日本人が教えたい新しい世界史

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  • 徳間書店 (2016年9月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784198641733

作品紹介・あらすじ

人類が誕生して文字を獲得すれば歴史が成立するというほど歴史は簡単なものではない。これまで世界で歴史と呼びうるものは、地中海文明のヘーロドトスとシナ文明の司馬遷の二人による記述しかなかった。いま世界は、それぞれの国民国家が自分たちは正しいという歴史を主張しているが、国民国家の歴史をいくら集めても世界史にはならない。国家と時代の枠組みを超える新しい世界史を日本はどのようにつくるべきか。歴史を根源に遡って考察する。

みんなの感想まとめ

歴史を理解するためには、単なる事実の羅列ではなく、物語として語られることが重要であるという視点を提供しています。既存の教科書では見えにくい、日本や世界の現状を理解するための新たなアプローチを探求し、歴...

感想・レビュー・書評

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  • 結論は、絶対に正しいなどという世界史はあり得ないが、少なくとも国民国家の枠を超え、司馬遷の歴史観を超え、マルクス史観を超え、宗教の対立を超えた、比較的まともな新しい世界史をつくれるのは日本人である、というものであり、それはこの本を読めば充分に納得できる。
    順に要点をまとめていく。
    ①歴史が成立するには、直進する時間の観念と、時間を管理する技術と、文字で記録をつくる技術と、物事の因果関係の思想の4つの条件が必要である。
    ②歴史がある文明と歴史のない文明がある。輪廻転生という思想のインドには歴史はない。イスラム教も歴史の因果関係を否定する文化である。というのは、イスラム教徒は神様が一瞬一瞬、世界を創造していると考えるからである。アメリカも、過去と断絶し、憲法だけでつくられた国であり、国民全体が共有する過去はない。アメリカはヨーロッパ文明の対抗文明として成立した。
    ③世界で初めて歴史をつくったのはヘロドトスである。世界の変化は政治勢力の対立・抗争によって起き、それを語るのが歴史ということである。
    ④ヤハヴェを信仰するするものがユダヤ人というアイデンティティはバビロン捕囚時代に始まる。ユダヤ人はその時にゾロアスター教の善悪二元論の影響を受け、それは新約聖書の「ヨハネの黙示録」の主の勢力がサタン勢力に勝利して世界が終るという終末思想を生んだ。「ヨハネの黙示録」はローマのユダヤ人迫害が最高潮の時に書かれ、実はユダヤ人の運命をうたったものでる。この善悪二元論はその後のキリスト教世界を支配した。歴史が書かれるということは、何かを主張したいという理由があるからである。書かれなかったことを想像するぐらいがいい。歴史の史料は批判的に読まなければならない。
    ⑤日本への清国留学生が「日本」という立派な漢字の国号に対抗して「中国」という国号を考え出した。秦の始皇帝の戦国七国の統一からシナ史が始まった。漢字の字体を一つに決めて、残りの六つの字体の漢字で書かれた本を全部焼いたのが「焚書」である。度量衡や車輪の幅も統一した。車輪の幅の違いは、侵略してきた他国の車が真っすぐ走れないようにするためである。
    天が次の王朝の正当性を決めるという司馬遷の歴史観によってつくられたのが24のシナの正史である。
    中華人民共和国は、いま現在統治している土地は、歴史の始まりから中国に統治される運命にあったと主張して、チベットやモンゴル、ウイグルへの侵略を正当化している。チベットやモンゴル、ウイグルはもともと漢字の国ではなく、シナとは言えない。
    夏、殷は統一王朝ではなく、都市国家の一つに過ぎない。周や秦はいわゆる西戎である。隋や唐は鮮卑族、清は女真族で東夷であり、元はモンゴル族で北狄であり、皆シナではない異民族である。中国4千年というのは史記に呪縛されたまやかしである。シナでは王朝ごとに歴史は断絶し、領土も縮小拡大を繰り返したのだ。
    現代中国人と韓国人は、日本に対抗して中国人、韓国人という意識も国家も生まれた。反日を否定すれば彼らのアイデンティティは壊れてしまう。これは政治であり歴史とは言えない。
    ⑥現代中国は、識字率を上げるために漢字を簡体字にしてしまい、今になって漢字を勉強するために「論語」といっている。これを丸暗記した人たちだけがお互いに意志の疎通ができたからである。戦国七国の時代、漢字の字体がすべて違っていた。孔子学派が使っていた読み方、漢字が基準となったのだ。
    現代中国の歴史では1840年のアヘン戦争から現代と言っているが、日清戦争が与えた衝撃を隠すためである。このあと日本に大量の留学生を送って、日本を真似て本格的に近代化を始めたのだ。
    ⑦日本文明は、シナ文明に対抗してできた対抗文明である。「日本書紀」は、当時の日本を取り巻く状況への危機感からつくられた。すべて史実とは言えない。「日本書紀」で重要な存在の推古天皇と聖徳太子は、シナの漢字資料では確認できない。「随書」では当時隋に朝貢した王は男だと書いてあるのだ。どちらが正しいとは、はっきり言えない。当時の歴史は政治的な目的があって書かれたものなのであるから。
    「魏志倭人伝」の作者は大月氏国を念頭に邪馬台国を遠方の大国とした。魏に朝貢している倭を大国にして自国の面子をたてたのである。
    ⑧白村江で敗れた中大兄皇子は難波にあった都を大津に移す。唐の軍隊が瀬戸内海を攻めあがってくるのを恐れたのである。そして、日本列島に住む倭人と華僑たちは団結し、一番勢力の強い家柄の倭王に「天皇」の称号を奉った。このときに「日本」という国号もできた。天智天皇が即位したのは、白村江の敗戦から5年後の668年であるが、「日本国」という国名を唐に伝えたのは701年であった。
    「日本書紀の」の神話は、日本が外との関係なしに成立したように描かれているが、大陸との関係を持ちたくなかったということであろう。
    「古事記」には711年に書かれた序文があるが、恐らく成立したのは平安初期であろう。
    明治維新の後、降りかかる火の粉を払うために日清戦争や日露戦争を戦い、戦いに勝つたびに領土が拡大していった。それは当時の世界基準だったからである。台湾や満州、朝鮮、南方の島々を日本として統治し、多額の投資をし、インフラを整えた。こういうことも歴史で教えるべきだある。中国と韓国は、戦後しばらくは日本の援助が欲しくて何も言わなかったのに、最近になって歴史をすべて書き換えようとしている。
    ⑨フランス革命では王の資産をパリの市民たちが奪い、それを正当化するために国民が考え出され、国民国家と民主主義のイデオロギーが成立したのである。革命に干渉しようとする各国を跳ね返したのは、ナポレオン率いる国民軍であった。傭兵で構成された各国の軍隊より、自分たちの国を守ろうと必死の国民軍のほうが強かったのだ。それで、ヨーロッパの君主たちはフランス軍に対抗するため、国民国家体制を採用せざるを得なくなった。これが立憲君主制の起源である。国民国家化こそが近代化の本質であろう。
    ⑩歴史には筋道がなければならない。その人間の心理の機微に合致したのがマルクス主義であるが、間違いであったことは歴史が証明した。司馬遷の正統史観も共産主義も社会主義も単なる善悪二元論である。分かりやすい善悪二元論には気を付けなければならない。知識は力である。善である、悪である、と単純に思い込まず、それぞれ様々な事情があるということを考えることが大事である。
    ⑪その時代の世界がどのように動いていて、なぜその国の人やものが日本まで来訪したのか、日本人はそこで何を考え、どう対応したのか、エピソードの羅列の今の日本史では教えない。日本は外国とどこが違っていて、一体どういう国で、外側の世界とはどのような関係にあったのかという視点が、日本史の中にない。そして、世界史の教科書にはすっぽりと日本の記述が抜け落ちている。では、日本人が新しくつくる世界史とはどういうものなのか。
    ⑫歴史は物語であるが、マルクス史観のように分かりやすいものではない。政治の道具に堕した自虐史観になってはいけない。
    ーそして、ここで最初の結論に戻るわけである。

  • トピックな端的な説明と、世界史という学問とそれを教えるべく教育の裏事情を解説してくれている。
    他の歴史参考書とは少し違う感じて面白かった。

  • アジア史が専門の宮脇淳子による世界史とは何かを説いた一冊。

    歴史を作るには諸条件が必要であり、アラブ世界やアメリカは必ずしもそれに該当しないというのは目から鱗だった。
    そして日本人が授業で習う歴史と、本当の意味での歴史というのは乖離があると感じた。

  • この本は年末(2017)大掃除で部屋の隅っこに、読みかけ本として発掘されたものです。殆ど読み終えていたので、最後まで読み通しました。昨年(2017)は世界史に目覚めた年であり、何冊か読んでましたが、この本も私の期待に応えてくれました。

    以下は気になったポイントです。

    ・歴史が成立する条件として、1)直進する時間の観念、2)時間を管理する技術、3)文字で記録をつくる技術、4)物事の因果関係の思想、がある(p14)

    ・本来の歴史とは、ある物事について、なぜそういうことが起こったのか、その前にどういうことがあったからそういう出来事が起こったのだ、という因果関係を明らかにしたいという動機によって書かれるもの(p18)

    ・世界中どこにでも歴史が生まれたわけではない一番の理由は、時間をきちんと計測して記録に残すということが、非常に高度な文明にしか誕生しなかったから(p27)

    ・長江文明は漢字を発明したけれど、漢字発明が発展したのは黄河の中流の洛陽盆地、そこでは多種多様な人間集団がやってきて商売をする、交易の十字路であったから(p31)

    ・古代4文明の中で、歴史が本当に書かれたのは、シナのみ。エジプトの遺跡にもファラオの話は記録されているが、国の歴史としては書かれていない。(p32)

    ・インドの文化は輪廻転生が非常に重要、六道輪廻といい、衆生(しゅうじょう、生きもの)には6種類あって、天(神々)、阿修羅(悪魔)、人間、畜生(動物)、餓鬼(幽霊)、地獄(p35)

    ・来世でどんな種類の生物に生まれ変わるかは、今生でどのような行為を積んだかによって決まる、これを「業」という(p36)

    ・世界には2つだけ、自前の歴史文化を持った文明がある、地中海文明とシナ文明(p54)

    ・ヘロドトスの書いた「 ヒストリアイ」の中のメッセージは、1)世界は変化するもので、その変化を語るのが歴史、2)世界の変化は政治勢力の対立・抗争により起こる、3)欧州とアジアは永遠に対立する2つの勢力である(p67)

    ・ユダヤ人をどう定義するかというと、ユダヤ人の母から生まれた子供は全員ユダヤ人(p86)

    ・話し言葉はみんな違っていたのを、漢字は意味を伝える文字だったので文字の形だけは1つにしたが読み方の統一はされなかった、日本人は漢字を輸入したが、もともと日本にあった言葉が、同じ意味を持つ漢字の訓読みとなり、輸入してきたときについてきた漢字の読み方が、音読みとなった(p99)

    ・秦が統一したのは紀元前221年なので、正しくは、シナ2200年である(p101)

    ・現代中国語の7割は、実は日本人が明治時代に英語やフランス語、ドイツ語から翻訳するときにつくった組み合わせか、古典にもあるけれど意味が違うもの。(p104)

    ・戦国7国はそれぞれ隣の国との境に土を固めて作った「長城」をつくっていた、統一した秦の始皇帝は内側の境界はこわしてしまったが、遊牧民の侵略を防ぐために、北方の長城だけは残してつないだのが、万里の長城である(p112)

    ・中国の統一は、秦(前221)、隋(589)、元(1276)、清(1644)がある、現在の中華人民共和国は1949(p129)

    ・毛沢東は、ピンインだけにする計画を持っていて、その前段階として、漢字を簡単な字にした。聞く分にはわかっても、その通りに発音できるかというと全員ができない。自分の発音とおりに書いたら、きちんとしたピンインが書けない、なので毛沢東はピンインの採用をあきらめた(p131)

    ・清朝では、満州、モンゴル、チベット、イスラム教徒、漢人地帯の5つがバラバラに統治されていた(p140)

    ・日本は菅原道真が遣唐使を廃止して以降は、ほとんど大陸とは正式な関係を持っていない、唯一の例外は室町幕府の足利義満が、日本国王と称して明の皇帝と勘合貿易をしたこと、正式の外交は1871年の、日清修好条規である(p173,174)

    ・7世紀末の天智天皇、天武天皇の直系の祖先からは、はっきりと男系で継承されていることが史料に残っている、1300年以上続いている(p184)

    2018年1月2日作成

  • 内容的にはいいのですが、妙にご主人を褒めてばかりで何か気持ち悪い感じがしたのですが、最後まで読んで、これがテレビ番組から文字に起こしたものと知り、そのせいで、やや文字だけで見ると気持ち悪さにつながっているのかとやや納得。
    内容に戻ると、日本すごいとか、世界すごいとかではなく、極めて中立的に世界史教育や歴史対立の問題点を指摘していて、勉強になりました。私のようにこの手の話には疎い人でも読める。そもそも、歴史とはから学ぶにはいいと思います。

  • 読了。
    政治ポジションとしてニュートラルとは言い難いものの、歴史に対峙する際の心構えに関して、示唆に富んだ一冊。
    「歴史書が書かれたということには必ず目的があり、書かれたことをただ無批判に受け入れるのではなく、何故そのようなことが書かれたのか、という背景に思いを巡らせる必要がある。」
    確かに絶対的に正しい歴史など存在せず、それは観方や立場で如何様にも形を変え得る。米国から見ればジョージ・ワシントンは建国の父だが、英国から見れば反乱軍の親玉だと言える(笑)。

  • 旦那様であられる岡田英弘先生の副教本、解説本でしょう。 岡田先生の理論・お仕事を実にわかりやすくかみ砕いて書き下しておられます。世界史の教養本としてお勧めです。とても解りやすくて骨のある歴史書でもあります。

  • 世界のすべての国に、「歴史」があるわけではない。

    歴史に必要なのは「時間は直進するものだという認識」「時間をどう管理するか」「歴史を書き留める文字があること」「因果関係という認識」。

    で、世界中で自前の歴史を持ったのは、シナ文明と地中海文明のみ。司馬遷と、ヘロドトス。

    例えばインドは、輪廻という発想があるので歴史にはなり得ない。
    イスラムは、あらゆる瞬間が神による創造なので、歴史にはなり得ない。
    アメリカにとって、過去は偉人のエピソードなので歴史にはなり得ない。

    日本も、古いつっちゃ古いが、あくまでもシナ文明への対抗文明である。

    歴史は何かを語るもの。
    必ず思惑があり誰にも普遍的な世界史なぞ望むべくもないが、政治とは切り離すべきであり、歴史家は出来るだけ客観的な史実を残していくのが使命。
    国には国の国史があるが、それを集めても世界史にはならない。

    変化と対立を基礎とする地中海文明起因の西洋史と、天は変化せず命が変わるのみのシナ起源の東洋史を一緒にしても世界史にまとまるはずもない。

    日本の歴史は基本鎖国的で海外不要で、世界史の中の位置づけ、関係が弱い。

    そうなの。だから学生の頃は世界史が嫌いで、まだ狭いエリアでストーリーの追える日本史が面白かったの。

    ただの年表と歴史は違う。

  • 歴史は文明のなせること
    ①空間場所 地図
    ②時間   暦
    ③文字
    ④物語

    「歴史」意図・思惑がある 正当性

  • 岡田英弘さんの「歴史とはなにか」を宮脇先生の言葉で分かりやすく解説し直した本。
    私は岡田先生の文章は取っつきにくかったのでとても分かりやすかった。

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著者プロフィール

1952年和歌山県生まれ。京都大学文学部卒、大阪大学大学院博士課程修了。博士(学術)。東京外国語大学・常磐大学・国士舘大学・東京大学などの非常勤講師を歴任。最近は、ケーブルテレビやインターネット動画で、モンゴル史、中国史、韓国史、日本近現代史等の講義をしている。
著書に『モンゴルの歴史』(刀水書房)、『最後の遊牧帝国』(講談社)、『世界史のなかの満洲帝国と日本』(以上、ワック)、『真実の中国史』(李白社)、『真実の満洲史』(ビジネス社)など多数。

「2016年 『教科書で教えたい 真実の中国近現代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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