ハルカの空: 南アルプス山岳救助隊K-9 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.73
  • (5)
  • (15)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 81
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198637866

作品紹介・あらすじ

軽装で山の中を駆け巡るトレイルラン。自信に満ち溢れた走りをする大学生。小さな気の迷いが大きな事故に――「ランナーズハイ」。山小屋でバイトをはじめた女子大生は、マナー違反の登山客に愕然。しかしそこは“命”を預かる場所でもあった――「ハルカの空」。登山で妻を亡くし、すっかり抜け殻となってしまった男。かつて山岳救助隊に救われた過去が――「孤高の氷壁」。汗光り涙伝う、犬とともにある本格山岳小説全5篇。特別書下し短篇も収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ハルカの空 ― 南アルプス山岳救助隊K-9シリーズの2作目
    2014.04発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    沈黙の山、ランナーズハイ、サードマン、ハルカの空、NO WAY OUTの5話。

    南アルプス北岳・白根御池小屋に隣接する警備派出所夏山常駐隊の山岳救助隊員・星野夏美巡査とボーダーコリーのメイの活躍を描いた物語です。

    北岳の厳しさと美しさが伝わってくる物語です。
    その北岳で山岳救助犬メイのハンドラー夏美が、困難のなか救助を行う姿を見ていますと、感動と、涙が出て来ます。

    【沈黙の山】
    体調の悪い大学生・水島日向子が、南アルプスの「八本歯のコル」の近くの尾根筋で追い抜いてきた三上武明が滑落したが、日向子はそのまま仲間の大学生2人と一緒に北岳肩の小屋へ向かう。
    その頃、星野巡査は、遭難した三上武明を探しに肩の小屋へ来たとき小屋で動けなくなった日向子を見て、日向子の体が赤く染まっている幻色現象を見る。星野は、小さい頃からそなわっていた特殊な幻色現象。他人の感情や事象に色が見えてしまう。共感覚の一種だといわれたことがある。星野は、日向子に何かあると……。

    【ランナーズハイ】
    大学生の奥寺謙也は、仲間3人と南アルプスをトレイルランで走って下山していた。
    しかし、奥寺は、仲間を置き去りに一人走っている。登って来る登山者とぶつかりそうになりながら一人走って下山していた。走っている時に、浮石を踏み崖下に滑落する。奥寺は、競技を想定した装備のため荷物を軽くし過ぎて防寒具も、食料も無いに等しい、滑落現場で自分を見つめなおした奥寺は、何のために山を走っていたのか……。そして、全てからただ逃げるために走っていたのでと気が付くが……。

    【サードマン】
    山岳救助隊員・関真輝雄巡査は、救助者を背に担ぎ雪崩に遭遇し、吹雪の中を道なき道を下山している。その時に青いチロリアンハットを被った亡き父が前を行くのを見る、亡き父に導かれて……野呂川広河原インフォメーションセンターのロッジ風の建物が見えてくる。
    サードマン現象と呼ばれる現象がごくまれに、幻のようにその姿を見せることがあるといいます。真輝雄は、方向も判らぬ吹雪のなか亡き父が導いてくれたのである(涙)

    【ハルカの空】
    夏季アルバイトの遥香(はるか)ちゃんをとおして北岳の美しさ厳しさ、そして白根御池小屋で働く人たちの営みを語った物語です。
    遥香ちゃんの大好きな、山岳救助隊の星野さんと北岳に登った思いなど……を胸に来年も御池小屋でアルバイトに来るのを楽しみに、今シーズンのバイトを終えようとしていた遥香ちゃんは……。

    【NO WAY OUT】
    星野夏美は、山のオフシーズンは、山梨県警南アルプス署地域課の巡査として相棒の堂島警部補と共に町のパトロールを行っています。
    公園に人が倒れているとの通報を受けて駆け付けた夏美たちは、そこで山で救助をした中込に出合います。中込は、遭難で妻を失い自らも凍傷で両手の小指と中指を失いと体に障害が残りました。その中込が、妻を失った北岳の同じ場所で亡くなったと知らせを受けたました。
    同僚の堂島も北岳で息子を亡くしています。その知らせを受けた堂島が、息子を亡くした北岳へ登ったと感じた星野は、メイと一緒に北岳へ向かいますが、吹雪のなか身動きが取れなくなります。疲労困憊した星野は、北岳山頂で堂島を発見するが……。

    【読後】
    救助犬メイが、なんともたくましく、そして、可愛くてしかたが有りません。
    救助隊員としての夏美の成長が感じられます。
    北岳は、いいです。
    字が小さすぎて、毎日少しずつ読んだため1週間かかりましたが、読んで良かったです。
    2020.11.29読了
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    【令和2年(2020年)11月に読んだ本】

    11月に読んだ本は、31冊です。
    「奇跡の絶景 心を整える100の言葉」と「ウユニ塩湖 心を整える100の言葉」は、美しい写真と心に響く言葉が書かれています。
    「1000の風・1000のチェロ」は、大好きないせさんの作品です。
    いせさんが阪神淡路大震災復興支援チャリティー「1000人のチェロ・コンサート」に参加された体験をもとに描かれた絵本です。心の中に留めて置かなければと、あらためて思います。

    今月のベスト本は、下記の10冊です。
    ★★★★★5つは、下記の3冊です。
    奇跡の絶景 心を整える100の言葉 ――――――編集者/TABIPPO
    ウユニ塩湖 心を整える100の言葉 ―――――編集者/TABIPPO
    1000の風・1000のチェロ  ――――――――著者/いせひでこ
    ★★★★☆4つは、下記の7冊です。
    真田太平記(六)家康東下   ―――――――著者/池波正太郎
    まつり  ―――――――――――――――――著者/いせひでこ
    へそ天にゃんこ  ―――――――――――――著者/すむぞう
    お宿如月庵へようこそ: 湯島天神坂――――――著者/中島久枝
    空を見上げて大切なことに気づく100の言葉――著者/宮永 千恵
    さくらいろ―――――――――――――――――著者/森田敏隆
    ハルカの空: 南アルプス山岳救助隊K-9 ―――-著者/樋口明雄

    ※令和2年(2020年)1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト本をのせています。

  • 山岳救助隊でありながら警察官でもある隊員達と、その相棒の災害救助犬の活躍を描いた 「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズ二作目にあたる連作集です。

    山に限らず、自然の中に身を置くと、生命を脅かすような大事故に見舞われる事もある。 命懸けで救助にあたる彼等には頭が下がります。
    人間ドラマあり、不思議な現象もあり、救助の話だけではなく色々と楽しめる作品です。山麓で暮らす著者だからこそ書ける自然の厳しさ美しさを堪能しました。

  • 本のタイトル、「ハルカの空」を含む全5編の短編物でした。全編を通して、前作出てきた登場人物が出て来ます。前作では語られなかった世界観とかが見えて、楽しめました。北岳に行って、その自然を自分の肌で感じてみたくなりました。現実的には体力がないので、無理なのですが・・・(^_^;)

  • 登山初心者なんですが、冬山なんて行ったら必ず死ぬのではくらいのレベルで恐れています。


    夏実が組んでる警官を探して登って行く話をどんどん読み進めて行くと、
    山はそこにあるだけ。登る自分を映すのみ。
    というのを、ほんのほんの芥子粒くらい少しだけ
    感じることができた。

  • 南アルプス山岳救助隊の隊員と犬たちの奮闘を描いた山岳小説。5つのエピソードから構成されている。隊員たちの個性的なキャラクターもしっかりと描かれており、小説としての面白さを兼ね備えた名作のひとつだと思う。

  • 南アルプス山岳救助隊K-9シリーズ。「天空の犬」に続いて2作目。

    前作のヒロインで、まだ新人だった夏実が今作では一人前の救助隊メンバーとして成長している。今作は短編集となっており、夏実だけでなく、他のメンバーたち視点のお話もあって、いろいろな視点からの山岳救助の話が読める。また、前作のようなハードボイルド感満載の事件モノはなく、純粋に山岳救助小説というものを楽しめた。決して派手な展開ではないけれど、こういうのもいい。この作家さんのハードボイルドものも好きだけれど、このシリーズに関しては、今作の方向性で書かれることを期待したい。

  • 山岳救助犬は公的救助機関にはまだ存在していないが、山岳救助としての話にぐっと引き込まれる良作だ。

  • この話が読みたかった。
    前作「南アルプス山岳救助隊K-9 天空の犬」の続編。
    前作で、南アルプスの山岳救助隊に配属された夏実とメイは、すでに経験を積んだ山岳救助隊員となっている。
    だから、物語は夏実とメイだけにはフォーカスしていない。
    山岳救助隊の一員として扱われているので、時に物語りの中心は、ほかの隊員であったり、山で働く関係者であったり。
    ただ、その景色のなかに、夏美とメイの気配はいつも感じられている。
    「天空の犬」で育った夏実とメイ、その続きとしてはこんな話が読みたかったんだ。

  • シリーズ(?)2作目。「天空の犬」の続編。山岳救助隊の救助を描いた5つの短編集。
    前作で主人公だった夏実だけでなく、他の人物視点でのお話もあり、良かった。でも、夏実&メイのコンビが一番好き。
    前作はサスペンス色だったけれども、今回はヒューマンタッチで人とのつながりを感じられる作品だった。
    まだまだ彼女たちの色々な話を読みたいけど、続くのかな?

  • シリーズ前作は確か犬達が大活躍の大捕り物だったと思うが、今回はいろいろな登山者を救助する『岳』のような短篇集だった。
    この方が明らかに身近な登山というカンジで受け入れやすかった
    北岳近辺の実際する山や尾根、谷、小屋がそのまま出てくるのも、わかりやすくて入りやすい原因だろう
    次回は是非、静奈さんの空手を炸裂させて欲しい

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口明雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×