地を這う祈り

著者 :
  • 徳間書店
4.21
  • (41)
  • (50)
  • (14)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 343
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198630430

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  途上国の路上生活者など、世界最貧困層をおもな対象とした取材旅を重ねてきた著者が、それらの旅で撮影した写真を集め、文章を添えたフォト・エッセイ集。

     これまで石井作品を読んだことがない人にとっては、「石井光太ワールド」への格好の入門編となるだろう。
     また、過去の石井作品の舞台裏を垣間見られる本でもあるから、石井ファンが読めばいっそう味わい深い。たとえば、『レンタルチャイルド』に登場した全身疣だらけの物乞いや、物乞いをするときに同情を引くために腕を切り落とされたストリート・チルドレンなどの写真も掲載されている。

     写真のみのページも多いのであっという間に読み終わるが、読後感はずしりと重い。たとえば、シンナーを吸って味覚を麻痺させたうえ、水で濡らした新聞紙を食べて空腹をしのぐエチオピアのストリート・チルドレン……などという衝撃的エピソードの連打だからである。

     写真の合間に挟まれた短いエッセイや、巻末の「取材の裏側――石井光太への14の質問」では、石井が自らの取材作法を明かしていて興味深い。
     「石井光太はなぜこんなにすごいエピソードを集めてこられるのか?」という読者の疑問への答えが、ここにはある。たとえば――。

    《私が話を聞きたいと思う人の多くは、一般社会から差別された人々だ。物乞いであり、ハンセン病患者であり、子供兵である。エリートのガイドでは、案内することができない。
     そこで、私は一つの目安として、話を聞きたいと思っている人と同じような立場の人間をガイドにすることにしている。ハンセン病患者であればハンセン病患者をガイドにする。物乞いであれば物乞い、子供兵であれば元兵士や傷痍軍人などに頼むのである。日本だって、ホームレスのことはホームレスが一番詳しく知っているだろう。海外とて、それは同じなのである。》

    《取材というのは、かならず当初の「予想」を覆すものです。たとえば、少女売春婦はイヤイヤながらに売春宿で働かされているんだろうな、と考えて行ってみると、十一、二歳の子たちがあぐらをかいて笑いながら、
    「今日、私は五人もお客さんがついたのよ」
     なんて自慢してきたりする。
     取材とは想像を粉々に壊すためにすることなのです。この大切に抱えていた予想や価値観がひっくり返る瞬間こそが一番面白いところですね。》

    (だからといって、組織的少女売春が肯定されるべきでないのは言うまでもないし、石井もそんな意味で言っているわけではあるまい。為念)

  • 凄まじい。表現し難い衝撃だ。

    眼を背けたくなる光景。それが日常に溶け込んでいる事実。紛争や飢饉という非日常ではない。日常である。同じ空間に悲惨さが横たわっているのさえ忘れさせる微笑ましい写真もある。アジア特有のまとわりつく埃っぽい空気感とともに、数々の事実を切り取った写真の価値は高い。

    石井氏が自ら語るように、自分の弱さを痛感しながらも使命感から貧民窟を訪問し、写真を取り、文章へ興す。初海外がアフガニスタンというツッコミどころはあるものの、冒頭で語られる少女とのエピソードは彼の強烈な原体験になっている。偽善ではなく問題提起。本書の意義は十分果たしている。

  • 世界にはまだまだ生きていることが奇跡な人々が沢山いることを気づかされる本。
    ストリートチルドレンの子どもたちのその後を知りたい。

  • 今までの著作の裏話的なフォトエッセー。世界の最底辺の人達の取材秘話ですな。写真も豊富で勉強になります。クソみたいな最貧困な人生を当たり前の様に送る人達はいったい何を考えてるのか?とか考えます。ただ生きる事しか考えていないよね。人間だって動物だもの。

  • とにかくショックな一冊だった

    目をそむけたくなるような写真が多く
    でもこれがまだまだこの世界の現実なのだ

    豊かな国はほんの一握り

    ゴミ溜めの中で生きる子どもたち

    自分の目をつぶされ、腕を切断され物乞いさせられる子どもたち

    歩けないので自分の汚物で垂れ流しの台車の上でくらす老婆

    売春をする幼い少女達

    貧しい世界ではいつも犠牲は子どもたちか
    ひ弱な老人たち

    でも彼らの目は意外なほど力強い

    そんな生活の中でも、しっかりプライドを持って生きている

    生きるエネルギーが伝わってきて
    豊かな世界にいる自分の方がひ弱な気がしてしまうのはなぜだろうか

    作者の石井光太さんは本当にすごい!!

    目を覆わず勇気をもってシャッターをきる。
    ありのままを伝えることに命を燃やしている

    それはこの残酷な現実をたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちからだ

    世界の現実を直視せよ!!

    彼のメッセージに、今の自分に何かできることがあるのかを考えさせられた

  • 諸行無常の響き。

  • 15.oct.15

    『アジアにこぼれた涙』を読んで衝撃を受けたので、二冊目。

    道端で見かけたら直視する勇気がでないかもしれないような写真が大きく載っていたりする。
    文字はそれほど多くないが写真から臭いや砂ほこり、熱気などが伝わってくるようで一つ一つ読むのに唾を飲み込みながらというか、なんというか体力を要した。でも一気に読んでしまった。
    聞いたり読んだりするのよりも、一枚の写真を目にするほうが、圧倒的な衝撃がある。

    筆者も言っていたが、
    暖かい場所で、美味しいものを食べながら貧しい人々のことを上から語ることはしたくないと思った。

    この人たち一人一人が幸せになれるにはどうすればいいのか?すぐに思いつかない。

    比較貧困学という本も借りたのでこちらも読んでみる。今回の本は絶対貧困=経済的に貧しい人々を取り扱っていたが、相対的な視点では日本は貧しい国なのだとか…どういうことなのか想像できなくはないが、興味深い。

  • 石井光太さんは、いつも私に「現実」を突きつけてくれる。
    心をえぐられるような感覚と、深い衝撃に襲われる。
    それでも目を見開いて、あっという間に読んでしまう。
    それを見て、私は幸せだ・・・などと安堵することはない。
    むしろ、自分の無知加減に驚き、世界の広さとあまりの違いに言葉を失ってしまう。
    本当にいつも多くの刺激を与えてくれる著者の一冊。

  • 衝撃的な写真が多くある。ただこれは世界で実際に起きてること。それと向き合うこの本に出会えて良かった。

  • 写真が多いけど読み応えたっぷり。石井さんへの質問コーナーでの返答、「問題を提起できる人間でありたい」に全て表されてると思う。

全62件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書に『物乞う仏陀』(文春文庫)、『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち』(以上、新潮文庫)、『原爆 広島を復興させた人びと』(集英社)、『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』(双葉社)、『漂流児童 福祉施設の最前線をゆく』(潮出版社)など多数。

「2019年 『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

地を這う祈りのその他の作品

石井光太の作品

地を這う祈りを本棚に登録しているひと

ツイートする