評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198635671

作品紹介・あらすじ

本書で示されるのは、新しい「交易」と「共同体」のありかた。

貨幣も、情報も、評価も、動いているところに集まってくる。ならば、私たちはどのような動きをする集団を形成すればいいのか。そのために個々ができる第一歩とは。

キーワードは「情けは人のためならず」。若者と年長者の生態を読み解き、ポストグローバル社会での経済活動の本義にせまる変幻自在の対談。

感想・レビュー・書評

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  • 岡田斗司夫と内田樹の対談形式の本。これからはこういう共同体を目指したらいいんじゃないかなということを主に語っている。主なことはこれまでの内田さんの本に書かれていることなんだけど、岡田さんてなんというかものすごく突飛というかユニークなシステムをぽんぽん思いつく人なんだなぁと感心しながら読んでいました。
    仕事をしたいから社員がお金を払う会社とか。面白いなー。心地よい反骨精神みたいのを感じる。

    ・心が折れる瞬間についての考察で、身体を無視した「生きがい」という度量衡、という考え方。
    ・ロスジェネ論は不毛
    ・「キャッシュ・オン・デリバリー」は不信の証
    ・太宰治の小説の最初の一文のウマサ。
    (あ、トピックのタイトルもあるけどそうじゃないものもあります)がすごく説得力あった。
    キャッシュ・オン・デリバリー~の映画の中のマフィアの例えとか。

  • ”凱風館とFREEex、趣のまったく異なるコミュニティを主宰している、内田樹さんと岡田斗司夫さんの対談本。
    タイトルは「経済学」だけど、コミュニティマネジメントの観点で面白く読めた。特に、これからの時代、拡大家族的コミュニティのビルダー(ファウンダー?)になろう、という提言に強く共感。

    なかでも、強く印象に残ったのは以下のキーワード。

    ・努力したら最終的には報酬がある。ただし、どんな報酬がいつもらえるのかは分からない。
    ・拡大家族(拡張型家族)的コミュニティ = 相互扶助の互恵的な集団を作りたい
    ・良きパッサーたれ。「あ、あのとき受け取ったのは、パスだったんだ」
    ・「眠っている知性への敬意」をもって教える
    ・それぞれ相手に贈与して、反対給付義務を感じて、それを相殺しようと絶えず動き続ける
    ・急に近づいて「あなたに話す話法」
    ・「ほんとうに必要なものは金では買えない」時代の共同体実践

    これからの時代、コミュニティの世話人として活動する人が肌感覚でもっていたい世界観が、二人の対談のなかで言語化されている感じ。折々で読みかえしたいコミュニティ関連本の一冊になった。

    <読書メモ>
    ・いまは「流行りだから間違いない」「ランキング上位だから良いに違いない」という発想。
     (略)あるいは、いまこの人やこの会社がバッシングされているから、自分としては特になんとも思わないけど、みんなとおなじようにバッシングしておけば間違いないよね、って。ぼく「イワシ化」って呼んでるんですけども、社会がイワシ化してるんです。(p.24:岡田)

    ・自分の気持ちを大切にするために、いろんなところから肯定的な情報を集めてきたり、ソーシャルネットワーク上でイワシ化する(p.34)

    ★「努力したら、最終的には報酬がある」ということは言ってもいいと思う。でも、どんな報酬がいつもらえるのかは事前には予測できない。ある種の努力をしているうちに、思いもかけないところから思いもかけないかたちで「ごほうび」が来る。それはまさに「思いもかけないもの」であって、努力の量に相関するわけじゃない。(p.55;内田)
     ※努力と報酬の関係

    ・もし信託能力に自信があったら、「いまもらえなくても、オレが見込んだこいつならいつか返してくれるはず」と思えるはずじゃないですか。そうじゃないから、同時交換だったり早く対価が受け取れないと安心できないわけで。(p.58:岡田)
     ※キャッシュオンデリバリーは不信の証、になるほど。

    ・妄想してると、脳内にドーパミンが出てきて、それだけでけっこうハッピーになってるんじゃないかな。(略)ぼくたちは報酬をけっこう前払いで受け取ってるんだと思う。(p.61:内田)

    ・自分で「こんないいことしてるオレって、ほんとにいいやつだな」って思えれば、それだけで生命力って向上するんです。(p.62:内田)

    ・ちょっとずつ関わりが強くなるにつれて、ぼくにお金を払ってもらおうっていう発想なんです。(p.66:岡田)

    ・たとえ仕事をしなくても内田先生にお金を払いたいっていう人しか集まらないから、自分の値打ちがはっきりわかる。うちは社員が一年更新だから、ぼくがちゃんと仕事をしているかどうかで社員数が増減するんです。ぼくに値打ちがなくなると社員数が減っていく。しかも上限は3年と決めています。(p.74:岡田)
     ※FREEex(フリックス)の社員制度。おもしろい。月1万円、190人が払っている。

    ・とにかく、年長世代からの「がんばってね」っていうフレンドリーな贈与が社会的フェアネスを基礎づける、そういう時代に必ずなると思うんです。だって、どう考えても、それ以外にソリューションがないから。(p.87:内田)
     ※内田さんの「贈与経済」論。

    ★そういう小さなコミュニティをていねいに手作りしたいわけですよ。その五百人くらいの人たちで、お互いに顔の見える人間が集まって、若い人たちが活躍できるように、みんなでチャンスを提供する。お金がある人はお金を提供する。コネがある人はコネを紹介する。(略)そういう相互扶助の互恵的な集団を作りたいんです。(p.97-98:内田)
     ※拡張型家族!

    ・文系のヤクザ。一家を構える(p.98:岡田)
    ・責任感が発生した瞬間にこれは家族として成立している(p.99:岡田)

    ・あらゆることに優先するのは「集団が生き延びること」ですから。単独で「誰にも迷惑をかけない、かけられない」生き方を貫くより、集団的に生きて「迷惑をかけたり、かけられたり」するほうが生き延びる確率が圧倒的に高いんですから。(p.103:内田)

    ・仕事に就くのは能力じゃなくて完全に運だって考えて、運があるやつが拡張型家族を構成していく(p.107:岡田)

    ★ぼくは30万人とまでは思わないけれど、近いうちにそういう共同体実践をはじめようとしている人はもう3万人ぐらいいると思う。でも、3万人ではやっぱり足りない。これを30万人にして、100万人ぐらいまでもっていかないと、社会システムとしてはカバーしきれないから。(p.108:内田)

    ・根源に欲望があると思われたら生きづらくなるから、欲望を消してリアクションだけで生きていくことを選んでいる。欲望がないからリアクションしかすることがない。(p.126:岡田)
     ※ものがなしいけど、なんか分かる。

    ・師弟関係の一番いいところって(略)「この先生の最高の面を知っているのは私だけだ」という幸福な錯覚が敬意を生み出し、学びを起動させるという点にあるんです。(p.138:内田)

    ★国民のなかの数十人に1人が、キャラクターと言ってもいいしカリスマと言ってもいいし、先生って言ってもいい、そういうふうな人を立てていって、他の人間を食わせる状態にもっていこうっていう計画上にあるんですが(p.139:岡田)

    ・世の中にはゲマインシャフト(地縁や血縁で自然に形成される共同体)とゲゼルシャフト(特定の目的のために形成される共同体)と、もう一つなんとかシャフトがありそうですよね。(p.144:岡田)

    ・イワシ化だと持続的な共同体は作れないですね。でも、さっき話した拡張型家族のシステムだとやり方次第では「第三のシャフト」は可能だと思う。(p.145:内田)

    ・人のお世話をするというのは、かつて自分が贈与された贈り物を時間差を持ってお返しすることなんですから。反対給付義務の履行なんですよ。(p.148)

    ★ファンタジスタって、たぶんずっと「どこにどういうパスを出したら、ゲームが楽しくなるか」ということを考えていると思うんです。(p.150)

    ・贈与は「思ったもの勝ち」なんです。(p.160)

    ★肝心なのは、年上世代が若い人たちに敬意をもって接することだと思う。(略)そのうち「あ、あのとき受け取ったのは、パスだったんだ」ということが向こうにも実感されるようになる。(p.163)
     ※ここでは世代(年齢)で書かれているが、必ずしも年齢の上下とは限らない。ただ、「先駆者からのパスと敬意」というふうには言えるはず。

    ・すべての学生たちがその潜在可能性を開花させて、ハッピーに生きるためにどうすればいいか(p.171)

    ★もっとも上質な贈与というのは、こういうふうに本人も知らない、周囲の人も知らないのに、みんなを救うようなことをしてしまっている(p.179)
     ※堤防に開いた小さな穴を、誰知ることなくふさぐこと。

    ・移民社会で、文化が違えば、宗教も言語も違う、というなかでは可視的な基準以外に社会的な成功の度量衡ってほかにないからね。(p.208:内田)

    ・日本人の得意な、手触りの温かい、きめ細かなサービスで国際的な評価が得られるなら、その豊かな資源を活用しましょうよ。
     日本人が自分たちの持っている例外的な潜在能力に気がついて、国際社会のなかにどう自分たちを位置づけるか気づけば、日本はずいぶん元気になると思うけどね。(p.211:内田)

    ★それを教えるのは、いまの君にじゃなくて、君の眠っている知性に対してだから。(略)「教える側」が「教わる側」の潜在的な知力に対して敬意を持って接しなければ知性は開花しない。そういうものなんです。(p.218:内田)
     ※「眠っている知性への敬意」っていいな。

    ・人間の能力の90%は「外見からだけではわからない」ものなんです。(略)「なんでも食べられる」とか「どこでも寝られる」とか「誰とでも友達になれる」というのは、生き延びるためにきわめて重要な能力ですけれど、数値的には示せない。そもそも人と比べるものじゃない。(p.222:内田)

    ★夫婦は非対称な関係にあったほうがいいと思いますね。自分ができることが相手にはできず、相手が得意なことが自分は苦手というのがバランスいいんです。(略)
     お互いにいつも貸し借りがアンバランスで、妻と夫それぞれ相手に贈与して、反対給付義務を感じて、それを相殺しようと絶えず動き続けることで夫婦のバランスが保たれるんです。(p.231:内田)
     ※あ?、これ分かる!

    ・お母さんが子どもに「お父さんは偉いんですよ」って言うのは、「お父さんがこの家で最初の贈与を行った人である」というフィクションを語っているんですよ。誰かを視点にしないとゲームがはじまらないから。鬼ごっこの鬼みたいなものです。(p.232:内田)
     ※フィクション! 鬼ごっこの鬼!(笑)

    ・相手の幼児性を温かく許容することができる男。モテる男ってだいたいそうですよ。(p.237:内田)

    ・読者の知性に対するリスペクトがないと言葉は届きませんから。かなりむずかしい話かなって思っても、「わかるよね、必ず。君はわかるよね」って相手を信頼することが大事なんだと思う。(p.237:内田)

    ★たぶん「みんなに話す話法」っていうのは人によってそれほど技術レベルが変わらないので、急に近づいて「あなたに話す話法」を使えるかどうかに書き手の力量が表れる。(p.240:岡田)
     ※あー、なるほど。これは納得感が高い。コミュマネ的にも言えることかもしれないし、他の仕事でも言えることかな。

    ・音域が広い声なんです。そこからは男の声も女の声も子どもの声も老人の声も聞こえてくる。どの声を選ぶかは読者の自由に委ねられている。(p.241:内田)

    ★非力で、貧しく、なんの取り柄もなさそうな人たちでも、ひとつところに集まると、その出会いから思いがけない「ケミストリー」が起きて、想像を超えた素晴らしいパフォーマンスが達成されるという楽観的な共同体観です。
     ※ドリームランダースと鶏鳴狗盗。2つの拡大家族に共通するもの。

    ・「ほんとうに必要なもの──生き延びるために必要なもの──は金では買えない」(p.251:あとがき)
     ※金銭ですべて解決できるシンプルな時代ではなくなってきたってこと。だから、人柄なんだ、「いい人」なんだってこと。

    <きっかけ>
     岡田斗司夫さんと内田樹さん、お二人の投げかけるメッセージが好きなので購入。2014/11/1 に読み始めたところ、コミュニティ論にも通じそうなテーマだったので、CMC読書会の課題図書に決定。”

  • マスメディア=情報のプラットフォーム。皆が同時に語り合える、共通の場所を提供している。
    努力と報酬について=良いものは無料で流行させる。
    家族制度の基本は、同じ釜の飯。
    教育(機能)、師弟関係は⇒コンテンツの提供が教育であるというあやまった考え。

  • 「パスするゲームに参加していると、気がつかないうちに
    ゲームに参加するための基本的な条件は周りの人が
    全部整えてくれるんですよ」

    これ、最近自分の周りに実際起こったことのようで、
    読んでふるえた!

    いつもの、内田さんがひとりでだーっと話してるだけじゃなく
    岡田さんの相容れないようで共通してる認識や
    両方のめちゃくちゃ鋭い反射神経と頭の回転。刺激的。

    図書館で借りたけど買おう。

  • 微妙に話がかみ合っていない中で、岡田さんが一生懸命内田さんを説得しようとしている雰囲気が楽しい。岡田斗司夫はやっぱり頭が良いと思う。
    イワシ化する社会とか、自己実現以上に大切なことは集団が生き延びること、経済活動の本質は等価交換ではなく贈与と反対給付などなど、いちいち腑に落ちるネタが展開されていて興味深い対談集でした。

  • 内田樹と岡田斗司夫という水と油のような組み合わせのふたりが「これからは人柄が大事。人を世話する人が幸せになれるし、得をする」という未来像を共有している。
    人は変化する。決して元には戻れない。変化した後は変化する前が理解できなくなっている。だから「人のありかたや幸福はどの時代でも同じ」だとつい誤解してしまう。



    いまの巨大な群れ・その場限りの流れ(=空気?)に従うだけで価値の中心がない社会を「イワシ化する社会」と内田樹は呼ぶ。内田樹は「人には、正しい状態、『原始の状態』がある。その直感能力が弱められたのが近代であり、その感性を取り戻す事が肝要』だと身体性の重要性を説いている。「イワシ化する社会」というのは「脳化する社会」であり、頭だけで考え身体性を軽んじ、直感が鈍っているのでフラフラと吟味せずにマジョリティになびくのだという。

    インターネットによる商取引の高速化、無時間モデルの考え方が貨幣経済を破壊した。インターネットは近代資本主義を壊すトロイの木馬だった。



    岡田「草食化とは文明に馴致されたこと。誰かに利用されるのを異様に嫌がる現代の若い男子には身体性がない。」

    内田「基本的に成功というのは他人が手を差し伸ばし、引き上げてくれて漸く岸に辿りついたというようなこと。自力で辿り着いたわけではない。」
    内田「いまの若い人に一番足りないのは"努力あるいは才能に対する報酬は、必ず来る"という素直な信仰。」
    岡田「自分の信頼、信託能力に自信がないからキャッシュ・オン・デリバリーに拘る。ギャング同士の取引で『この場で払え』というのは相互に信頼関係が築かれていないから。」
    内田「成果主義というのはそれが"無時間モデル"であることに問題がある。人間の営みとその成果の相関性は、極端な話、"棺を覆いて事定まる"ものだらかだ。
    岡田「オタクというのは人間関係がドライ。ヤンキーはウェット。」

    岡田「人といる時でもケータイをいじるのは『大切なひとの前だからこそ複数世界の自分をマネジメントしている"素の自分"を見せている親しみや信頼の表現。リアクションこそ自分である(根源に欲望があると思われたら行き辛い)というメタ・メッセージ。」

    岡田「社会人というのはスキル。ネットワーク、人柄の三要素で出来ている。」

    岡田「人間には本音があるという幻想を打破したい。本音なんて要らない。」
    内田「表に出たものですべてが判断されるべき。」

    岡田「決断力というけれど『どっちか決断をせえ』という局面に攻められているのはもう負け(笑)。」
    内田「『こんなのこっちに決まっているじゃん』というのが正しい選択であって、そのときには決断しているという意識はない。どうリカバリーするかに知恵を使いより未然に防ぐことに知恵をつかわないのはアメリカ的。」

    内田「『失われた20年』で失われたのはお金ではなく、お金しか考えなかったことで本当に大切なモノへの投資を怠った、国家百年の計を見失った。日本の指導者のこの罪は重い。」

    内田「この20年間で一番変ったことは外形的・数値的な基準で人間を判断するようになったこと。数値で優劣が判断できるのは他の条件が総て同じ場合だけ。だから競争社会は必然的に凄まじい規格化圧力が働く社会になる。競争社会では、そういう風に分かりやすく格付けされる。しかし、人間の能力の殆どは外見からだけではわからない。例えば自分は人を判断する時に『この人と一緒に革命ができるか』と考える。権力の弾圧、裏切りといったリスクを長期に渡って耐えるときに信じられるか。若者がいま閉塞感を感じているのは『閉じ込められている』という身体実感があるからではないか。外側の情報だけで中身が判断されることに強い不快感を感じているのでは。」

    内田「読者の知性に対するリスペクトが根底にないと言葉は届かない。」

  •  常に饒舌言い切り型の内田樹に対し、「いや、それは」とたびたび異を唱える対談集は初めて。岡田斗司夫の論理の方が現実感が感じられる。
     「報酬のために働く」という考え方は転倒している。ぼくらは既に報酬を受け取っているのだから、それを他の人に贈与するために働くのであるという観点は、少なくともぼくらの親父らの世代までは一般的な考え方だった。
     能力と報酬は必ずしも一致しない。そこんところは運である。
    <blockquote><b>岡田</b> 学生にもさんざん言って初めて「報酬は運である」って少しわかってもらえる。運だからこそ、成功したら他人に回さないといけないわけですよね。でないと運であるものを自分ひとりが取ったらネコババです。で、ネコババはバチが当たりますってのが昔からの教えですからね。p.54</blockquote>
    <blockquote><b>内田</b> (今の世の中は誰かが整備してくれたものであり)道を気楽にすたすた歩けるのは、誰かがぼくらが起き出す前に、一生懸命「雪かき」仕事をしてくれた結果でしょう。そういうふうに、当たり前に見えることが実は無数の人間的努力の総和なんだということを思い知るって、ほんとうに大切なんですよ。 p.128</blockquote>
     「決断力なんていらない」という項で(p.196)内田はこう切って捨てる。
    <blockquote>・・・「究極の選択」状況に立ち至った人は、そこにたどり付く前に様々な分岐点でことごとく間違った選択をし続けてきた人なんだから。
     それまで無数のシグナルが「こっちに行かないほうがいいよ」というメッセージを送っていたのに、それを全部読み落とした人だけが究極の選択にたどり着く。「前門の虎、後門の狼」という前にも進めず、後ろにも下がれずという状況に自分自身を追い込んだのは、誰でもない本人なんだよ。</blockquote>
     これに岡田はこう応じる。
    <blockquote> ぼくも後援会で、「どうやれば決断力が身につきますか」って聞かれたときに、「決断を迫られてるのはもう負け戦だから」って答えています。</blockquote>
     意見のあった同士でワイワイやるのではなく、そこんとこはこう考えられませんかと食い下がる岡田が光っている好対談集。

  • 岡田さんの朝日新聞、土曜版の人生相談が余りに鋭く面白かったので、著書をいくつか読んでみた。
    サブカルチャーの人・・・という印象を持っていたのだけど意外にも、社会構造の分析や過去から未来社会の行方等も論じていて深く、なかなか面白かったのだけれど、腑に落ちない点もいくつかあった。
    この内田さんとの対談でも話題になっていたフレックスという会社組織のこと。普通、会社は社長が社員に給料を払うのだが、岡田さんの会社では社員が社長に給料(?)を払うことでなりたっているという。内田さんはそれを任侠世界の上納金と似ていると指摘していたが、私は宗教団体のお布施と似ていると思っていた。
    普通とは逆の発想で面白いようだが、結局のところ社員は違うところで生活費稼いでいる。
    それって会社と呼んでいいんだろうか?

    社会における様々な価値観の変化を論じていて面白かった。
    いかに生きるべきかを考える参考にもなる。
    パス回しが大事というのを覚えておこうと思う。
    内田さんの夫婦論は説得力ありました。

  • 今の経済の延長線上には幸せってこないな、と思っていた。その解決案の一つ。そ

  • 共同体の話は興味深かった。拡張型家族コミュニティは今の時代に必要になってくると思う。情けは人の為ならずって本当だよね。すかさずパス回しできる人になりたい。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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