世界の99%を貧困にする経済

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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634353

作品紹介・あらすじ

「21世紀のケインズ」の異名をとるノーベル賞作家が書き下ろす世界同時恐慌時代の行方。ウォール街占拠デモにも参加、99%の貧困層と1%の富裕層という歪な社会構造を生み出してしまったアメリカ経済の暗部を追及する。

感想・レビュー・書評

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    富裕国
    貧困国
    上流階級の過剰な富の蓄積
    中流階層の空洞化
    下流階層における貧困の増加

    「わたしがここで強調したいのは、現在のアメリカにおける不平等の水準が、必然のレベルを大きく超えているという点だ。今日の不平等は、市場の力"のみ"を源とする不可避な結果ではない。市場は公共の諸政策によって形成されている。」

    【以下気になった所】
    世界各国の人々は同じ認識を共有していた。政治と経済制度は多様な欠陥をかかえており、両制度は基本的に不平等を内包している、と。何か間違っているという抗議者たちの認識は正しい。世界各国の政府は、高止まりした失業率などの重大な経済問題に取り組んでこなかった。

    2008年の金融危機以来、スペインでは若年層の失業率が40%を超えたままだった。アメリカでは「ウォール街を占拠せよ」という連呼が、そのまま抗議運動の名称となった。しかしすぐさまアメリカの抗議者たちは、攻撃対象をウォール街からアメリカ社会全般の不平等に広げた。運動のスロ
    ーガンは「99%」に変わった。「1%の1%による1%のための政治」にちなむ。

    世界では3つのテーマが共鳴している
    1.市場が本来の機能を果たさず、あきらかに効率性と安定性を欠いている
    2.政治制度が市場の失敗を是正してこなかった
    3.政治・経済制度が基本的に不公正

    本書は主として、アメリカと先進工業諸国における行き過ぎた不平等を論じつつ、3つのテーマがどれほど密接に結びついているかを説明していく。

    サブプライム危機を例に取れば、所得と教育の水準が最も低い人々を搾取するシステム、プログラムを設計するものは、本来の価値感なら罪悪感にさいなまれるはずだが、やましさを感じているものは今も当時もほとんどいない。これらの現象の大部分は"モラルの消失"という言葉でしか説明できない。

    国家がすぐれた企業統治法(コーポレートガバナンス)を効果的に運用しないかぎり、CEOは自分に法外なボーナスを支払うことができる。
    アメリカの政治制度は上層の人に過剰な力を与えてしまっており、彼らはその力で所得再配分の範囲を限定、ルールを自分たちに都合よく作り上げ、公共セクターから搾り取った。経済学者はこのような活動を"レントシーキング"と呼ぶ。富を創出する見返りとして収入を得るのではなく、自分たちの努力とは関係なく生み出される富に対して、より大きな分け前にあずかろうとする活動のことだ。
    レントシーキングにはいろいろな方法があるが、近年磨きのかかった手法は、金融界が略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務を通じて、貧困者層と情報弱者層から大金を搾り取るというもの。

    富を獲得するもう一つの方法は"逆累進課税制度"
    最上層の人の方が、貧困層よりも所得に占める税金の割合を低くする。

    レントとは、もともと土地からあがる収益のこと。
    ただ土地を持ってるだけで収益がもらえる
    さらに所有権から生まれる独占状態を強化、付与されたら、うはうは
    クオーターレント(輸入割当)
    天然資源に恵まれた国はレントシーキングが活発

  • 一回通読しただけでは、完璧に理解するのは難しいが、思った以上にアメリカは深刻な貧困に陥っている。貧困層では6人に一人は仕事に就けない。まともな医療も受けられない。住宅も多額の負債を抱えて失いかけている人が多い。上位1%が富を独占し、政界を金の力で牛耳っている。このままでは、富裕層と貧困層に全く接点のない二重世界になってしまうのではないか・・。

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    世界金融危機を引き起こしたのは、ヘッジファンド業界ではなく銀行業界だ。そして、銀行家はほとんど全員が自由の身になっている。

    説明責任を果たす者がひとりもいないのなら、そして、特定の個人に金融危機の責任を負わせられないなら、政治・経済制度の内部に問題があることになる。22
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    もしも市場が約束を果たし、大多数の市民の生活水準を向上させていれば、企業の罪と、社会の不正義と、地球環境の汚染と、貧困層の搾取は、すべてゆるさせていたかもしれない。

    資本主義は約束したことではなく、約束していないこと――不平等、公害、失業、そして最も重要な価値観の劣化――を実現させている。25
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    全スカンジナビア諸国は、すべての国民に教育と医療を無償で提供している。

    ある国の元財務大臣はわたしに「これだけの急成長と好結果を残せたのは、高い税率のおかげだよ」と打ち明けてくれた。

    もちろん、税金そのものが高成長をもたらしたと言いたいわけではない。税金が公共支出――教育と技術とインフラ――の原資となり、公共投資が高成長を支え、高成長の好影響が高税率の悪影響を凌駕したのだ。64
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    不平等を生み出してきたのは、昔から権力であった。

    とりわけ厄介なのは、現行システムを搾取とみなすマルクスのような批判者の存在だった。73
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    アダム・スミスの仮説どおりに市場が機能するのは、個人と社会の利益が同一線上にそろっているとき。78
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    成功をもたらしてくれる真の秘訣は、まったく競争が起こらない環境を確立すること。90
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    王朝の継承を防ぐことも課税の目的にふくまれている。次の世代へ富を受けわたす能力が高まれば、生活機会をめぐる競争条件には傾きが生じる。

    アメリカは世襲財閥の国になっていく潜在性を持っていると言っていい。129
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    今回の危機と十九二九年の世界大恐慌が、どちらも大幅な不平等拡大のあとに起こったのは、ひょっとすると偶然ではないのかもしれない。上流層に金が集中すれば、何らかの人為的な支えがないかぎり、平均的な人たちの消費は抑えられる。

    現時点では、プラス要因になりうるのは政府支出だけだ。144

    世界の総需要が不足する原因は、ある程度、過剰な不平等水準に求めることができる。145
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    ソビエト連邦が崩壊したあと、ロシアは産出量の激減を経験した。この現象は大多数の経済学者を当惑させた。

    七四年間にわたる共産党支配と、市民団体に対する弾圧が、どれほど社会資本を劣化させてきたかという点を、経済学者たちは分析できなかった。192
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    集団行動には妥協が欠かせず、妥協は信頼にもとづいていなければならない。190

    社会資本が多ければ多いほど、経済の生産性は高くなる。191
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    アメリカ型モデルはいまや輝きを失いつつある。資本主義のモデルが持続的成長を提供できなくなったわけではない。大多数の市民が成長の恩恵にあずかれず、アメリカ型モデルが政治的魅力に乏しいことを、ほかの人々が理解しはじめたのだ。218
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    過去によく練られた規制が数十年にわたってアメリカの金融システムの安定性を現実に守ってきたのだから、規制には効果がある。

    このようにきびしい規制が課されてた期間は、急速な経済成長を遂げた期間であり(…)自由化が失敗に終わった理由は簡単だ。社会的利益と私的報酬が一致しないときは、イノベーションをふくめて、すべての経済活動がゆがめられる。266
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    権力を持っている者たちは、民主主義社会では自分たちのルールを他人にそのまま押しつけることはできないのに気づいて、自分たちの利益になるようなやりかたで討論の枠組みを作ろうとする。277
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    雇用を守るために、労働や資本に対するゆがんだ補助金を維持すべきだと示唆する経済学者はいないだろう。

    経済を完全雇用状態に維持する責務は、別の政策で果たすべきだ――貨幣政策と財政政策で。281
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    通貨政策は、FRBの七人のメンバーと十二名の地区連銀総裁で構成される委員会で定められる。しかし、地区連銀総裁を選ぶプロセスは不透明で、一般大衆にはほとんど発言権がなく、(連銀統制下にあるはずの)銀行の影響力があまりにも大きすぎる。364

    ニューヨーク連銀総裁が(FRB議長、財務長官とともに)三人組のひとりとして救済措置の形をまとめ(…)ニューヨーク連銀総裁を選定したのは、まさに最も有利な条件で救済された会社を経営する銀行家たちとCEOから成る委員会だった。365
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    最上層の税率引き下げ、赤字の削減、政府規模の縮小――は誰にとっても好ましいものであると、すべての人に信じ込ませようとする試みがなされてきたということだ。370
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    支配的企業は競争抑圧のためのツールを持っており、多くの場合、イノベ-ションの抑圧さえ可能だ。389
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  • ノーベル経済学賞受賞されているそうです(経済オンチの猫です)。

    徳間書店のPR
    「大衆を食いものにして、何の責任もとらず、富をむさぼる上流層。
    その手口は、政治・経済のルールを自分たちに都合よく作り上げ、それがすべての人々の利益になると大衆に信じ込ませるものだった。
    アメリカ、ヨーロッパ、そして日本で拡大しつつある「不平等」の仕組みを解き明かし、万人に報いる経済システムの構築を提言する。

    「21世紀のケインズ」の異名をとるノーベル賞作家が書き下ろす世界同時恐慌時代の行方。ウォール街占拠デモにも参加、99%の貧困層と1%の富裕層という歪な社会構造を生み出してしまったアメリカ経済の暗部を追及する。日米同時刊行。 」

  • 上位1%の富裕層が政府へ働きかけ、自らに有利な仕組みを作り上げて、残りの99%から搾取を行う=レントシーキングについて問題提起した本。著者はノーベル経済学賞受賞の御大らしい。

    ・よかった点
    著書はアメリカ経済について語ってるけど、強きを助け弱きを挫くことに注力する、まさに近々の日本の構造を初出2012年の時点で明らかにして見せたこと。薄々分かっちゃいましたが、やっぱ隅から隅まで上位1%が攻略済み!と見せつけられるとあちゃーと思う。

    ・よくなかった点
    長い&内容の重複が多い気がする。途中でここもう読んだかなーと眠くなっちゃうくらい。半分くらいにカットしてもよかったんではなかろうかと。
    あと対応策が最終1章しかなくて、しかも香港みたいにデモ参加とか別にすれば、個人で速攻できることって折々選挙に行って金持ち優遇策に数の力で歯止めをかけることくらい?と思うと萎える。敵はカネ・コネ・アタマの3拍子そろった華麗なる超難敵なのに、それじゃ間に合わないよー。

    総評
    何もしなければ今後もっと搾取され、でも社会全体としては沈んでいくだろう未来予想図を見せつけられ、今自分がどの位置にいるのか意識させられたことは、ためになったとは思う。上位1%と接点ないので彼らの考えが分からないけど、多分自分たち以外は養分の認識で、世界が滅びようが自分たちだけは生き残る気でいるんだろうなあと。暗い。

  • 日経新聞2019525掲載

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【メモ】世界の99​%を貧​困にする経済((ハードカバ​ー))ジョセフ・E・スティク​゙リッツ (​著), 楡​井浩一 峯村利哉​ (翻​訳) 価​格: \2,052★★​★★☆(29)発送:http:​/...

  • アメリカは上位の1%が支配するための経済。では公平性の確保はほんとうにできるのであろうか。

  • ・アメリカはもはや機会均等の地ではない。
    ・金融部門の抑制
    ・税制の抜け穴を減らす
    ・グローバル化の緩和
    ・機会均等の平等の拡大

  • 1%の上位が99%の下位から富を吸い上げる構造の解消には、効果のないトリクルダウンに期待せず、富裕層以外の人々を支援する制度の充実が必要。

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