波形の声 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.20
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198637521

感想・レビュー・書評

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  • 2014/8/6 読了

  • 読みやすい短編ミステリ。
    これで3作目だが、道尾秀介のような独特の世界観を感じる。

  • 騙される喜び
    七編の物語。

    表題作は、タイトルそのものがトリックとなっている。
    前に歩く蟹の謎も後半で解けるが、それが重要な鍵の一つでもある。
    昔からある簡単なトリックよ、と主人公は言うが、時代の変化とともにその簡単さが盲点となる。
    そこに着目した面白い物語。

    『黒白の暦』は、まさに好敵手というべき女性二人の物語。
    自分の息子とライバルの娘の関係、二億の商談の失敗、一つ一つをとってみれば確かにかちまけできめられることかもしれない。
    あいつに今日は勝った、今日も勝った、今日は負けた、今日も負けた.....
    しかし、そんなに人生は一度の勝負で勝った負けたというものではない。
    総合的に見てどうか。
    最後は静かに感動し、頭をたれる気持ちになる。

    『準備室』は、同期、友人との間にできたちょっとした格差の物語。
    そして、「嫌な上司」の物語。
    人間関係は対等な所から始まっていたはずだった。
    しかし、それがある日、差ができた。
    その差なんて気にしないよ、そう思っていたはずだしそうしてきたはずだったのに、敏感に子供はそれを読み取った。
    さて、一方の嫌な上司はどうであったか?
    視点の変化で見えてくる彼の人となりが温かい。

    人間関係に主眼をおいたミステリー。
    謎解きの楽しさとともに人間の持つ様々な側面が見えてくるのが興味深い。
    そして背景におかれた小物たちにちりばめられたヒント。
    あそこに繋がったのはこういうわけかと、楽しく騙される喜びがある。

  • "傍聞き""教場"に続く三冊目…著者独特の斬れ味を伴うミステリー短編。う~ん、相撲の技で言えば土俵際の見事なうっちゃりの連続、、って感じ!。導入の"波形の声"がやはり一番の返し技かな♪。

  • 【収録作品】波形の声/宿敵/わけありの街/暗闇の蚊/黒白の暦/準備室/ハガニアの霧

  • なるほどね、と落としてくれるミステリ短編集。それなりの意外感を味あわせてくれる。
    タイトルをどのように読むのか分からず、また、同名の短編のタイトルにもルビがなかったが、文中の波形にはルビがあり、それも謎解きになっているように感じられ、ニクい演出を感じた。
    しかし、「宿敵」など、周囲の評価を気にしすぎる個性は余り好みではない。
    14-94

  • 長岡弘樹の今年の2月に出た新作。7編の短編集。非常勤教師の話や最初の短編集を彷彿とさせるような老人の話、獣医さんなどいろんなタイプの話があって、改めて作家さんで大変だなと思う。心温まるエピソードもあるし、全部がどんでん返し的な作りで相変わらず面白い。でも一つ、『準備室』だけ納得いかない。息子がいじめで自殺し、部下の娘たちの上下関係も敏感に察知できる人が、どうして職場ではそんなパワハラするのか。おかしくないか、人間として。社会的に立派な人がDVしたり、虐待したりするようなものなのか。何か嫌な話だった。

    2018.6.8
    再読。しばらく長岡弘樹が続きます。再読だけあって大体うっすら覚えてた。↑に書いたとおり『準備室』は納得いかない。こんなパワハラのように罵倒する必要があるのか。それだけ分かってる人ならば。表題作はいい話だ。このいじめた子の親も物分かりがいいよね。万引きした若い女先生は最低。こんな人に教えられる生徒もかわいそうだ。

  • +++
    人間の悪意をとことん見据えたまなざし、心温まるどんでん返し、そして切なさはビターに!奥の深い長岡ミステリー最新作7篇!
    +++
    表題作のほか、「宿敵」 「わけありの街」 「暗闇の蚊(モスキート)」 「黒白(こくびゃく)の暦」 「準備室」 「ハガニアの霧」
    +++

    胸の中に渦巻くどす黒いものが、ふと日常ににじみ出てくる瞬間を見事にとらえている。大人でも子どもでも、親子でも盟友でも、そんな瞬間はあるものである。だが、それが人間らしさでもあると、本作は思わせてくれる。どんでん返しが心憎い一冊である。

  • 前作のときも思ったけど、長岡氏の作品て、人の悪意が痛い…。人間て、なんて身勝手で傲慢な生き物なのか。そういうヒトの一面を切り取って突きつけてくる作品たちは、でも読みはじめたら途中でやめられない。

    表題作の「波形の声」。読み終えてタイトルの意味がわかる。この作品が一番心に残った。大人の悪意と子供の無垢さの対比が、互いの印象をさらに深くする。

    次作、初の長編リクエスト中。どんのんかな〜( ̄▽ ̄)。

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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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