詩の礫

  • 徳間書店 (2011年6月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198631932

感想・レビュー・書評

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  •  和合隆一の詩集に出会った。これは、詩集なのだろうか?Twitterでつぶやいた言葉が編集されている。しかし、これを読みながら、身体が反応する。身体に寒さが押し寄せた。
     私は、東日本大震災があったときには、中国の雲南省の昆明にいた。福島から3800キロメートル離れていた。インターネットで、大津波の押し寄せる映像を見て、福島の原発の水素爆発を見た。激しい衝撃を受けた。現実とは思えなかった。そして、原発事故の13年経って、いま原発から20kmのところにいる。その空白を埋めている。そして、原発事故は、終わっていないと感じる。

     2011年3月16日の夕暮れから始まる。和合亮一は、高校教師。職場があるので福島に残ることを決意した。そして絶望していた。「これで、福島も、日本も終わりだ」と。放射能の恐怖。「行き着くところは涙しかありません。私は作品を修羅のように書きたいと思います」明日には自分の生活が消滅するかもしれないその夜に、誰かに受け止めてほしいと思い、言葉をパソコン上に投げた。

     放射能が降っています。静かな夜です。
     ここまで私たちを痛めつける意味はあるのでしょうか。
     この震災は何を私たちに教えたいのか。
     余震が続いている中で、言葉を紡ぎ出している。

     震災に遭いました。避難所に居ましたが、落ち着いたので、仕事をするために戻りました。
     本日で被災六日目になります。物の見方や考え方が変わりました。
     放射能が降っています。静かな静かな夜です。
     屋外から戻ったら、髪と手と顔を洗いなさいと教えられました。
     私たちには、それを洗う水などないのです。
     私は故郷を捨てません。故郷は私の全てです。

     私が避暑地として気に入って、時折過ごしていた南三陸海岸に、一昨日、1000人の遺体が流れ着きました。今、これを書いている時に、また地鳴りがしました。揺れました。息を殺して、中腰になって、揺れを睨みつけてやりました。命のかけひきをしています。放射能の雨の中で、たった一人です。

     世界は誕生と滅亡の両方を、意味とは離反した天体の精神力で、やすやすと在り続けている。
     私の大好きな高校の体育館が、身元不明者の死体安置所になっています。隣の高校も。
     外に出ようたって、放射能が降っています。
     絶対安全神話はやはり、絶対ではありませんでした。
     父と母に避難を申し出ましたが、両親は故郷を離れたくないと言いました。
     ところで腹がたつ。ものすごく、腹が立つ。
     どんな理由があって命は生まれ、死ににいくのか。何の権利があって、誕生と死滅はあるのか。破壊と再生はもたらせるのか。

     行方不明者は、「行方不明届け」が届けられて行方不明者になる。
     翌朝5時に、水をもらうために並んだ。すでに長蛇の列だった。
     私たちの故郷は、あまりにも歪んだ泣き顔です。
     また揺れた。とても大きな揺れ。揺れながら、階段先の扉を開けようか、どうしようか、悩んだ。放射能の雨。ガソリンはもう底をつきた。水がなくなるのか、食料がなくなるのか、心がなくなるのか、アパートは、俺しかいない。これまでと同じように暮らせることだけが、私たちが求める幸福の真理だ。

     こうやって、3月16日は終わる。余震が続く中で、外は雨が降っていて、不安な心を持ちながら、負けないぞと繰り返しつぶやく。一体、何に負けないのか?言葉が鋭敏に、暗闇の中に放り出される。そのTwitterに、励ましの言葉がやっていく。言葉は放り投げただけでなく、帰ってくるのだ。つぶやきの塊を吐き出しながら、この福島にいることを根拠に、つぶやいている。それは、詩ではなく、つぶやきである。心の中に浮かぶ言葉を、つぶやくことで、自分を支え励ます。
     「明けない夜はない」とつぶやく。
     茶の間の時計と本棚の小さな時計が2時46分を指したまま、転がっていた。

     私は震災の福島を、言葉で埋め尽くしていやる。コンドハ負けねぇぞ。
     あなたはどこにいますか。私は暗い部屋で言葉の前に座っています。あなたの言葉になりたい。
     
     心が叩きつけられても、明日に向かって、言葉をつぶやいていく。つぶやくことでつながり、そして生きることの意味を知り、死に直面する。なくなってしまう街に向かって、言葉で埋め尽くすのだ。
     
     大きな青空。阿武隈川。雄大なアタタラ山。会津の旗。太平洋のきらめき。
     福島を捨てるな。

     文字を追いながら、心の中に浮かぶ言葉を、拾い集めて、呟き、前に進む。その情景が鮮やかに浮かぶ。こうやって、私たちは、前に向かっていくのだ。そして福島の未来を作るのだ。

  •  あの時から、時間がずれたんですよね。その感覚が、何だかとても納得できたような。同じ時間を、いろんな他者を踏みつけたり、上からみたり、わかったようなセリフを吐いたりして生きている私がいる。一分ずらして、見ると、ひょっとしたら、たえられないわたしに気付けるかもしれない。そんなふうな・・・
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201908110000/

  • つぶて、と銘打っているだけあり、こちらへ投げつけてくるような印象

  • 震災後のtwitterを書籍化

  • 池袋LIBROで買った最期の本を読み終わる。【暫定】

    東日本大震災直後から発表された詩は読むものを引き込み、ときには詩人と同化させる。それは、ある意味とても危険な行為で、自分が戻ってこない恐れがある。この詩集の頁をめくるには、「緊急脱出装置」が必要だ。

  • 震災直後に起きた大きな感情の起伏が言葉に。何度も繰り返し、「明けない夜はない」と出てくるが、明けた日には何が待っているのか。。。言葉は信じられる。しかし、言葉だけでは、何かが足りない。

    後半に出てくる、自分で自分を責め、振り返り、はね返し、立ち上がる瞬間。そこに立ち会えて、私は言葉とはなにかがやっと分かった気がした。和合さんは、まぎれもない詩人。まぎれもない人間。それが言葉になっていた。

  • 福島在住の詩人のつぶやき(ツイッターで)。
    家族と離れ福島での生活をつぶやいている。
    時に怒り、時に泣く。余震。
    図らずも泣きそうになった。あの日々は私にとって暗鬱で、それがよみがえった。

  • いくつかの詩はじんじんと響いてくる。
    2018.4.28 再読

  •  福島で被災した詩人がツィッターの連続投稿で綴る「詩の礫」が書籍化。

     ツィッターで織りなす詩という新しい表現の力。本当のツィッターのまま短い言葉がツィートした時刻と共に刻まれていて、ふっと短く綴られた言葉の重さが際立つ。
     全体的には何だかよくわからない詩も多く感じたが、逆に強く印象に残る言葉も多かった。「放射能がふっています。静かな夜です」などズシリと来るフレーズがいくつもあった。

     映像などの直接的なものとは全く違う重みで”故郷を失う”ということの意味を感じさせてくれる。
     東日本大震災を思う上でかかせない一冊。

  • 言葉の礫には強い力がある。

  • 新刊JPで紹介され購入。

    各メディアで反響のよう。

    はじめの方は、純粋な作者の怒り、失望、やりきれない思いに心打たれてページをめくっていったのだが、途中、前書きや後書きの言葉が出てきて、しばらく読んだころから、「あー、作品を書いているんだ」と一歩引いて見てしまった。

    震災に直面している人ならではの心の叫びはよく伝わってくる。

  • ツィッターで綴られた「刃」。礫と書いてあるが刃としか思えない。言葉が持つ力を信じたい。和合さんの書いた言葉が力を持って、刃となって、見えない敵「幽霊」に立ち向かって行ってほしい。本当にすごい詩だ。知らない間に泣いている。

  • 震災と原発事故直後から綴られた、まさに精神のドキュメントといえる作品。これほどまでに言葉が切れ味鋭く、切実さを持って迫ってくる詩は初めて。詩の力の凄まじさを感じた。

  • 福島県在住の詩人、和合亮一さんが震災後、ツイッターで書き続けた『詩の礫』。
    リアルタイムで書かれたであろう言葉の迫力には鬼気迫るものがあります。放射能に対するやり場のない怒りを、目に見えない放射能への不安=幽霊、という言葉で表現していたのが印象的でした。
    電力会社と政府はこの責任をどうとるつもりなんだろう?

  • 凄まじい。
    凄まじいの一言に尽きる。

    この人は詩で、つまりは言葉で格闘しているんだ。

    言葉が、本当に礫のようだ、と思う。

  • 福島在住の詩人、和合亮一が放つ「咆哮」。
    福島の、日本の、日本に住む人々の悲しみ、怒り、やるせなさ。
    5月の「決着」は圧巻。

    言葉のチカラ。
    僕たちは今日も明日も生きる。何処で生きる?何の為に生きる?
    感じ入りました。
    忘れずに、背負って生きていく。

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