願いながら、祈りながら (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198637682

作品紹介・あらすじ

北の大地の片隅に、奇跡のようにぽつんと中学校の分校が残っていた。1年生4人と3年生1人。それほどの少人数でも、自称霊感少女もいれば、嘘つきといわれる少年もいる。そこに赴任してきたのは、やる気ゼロの新米教師。やがて彼が知ることになる少年の嘘の哀しく切ない理由とは? 迷い、うつむき、つまずきながら、進みつづける感動の青春前期物語。

感想・レビュー・書評

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  • たまにこんな本を読むと心が洗われてピュアな自分に戻った気分。
    ピュアな自分なんて元からないじゃないか、とつっこみたくもあるが。
    乾ルカさんの作品を読むのはこれが初めて。
    いいですね~、爽やかで。登場人物がみんないい人。
    中学校が舞台だもん、いいよねこれで。
    妙に擦れてる中学生よりよっぽどいい。

    北海道のとある村の分校。
    ここには3年生1人と1年生4人のたった5人の生徒しかいない。
    そして来年度には本校に統合されることが決まっている。
    そこに赴任してきた一人の新米教師。
    恋人に振られ早くも辞めることばかりを考えている。
    そんなやる気のない彼が村の医師の言葉でどう変わって行くのか。
    そして生徒5人それぞれの中学生らしい悩みが綴られる。
    分校ならではの問題や分校ならではの絆も。

    これだけだと単なる青春小説のようだが、タイトルには切実な思いが込められている。
    私も最後には思わず祈るような気持ちになった。
    その後が果たしてどうなったかまでは描かれていない。
    それでも「いつか」を目指し未来に向かう彼らの姿は心に響いた。

    もうちょっと教師の成長部分を掘り下げて描くとなおよかった。
    それだけが残念。

  • 生徒が5人しかいない学校。大変だと感じました。小学生でも読みやすい話でした。

  • よくある分校の、ほのぼの物語かと思いきや、いきなり赴任してきた教師のやる気のなさに驚かされる。その教師の成長物語かと思ったのだが、章が変わると主人公が代わって、分校の生徒一人ひとりの物語になる。
    分校の生徒である、ということが生み出すそれぞれのドラマ。都会からやってきてそこに住むということの意味。たわいのない嘘をつき続ける少年の鮮やかな覚醒。
    ラストに示される、切実で必死な願いが胸に迫って、思わず涙がにじんだ。
    「いつか」と言える幸せ。「普通に生きていること」の幸せを、改めて考えさせてくれる作品だった。

  • 北海道の中学校分校の一年を通して、5人の全校生徒と赴任してきた1人の新任教師はそれぞれの希望や未来を徐々に見つけていく。
    現状への不満や焦りで押しつぶされそうになりながらも、ふと何かに気付かされることで、それぞれのペースで成長していく心、今といつかの尊さなど、読んでいて自分の心も澄んでいくような気がした。

  • たった5人しかいない北国にある中学の分校。そこに赴任したやる気のない先生の話から始まり、それぞれの生徒の目線へと続く。本校の修学旅行に1人参加する弥生は、その年代にありがちな真っ直ぐな気持ちに傷付く。自分が特別になりたいみなみの暴走や勉強する環境の悪さに焦る学、いつも嘘をつく亮介、ある意味一番真っ直ぐな憲太。それぞれがいろんな想いを抱え、最後の分校での日常を過ごす。青春の切ない感じを受けた。

  • 生徒がたった5人しかいない、中学校の分校を舞台にした青春連作短編集。

    やる気のない新任教師。嘘ばかりつく男子生徒。狭い世界から抜け出したい女子生徒。
    それぞれが悩みながら成長していく様子を、語り手を代えていきながらつむいでいく。

    なんの悪意も躊躇いもなく、平気で嘘をつく少年。
    彼のその真意がわかった時、胸を突かれた。
    決して周囲にかまって欲しいが為に嘘を口にするのではなく。ましてや自分の利益やプライドの為でもない。
    ただ大切な人達の笑顔が曇る事のないように、その笑顔を守りたいが為につく嘘は、あまりにも切ない。

    「いつか」またこの5人が、出会える時がくればいい。
    その時は輝くような未来が一緒であって欲しいと、そう思う。

    「一年生の教室におかれた五つの机って、カシオペア座みたいだと思いませんか?
    進むべき道を知る助けとなる星々だ。」

  • 北海道の農村にある中学校の、生徒がたった5人の分校が舞台の話。

    特に弥生さんや学君は、好きで田舎に住んでいるわけじゃないのに…!と自分の置かれた環境下で必死に足掻く様子が描写されていますが、弥生さんは(いい意味での)開き直り精神を発揮し希望の進路を勝ち取り、学君は親友 憲太君の核心を突いた言葉で自分を取り戻します。

    生徒たちにとっても、また、失意の中、赴任してきた新人教師の林先生にとっても、分校で過ごす最後の一年は大きなターニングポイントであっただろうと見てとれました。

  • 記録

  • やや児童書っぽい印象がするが。
    分校で、”てきとうに”付き合うには、距離が近すぎる中学生たちの物語。

  • 寒い田舎の分校を舞台に、すぐにでも辞めたい新任男性教諭と中学一年生四人、三年生一人がそれぞれ語る物語に、透明でしんとした魅力があった。神童の学と素直な親友の憲太、嘘つきな亮介の理由等。本校の生徒に一人で混ざって修学旅行に行くけれど頑なな弥生の話、特別になりたくて霊能力者と思い込むみなみの話が印象的。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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