千年鬼

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634155

作品紹介・あらすじ

友だちになった小鬼から過去世を見せられた少女は、心に"鬼の芽"を生じさせてしまう。小鬼は彼女を、宿業から解き放つため、千年にわたる旅を始める。

感想・レビュー・書評

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  • 弟を探して森にやってきた民と会った小鬼。
    黒鬼に頼み、禁断の過去見をして、民の弟の居なくなった時を見せた。
    それは、悲しい現実であった。
    それが元で、民は身内に『鬼の芽』を宿してしまった。

    鬼の芽は、破裂し、非道を働けば地獄に落とされ、現世へは、二度と戻れない。
    千年を地獄で暮らし、その果てに命は無に還される。

    小鬼は、民を助ける為に、「生まれ変わる民にずっと張り付いて、悪さをしそうになったら止める」
    と、天女に約束した。

    千年の間、過去見の術を使って、鬼の芽を摘み続ける
    それが、小鬼と、黒鬼に与えられた罰であった。

    民は、何度か生まれ変わり、時は過ぎ、ようやく千年が過ぎようとしていたが… …

    小鬼の墓場で、小鬼を生き返られる為、たとえ、千年かかってもと、赤い砂を拾い集める民。
    思わず、ほろりとさせられた。

  • 3匹の小鬼「過去見」によって過去を見せてもらう人々の短編連作かと思っていたら、5話目で繋がりが証され、タイトル『千年鬼』の意味も分かる。小鬼の一途さに、愛しさに泣いてしまう。

  • 「げに恐ろしきは、鬼ではなく、この人鬼なり」 
    この本に出てくる小鬼はとても純粋です。
    人の憎しみや怒りが増幅されると、“鬼の芽”が育ち、やがてはじけて“人鬼”となる。千年の間、それを阻止し守ろうとした小鬼。人鬼となってしまった民を救おうと、己の体をボロボロにしながら、生まれ変わる民の鬼の芽が育ってしまわぬよう見守る小鬼。
    “鬼の芽”がたやすく育ってしまいそうな、いつ鬼になってもおかしくないような状況は身近にいつでもあるものだなぁと、民の生まれ変わりをみながら思いました。
    ラストは泣けます。小鬼も民も切なくて、切なくて。 
    ですが、天女が言うとおり民には希望があるので、いつか千年の後には、また二人が会えるかもしれないですね。  

  • 鬼の芽は鬼ではなく人に宿る
    怨み辛みを糧として身内に育ち
    やがてその実がはじければ額に角をもつ人鬼となる
    げに恐ろしきは鬼ではなくこの人鬼なり
    「過去見」という過去を見る能力を使い
    人に宿る「鬼の芽」を摘む小鬼の短編集。

    せ…せつない…
    短編集かと思いきや連作。
    時系列が少しバラバラだけど読み終わった後に
    読み直すと黒鬼の態度とかに想いが現れていて感慨深い。
    和風ファンタジーが好きな人にとてもオススメできそう。
    表紙、挿絵もすごく素敵なのでこのまま
    文庫になってほしいな~

    小鬼が民が人鬼になるまで守り続けて千年。
    そして民が小鬼にまた出会える日まで千年。
    いつか二人が笑いあう姿が
    目に浮かぶような気がする。
    ありきたりなハッピーエンドではなく
    後味の悪いバッドエンドでもなく
    希望がある限りそこは地獄ではない、
    という終わり方が良いと思った。

  • 本を読んでて泣かなかったのは、だれも諦めてなかったから、かな。

    帯に「ファンタジー」という文字があって、とても面白そうな小説だとは思っていたのだけれども、ずいぶん手に取るまでに時間がかかってしまいました。
    ※ファンタジーもの大好きなのですが、年々冒険的なガツガツ行くファンタジー(雰囲気だけ伝わって…)は気力がついていけず……なんてことも多かったので、こういう経緯になりました。

    私がついに読み始めたとき、ほっとしたのが短編連載の形をとられていたこと。一つ一つのお話が短いスパンで切り替わって、謎を深めたり、キャラにより魅力を追加したりしてくれました。
    後半はそういうわけにはいかず、切なくて苦しい状況が続きましたが、その前までに作り上げた千年鬼への信頼感・期待感が、ラストまでしっかり支えてくれます。

    とても良かったです。
    物足りないくらいがちょうどいい。良かったです。

  • ほっこりファンタジーかと思いきや、切ない。切ない。。。
    「千年」、想像しようとしてもできないぐらい途方もない時間。たみの鬼の芽を摘み続ける小鬼もカッコイイし、支え続ける黒鬼もカッコイイ。
    予定調和で終わらず、シビア。でもラストかすかな希望が見える。出会ってほしいと切に願う。

  • ほんわかしたファンタジーかと思いきや、まさかあんな結末になるとは。
    終盤は涙無しには読めませんでした。
    千年という長い間、己の命を削るのも厭わず過去見の術を使い続けた小鬼。
    鬼の芽の宿業である輪廻を繰り返す民を追い続ける最中に、人の営みを見聞きしながら、ただただ民の心に寄り添おうとする健気な心に胸を打たれます。
    あの場所で途方もない作業を続ける民の笑顔にも心動かされます。
    互いを思いながら過ごしたそれぞれの千年を経た先に、二人が笑顔を交わせる未来が続いているように願わずにはいられない。
    とても素敵な作品でした。

  • 一話目の小鬼と少年のお話がすごく良くて、ああ、こうやって自分の中の暗い部分=鬼を解消していくお話の連作なのね、と思ったら…一話目の結びでもっと壮大な核になるストーリーが出てきて、「お、これはすごいぞ」となりました。

    全部で7つの短編は、「鬼の芽」を宿す主人公が小鬼と出会い、小鬼の過去見の力を使って主人公の心の闇が解消され、その鬼の芽が摘まれていく物語で、なんとも言えないカタルシスがあります。無邪気な小鬼の奮闘もいじらしい。けれど、実は哀しい過去があることがだんだんわかってきます。なぜ小鬼はそんなことをしているのか。短編は、時系列にはなってなくて、「どうしてこうなった?」と謎が残るので、続きを読まずにはいられない。

    クライマックスで、普通なら、こんなに頑張った小鬼の願いは叶いました…となるところ、そんなに単純には終わらないのがまた良かった。
    長い年月、小鬼が想い続けた少女が、今度は小鬼を想い続ける。ハッピーエンドではなくても、希望が残る、ある意味とても幸せなエンディング。

    最後まで読んで、もう一度おさらいをすると、ああ、そういうことかだったのか!とさらに切ない余韻に浸れる物語でした。

  • <鮮>
    僕のジャンルの中では「妖怪もの」ですが,今まで読んできた夢枕とも京極とも荒俣とも違う,初めて出会う感じの作品です。僕はこういうの割と好きです。
    題名は「せんねんき」と読むみたいですが,僕は「せんねんおに」と読むほうが良いと想う。

  • ううん、なんでだろ?なんか、文章がイメージを掴みにくいんだよなあ。ラストの一番肝要なとこが微妙に想像が出来なかった。お話は好きなのにな。
    天女さま容赦ねえな!世界観好きでした。鬼の墓場の寂しそうな情景が胸を打ちます。アンハッピーエンド。もっと、ひとつひとつのお話が長かったら良かったかもしれない。
    「三粒の豆」幸介が救われてよかったです。結果は良かったけど、切なさがどこかに漂っているような。
    「鬼姫さま」冬嗣が具体的にどう悪いことしようとしてたか欲しかった。
    「忘れの呪文」一番好きだったかもしれない。人間って、おぞましい。
    「隻腕の鬼」駒三の命を賭けた覚悟はすごい。人鬼の恐ろしさがじわじわ感じられる。
    「小鬼と民」民が名前だと気づかなくてうん?となりながら読んでた。かつては当たり前だっただろう陰惨な風景。
    「千年の罪」ここがどうにもふわふわし過ぎててよく掴めなかったんです。一番大事なところなのに。
    「最後の鬼の芽」やっぱりどうなってるのかイメージしにくかった。何故だろう。火事を食い止めた辺りが特に。千年の重みを乗り越えて、民は小鬼とまた出会えるのだと思います。後味はどちらかと言うと良くない方に入るのでは。でも私は好きでした。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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