天空の犬

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634513

作品紹介・あらすじ

南アルプス山岳救助隊の新人隊員・星野夏実は、相棒の救助犬、ボーダーコリー=メイとともに、北岳にある現地警備派出所に着任した。過酷な訓練と、相次ぐ山岳事故、そして仕事への情熱と誇り。そんな日々の苦楽をともにする仲間にも打ち明けられない秘密が、彼女にはあった。東日本大震災の被災地で目の当たりにした凄惨な光景-"共感覚"という能力を持つがゆえに受けてしまった深い心の疵が、今もなお越えられぬ岩壁のように夏実の前に立ちはだかっていた。やがて立て続けに起こり始める不審な出来事。招かれざるひとりの登山者に迫る陰謀と危難を察知した夏実は、猛り狂う暴風雨の中、メイとともに命をかえりみず救助に向かった…。

感想・レビュー・書評

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  •  読んでいる途中、何度も家のわんこを抱きしめた。物語の中で犬が一所懸命に活躍している姿を読むと愛おしくて愛おしくて。そんなわんこが登場すると、評価が3割増しになってしまうと思いきや、残念ながら私には少し読みづらかったかな。読み慣れないレスキューの話だからかと思ったが、どうやら文章が合わない感じ。でも、山岳救助隊であり、物語の主人公の夏実と相棒メイの絆は素晴らしかったし、登場人物も魅力的だった。

     山岳救助隊の夏実は、相棒のメイと救助の仕事に誇りを持って従事している。周りの救助隊のメンバーは時に厳しく、時に優しく夏実を指導していく。何度も救助の任務を遂行していくうちに、夏実は成長していく。そんな中、政界の大物がお忍びで登山にやって来て、夏実は事件に巻き込まれていく・・・。

     と、このような内容なのだが、この物語の色からして、最後の事件はいるかなぁ?という感じが拭えなかった。最後に山場を持ってきたかったのかもしれないが、なんとも無理やり感を感じてしまった。

    さて、私は本を読みながら、本の感想というより、山岳救助隊について、それから登山をする人について考えていた。山岳救助隊という仕事は、登山をする人がいなければ、必要がない。そして、きちんとルールを守って登山すれば登山で亡くなる人も少なくなるだろうし、救助隊の人も大変な思いをせずに済む。そんなことを考えていると、なんだかモヤモヤしてくるが、海にはライフセーバーがいるわけだし、それもしょうがないことなんだろうな。と結局は落ち着くのだが、それでもそういった仕事をする人は本当に大変なんだなあと感じた。毎年のように登山者が行方不明になったりするニュースを見るが、その度救助隊の人たちは頑張っているのだなと気付く。
     少なくとも、私はルールを守って生活していこうと今さらながら心に誓うのです。

  • 山、救助犬、共感覚と、インパクトのあるテーマが詰まった物語でした。
    共感覚と付き合いながら特殊な環境に身を置く主人公の成長を楽しみながら、後半はスリリングな展開で面白かったです。

  • 面白かった。
    そして、みんな無事でよかった。
    災害救助犬が山岳救助隊に配備されている北岳 南アルプス山岳救助隊警備派出所を舞台にした、とても気持ちの良い物語だった。

    ハンドラーの夏美とボーダーコリーのメイが災害救助犬として訓練を受けている最中に、3.11東日本大震災が起きる。
    津波被災地での捜索活動に従事し、疲弊した二人は山岳救助隊に加わり、北岳での山岳救助隊業務に就く。
    山岳救助の現場で救助犬が活躍する様々な展開は、それだけで充分に面白く、話に引き込まれていってしまう。

    さらに後半1/3から始まる話の急な展開に、放り込まれると、読者は夏美とともに事件の中で作者に翻弄されて、一気に最後まで読み進めざるを得なくなる。
    そして、最後の最後に、心底ああ良かったとほっとして、そこに明るい早朝の空の色のような安堵感を覚える。

    個人的には、東日本大震災被災地ボランティアで見聞きし感じたこと、たまたま遭遇した野反湖での要人警護の異様な光景、そしていまも毎日一緒にすごしているワンコとの生活など、非常にリアルに感じられるものが多く、より面白く感じたのかもしれない。

  • 山岳救助隊に配属された新米女性巡査とその相棒である救助犬が活躍するストーリー。

    主人公の女性巡査が共感覚という特異な体質の持ち主であり、東日本大震災の被災現場での救助活動でトラウマを抱えているという複雑な背景を持っている。山岳救助活動を通して、そういった問題に立ち向かい、克服していく姿が描かれ、周りで支える先輩同僚たちも個性的で、面白く読めた。ただ、超能力なみの共感覚に設定しているにしては、あまり救助活動に生かされてなかったかなという印象。また、後半、突然ハードボイルド展開になってちょっと面食らってしまった。それはそれで面白く読めたけど。続編が出されたようなので、そちらも読んでみたい。

  • K9シリーズ、既に何冊か読んでたがこの作品が原点なのかな?星野夏実巡査がボーダーコリーのメイと3.11の救助活動に参加したのち、山梨県警アルプス署地域課山岳救助隊に赴任する。人の強い思いやそこに漂う残留思念が色として知覚する共感覚という特殊な能力を持つ夏実は、救助活動でその能力を発揮する。神崎静奈は夏実に対して冷たい態度だったけど、政治家の絡んだ事件で夏実に「生きていてありがとう」の言葉に良かったなという気持ちになった。メイも拳銃で撃たれ心配したが、その後の活躍、犬は賢いなぁとつくづく思った。

  • 犬、山、警察、女性。この四つを揃えるとはなかなかやりおる。そもそも表紙からして犬好きならば必ず手に取った事あるはずですが、中身を読んでもいじらしいボーダーコリー「メイ」ちゃんの愛らしくも勇ましい姿にうるうる来る事間違いなし。そして健気で頑張り屋で、共感覚という心に負担を強いる特殊能力を持つ主人公「夏美」がこれまた妙に保護欲を誘われるのであります。
    この1人1犬の息の合ったコンビネーションで、救助の為山を駆け巡る姿が目に浮かぶようになるのに、さほどの時間を要しませんでした。なにより「メイ」が見上げる視線を自分も感じるくらいに犬の描写が多く、見えないのにそこに居るような気持になりました。
    そして終盤、陰謀術策に巻き込まれ、一大騒動になっていくのですが、えぐいぐらいにエンタ-テイメントです。楽しむ為の読書をさせる技量が極めて高い作家です。

  • 山岳救助隊の生きいきとした活躍を描いた作品です。
    想像を絶する自然の猛威にさらされなすすべもなく遭難や事故は起こる。
    それでも山は美しく、そこにいるだけで泣けてくる… 。
    心から信頼できる仲間とかけがえのない相棒。歯を食いしばりひたむきに働く姿が感動的で
    ぬくぬくと部屋で読んでいるのが申し訳ないような気持ちになってしまいました。

  • 夏実と救助犬メイの物語

  • 文章に難あり。特に、説明的な文章のときに、主語がわからなくて何のことを説明しているのかが不明なことが散見された。そのせいもあって、必然的に説明的な文章が多くなる話の導入部は非常に読み辛かった。著者本人の技量の問題ではあるが、編集者がちゃんとチェックするべきだろう。
    あと、主人公が特異な能力 ――どちらも「共感覚」という言葉で訳されることがある「シナスタジア」と「シンパシー」、この両者をごっちゃにしたような架空の能力―― を持っている必然性が感じられない。特異な能力を持った人間の孤独や苦悩を描きたいのかと思って読んだが、それについては通り一遍程度の描写しかされておらず、ただの便利ツールとしてしか扱われていない感じ。

  • ・岳-三歩+犬って感じで面白かった。北岳は登ったことあるだけに読んでて状況がわかって良かった。後半の盛り上がりもなかなか。でも主人公の能力、それは共感覚じゃなくて超能力だろう。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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