いま中国で起きている大破局の真相 現地からの緊急警告

  • 徳間書店 (2013年10月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784198636890

作品紹介・あらすじ

2013年6月下旬に起きた銀行の取り付け騒ぎと株価の急落。これにより、なけなしの資産が消滅してしまった人民が大量に出ている。新たに開発された不動産はゴーストタウン化し、略奪や暴動も頻発、すでに中国経済は崩壊の一途をたどっている。そしてそれは、富豪たちの脱中国、環境汚染などを悪化させ、社会の混乱にまで大きな影を落とすようになっている。中国在住の著者が、中国でいま起きている大混乱の現状をレポートする。

感想・レビュー・書評

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  • 私が世界経済について興味を持ち始めた頃(1980)、当時の基準であるGNP(国民総生産)では、世界一がアメリカで二位はソビエトでした。それがベルリンの壁の崩壊等を経て、ソビエトを引き継いだロシアの経済規模は今では世界10位(購買力平価換算では6位)です。

    ソビエト連邦を構成した多くの共和国の独立や経済の混乱、ドル換算に使っていたルーブルの本当の価値による計算した結果等が、世界二位の経済規模から変化した原因と思います。1980年頃には「ソ連経済が崩壊する」という本があって、当時のお小遣いをやりくりして本を買って読んだのを記憶しています。

    さて、この本は現在世界経済規模2位である中国について書かれたものです。当時のソ連とは異なり、中国製品は日本を始めとして世界中で見ることができ、中国経済が拡大したことは私達の目の見える形で明らかです。

    しかし現在の中国は歴史的に見ても多くの共和国の集合体と見ることができますし、また2位というデータも中国が彼らの通貨である「元で」発表したものをドル換算しているという、以前のソ連が経済規模2位だった頃と似たような状況もあると考えています。

    そのように考えている私にとって、中国のことをよく知っていると思われるこの本の著者による本は興味を惹くものでした。少し残念なのは、最近では「中国の実力は本当は凄い!」という内容の本が私の目に飛び込んでこない事です。

    国全体ではこの本に書かれている様な問題を抱えているものの、絶対数としては多い現在の若者のパワーは少なくとも、現在の日本の若者と比較すると凄いと感じることもあります。いずれも真実だと思います。

    ソ連が消滅しても、ロシア連邦として存続している様に、中国はどの様な形になっても発展し続けるでしょう。ただそれが今と同じ形では続かない可能性があると感じます。この本を読んでそのような気持ちになりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・銀行では互いに短期的に資金を融通しあう仕組みがあるが、上海で適用される金利を、SHIBORを呼ぶ。これが30%にまでなったということは、各銀行の資金が不足して破綻リスクが高まったことを意味する(p15)

    ・理財商品には2種類あり、銀行が主催しているものと、他の金融機関が販売代理を行うもので、後者のものが「シャドーバンキング(影子銀行)」に関与している(p23)

    ・理財商品が上手く回るためには、地方政府のプロジェクによって造られた空港や高速道路、観光地、住宅などが順調に利益を生み出し、借金が償還されることが大事(p28)

    ・中国ほどお札を大量に印刷した国はない、2012時点では中国の通貨増加量は、世界通貨総量の約半分。改革開放から30年、アメリカが200年の間に発行したドル総額に相当する(p36)

    ・中国の地方プロジェクトは無駄が多く、収益性の薄い重複プロジェクトが繰り返される。それが可能になるのは、地方の最高指揮権は党書記にあり、その裁量ですべてが決まる(p43)

    ・1990年代から約2万人の役人が海外に逃亡、持ち出された資産総額は12兆円(p47)

    ・2013.9に中国不動産ビジネスのトップ企業である「万科集団」の社長が、上海での不動産を売却し始めた、皆も気を付けるように、というメッセージを出した(p48)

    ・ビジネス活動を行う3つの条件として、1)投資環境(税制度、ビジネス規模等)、2)社会秩序(労働力の質、公平公正な法律制度)、3)安定した政局(p52)

    ・2013.8にゴールドマンサックスは中国バブルが崩壊すると不良債権は300兆円とレポートし、彼らが保有する中国工商銀行のすべての株を売却して中国から撤退した(p56)

    ・李克強は、中国の経済景気動向は、3つの指標を見れば十分とした。電力使用量・鉄道貨物輸送量・銀行の融資額、これらの数字は嘘をつかないのでというのが理由。これをベースにすると、ここ数年の経済成長率は2.5%程度(p64)

    ・毛沢東時代の役人の登用基準は、党への忠誠度であったが、鄧小平時代になって「維隠:社会的安定の維持」と「地方GDP」に変わった。現在では、地方GDPが優先されている(p74)

    ・中国のGDPには水増しだけではなく、海外のホットマネー、各地の経済開発区の外資も計算にいれている。この部分の資産は中国のモノではない、また中国GDPの50-60%は外資企業が創出したもので、外資が撤退すれば壊滅的な打撃を受ける(p79)

    ・1994年中央政府は税収制度を変えた、それまでは収益の20.6%でよかったがそれ以降は50%を納める必要が生じて台所事情が苦しくなった(p84)

    ・地方政府の人事制度にも隙がある、定期的に受ける実績評価の時期と、債務の返済時期がずれているので、返済不能の恐れがあっても、当事者の役人は返済期が来る前に人事異動するので責任から逃れられる(p86)

    ・中国には22の税の種類があるが、全国人民代表大会で可決されたのは「企業所得税法等」の4つで、残りは国務院が勝手に交付した暫時条例(p93)

    ・中国業界には80分野あるが、外国資本算入が認められているのは62、民間資本は41分野のみにか認められていない(p94)

    ・中国国有企業は5万社あるが、利益を上げるのは中枢の10企業のみ(p95)

    ・漢の時代に画仙紙という紙を発明したが、用途は書と絵画のみであり、大量印刷に向いていなかった。実用化は宋の時代で400年遅れ。グーテンベルクの活版印刷が実用化されると中国の印刷技術は没落(p97)

    ・中国の生産効率は世界一低い、鉄鋼生産46%、石炭45%、セメント48%、石油・ガス10%を消費しているが、GDPは8%。重複プロジェクトを除くと5%程度(p101)

    ・三公消費(接待飲食、公用車、旅行)は年間9000億元(14.4兆円)程度とみられ、軍事予算の2倍、4兆元という説もあり(p110)

    ・中国の軍事技術は発達しているが民生技術は立ち遅れている。国を挙げて財力、人力を総動員しているから。しかし核心技術には外国技術が使われている(p115)

    ・中国では発明特許は18%程度、海外では86%、技術力の弱さがうかがわれる(p116)

    ・WHOによれば、疾病の80%の原因は水に求められる、中国では4-5億人が非衛生な水を飲んでいる(p121)

    ・中国は1993年まで石油輸出国、石炭は2009年に輸入国に転じた(p125)

    ・景気の指標は、生産・所得・支出の3つのデータで良い。会社が儲かっているか、給料が増えているか、個人がどれほど消費しているか(p126)

    ・消費市場が発達するには、都市化の普及・道路などのインフラ整備・ローンなどの金融制度完備・老後生活保障などの社会福祉の充実・貧富の格差縮小等が必要不可欠。個人消費がGDPの6割ある日本と、35%の中国の違い(p132)

    ・オルドスのようなゴーストタウンは69都市に及んでいる。一級都市にまで押し寄せている(p137)

    ・一人の二奶のために使う消費は一般国民の50人分、経済発達都市では二奶人口が5%にも達する、つまり現地消費の20%は彼女たちによるもの(p147)

    ・中国の化粧品市場は、アジアで2位、世界では8位の地位、成長率はGDP成長率以上(p150)

    ・中国から不法に流出した額は2012年には1兆ドル、GDPの8分の1にあたる(p160)

    ・万里の長城は明の時代になって、2000年かかって築いたが異民族による中華支配を防げなかった(p169)

    ・秦の始皇帝は中国の国土面積がふくらんだにも拘わらず、徴兵制度を引き継いで兵役期間3日に対して片道3か月の距離を行かせた。陳勝・呉広の乱が勃発して15年しか秦は続かなかった(p170)

    ・中国では「3」が縁起の良い数字とされている、生の発音に似ているから(p180)

    ・中国人は、国際接軌(世界常識は守るもの、国際社会の一員になる努力している)と、中国国情(中国の現状と事情は分析すべき)の2つを時と場合によって使い分ける(p200)

    ・一昔前まで中国人同士が話し合うときも、互いに聞き取れるのは30%程度、後は勝手な推測に頼って相手の話を理解していた(p214)

    ・中国人同士が話すときには、まず右脳が反応し処理するという結果が得られた。その原因は声調があるため、相手の中国語が音楽のように聞こえるから。(p217)

    ・中国では、都会と農村の間に、都会でも農村でもない行政地域が存在して、それを「城鎮」と呼ぶ。住民人口が0.2-10万人以下で半分以上の住民が非農業従事者である生活拠点、とされている。(p223)

    ・中国経済の先行指標とされる、建設機械、物流などのインフラ整備関連の産業は被害が大きい。日立建機は2013.6から現地合弁会社に月4-5日の生産ゼロ日を設置した、中大型油圧シャベルの需要下落によりコスト削減のため(p229)

    ・面子と里子(リツ)は、セットになる中国語である(p244)

    2015年2月21日作成

  • 役人の腐敗,不正会計,中国人の困ったメンタリティ等々,
    既によく言われていることばかりではあったが,
    「悲劇を生む中国人の思考回路」(7章)は,面白かった。

    とりあえず,項目だけ挙げておく。
    詳しいことは本書にお任せします。
    ①ある事例を引き合いに出して,そこから極端な結論を引き出す
    ②ある事例を無理やり類似した事例として引き合いに出して,
      別の結論を導く
    ③事実と自分の見解がいつも一致していると勘違いする
    ④法律で禁止されていなければなにをやってもいいと思っている
    ⑤黒でなければ白,友でなければ敵という,二項対立思考に陥る
    ⑥すぐに感情的になり,言葉遣いが荒い
    ⑦「人民」や「みんな」という言葉を乱用し,自分が全体の代表だと
      言い張る
    ⑧事実関係よりも,相手の動機や意図をまず勘ぐる
    ⑨比較できない事柄を並べて,両者は同じ性質のものであることを
      証明しようとする
    ⑩循環論法を多用する
    ⑪自分に非があっても,相手の非を探しだして,おあいこだと強弁する
    ⑫文化相対論を持ち出す
    ⑬守るべき原則がなく,ご都合主義によって態度が変わる

    確かに,テレビでよく見掛ける中国人の論客は,
    上記のような振る舞いを見せていたなぁ…。

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著者プロフィール

1955年中国上海生まれ、上海外国語大学日本語科卒業。1985年に来日し、慶應義塾大学および東京外国語大学で学んだ後、日本企業で10年間勤務する。現在、中国と日本の間で出版や映像プロデューサーとして幅広く活動中。著書に『中国五千年性の文化史』(徳間文庫)、『ここがダメだよ中国人!』『中国大動乱の結末』(徳間書店)、『中国セックス文化大革命』(新潮社)、『チャイニーズ・レポート』(宝島社)など多数。

「2019年 『中国でいま何が起きているのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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