地を這う祈り

  • 徳間書店
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  • / ISBN・EAN: 9784198630430

感想・レビュー・書評

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  • これほど心に強い衝撃を覚える作品はなかなかない。
    僕たちが蓋をしたまま無関心でいる世界の現実を、現場からこれでもかと突きつけてくる。
    悲しすぎて、苦しすぎて、身を引き裂かれるようだ。
    1ページ1ページ、めくるのがつらい。
    知っておくべきでは足りない、経験しておくべき作品だと思う。

  •  途上国の路上生活者など、世界最貧困層をおもな対象とした取材旅を重ねてきた著者が、それらの旅で撮影した写真を集め、文章を添えたフォト・エッセイ集。

     これまで石井作品を読んだことがない人にとっては、「石井光太ワールド」への格好の入門編となるだろう。
     また、過去の石井作品の舞台裏を垣間見られる本でもあるから、石井ファンが読めばいっそう味わい深い。たとえば、『レンタルチャイルド』に登場した全身疣だらけの物乞いや、物乞いをするときに同情を引くために腕を切り落とされたストリート・チルドレンなどの写真も掲載されている。

     写真のみのページも多いのであっという間に読み終わるが、読後感はずしりと重い。たとえば、シンナーを吸って味覚を麻痺させたうえ、水で濡らした新聞紙を食べて空腹をしのぐエチオピアのストリート・チルドレン……などという衝撃的エピソードの連打だからである。

     写真の合間に挟まれた短いエッセイや、巻末の「取材の裏側――石井光太への14の質問」では、石井が自らの取材作法を明かしていて興味深い。
     「石井光太はなぜこんなにすごいエピソードを集めてこられるのか?」という読者の疑問への答えが、ここにはある。たとえば――。

    《私が話を聞きたいと思う人の多くは、一般社会から差別された人々だ。物乞いであり、ハンセン病患者であり、子供兵である。エリートのガイドでは、案内することができない。
     そこで、私は一つの目安として、話を聞きたいと思っている人と同じような立場の人間をガイドにすることにしている。ハンセン病患者であればハンセン病患者をガイドにする。物乞いであれば物乞い、子供兵であれば元兵士や傷痍軍人などに頼むのである。日本だって、ホームレスのことはホームレスが一番詳しく知っているだろう。海外とて、それは同じなのである。》

    《取材というのは、かならず当初の「予想」を覆すものです。たとえば、少女売春婦はイヤイヤながらに売春宿で働かされているんだろうな、と考えて行ってみると、十一、二歳の子たちがあぐらをかいて笑いながら、
    「今日、私は五人もお客さんがついたのよ」
     なんて自慢してきたりする。
     取材とは想像を粉々に壊すためにすることなのです。この大切に抱えていた予想や価値観がひっくり返る瞬間こそが一番面白いところですね。》

    (だからといって、組織的少女売春が肯定されるべきでないのは言うまでもないし、石井もそんな意味で言っているわけではあるまい。為念)

  • とにかくショックな一冊だった

    目をそむけたくなるような写真が多く
    でもこれがまだまだこの世界の現実なのだ

    豊かな国はほんの一握り

    ゴミ溜めの中で生きる子どもたち

    自分の目をつぶされ、腕を切断され物乞いさせられる子どもたち

    歩けないので自分の汚物で垂れ流しの台車の上でくらす老婆

    売春をする幼い少女達

    貧しい世界ではいつも犠牲は子どもたちか
    ひ弱な老人たち

    でも彼らの目は意外なほど力強い

    そんな生活の中でも、しっかりプライドを持って生きている

    生きるエネルギーが伝わってきて
    豊かな世界にいる自分の方がひ弱な気がしてしまうのはなぜだろうか

    作者の石井光太さんは本当にすごい!!

    目を覆わず勇気をもってシャッターをきる。
    ありのままを伝えることに命を燃やしている

    それはこの残酷な現実をたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちからだ

    世界の現実を直視せよ!!

    彼のメッセージに、今の自分に何かできることがあるのかを考えさせられた

  • 石井光太さんは、いつも私に「現実」を突きつけてくれる。
    心をえぐられるような感覚と、深い衝撃に襲われる。
    それでも目を見開いて、あっという間に読んでしまう。
    それを見て、私は幸せだ・・・などと安堵することはない。
    むしろ、自分の無知加減に驚き、世界の広さとあまりの違いに言葉を失ってしまう。
    本当にいつも多くの刺激を与えてくれる著者の一冊。

  • 圧倒される。
    世界には、こんなにも過酷な姿がある。
    「貧しい人たちもいる」とか「大変な目にあっている人たちがいる」とか、言葉にすれば平坦になってしまう。
    この本に収められている世界の姿は、そんな平坦な表現・想像を簡単に吹き飛ばす。
    「自分に何ができるんだろう」なんて考えられないほど、ただただ腹を抉るような衝撃の大きさに耐えるしかできない。

  • 貧困地帯を渡り歩き、一般的に忌避される人々への取材を続けている著者のエッセイ&写真集。
    日本では想像もつかないような世界の最貧困層の実態を、余計な感傷を交えることなく捉えた内容。
    より多くの銭を稼ぐために病や怪我や死でさえも利用する物乞いたちの姿に始まり、生きるために性を売りながら果ては路上死を迎えた女性の写真、さらにはシンナーを片手に新聞紙を貪る少年の話まで、読み進めるほどに苦しさが募った。
    時折挿まれる人々の笑顔の写真は、麻痺し始めた現実感をそのつど揺さぶり起こしてきた。
    思いがまとまりきらず、言葉に詰まる。

  • 凄まじい。表現し難い衝撃だ。

    眼を背けたくなる光景。それが日常に溶け込んでいる事実。紛争や飢饉という非日常ではない。日常である。同じ空間に悲惨さが横たわっているのさえ忘れさせる微笑ましい写真もある。アジア特有のまとわりつく埃っぽい空気感とともに、数々の事実を切り取った写真の価値は高い。

    石井氏が自ら語るように、自分の弱さを痛感しながらも使命感から貧民窟を訪問し、写真を取り、文章へ興す。初海外がアフガニスタンというツッコミどころはあるものの、冒頭で語られる少女とのエピソードは彼の強烈な原体験になっている。偽善ではなく問題提起。本書の意義は十分果たしている。

  • 配置場所:2F書架
    請求記号:368.2||I 75
    資料ID:W0158595

  • 2019/06/21読了図書

  • 世界にはまだまだ生きていることが奇跡な人々が沢山いることを気づかされる本。
    ストリートチルドレンの子どもたちのその後を知りたい。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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