- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198639464
作品紹介・あらすじ
世界各地でさまざまな対立や紛争が起きているが、その背景には、グローバル化や行きすぎた自由主義による格差拡大と社会の分断にある。超巨大格差はいかに生まれ、今後、どのような深刻な事態を引き起こすのか。TPPや規制緩和に潜む危険性とは? そして欧米、中国、日本など世界経済はどこへ向かうのか? ノーベル経済賞学者が、トマ・ピケティの論などを引き合いに出しながら、世界の変化と、その解決策を提示する。
感想・レビュー・書評
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本書の大部分は「不平等の経済学」と呼ぶべき内容で占められている。 p.20
図書館で借りた。
スティグリッツは優しい。
彼は宇沢弘文がシカゴ大学で教えてたときの、数理経済学セミナーの教え子なんだって。
なるほど、って思った。
彼の育った町のことや、家庭のことが、書いてあった。
彼が子供の頃、アメリカンドリームはすでに幻だったと書いてある。
マリーアントワネットとギロチン。
「ギロチンを忘れるな」
1パーセントの人々のあいだでも、不平等に対する懸念は切迫してきていた。
p12
レーガン大統領からアメリカの不平等は著しく拡大しはじめた。
シカゴ大学のロバートルーカスは強調した。
「健全な経済学に危機をもたらす風潮のうち、最も人を惑わせ.......最も有害なのは、分配の問題に焦点をしぼることである」
ルーカスの主張は、保守派の経済学者の大多数と同じだった。
p16
金融セクターはアメリカ経済の過ちを象徴している。
金融セクターが独力でうまく機能することはない。
アメリカと世界が2008年に直面したのは、人為的な厄災だった。
p.36
攻撃型の金融政策、いわゆる量的緩和の主眼は、中小企業を回復させることではなく、株価を回復させることのほうに置かれていた。
結果として、平均的なアメリカ人に大きな恩恵はもたらされず、雇用が創出される効果も薄くなった。他方、富裕層の資産を回復させる効果は絶大.........
p.40
過去30年間にわたって、市場経済は100回以上の危機に直面してきた。
市場経済を機能させるうえで政府の規制と監督がきわめて重要になる。
p.94
オーストラリアでは、選挙参加は義務であり、投票ブースに姿を現さなかった者には罰金が課せられる。
p.104
クズネッツは経済成長の初期では不平等が拡大するものの、豊かさに比例して社会の平等性が高まると示唆した。
1980年代以降の実体験からすると、クズネッツの説は正しくない。
対照的にピケティがたどりついたのは、資本主義は高い度合いの不平等を特徴とする、というごく自然の結論だった。
資本家は利益の大部分を再投資するため、最上層の富は金利と並行して増えていく。もしも金利が経済成長率を上回っていれば、国民所得における彼らの資本の占有率は、永遠に上昇しつづけるわけだ。
p.115
ピケティは収穫逓減の法則を、静かに破棄した。
経験主義者であるピケティは、資本利益率が減少していない事実を確認し、将来的に減少すると考える理由は存在しないと結論づけたのだった。
p.116
じゃぶじゃぶの資金は信用の洪水をもたらした。
たとえば、FRBは量的緩和政策でバランスシートを3倍にふくらませた。短期間に約2兆ドルを注ぎ込み、大量の中長期債権を買い入れたのである。
信用の拡大は富の増加として表出するが、現実を見誤ってはならない。結果としてアメリカはさらなる豊かさを手に入れていない。資産の量は同じなのだ。
p.118
法人税が安すぎる
アップルやGoogleやゼネラルエレクトリックは創意工夫のかなりの部分を税金逃れの努力に振り向けている。
p.152
ええええええ!
1963年8月28日
ワシントンのナショナルモールで
キング牧師が記念すべき
「わたしには夢がある」
の演説を行ったあの場に、なんとスティグリッツはいた、そうだ。ビックリ。
単なる偶然ではなくて、彼はクラスメートとともに人種平等のための闘いにのめり込んでいた、とのこと。
ピケティはわたしの青春時代を、資本主義の黄金時代として描き出した。
しかし、わたしの記憶は違っていた。生まれ育った薄汚れた工業都市は、はなはだしい差別と、不平等と、労働争議と、繰り返される失業を特徴としており、当時が資本主義の黄金時代とはとても思えなかった。
p.179
大投資家のウォーレンバフェットが不公平の実例として自ら暴露したとおり、彼が支払う税率は秘書より低かったのである。しかも、課税対象となる彼の所得は、実現利益に限定されていた。
............
超富裕層はただただ資産の保有をつづけるのである。年を追うごとに資産価値が膨らむ一方、税金を支払う必要はいっさいない。
p.238
アメリカに本拠を構えながら、ほとんど税金を払っていない国際企業の象徴といえばゼネラルエレクトリック社だろう。
p.248
デトロイト破綻という劇的な出来事.....合衆国史上最大となる自治体の破産......にはたくさんの要素がつまっている。
アメリカは経済面での隔離がきわめて大きくなってきている。
裕福な、ほとんど白人ばかりのエリートが郊外の居留地に引きこもる、という実例を示してくれるのがデトロイトだ。
p.269
デリバティヴに手を出したデトロイト市
p.272
アダムスミスは市場の力を認識する一方、市場の力の限界も認識していた。18世紀でさえ、企業は革新的な商品をより効率的に生産するより、企業同士で共謀して価格を吊り上げるほうがたやすく利益を獲得できると知っていたのだ。だからこそ強力な独占禁止法が必要なのである。
p.460
トリクルダウン理論は完全な間違いである。
p.468
多くの先進諸国において、不平等拡大は同時期に始まっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
経済
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スティグリッツの本を一度ちゃんと読みたいと思っていたのだが、なかなか時間がない。
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【版元の情報】
『世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠』
ジョセフ・E・スティグリッツ/著 峯村利哉/訳
発売日:2015年05月29日
ISBN:978-4-19-863946-4
判型/仕様:四六判
定価:本体2,100円+税
世界各地でさまざまな対立や紛争が起きているが、その背景には、グローバル化や行きすぎた自由主義による格差拡大と社会の分断にある。超巨大格差はいかに生まれ、今後、どのような深刻な事態を引き起こすのか。TPPや規制緩和に潜む危険性とは? そして欧米、中国、日本など世界経済はどこへ向かうのか? ノーベル経済賞学者が、トマ・ピケティの論などを引き合いに出しながら、世界の変化と、その解決策を提示する。
<http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198639464> -
大崎Lib
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332.53||St
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格差は、冷徹な資本主義の結果ではない。
1%の最上層が、自分たちの都合のいいように市場のルールを歪め、莫大な利益を手にし、その経済力で政治と政策に介入した結果なのだ。
その格差の拡大は、経済や社会の不安定と混乱をもたらし、やがてはすべての人々を危機へと導く。
不平等は、20世紀の資本主義の問題ではなく、むしろ20世紀の民主主義の問題である。不完全な民主主義、1人1票より1ドル一票に近い制度、
アメリカンドリーム、機会均等の国で生きていると言う観念が神話に成り下がってしまった。
万民のための大正義から弁護士費用を賄える人のための正義に置き換えられつつある