世界経済を破綻させる23の嘘

  • 徳間書店 (2010年11月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198630683

みんなの感想まとめ

経済のさまざまな問題について、深い洞察を提供する一冊です。金融と実態経済のバランスや、株主利益を優先する企業の長期的な影響など、現代社会の重要なテーマをわかりやすく解説しています。読者は、専門的な内容...

感想・レビュー・書評

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  • 錆びついた自分の頭でも
    わかりやすい。金融と実態経済のバランスをもっとよくする必要がある、とか
    株主の利益を最優先する企業は長期的な成長発展を損なう、とか 的を得た指摘だ。

  • p143
    脱工業化の幻想=発展途上国が工業化を飛び越えてサービス経済へ移行するのは難しい。製造業のほうが成長のスピードが速い。強い製造業があってサービス業が成長する。スイス、シンガポールは一人当たりではトップクラスの工業生産高がある。観光資源が多いセイシェルは例外。先進国でも工業の重要性は落ちていない。脱工業化は生産性の工場にはマイナスの影響。脱工業化幻想は先進国でも発展途上国でも危険。


    2022/12/21
    自由市場は存在しない。
    株主の利益を最優先する企業は発展しない。
    リミテッドは、有限責任の意味。株主は、逃げ足が速く責任を取らない、という意味。それを重要視するのは社会のためにならない=発展しない。
    もともと有限責任会社は国益にかかわる事業しか許可されなかった。製鉄所や鉄道など巨大産業のために必要になった。
    官僚的なプロ経営者が経営すれば、リスクを摂りすぎることになる。配当や自社株買いを行うインセンティブがある。自らの報酬のために、コストである人件費と投資を削る。=長期的発展を損なう。
    従業員、納入業者などは、簡単には関係を切れないが、株主は簡単に抜け出せる。
    英米以外は、不動株主の影響を取り除こうとしていた。

    自由市場を信奉するなら、労働移動も自由にするべき。豊かな国の生活水準は、厳しい労働移動の規制で守られている。貧しい国は能力がないからではない。
    貧しい国ではメイドの割合が高い=人件費が安い。=労働力の価格が安い。
    家事労働から解放した洗濯機のほうが、インターネットよりも革命的。女性の社会進出で地位が向上した。
    脱工業化は幻想。発展途上国に必要なのはデジタル化よりも工業化。移動の規制を外したことが現代の問題の根源。
    利己心をモチベーションとする経済理論は限界がある。大きな会社の改革は、みな、会社のためになっているとの前提がある。
    順法闘争が効果的なのは、人間にモチベーションがあるから。道徳的な心を信じないと監視のコストがかかる。
    雇用は、労働市場の柔軟性によって不安定化した。=金融資産所有者の利益を確保するため、インフレの抑制が必要。低インフレだからといって投資が促進されていない。むしろ逆。
    欧米は、保護主義政策と補助金によって富を手に入れた。途上国には自由貿易を押し付けている。自由貿易で栄えた国はない。

    幼稚産業保護論=子供を育てるのと同じ
    市場がうまく機能しない間は規制が必要
    大きな民間企業は存在しないので国有企業が行う必要がある

    自由貿易、自由市場政策はめったに機能しない。

    真の超国家企業は存在しない。どの企業にもホームバイアスがある。

    脱工業化は神話、幻想。サービスに比較して製造品の価格が安くなった=製造業の生産性向上が早い。
    よりサービスを求めるようになる=製造業の割合が減るだけで少なくなるわけではない。
    工場で働くひとの数は減った=社会の仕組みが変わる。しかし経済的に脱工業化しているわけではない。
    掃除やサポートなどをアウトソーシングすると非製造業かする。工場を国外に移す。製品の価格が安くなった。などの理由で比重は下がる。
    新興国がサービス部門に依存して発展できるというのは幻想。サービス産業は生産性の伸びが低い。サービス産業は輸出しにくい。
    非工業化は、生産性向上と国際収支に悪影響がある。

    アフリカはIMFの構造調整計画で自由市場化を強制された。その結果経済発展が遅れた。一次産品の輸出に頼らざるを得ない。価格変動と生産技術の停滞に悩む。工業化の基盤がないため、1次産品の新商品開発ができない。

    韓国政府は浦項総合製鉄を世銀の反対を押し切って作った。自発的にはやりたがらない産業にアメとムチで算入させた。LGは繊維産業へ参入させず、電線産業に算入させた。現代グループは造船所を作らせた。
    一方、コンコルドは政府の選択の失敗だった。
    国営企業を作るか、援助する企業に報告を義務付けるか。政策担当者と企業の非公式なネットワーク(フランスの国立行政学院卒業生など)。日本の審議会は、その中間組織。
    政府の選択が成功する場合もあれば失敗する場合もある。自由選択がいいとは限らない。

    トリクルダウンは起こるにしても少しだけ。全体のパイが大きくならなければ、富者だけに配分しても無駄。投資を増やさなければトリクルダウンは起きない。
    社会保障がしっかりしている国の方が、所得移転を行いやすい。小さな所得格差のほうが経済成長する。逆でもいいのは投資が増えてパイが大きくなる時だけ。

    自由市場イデオロギーでは、今存在しているのは効率が良い、という幻想に囚われている。経営者の高報酬は市場で決めるべきではない。

    個人レベルの起業家精神は途上国のほうが多星。しかし組織、インフラが欠損しているため、伸びない。
    富裕国のほとんどの人は、他人の起業家精神に乗っかっているにすぎない。
    マイクロクレジットの功罪。金利が低かったのは補助金や支援金によるもの。マイクロクレジットでは、使える技術も規模も限られているので、参入障壁が少なくすぐに市場が飽和する。飽和しても他に転換できない。
    個人的な起業家精神観は時代遅れ。いまは集団的なもの。個人的な発想の豊かさより効率の良い組織や制度を作り上げるインフラが必要。

    市場に任せるべきという考えは、人間が合理的であるという前提にある。市場の失敗の前にその前提が間違っている。デリバティブを禁止するのは、新薬を禁止するのと同じ。

    教育そのものが国を富ませるのではなく、高い知能の個人を組織化する能力のほうが大事。
    東アジアの教育水準より、フィリピンやアルゼンチンのほうが識字率は高かった。
    大部分の学問は生産性向上とは無縁。それらは心豊かな生活のために教えられる。
    テクノロジーが発展すれば、労働者が必要な教育程度は低くなる。
    スイスは大学入学者の割合が低い。47%程度。アメリカ82%、フィンランド、韓国、ギリシャは90%以上。
    高等教育が経済発展に必須、というわけではない。
    70%の人が大学にいくと、学位インフレ状態になる。不健全な学位競争。
    途上国では個人の教育よりも、制度や組織のほうが大事。

    第二次世界大戦に勝ったのはデトロイト。GM、フォード、クライスラーが武器を送った。GMはオペルを通じてドイツにも提供した。企業にとってよいことが国にとって良いこと、とは限らない。
    韓国は許認可が多かったが、経済成長を続けた。規制緩和は儲かるとわかっていれば困難ではない。むしろ参入障壁になる。長期的に産業のためになることに規制を使うのは意味がある。規制そのものではなくその内容が大事。

    計画経済は今も続いている。企業は事業を計画する。

    機会均等だとしてもフェアとは限らない。差別撤廃装置としての市場は機能しているように見える。ある程度の結果の平等も必要。機会が均等であっても利用できないものもいる。

    大きな政府のほうが経済を発展させる。社会保障があれば、人々は挑戦できる。アメリカはクビになったら生活水準は急降下する可能性がある。
    韓国の労働環境は世界一柔軟で、非正規の割合が半分以上。その結果、医者志望者が多い。才能の効率的な配分を損ねている。
    アメリカが保護貿易主義的なのは、社会保障が貧弱で労働者がそれにすがろうとするから。
    第二のチャンスがあると思えば、最初のチャレンジもしやすい。
    18世紀までは、現代的な破産法はなかった。第二のチャンスがないということはリスクを負って事業を始める意欲をそぐ。
    社会保障制度の規模が小さいほうが経済に活力がある、というのは嘘。

    金融紙業の効率化は繁栄をもたらす以上にリスクがある。アイスランド、アイルランド、ラトビアの例。金融緩和を基盤とした成長戦略の極端なもの。
    金融部門は実体経済とのスピード差があってはいけない。資本は逃げ足が速く、短期的に経済が不安定化する。

    経済を成功させるのにはエコノミストは不要。日本と韓国は法学部出身者、台湾と中国はエンジニア。
    大学の経済学は実体経済から浮世離れしている。
    「経済学は、経済学者の就職口として大いに役立っている」ガブレイス
    経済学では、想像力という概念がない。
    大恐慌の二の舞にならなかったのは、自由市場主義の経済学者のいう通りにしなかったから。

    ものづくりをもっと重要視する。金融と実体経済のバランス。政府は大きく活発になる。発展途上国を不当に優遇する必要がある。そのほうが結果として世界経済は発展する。

  • 極めてプロボカティブな書籍。自由主義経済の論理をかなりの説得力をもって批判している。
    思うに、その目的は、単に扇情的な発言をするという点にあるのではなく、今後世界経済をどうしていくべきかを考えるにあたっての前提条件をそろえるという点にある。
    また、各主張を読んで感心するのは、各国の近現代経済史に関する幅広い事例の豊富さである。近現代史のテーマ別整理は、現代を理解する上で必須と感じた。

    1 市場は自由でないといけない・・・そもそも「自由な市場」というものは存在せず、どんな市場にも、選択の自由を制限する何らかのルールや制限がある。現在の世界はむしろ規制を強める方向に向いている

    2 株主の利益を第一に考えて企業経営せよ・・・株主は初めから有限責任だったわけではないが、有限責任に移行するにつれ、いつでもゲームを降りられるようになった。アメリカでは、「株主価値の最大化」というテーゼのもとに、プロ経営者と結託して、配当および株価上昇を享受した。

    3 市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる・・・移民政策は政治的判断だが、これによって各国間の賃金に差が生じたままになる。英国のEU脱退は、まさに政治的に移民を受け入れたことを嫌ったものだ。

    4 インターネットは世界を根本的に変えた・・・家事テクノロジーが出現したことの方が、女性の社会進出という形で、社会を劇的に変えた。インターネットは、余暇の過ごし方は変えたが、生産というプロセスを革命的に変えたかというとはっきりしない。

    5 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ・・・個々の人々が自己利益をひたすら追求するいう前提は、よく経験するのは確かだが、一方で、経済活動においてさえ利己心が人間の唯一のモチベーションではないことを示す証拠はたくさんある。たとえば、正直、自尊心、利他主義、愛、同情、信仰、義務感、結束、忠誠、公共心、愛国心・・・。要するに、社員には「良い面」も「悪い面」もあり、その良い面を拡大して悪い面を縮小するのが、経営の秘訣である。

    6 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する・・・インフレはてなずけられたかもしれないが、金融危機が起こる頻度が増し、規模が大きくなった。物価の安定が成長の前提条件であるという主張にもかかわらず、貧弱な成長しかもたらさなかった。新自由主義政策が、低インフレ率、高い資本移動性、雇用の不安定化(労働市場の柔軟化?)を強く求めるのは、主に金融資産所有者の利益を確保することをねらってのことである。

    7 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える・・・発展途上国の場合、国家主導の発展期の業績のほうが、その後の市場志向改革期に達成された業績よりもまさっている。また、わずかな例外を除けば、イギリスやアメリカを含めた富裕国のすべてが、保護貿易、補助金などを組み合わせた政策によって富を手に入れた。

    8 資本にはもはや国籍はない・・・実は超国籍起業のほとんどは、「国際活動をおこなう”一国籍企業”」にとどまっている。ホーム・バイアスを生じさせる最大の理由は、経済的なこと、つまり「企業の能力の核になる部分は、簡単に国境を越えさせられない」という事実である。企業の核となる無形の技術的・組織的能力は、人材、組織、ネットワークから生じるが、これらが簡単に外国に移送できないし、また、それに適した制度的環境(法システム、非公式ルール、ビジネス風土)があって初めてよく機能することが多い。

    9 世界は脱工業化時代に突入した・・・わたしたちは脱工業化社会に生きているのかもしれないが、世界は工業が重要ではなくなった「脱工業化」という発展段階に突入したわけではない。国内総生産に占める製造業の比率の減少のほとんどは製造品の絶対量の減少のせいではなく、サービスと比較して製造品の価格が安くなったためである。この現象は製造品の生産性(一定の投入量当たりの生産量)の工場がサービスのそれよりも速いために起こっている。

    10 アメリカの生活水準は世界一である・・・平均すると、たしかにアメリカ国民はルクセンブルクをのぞくほかのいかなる国の国民よりも財・サービスを手に入れやすい(一ドルで買える財・サービスの量=購買力が高い)、という結果になる。しかし、所得格差が大きいため、アメリカの平均は、所得がより公平に分配されている他国のそれにくらべて、一般国民の生活水準を正確に反映していない。所得でどれだけの財・サービスを買えるかということだけに注目すれば、余暇、雇用保障、治安、医療を受ける権利、社会保障といった「良い生活」を構成する要素をたくさん見落とすことになる。

    11 アフリカは発展できない運命にある・・・1960年代と70年代、発展を阻害すると言われる構造的障害(厳しい気候、内陸国、天然資源の豊富さ、民族分裂、欠陥のある制度、好ましくない国民性など)がすべて存在し、その他の束縛があることも多かったが、アフリカは実際にはまあまあの成長を遂げていた。ここ30年間アフリカが停滞している真の原因は、その期間に導入させれられた自由市場政策である。

    12 政府が勝たせようとする企業や産業は敗北する・・・偏見のない目で見まわせば、政府による勝者選択の成功例を世界中にたくさん見つけることができる。国は、マーケット・シグナルに抗して勝者を選べるので、国の経済を改善できる。民間セクターと緊密な協力をもとにおこなったときはとくに。また、「現場にいちばん近い人間が最良の情報もつから最良の決定を下せる」という仮定は、間違っている。現場に近すぎて、その状況を客観的に見るのが逆に難しくなることもある。

    13 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う・・・この30年間、富者優遇策は成長を加速させられずにいる。投資家に所得を集中させたところで、当の投資家が投資を増やさなければ、成長の加速はないということ。トリクルダウンは確かに起こるが、それを市場にまかせていたのでは、その効果は貧弱なものになるのが普通である。いちばん上に溜まっている富という水を十分したたり落とすには、社会保障制度という電気ポンプを必要とする。

    14 経営者への高額報酬は必要であり正当である・・・アメリカの経営者の報酬は、あきれるほど高額すぎる。今日のアメリカのCEOは、1960年代の先輩たちより10倍も多い報酬を受け取っている。また、規模および業績が同程度の企業を経営する他の富裕国の同業者のそれの20倍ほどにもなる。さらに、業績を悪化させても罰をうけないという意味で、保護されすぎてもいる。そして、こうしたことはすべて、多くの人々の主張に反して、市場原理のみによるものではない。

    15 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ・・・貧しい国を貧しくしているのは、個人レベルでの起業家精神の欠如ではなく、生産技術や発達した社会組織(特に現代的企業)の欠如のせいである。マイクロクレジットのの問題点がどんどん明らかになってきているのも、個人レベルでの起業家精神の限界を示している。

    16 すべて市場に任せるべきだ・・・わたしたちは市場任せにできるほど利口ではない。経済主体は、合理的であろうとしても、認識能力の限界によって、限られた合理性しかもちえない。政府の規制が、効果を発揮することが多いのは、政府が優れた知識を持っているからではなく、政府が選択を制限することによって、当面の問題の複雑さを減じ、不都合なことが起こる可能性を小さくしているからである。

    17 教育こそ繁栄の鍵だ・・・教育で得られた知識の多くは生産性向上とは無関係である。知識経済の台頭しているというのは問題がある。知識はこれまでもずっと富の源泉だった。むしろ、非工業化と機械化が進んで、ほとんどの富裕国では大半の仕事で知識の必要度が落ちてさえいる。

    18 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にもよい・・・企業部門は重要ではあるが、企業に最大限の自由を与えるのは、国全体の経済にとってはもちろん、企業自体にとってさえ良くない。すべての規制が企業にとって悪いわけではない。結局のところ、重要なのは規制の量ではなく、その中身である。

    19 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した・・・資本主義経済もかなりの部分が計画されている。たとえば、どの資本主義国も、研究開発とインフラ整備への投資をずいぶん引き受けている。もっと重要なのは、現代の資本制経済が、国境さえ越えて活動を事細かに計画する巨大企業からなるということだ。したがって、問題は、計画するか否かではなく、適切なレベルで、適切な計画をどう実行していくかということ。

    20 今や努力すれば誰でも成功できる・・・機会均等は公正な社会をつくる出発点であるが、問題は、「相手と同じ条件下で競争しているかどうか」である。ある程度の結果均等がないと、機会均等もあまり意味をなさない。

    21 経済を発展させるには小さな政府の方がよい・・・うまく設計された社会保障制度は、実は人々をより果敢に就職に取り組ませるし、変わることに前向きにさせる。それによって企業の再編もスムーズに運ぶので、経済成長をうながる一因となる。

    22 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす・・・金融市場の効率は良くするのではなく悪くしないといけない。金融資産は流動性が高いため、その所有者は変化にあまりにも早く反応してしまい、それによって実物部門の企業は長期的発展に必要となる「辛抱強い資本」を確保するのが難しくなる。金融部門と実物部門との差を縮める必要があり、そのためには、金融市場の効率を意図的に悪くしないといけない。

    23 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要・・・これまでに最も成功した経済官僚の大半はエコノミストではなかった。この30年間、自由主義経済学の影響がどんどん強まったせいで、世界中で経済活動が貧弱なものになってしまった。参考にすべき経済学者は、むしろ、J・M・ケインズ、チャールズ・キンドルバーガー、ハイマン・ミンスキー、カール・マルクス、フリードリッヒ・リスト、ジョセフ・シュンペーター、ニコラス・カルドア、アルバート・ハーシュマン、ハーバート・サイモン、アーサー・ピグー、アマルティア・セン、ウイリアム・ボーモル、ジョセフ・スティグリッツ


    世界経済はどう再建すればよいのか・・・八つの原則
    原則1 資本主義はいろいろ問題があるにせよ、それにまさる経済システムはない
    原則2 人間の合理性には大きな限界があることを認識して、新しい経済システムを構築するべきだ
    原則3 人間の”最悪”ではなく”最良”を引き出せるシステムをつくるべきだー自分たちは無私無欲の天使ではないと認識しつつ
    原則4 報酬は必ずその人の価値によって決まる、という思い込みを捨てる
    原則5 「ものづくり」をもっと重視する必要がある
    原則6 金融と実体経済のバランスをもっと良くする必要がある
    原則7 政府は大きく活発になる必要がある
    原則8 世界経済システムは発展途上国を不当に優遇する必要がある

  • かなりオススメ。
    著者が韓国人で韓国の事例もいくつか出してるため、amazonレビューが荒れてるのは残念。
    かなり長文のレビューをこっちに投稿済み
    https://note.com/takasu/n/n0f6124b26313

  • 非常にわかりやすい文章で、さまざまな経済問題に対してヒントを与えてくれている。
    ここから、自分の興味にあったものは深掘りしていけばいいと感じた。
    一番、関心があったのはマイクロファイナンスの部分。

  • 本書は、ケンブリッジ大学の経済学者である著者が、自由市場主義経済の通説に疑問を呈し、より良い経済システムのあり方を提示するもの。その具体化の方法や妥当性の検証は別として、よく言われる主張に対して立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる意味でオススメの一冊。

    <ポイント>
    ○自由市場なんて存在しない
    ・市場の境界は客観的な科学で決まるのではなく、政治的に決まる
    ・市場における生産者、生産方法、販売方法についての規制は、むしろ強まっている(汚染・CO2排出量の制限など)
    ・規制を廃止すべきという主張=「金のある者にその領域でより大きな力を与えるべき」「その規制法によって守られる権利を認めない」

    ○規制は、人間の知的能力の限界から、活動の複雑さを制限し、より良い決定を下せるために必要なもの
    ・政府は市場参加者よりも市場をよく知る必要はない

    ○企業の自由を制限するのが経済にも企業にも良い場合がある
    ・企業活動を利する規制(希少資源の保護や生産性を長期的に高める職業訓練の義務付け)がある→重要なのは規制の量ではなく、その目的な内容

    ○政府は企業・産業を勝利に導ける
    ・日本では「審議会」を通じてビジネスリーダーと情報交換

    ○今なお計画経済の世界に生きている
    ・政府による研究開発、インフラ整備への投資、指示的計画(投資、整備、輸出などの目標を設定し、民間セクターと協力して達成しようとする計画)、部門別の産業政策、国営企業の計画的運営など

    ○大きな政府こそ経済を活性化できる
    ・うまく設計された社会保障制度→労働者に第二のチャンスを与える→人々に変化に対して前向きに→速いスピードの経済発展を可能にする

    ○経済を成功させるのに優秀なエコノミストなど必要ない
    ・日本の経済官僚は法学部出身
    ・経済を失敗させてきた自由主義経済学ではなく、”ほか”の経済学(「市場の失敗」や「厚生経済学」。ピグー、アマルティア・セン、スティグリッツらによって発展)が必要。

    ○脱工業化時代は幻想でしかない
    ・製造部門の生産性が急激に上がったためサービス部門の雇用割合が増えており、生産システムの製造業部門の重要性は落ちていない
    ・サービスでは輸出収入が減少→国際収支問題に直面し生活水準の低下&先進技術を買う力の減少→経済成長のスピードが落ちる

    ○インフレを極端に抑え込もうとしてきた結果、むしろ投資を減少させて成長を減速させてきた
    ・インフレは低レベルから中レベル程度までは危険はものではない

    ○金融市場の効率はむしろ悪くしないといけない
    ・金融デリバティブなどの効率のよい金融イノベーションは、金融資産の流動性を高いものに→所有者はあまりにも速く変化に反応→企業の長期的発展に必要な「辛抱強い資本」を確保するのが困難に→金融取引税のような効率を意図的に悪くする規制が必要

    ○株主の利益を最優先する企業は発展しない
    ・株主は最も身軽な利害関係者→特に小株主は、短期的利益による配当を最大にする戦略を好む→長期的投資、再投資に回せる利益剰余金を減らすことで、会社の長期的な成長力を弱める

    ○国際的な賃金格差が生じる最大の理由は、生産性の違いではなく、移民抑制政策のため。

    ○ここ30年間アフリカが停滞している真の原因=強制的に導入させられた自由市場政策

    ○企業の国籍=なお研究開発・戦略決定などの最重要活動をどこで行うか決める鍵
    ・買収にあっては国籍に加えて、買い手企業の特定事業の実績&買収する会社への長期的なコミットメントの強さ等を考慮すべき

    ○トリクルダウン理論は成立しない(富は貧者にまでしたたり落ちない)

  • 内容的には専門的で難しい1冊ですが、今までの常識的に考えられていたことが替わる、目からウロコの1冊でした。

  • 一つ一つの経済社会現象に対する我々のコモンセンス、メディアで言われているいわゆる通説が正しいかどうか考えさせいずれも著者は論理的に批判している。自分がある程度実証分析の文献を読み進めないと批判に関しても確かめようがないが、一つクリティカルな洞察を盛り込んでくれたの確かである。
    自分は、教育のところがお気に入りで、大学でたから生産の向上にそれほど寄与できているかは今後さらにわからなくなるのではないかと思う。これは全くの主観でなにも根拠はないが、人的資本のいわゆる二つの代表的理論である人的資本理論とシグナリングにおいて、かなり経済として大国になってしまった国の中にはシグナリングの部分を重視しすぎてきた傾向もあるのではないかと疑っている。なのでむしろスイスのようなすっきりした国の方が人的資本での経済への寄与が大きいのではないだろうかと思い、興味がある。

  • ケインジアン思想を世に喧伝しよう、という思想が見え隠れするものの、様々なデータに基づいて俗説が叩かれていたのは良かった。某元財務官僚の「俗説を撃つ!」だかいう連載よりよっぽど日本について学べたような。

  • TOPPOINT 2011年1月号より。

    著者はケンブリッジ大学准教授。

    資本主義の真実を語る。

  • これが金融危機前の2006~2007年くらいの著書だったら超クールなアンチ・グローバリズム、アンチ・金融資本主義の本といわれていただろうに惜しいことをしたな、という感じ。このころに流行った考え方をステレオタイプに項目ごとに分けて、「必ずしもそうじゃない」と反論する構成(つまり、嘘とまでは言い切っていないので偏っていなくて安心感があります)。数値やグラフを使わなかったり、出典記載にそんなに情熱的じゃないから読み物感が強いけど、(大前研一風味な行き過ぎな解釈や表現があって苦笑するところも・・・)その分出てくる事例が豊富。単純に知的好奇心を満たす/話のネタ帳に加える素材としては結構満足いくんじゃないかな?
    内容としては、日本においては基本的に「そういう風に昔から議論してきたじゃない、何をいまさら金融危機だからって・・・wという反応がありそうな部分も多いけど、欧米、特に米国・英国の経済モデルに傾倒してしまった外国人と英国人、米国人のようにいかに感覚的にブームに乗って物事を決めてしまう人が(特に米国に)多いかということを改めて感じさせられるという点では貴重かも。『こんな警告しないとやらかしちゃうのか!』的な不安感を米国に感じるというか何と言うか。
    特筆すべきは買ったときには気がつかなかったけど、著者がソウル大学から海外に行った韓国人であることもあって東アジアモデルや日本が主導した経済モデルと雁行型経済については冷静&ポジティブな評価をしていること。日本や周辺の東アジアをエキゾチックで特異な例としない点や、日本にいると似ているんだか似ていないんだか分からない韓国の経済・政策・人々の状況等についても怜悧かつ愛のある取り扱いをしているバランス感覚は他の著者にはできない部分だと思うので結構アリだとおもいます。

  • グローバル資本主義、新自由主義に翻弄されてこの数十年。漠然とした疑問をもちながら論理的な解を見いだせていなかったが、この本と出会い納得すること多々であった。ケンブリッジ大学で韓国系経済学者が、資本主義の本家、本元で語っているのが面白い。何度か読み直したい本の一冊である。

  • とても明快。冒頭で言い切っているように無駄に経済分野に精通した話はほとんどない。そのくせ批判は的を得ている。ときどき都合のよい解釈だったり、他の視点が足りないのではと思えることもあるけど、不必要にがなり立てる批判ではなく、とてもフェアな言い分だと思う。

    すべての主張を無批判に呑み込んでしまうと、社会主義や他国排斥を支持したくなってしまう程、自由資本主義への疑念、脆さ、不完全性を明らかにしてくれている。それでも著者自身は資本主義自体は支持するという。

    結局のところ、なんでも完璧・こうしておけば心配無用ということはあるはずもなく、注意深く・人間の善意を信じながら住みやすい社会を築いていくしかないんだなとつくづく思う一冊。

  • 主張が主観的で根拠に乏しいところがある。$$しかし今まで自由市場経済至上主義でいいのか$$疑問に思っていたところに新しい考え方を与えてくれる。$$

  • 「資本主義について語られない23の真実」。チャーチルの民主主義に関する言葉を引合いに「資本主義は最悪だが他よりマシ」というスタンス。人間は限定合理性しか持てないので自由資本主義よりも国家が介入した資本主義が良いという主張。頻度が高まる金融危機と事後の資本注入・財政支出、東アジアの国家資本主義、北欧の高福祉社会を鑑みると共感できる部分ある。ものづくり重視や金融と実体経済のバランスは同感。ただ極論・曲解、事実選択、想定反論と前作「はしごを外せ」と同様に学者学者した構成・文章。

  • 23 Things They Don't Tell You About Capitalismの邦訳。英語タイトルから日本語タイトルにするのにけっこう工夫されてると今気付いた。

  • なるほど、そういう斜めから世界の自由経済主義を見るやり方もあるんですな。
    ただ、どうもロジカルさに欠けている感じが否めず、尺然としない内容だった。
    世界経済のバランスを取るのは、一つの解に収束しないという事を、改めて確認出来たというところ、か。

  • 自由市場資本主義の通説や常識を、データや事例分析によって否定し、自由市場資本主義が経済を減速させ、不平等・不安定度を高め、金融危機がよりひんぱんに起こる原因をつくっていることを解き明かす。節度ある、適正な規制を設けた新たな経済システムが必要であることを説く。

  • 安易な新自由主義、新古典派経済学に対する反証
    無条件の自由という幻想を捨て、
    自由と規制のバランスを追求することの意味

  • 真っ当。批判の主な方法は実証と、少し人より論理を貫くこと。だから分かり易い。

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著者プロフィール

ハジュン・チャン
ケンブリッジ大学の経済学者。1963年ソウル生まれ。1992年にケンブリッジ大学で博士号を取得。1990年より同大学で開発経済学を教える。2003年に著書『はしごを外せ』でグンナー・ミュルダール賞を受賞。また2005年には、経済学のフロンティアを切り開いた若手に贈られる賞である「ワシリー・レオンチェフ賞」を41歳の最年少で受賞した。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センやダニエル・カーネマンも同賞を受賞している。いま最も注目される経済学者のひとり。
著書(邦訳書)に、『世界経済を破綻させる23の嘘』(徳間書店、2010年)、『はしごを外せ――蹴落とされる発展途上国』(日本評論社、2009年)

「2015年 『ケンブリッジ式 経済学ユーザーズガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハジュン・チャンの作品

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