもの」

    .最良の人材を雇うための基準
     ピーターソンによると、最良の人材を雇ううえで、大事なひとつの基準は、何が正しいかを知っているつもりの人間より、学んで理解したいと思っている人間に目をつけることだという。ピーターソンは妻の発想法を借りて、候補者を"スボンジ"タイプと"鉄板タイプ"に二分する。
    「"鉄板"タイプは、自分が正しいと思い込んでいるので、意見や考えをぶつけられてもはね返してしまいます。"スポンジ"タイプは、ぶつけられたものを吸収して、自分の中に取り込みます」

    みずからの理念に従う
     ツーフォークス・ダム建設に向けての大きな動きの中で、ライリーは政治力学や強大な圧力をものともせず、みずからの理念に従って、国家のための最善の決断を下した。当事者のほとんどすべてが計画の承認を求めていたのだから、自分の価値観を抑えて、あるいは引っ込めて、事を荒立てず、大勢に従うこともできたはずだ。とりあえず目をつぶって許可を与え、それを将来のための貸しにするという手もあっただろう。しかし、資源は環境を損なう方向ではなく保持する方向で用いるべきだという明確で揺るぎのない信念が、あったから、ライリーはとてつもない政治的な重圧に押しつぶされず、敢然と行動することができたのだ。

    理念は組織を際立てなくてはならない
    ゴールドマン・サックスの会長に就任してすぐ、ジョン・ホワイトへッドは敵対的買収業務の受注競争には参戦しないという決断を下した。倫理を重んじる投資銀行として、孤高を守る道を選び、顧客の目から見た同業他社との差異化を図ったのだ。
     ゴールドマンが競争から身を引いたのは、敵対的買収がうまくいかない例が多いからだけではなく、ある企業が相手経営者の意思に反して別の企業を乗っ取るという行為に、投資銀行が荷担するのは非倫理的であるという信念がホワイトへッドにあったからだ。この決断は、短期的には減収をもたらしたが、攻撃を受けた企業の守護者としての地位をゴールドマンに与えた。買収の標的にされた企業の経営陣は、ゴールドマンがあとで敵に回ることはないという安心感を持って、助けを求めることができた。そこで築かれた信頼関係は、投資銀行としてかけがえのない資産となった

    .賢者が人の話を聴く際の三つの狙い
     ごく基本的なレべルで、賢者たちが人の話を聴く際には、三つの大きな"狙い"があることがわかった。第一は、情報を収集すること。(中略)

    第二に、意思疎通のすべを学ぶこと。(中略)

    第三に、当事者意識を引き出すこと。(詳細は本書を)


    .狙いすまして聴く
     ワゴナーは、オールズモビル再生策について多くの意見に耳を傾けたが、結局、耳に残ったのは、救済はできないし、するべきではないという声だった。ゼネラルモーターズには、もっと重要で、もっと成功する見込みの大きい事業が、ほかにもある。議論の方向を"どうやってオールズモビルを救うか"から"オールズモビルを救うべきかどうか"に転換することによって、ワゴナーは痛みの伴う英断へと、一歩を踏み出すことができた。
     狙いすまして聴くという経営者の行動の結果として、ゼネラルモーターズは、死んだブランドを蘇生させるために大事なお金を使わなくてもよくなったのだ。



    本書では、その賢者たちから「いちばん難しかった決断」を聴き出し、「意思決定の真髄」を抽出。

    その結果、どの時代にも通じる行動指針として集約されたのが、目次にある6つの基本原則です。

    上記ポイントは、どの原則の話かが分かりにくい形で抜き出していますが、本書では各原則ごとに、事例を紹介し、さらにそれを補完する形でいくつかの「心得」を追加。

    また、巻末には登場する賢者たちの経歴もまとめて紹介されているので、知らない賢者については、併せて読むと良いと思われ。


    序章にあるように「経営者による経営者向けの手引書」という位置づけになると思います。

    ただ、経営者でないと読んでも意味がないか、というとそうではなく、例えば第1章の「源へ赴け」は、多くの職種について言えることではないか、と。

    本書に登場するCEOは、自身が「"源"="現場"」に赴いているのですが、別に中間職や管理部門が行うことで得るものもあるわけですから。

    そう言えば私も、顧問先の経理責任者ではなく、アシスタント職の女性から話を聴いて、問題に気が付いたこともありました。

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