真夜中の電話 (児童書)

  • 徳間書店
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本棚登録 : 99
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198638368

作品紹介・あらすじ

年に一度、真夜中に電話をしてくるのは、もう何年も前に死んだはずの女だった…(「真夜中の電話」)。恋人とともに突然の吹雪に巻きこまれた少年は…?(「吹雪の夜」)。英国の児童文学を代表する作家であり、宮崎駿氏が「ぼくはウェストールが好きだ」と語る作家の、珠玉の短編9編を集めた短編集。11月刊「(仮)ウェストール短編集 赤い館の秘密」と併せ、ウェストールの短編のベスト選集となります。徳間書店の子どもの本・二十周年記念作品。

感想・レビュー・書評

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  • 重厚感のある長編作品でおなじみのウェストールだが、「短編の名手」としても知られていたというのも頷ける本作品、どの短編も読み応えありでした。
    徳間書店児童書20周年にあたり、80を超える彼の短編から18作品をピックアップし、2冊の短編集として出版されるが、原田勝氏訳の本作は全体的にワイルドで骨太で男臭い面が際立っている。背筋がぞくっとする幽霊もの、吹雪のシーンがリアルなサバイバルもの(2作品あり。但し展開は異なるので、その違いを読み比べるのが面白い)、ユーモアと切なさが混在する男の友情もの、などなど。
    どの作品も構成が素晴らしく、それぞれ魅力たっぷりなのだが、あえてお気に入りを挙げるなら「最後の遠乗り」かな。バイクでやんちゃする男子の無茶っぷりが鮮やかに描かれているが、バイク事故で息子を失ったウェストール、自身もバイク乗りらしかった原田氏の思い入れの深さも窺えて、ちょっと切なくなった。
    ウェストール作品を読むたびいつもいつも思うけど、是非大人にも読んでほしい、特に男性には。彼のファンだという宮崎駿氏が時々表紙絵や帯文句を手掛けるようになってから、児童文学の枠を超えてファンの裾野が広がったかなとは思うのだが、もっと彼の作品のよさを知ってもらいたいのだ。
    「うわべをとりつくろわず、現実から目を背けない強い意志を感じさせるところ」がウェストール作品の魅力だと原田氏は言う。私も心からそう思う。

  • ミステリアスな、でもなんか優しさのある作品だわー

  • イギリスの児童文学作家ロバート・ウェストールの短編集。
    どれも死や戦争の匂いに満ちていて、じっとりとした雰囲気のある短編ばかり。

    以下、各話ごと。

    「浜辺にて」
    ひねくれ者の少年が家族へ連れていかれた休暇旅行の海岸で
    見知らぬ美少女と出会うも、何故か彼女は自分の名前を知っており、という話。
    まあ、予想通りの展開だけど、少女と少年のやり取りがなんともからっとしてて面白い。

    「吹雪の夜」
    無神論者の少年と牧師の娘が山中で突然の吹雪に巻き込まれる、という話。
    甘酸っぱい恋の物語から突如一転して、地獄のようなサバイバル物に。
    『男は臆病だからこそ命を危険にさらすことができるのだ』はけだし名言。
    壮絶なサバイバルの結末は思わずニヤニヤするようなハッピーエンドなのがいい。

    「ビルが見たもの」
    盲目のビルが犯罪の”目撃者”になる話。オチはどうということはないけど、盲目であるがゆえの無力感や苛立ちの描写が丁寧。

    「墓守の夜」
    墓守のセムは夜な夜なやってくる幽霊たちの話し相手になってやっている。しかし、その夜は、どうやら普通の幽霊とは違うものが来たらしく、という話。
    幽霊たちの愚痴や悩みに根気強く付き合うセムの様子はなんとなく可笑しみがある。

    「屋根裏の音」
    戦時中、天井から不気味な音がすることに気づいたマギーは屋根裏部屋で軍隊に行ったはずの父を見つけてしまう、という話。
    マギーが父親にぶつけた言葉が何とも言えず、後味が苦い。

    「最後の遠乗り」
    あるバイク乗りが仲間の死をきっかけに、バイクに乗ることを諦める話。
    死んだ仲間の存在を身近に感じながらも、
    やがてバイクを降りた自分が仲間から遠ざかって、
    平凡な人生へと向かっていくであろうことに葛藤する様子が何ともやりきれない。

    「真夜中の電話」
    クリスマスイブの夜、自殺相談ダイヤルの当番をしていた夫婦の元に
    錯乱した女性から「夫に殺される」との電話がかかってくる、という話。

    「羊飼いの部屋」
    極寒の吹雪の夜に役立たずで嫌味な友人と二人きりで山小屋で過ごすはめになる話。
    『吹雪の夜』と真逆のシチュエーションで、互いに憎悪を募らせていく様子がリアル。
    キャンプに来た理由を問われた際の一言が、友人を単なる嫌なやつで終わらせず
    何とも苦い後味にしていて上手い。

    「女たちの時間」
    戦時中、村に残った数少ない男性だった主人公が、
    未亡人となった幼馴染との交流や祝勝会の一夜について回想する話。

  • 描写が多くて読むのは大変だったけど、全体としては素晴らしかった。レイ・ブラッドベリを思い出した。怪奇もぞくぞくしたし、10代後半の男の子のみずみずしいというか、性の萌の頃の感情もよく伝わってきた。

  • 珠玉の短編集。
    ホラーあり、違う意味で怖い人間の残酷さを描き出すものあり、若者の美しい時間を切り取ったものあり、で一気に引き込まれてしまう。

    表題作も良かったけれど、”屋根裏の音”がすごく心に残った。戦争が子供を歪めて、その一番残酷なところが、父母、そして子供自身を切りつけた。イギリスは戦勝国だけれど、それでも。

    死者と交感する話が幾つかある。作者は息子さんを18歳でバイク事故で亡くしているそうで、あとがきでそれを知ってから読み返すと切ない。

  • ウェストールの魅力がいっぱいつまった短編集。ぼくはこの中から三つ選んで脚色しました。

  • 『“機関銃要塞”の少年たち』(評論社)や『かかし』(徳間書店)でカーネギー賞を受賞した英国を代表する児童文学作家の短編集で、『ウェストール短編集 遠い日の呼び声』と2冊、徳間書店子どもの本創刊20周年記念として宮崎駿さんの装丁で出版されました。おふたりの翻訳者が編集者とともに80編を超える全短編をすべて読んで選び抜いた18編が、それぞれ9編ずつ収められています。訳者の原田氏が「通りいっぺんの描き方ではなく、わたしたちが気づいていなかった、あるいは気づいていても言葉にできなかった感情や心理のあやまでが、あざやかに描かれているからではないでしょうか。さらに、それを支えるリアリズムというか、うわべをとりつくろわず、現実から目をそむけない強い意志を感じさせるところが魅力だと思います。」と、あとがきに書いているとおり、人間存在の暗部も描き出す文体に思わず引き込まれます。

  • 若者、特に男の子の思春期特有の状態が、いつもとても上手く描かれていて感心する。たぶん、時代や国が違っても共通のものなんだろうなあ。思春期男子を息子に持つ母として、忘れないでおきたいと思うことがいろいろ書いてあります。

  • (15-14) 「遠い日の呼び声」が良かったのでこっちも読んだ。うーん、って感じ。それぞれの短編で、主要登場人物のほとんどが私が好感が持てない人だったから。私は中途半端にオバカな男の子が出る話が好きじゃないんだわ。女の子ならいいかというと「屋根裏の音」ではぞっとしちゃった。だからこの本の中で良かったな!と思った話は「墓守の夜」と表題作「真夜中の電話」。どっちも大人が主人公。特に真夜中の方は、他の人の回想の中でしか出てこないハリーに会いたいと思った。

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著者プロフィール

1929~1993.英国を代表する児童文学作家の一人。「かかし」(徳間書店)などでカーネギー賞を2回、「海辺の王国」(徳間書店)でカーネギー賞を受賞。

「2014年 『遠い日の呼び声 ウェストール短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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