- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198634353
作品紹介・あらすじ
「21世紀のケインズ」の異名をとるノーベル賞作家が書き下ろす世界同時恐慌時代の行方。ウォール街占拠デモにも参加、99%の貧困層と1%の富裕層という歪な社会構造を生み出してしまったアメリカ経済の暗部を追及する。
感想・レビュー・書評
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上位1%の富裕層が政府へ働きかけ、自らに有利な仕組みを作り上げて、残りの99%から搾取を行う=レントシーキングについて問題提起した本。著者はノーベル経済学賞受賞の御大らしい。
・よかった点
著書はアメリカ経済について語ってるけど、強きを助け弱きを挫くことに注力する、まさに近々の日本の構造を初出2012年の時点で明らかにして見せたこと。薄々分かっちゃいましたが、やっぱ隅から隅まで上位1%が攻略済み!と見せつけられるとあちゃーと思う。
・よくなかった点
長い&内容の重複が多い気がする。途中でここもう読んだかなーと眠くなっちゃうくらい。半分くらいにカットしてもよかったんではなかろうかと。
あと対応策が最終1章しかなくて、しかも香港みたいにデモ参加とか別にすれば、個人で速攻できることって折々選挙に行って金持ち優遇策に数の力で歯止めをかけることくらい?と思うと萎える。敵はカネ・コネ・アタマの3拍子そろった華麗なる超難敵なのに、それじゃ間に合わないよー。
総評
何もしなければ今後もっと搾取され、でも社会全体としては沈んでいくだろう未来予想図を見せつけられ、今自分がどの位置にいるのか意識させられたことは、ためになったとは思う。上位1%と接点ないので彼らの考えが分からないけど、多分自分たち以外は養分の認識で、世界が滅びようが自分たちだけは生き残る気でいるんだろうなあと。暗い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一回通読しただけでは、完璧に理解するのは難しいが、思った以上にアメリカは深刻な貧困に陥っている。貧困層では6人に一人は仕事に就けない。まともな医療も受けられない。住宅も多額の負債を抱えて失いかけている人が多い。上位1%が富を独占し、政界を金の力で牛耳っている。このままでは、富裕層と貧困層に全く接点のない二重世界になってしまうのではないか・・。
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世界金融危機 (2007年-)を予測できた数少ない経済学者の一人。
ウォールストリート占拠デモにも参加した行動するエコノミスト。
この本では、99%の貧困層と1%の富裕層という、アメリカの歪んだ社会構造を分析している。
「第9章 上位1%による上位1%のためのマクロ経済政策と中央銀行」の中の「現代のマクロ経済学と通貨政策がどのようして下位99%を痛めつけたか」は、アホノミクス以後の日銀の通貨政策が、オレにとって、具体的にはどのように作用するんだろう?と考えながら読んでいた。
「ほとんどの人々にとって、賃金は最も重要な収入源だ。結果として高い失業率をもたらすマクロ経済学と通貨政策は、現在のアメリカ社会における不平等の主な源だ。過去4世紀の間、マクロ経済学と通貨政策は安定を生み出してこなかった。維持可能な成長を生み出さなかったし、最も重要なことに、アメリカ社会のほとんどの成員に恩恵をもたらす成長を生み出さなかった。」
「真相を言えば、マクロ経済学の諸モデルは、不平等と配分政策のもたらす帰結にあまりにも不注意だった。これら欠陥のあるモデルにもとづく政策は、危機の発生を助長する一方で、危機に対処する能力を欠いていることが証明された。たとえ経済が回復しても、それが雇用なき回復になるという絶望的な展開にも、これらの政策が寄与していたものと思われる。」
スティグリッツのことが好きなのは、やっぱりそこに、数式だけじゃなくて、モラルがあるから。
経済学はモラル・サイエンスだと言ったアダム・スミスの言葉は、ケインズでさえ受け継いでいるんだから。 -
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世界金融危機を引き起こしたのは、ヘッジファンド業界ではなく銀行業界だ。そして、銀行家はほとんど全員が自由の身になっている。
説明責任を果たす者がひとりもいないのなら、そして、特定の個人に金融危機の責任を負わせられないなら、政治・経済制度の内部に問題があることになる。22
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もしも市場が約束を果たし、大多数の市民の生活水準を向上させていれば、企業の罪と、社会の不正義と、地球環境の汚染と、貧困層の搾取は、すべてゆるさせていたかもしれない。
資本主義は約束したことではなく、約束していないこと――不平等、公害、失業、そして最も重要な価値観の劣化――を実現させている。25
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全スカンジナビア諸国は、すべての国民に教育と医療を無償で提供している。
ある国の元財務大臣はわたしに「これだけの急成長と好結果を残せたのは、高い税率のおかげだよ」と打ち明けてくれた。
もちろん、税金そのものが高成長をもたらしたと言いたいわけではない。税金が公共支出――教育と技術とインフラ――の原資となり、公共投資が高成長を支え、高成長の好影響が高税率の悪影響を凌駕したのだ。64
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不平等を生み出してきたのは、昔から権力であった。
とりわけ厄介なのは、現行システムを搾取とみなすマルクスのような批判者の存在だった。73
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アダム・スミスの仮説どおりに市場が機能するのは、個人と社会の利益が同一線上にそろっているとき。78
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成功をもたらしてくれる真の秘訣は、まったく競争が起こらない環境を確立すること。90
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王朝の継承を防ぐことも課税の目的にふくまれている。次の世代へ富を受けわたす能力が高まれば、生活機会をめぐる競争条件には傾きが生じる。
アメリカは世襲財閥の国になっていく潜在性を持っていると言っていい。129
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今回の危機と十九二九年の世界大恐慌が、どちらも大幅な不平等拡大のあとに起こったのは、ひょっとすると偶然ではないのかもしれない。上流層に金が集中すれば、何らかの人為的な支えがないかぎり、平均的な人たちの消費は抑えられる。
現時点では、プラス要因になりうるのは政府支出だけだ。144
世界の総需要が不足する原因は、ある程度、過剰な不平等水準に求めることができる。145
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ソビエト連邦が崩壊したあと、ロシアは産出量の激減を経験した。この現象は大多数の経済学者を当惑させた。
七四年間にわたる共産党支配と、市民団体に対する弾圧が、どれほど社会資本を劣化させてきたかという点を、経済学者たちは分析できなかった。192
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集団行動には妥協が欠かせず、妥協は信頼にもとづいていなければならない。190
社会資本が多ければ多いほど、経済の生産性は高くなる。191
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アメリカ型モデルはいまや輝きを失いつつある。資本主義のモデルが持続的成長を提供できなくなったわけではない。大多数の市民が成長の恩恵にあずかれず、アメリカ型モデルが政治的魅力に乏しいことを、ほかの人々が理解しはじめたのだ。218
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過去によく練られた規制が数十年にわたってアメリカの金融システムの安定性を現実に守ってきたのだから、規制には効果がある。
このようにきびしい規制が課されてた期間は、急速な経済成長を遂げた期間であり(…)自由化が失敗に終わった理由は簡単だ。社会的利益と私的報酬が一致しないときは、イノベーションをふくめて、すべての経済活動がゆがめられる。266
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権力を持っている者たちは、民主主義社会では自分たちのルールを他人にそのまま押しつけることはできないのに気づいて、自分たちの利益になるようなやりかたで討論の枠組みを作ろうとする。277
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雇用を守るために、労働や資本に対するゆがんだ補助金を維持すべきだと示唆する経済学者はいないだろう。
経済を完全雇用状態に維持する責務は、別の政策で果たすべきだ――貨幣政策と財政政策で。281
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通貨政策は、FRBの七人のメンバーと十二名の地区連銀総裁で構成される委員会で定められる。しかし、地区連銀総裁を選ぶプロセスは不透明で、一般大衆にはほとんど発言権がなく、(連銀統制下にあるはずの)銀行の影響力があまりにも大きすぎる。364
ニューヨーク連銀総裁が(FRB議長、財務長官とともに)三人組のひとりとして救済措置の形をまとめ(…)ニューヨーク連銀総裁を選定したのは、まさに最も有利な条件で救済された会社を経営する銀行家たちとCEOから成る委員会だった。365
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最上層の税率引き下げ、赤字の削減、政府規模の縮小――は誰にとっても好ましいものであると、すべての人に信じ込ませようとする試みがなされてきたということだ。370
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支配的企業は競争抑圧のためのツールを持っており、多くの場合、イノベ-ションの抑圧さえ可能だ。389
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58340 -
日本人は繫栄を幅広く共有できたのか
困窮から抜け出せないシステム:
市場の機能不全
グローバル化のツケ
不平等と不公平
ヨーロッパより階級格差が大きいアメリカ
モラルの喪失
政治制度の機能不全
抗議者たちが求めているもの
希望の道はあるのか
経済学の使命
1%の上位が99%の下位から富を吸い上げる:
すべての船を浮揚させられない上げ潮
トリクルダウン効果はなかった
アメリカの不平等の概況
労働力の二極化
大不況は苦しい生活をさらに苦しくした
セーフティーネットなき労働市場
生活水準の低下
150万世帯が極貧
不公平な機会
上流階層はパイの大きな分け前を手にする
ジニ係数
レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方:
ガチョウの羽むしり
アダム・スミスの見えざる手と不平等
市場を都合よく形作る
ピラミッドの下から上へ金を移動させる
さまざまなレントシーキング
独占されていく市場
認知の取り込み
企業に気前のいい政府
政治と私欲がゆがめた市場:
経済構造の大変化
グローバル化が格差を広げた
金融の自由化がもたらしたもの
貿易のグローバル化がGDPを押し下げる
労働者を保護せよ
コーポレート・レントの不公平は配分
暗黙の差別
世襲される富
分離する地域社会
どこまでが一個人の稼ぎか?
不平等の源を解析する
アメリカ経済は長期低迷する:
消費の冷え込み
政府の対応がバブルと経済の不安定化を招く
規制緩和の罪
富裕層は公共投資を望まない
機会均等の終焉
レントシーキング経済
効率賃金説と疎外感
消費で見栄を張り合う
不平等と効率性のトレードオフ仮説
奨励金の副作用
累進課税強化をこばんだもの
危機にさらされる民主主義:
投票のパラドックスと有権者の幻滅
信頼の低下
金持ちを利する経済
マスコミへの不信
選挙権の剝奪
影響力の剝奪
なぜ懸念すべきなのか?
政治プロセスの改革
民主主義の空洞化
グローバル化と不平等と民主主義
アメリカの影響力の縮小
大衆の認識はどのように操作されるか:
現代心理学と経済学の基礎
不平等の政治学
思想の進化
政策についての認識のつくられ方
戦いの道具
認識をめぐる戦いとしての政策をめぐる戦い
政府の失敗vs市場の失敗
自由化と民営化
イノベーションと規制への抵抗
IMFという裸の王様
GDPは誤った尺度
お金を払える人々のための“正義”:
なぜ法の支配が必要なのか?
略奪的貸付
破産法
食い物にされた学費ローンプログラム
マイクロクレジットの悲劇
抵当流れ詐欺
事実上のvs法律上の
証券取引委員会と証券詐欺
緊縮財政という名の神話:
赤字の歴史
一石三鳥
赤字予算と需要不足の時代に経済を刺激する
ギリシャ危機の余波
ユーロの敗因
赤字削減路線の正体を暴く
所得控除
経済をゆがめる神話
社会保障を縮小するな
メディケア
犠牲者をムチ打つ
緊縮財政はうまくいかない
景気刺激策の失敗
なぜ政府支出がきわめて効果的でありうるのか
上位1%による上位1%のためのマクロ経済政策と中央銀行:
FRBは富の配分を気にもとめない
大銀行への贈り物
経済の金融化
もっと民主的な中央銀行へ
民主種への信念の欠如
ユーロ圏の深刻さ
通貨政策と思想の戦い
インフレ・ターゲット論の怪しい土台
他人に恵みを与える
ゆがみのない世界への指針:
経済改革の7つの基本方針
税制改革
グローバル化の緩和
完全雇用の回復と維持
新たな社会契約
持続可能かつ公平な成長を取り戻す
政治改革方針
希望はあるのか? -
2010年頃の米国の経済的な不平等を指摘する本。
タイトルは「世界の〜」となっているが、ほぼ米国の内容になっている。
第1章と最終章をさらっとしか読んでいないが、米国の上位1%の金持ちだけが更に金持ちになっていき、
中層は下層へと転落を続け、下層は世代を変えてもなかなか這い上がれないらしい。
健康保険についても任意加入なので、下層の人々はろくに医療も受けられないとか。
米国に住んでいる、もしくは住もうとしている人におすすめです。 -
日経新聞2019525掲載
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via Twitter​ http://ift.tt/​1qGfxyH ​ 【メモ】世界の99​%を貧​困にする経済((ハードカバ​ー))ジョセフ・E・スティク​゙リッツ (​著), 楡​井浩一 峯村利哉​ (翻​訳) 価​格: \2,052★★​★★☆(29)発送:http:​/...
ジョセフ・E・スティグリッツの作品






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