この国はどこで間違えたのか ~沖縄と福島から見えた日本~

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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198635091

感想・レビュー・書評

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  •  「沖縄と福島から見えた日本」という副題がついているとおり,「国策としての棄民」ともいうべき40年間(あるいはそれ以前からの)の沖縄と,原発被災した福島との,相似性にスポットを当てて,新聞記者が著名人にインタビューをしています。
     取り上げられている人たちは,すでにわたしの本棚にも何冊かの本がならんでいる人たちでした。
     インタビューアである新聞記者の渡辺豪氏の所属は,沖縄タイムス。その紙上に連載されたものを集めたようです。
     ただ,このインタビュー記事は,まるで渡辺記者との対談の様なときもあります。それくらい,記者の方も,当事者意識でしゃべってしまっているのだと思います。
     とにかく,日本はアメリカから早く「独立」する必要があります。

  • 沖縄と福島。米軍基地と原発というそれぞれの大きな問題を抱えるふたつの地域を安易に同一化するのは危険かもしれない。

    けれども大きな視点からみると、その根底にはアメリカの意志というものがあり、それに対する戦後の日本の政治というものがある。

    日本はアメリカの政治判断に日本は抗えない。むしろアメリカに従属することで「自分の頭で考えなくてすむ」という安寧を得ていたのではないか。

    軍事、外交の多くはアメリカに任せて経済成長に専念できたことが、現実的にはメリットとして享受してきた。その代償として沖縄は再び「捨て石」とされ、アメリカに供されてきた。その間国内では東京への一極集中が進んで地方は疲弊して過疎化し、そんな地域を狙って55基もの原発が建設された。共通するのは巨額の地方交付金や賠償金をばらまくことによって、世論の分断が起きていることである。賠償金を過剰にばらまくことで、都市の人間は『やましさ』を感じないですむ。我々はみな米軍基地や原発という危険なものを地方に押しつけている、
    (NIMBY~Not In My Back Yard~というらしい)『やましさ』があるのだ。それが時には攻撃的にもなるし、無関心にもなる。

    9.11以降のアメリカにも似て、3.11以降の日本は明らかに右傾化している。美談ばかりを取り上げるジャーナリズムの偏向もそれを助長している。民主党への失望を梃子にした自民党の躍進と、あからさまなジャーナリズムの追従は、非常に不気味な歴史の暗部を思い起こさせる。

    なぜわれわれわれは変われないのか。民主主義とはこんなものだったのか。

    残念な思いばかりが残る問いかけである。

  • 沖縄と福島を通して日本を考えるインタビュー集。インタビュアーは沖縄タイムス記者の渡辺豪氏。名うての論客8人のインタビューしています。
    そのインタビュー相手がとにかく豪華で、ネットで見つけて即購入しました。内田樹さん、辺見庸さんは著作のほとんどを持つほどのファン。ほかにも佐野眞一さん、小熊英二さん、佐藤栄佐久さんら個性的な論客ばかりがそろいました。
    いずれも沖縄と福島の現状から日本の問題点を炙り出して夢中で読みましたが、個人的には、実は本書で初めて知った福島大教授の清水修二さんのインタビューが大変興味深かったです。
    原発立地自治体に国が交付する「電源3法交付金制度」は原発事故で広く知られるようになりましたが、その目的に「地域振興」が掲げられるようになったのは、実は90年代に入ってからだそうです。それから露骨な利益誘導、政策誘導が始まります。
    07年に成立した「米軍再編交付金」もまったく同じ仕組みで、実にグロテスクに感じました。
    原発も基地も、実は地域格差を前提にしています。原発や基地がないと、その地域の経済が立ち行かなくなる。清水さんは「地域格差が是正されると、そういうものを推進したり、稼働したりできなくなるという意味では、『原発や基地が地域格差を是正する』という国の言い分は論理矛盾だと、ずっと前から思っています」と主張しています。
    千葉大教授の広井良典さんは、現状の問題点を明示するところからさらに進めて、追求すべき未来の姿にも言及しています。
    キーワードは「定常型社会」。時間軸を尺度に経済成長すれば豊かになるという信仰を捨て、地域に根差した空間軸で豊かさを捉えようという考え方です。
    訳知り顔の大人たちは「青臭い」というかもしれません。しかし、これまで、こうした訳知り顔の大人たちの代表のような人たちが主導してきた原発が今回こういう形で破滅的な事故を起こしました。
    本書でも登場している内田樹さんは高橋源一郎さんとの対談で、原発推進派を「悪者」としたうえで、「悪者だから賢いはずだ、だから任せておいて大丈夫だという意識があった。ところが今回(原発事故で)はっきりしたのは、彼らは賢くはなかった、任せておけない」と語っています。
    本書を読み、私たちも原発や基地の問題を人任せにせず、主体的に考えていくべきだろうと思いました。
    それにしても本書に登場する論客たちの思想の打点の高さと言ったらないですね。

  • 一見無関係に見える沖縄と福島を考えた論考だが、広井さんの「定常型社会」という発想に魅力を感じた.元福島県知事の佐藤さんはいろいろな修羅場を乗り越えてきたので、発言に重みがあると思った.

  • 沖縄の米軍基地と福島の原発という、およそ40年前からつづく地方への押し付け問題について、沖縄タイムズ論説委員によるさまざまな論者へのインタビュー集。当事者性をどうもつか、そして地方はかならずしも押し付けられただけ、というわけではないことといった共通項がある一方、「脱原発」は前向きにイメージできても、「脱米軍」はイメージできない、というのは、当事者でなくてもそうかもしれない。自然エネルギーにおいても原発と同じ構造が起こるという警鐘もある。
    偽東京をあちこちに作ろう、という流れでは何も変わらない。けれど、制度設計の失敗ではなくて、国民の公民意識の未成熟ぶりが原因だと内田樹さんはいう。さもありなん、自分に当事者性と成熟があるか自問すれば。

  • 2012最後の一冊。
    僕らの世代はほとんど政治なんて当てにしていないし、絶望していると思う。でもそこで思考を停止してはいけない。考えろ、考えないと死ぬぞ。学べ、学ばないと死ぬぞ。
    そんなことを思った今年。
    最後の一冊。

  • 小熊英二さんの語りから感じられる自信はどこからくるのだろう。原発に関しては、政権が代わり(インタビュー時は前の政権)、軌道修正が明らかになってきた中でも同じ調子で意見を述べるのだろうか。

著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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