作品紹介・あらすじ
アベノミクス本格始動で日本経済の黄金期がやってくる。急変する日本と世界の行方を完全解説。古屋圭司国土強靱化担当大臣のインタビュー掲載。
感想・レビュー・書評
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今の日本(2013.4)は、アベノミクス真っ盛りで、日本経済は順調に発展しているようですね。数年前から読むようになった、この本の著者である三橋氏の本は何冊か読んできて彼の論点には納得してきたつもりです。
この本において三橋氏は、現在の自民党の政策を支持していて、アベノミクスで超大国日本が復活すると解説しています。しかし、完全に支持しているのではなく、現在のアベノミクスで推し進められている懸念点(消費税増税の判断、TPPに代表される構造改革)も明確に指摘しています。
先日、インフレを誘導するアベノミクスでは、現在のアメリカのようになってしまい、庶民に良いことは無いとする増田氏の本を読んだばかりなので、果たして私にはどのような影響が及ぼされるのか、現時点では分からない状態です。
一方で、三橋氏は、アベノミクスはデフレ経済下における「普通のデフレ対策」であり(p3)、それには金融緩和政策と財政政策のミックスが必要である(p16)としています。
私が抱えているモヤモヤを払しょくさせるためにも、アベノミクスの理解から始めて、それらの及ぼす影響を自分なりに理解したいと思いました。
それらとは別に、私にとって印象に残ったポイントは、日本は2013.10に2014.4時点の消費増税の可否を判断する必要がある、まだ消費税増税は決定していない、2013.4-6月期の経済状況を見て判断すると法律(消費税率引き上げに当たっての措置、附則18条)に書かれている(p133、170)でした。
以下は気になったポイントです
・日本国民がデフレ対策を訴えた政党を大勝させたのは史上2度目、最初は1920年の大正バブル崩壊後、デフレ対策ができなかった立憲民政党(民政党)から政権交代(1931)した、立憲政友会を大勝させたもの(p16)
・1934年頃には高橋是清のデフレ対策(金本位制離脱による円安政策、日銀の国債買取(通貨発行)、公共事業及び軍事支出拡大)によりデフレ脱却ができた(p17)
・安倍内閣が打ち出すデフレ対策は、日本銀行の通貨発行、政府の国債発行と財政出動のパッケージという、高橋是清が成功させた政策そのもの、三本の矢は、これに成長戦略が加わる(p24、56)
・急激な円安に警戒を強めているのは、輸出依存度が高い、ドイツ(41%@2011)や中国(26)や韓国(50)である、アメリカは9.8%であり、日本(14%)よりも低い(p29)
・我が国のGDPデフレーターは、改正日銀法が施行された1998年以降、ひたすらマイナス、これは物価が下落を続けていることを意味する(p39)
・日本は経常収支が黒字なので、資本収支は赤字となる、例外は為替介入を実施した 03,04,11年である(p77)
・マーストリヒト条約(ユーロの基盤となる条約)には、加盟条件は細かく定めているが、離脱方法は記載されていない(p89)
・デフレによる失業率の上昇は、最終的には民主主義を破壊する、ナチスドイツが政権を取ったのも同様(p102)
・日本以外の国では、コアCPIとは、食料(酒類除く)及びエネルギーを除く総合指数であるが、日本ではこれを「コアコアCPI」と呼んで、生鮮食品を除く総合指数を定義している(p130)
・一般公共サービスや防衛、公共の秩序、安全などの実際に消費しているのは誰か、それは政府ではなく一般の国民である(p163)
・1994年以降の日本は、国民が投資を減らして預金を増やした、そこから政府が国債発行でおカネを借り入れて国民の消費における政府負担分を払い続けた(p165)
・ギリシアとスペインの製造業がドイツに全く歯が立たないのは、生産性の違いに加えて、ユーロにより、関税と為替レートという盾を失ったから、TPPに酷似しているのは、EUである(p186)
・東日本大震災のときには、自衛隊・警察が救援活動を始める前に、地元土建企業が先兵として被災地に入ったが、これを報道したマスコミはない(p207)
・2010年中部電力の四日市にある火力発電所にて、0.07秒間の瞬時電圧低下事故が発生した、これにより、東芝NAND型フラッシュメモリの生産ラインが停止して100億円の減収、コスモ石油四日市製油所は3時間にわたり停電、トヨタ車体いなべ工場塗装ロボットのデータの一部消失して1時間操業遅れ、これらを始めとして大口ユーザ146件(三菱化学、パナソニック、東ソー、本田技研等)に被害が及んだ(p212)
・脱原発をするには、1)天然ガスの輸入どうするか、2)代替エネルギーは?、3)現存する1.7万トンの使用済燃料をどうするか、を解決する必要がある(p230)
・使用済核燃料の処理をするには、原発を動かし続ける必要あり、再処理工場で処理することにより、プルトニウム混合酸化物と、高レベル放射性廃棄物に分離可能(p230)
・現在の運送業界は、9割が「10台以下」「11-20」「21-50台」であるが、その6割は赤字企業である(p246)
2013年4月29日作成
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「だから、ダメなんだ」と、投げやりになるのではなく、「ならば、どうすればいいのか」と考えることができる者こそが、真の意味における「日本国民」なのだ。
あとがきのこの文章こそが今僕のやらないといけないことなのかなと思います。
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アベノミクスの「3本の矢」政策(金融政策、財政政策、成長戦略)がどうして日本を立て直せるのか、分かりやすく説かれている。
レーガノミクス(新自由主義、市場原理主義、グローバリズム)はインフレ対策だ。
ギリシャやスペインなどはその弊害を受け、失業率上昇と所得の低下を引き起こしている。
ユーロ離脱とデフォルトが必要だ。
長いデフレで苦しむ日本にレーガノミクスは不要だ。
TPPや規制緩和などはデフレ脱却に反する。
自由化にはして良い領域とタイミングがある。
インフラを自由化すると国家が不安定になる危険がある。
産業的インフラ以外の産業のレイヤからは自由化しても良いが、これもデフレ期に行うべきではない。
まずは国内に需要を起こし、リショアリングなどで国内雇用を増やす必要がある。
これが財政出動が必要な理由である。
東北の復興や、過去のインフラ保守、安全保障などを進めるべきた。
反原発を唱える人が多い中で、著者は撤廃までの容認を論じており、その理由が興味深かった。
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アベノミクス
グローバリズム
インフレ
投資大国化
構造改革の正体
国土強靭化、レジリエンス
レジリエンスの推進によりいかに復活を遂げるか。
そろそろ本気で立て直しを図らねば。
三橋貴明の作品